三代目レガシィは今のレヴォーグより重い造りだった。その事も有り、四代目では軽さを極める開発が進められた。四代目レガシィに用意された、アトランティックブルー・パールが大好きだ。
あまりにも好きなので、
良いクルマを見つける度に仕入る。
そして育てるように管理すると、やがて巣立っていく。
三台あったコレクションから、まずアウトバックが埼玉へ嫁いだ。今度は同じ色のツーリングワゴンに、
「かわら版」を通じて声が掛かかった。その色の特徴を問われ、色を電話で説明したが、何とも説明しがたいと改めて気付かされた。
アトランティックブルー・パールは、
明らかに時期尚早だった。発売時は不人気で、中古車価格も悪くなるため、どちらかというと敬遠された。
それが今では堂々たるものだ。「スティールブルーグレー・メタリック」も同系色だ。
このショーモデルは、
現物に比べ色が少し白っぽくなっている。
試作品だから若干ドーピングを受けて、
煌びやかに輝いているからだ。
最近ではアウトバックにも加えられた。プラチナムグレー・メタリックも、同じファミリーと考えて間違いない。これらの煽りを受けたのが、
あの素晴らしい輝きを持つ、オーシャンブルーパールだ。このまま発売したら大ヒットすることは間違いないが、
アライアンス車に採用するには時期尚早なのだろう。
今回も投入は見送られたが、この先のために、
とっておくのも良いだろう。この心臓を搭載した暁に、是非奢って欲しい。まだ大切に持っている最後の一台は、水平対向六気筒エンジンと、TM85型6速手動変速機を搭載している。実に上質な心臓が仕込まれているのだ。
本当はこれで長距離ドライブするつもりだった。ところが2月も後半に入ると、お客さまの入庫が重なり、リフレッシュが後回しになった。
そこで先に整備が完了したBRZで、2月最後の長距離テストに出かけた。
こうして見ると、やはりBRZにはホワイトパールが一番似合う。新色に既に変更されて現在は「クリスタルホワイト」と名前を変えた。
トンネルを抜け出た途端に景色が変わり、
「豪雪だったのだ」と改めて思い知らされた。
木曽馬の里もスッポリと真綿に包まれたようだ。
こんな冬こそ、FRスポーツの出番だ。ここを走ると、
フォレスターとはまた違う、
後輪をコントロールする楽しさが溢れ出る。
BRZは2月10日にマイナーチェンジされた。4月16日から全国一斉に発売となる。まだ2ヶ月近く先なので、
改めてBRZの快感性能を振り返った。
新型BRZでは「RA」が消滅する。そこで「R」を導入する事にした。ちょうど現行型のRが手元に有り、それをあらゆる路面で徹底的に試せば、次の比較で大いに役立つ。
「RA」に機械式デフを装着し、氷上から雪上も含めかなりの距離を走行した。ところがトルセン式LSDを、低μ路で使ったことが無い。
黒いオートマチック車に付いてたが、手動変速における効果とは感じ方が違う。手元にある新型BRZに乗る前に、
違いを確かめておきたかった。
ちょうど手元にある現行型のRには、パフォーマンスパッケージが付いているので、トルセン式LSDを試すチャンスだ。
トルセンデフは機械式より穏やかにイニシャルトルクが掛かる。その締結力も割と大きい。
結論から述べると、機械式LSDに乗り慣れてしまうと、この様な低μ路では物足りない。けれど本来の走行性能を確認できた。
今年のオートサロンは31万人を動員した。そこに出店されたBRZ/86は、GT-Rの40台越えには及ばなかったが、40台に肉薄する出展規模だった。BRZ/86は2012年4月の発売以来、カテゴリートップの座を維持し続けている。
そのシェア示す数値は圧倒的だ。2012年4月から2014年12月までの平均月販シェアは、75.3%と他車を寄せ付けない。
ちなみに2014年は、毎月平均235台のBRZ/86がお客さまの手に渡ったことになる。
そこで「富士重工」は、オートサロンでの人気も踏まえ、カスタマイズ嗜好に合わせた商品を提案した。それが「R カスタマイズパッケージ」(以下CP)だ。
車両本体価格は223万円で、トルセン式LSDを含むパフォーマンスパッケージと、マニュアルエアコン等が付いてくる。寒冷地仕様で、ドアのハンドルとミラーも同色になった。その代わり実質的に3万円の値上げになった。
このクルマの誕生に伴い、RAが消滅したのが淋しい。要するにストリップドアウトはレーシング専用にして、
最下限価格を引き上げると同時に、エアコンやトリムを常装して質感を高めたと言う事だろう。
「R」のベース車は237万円だ。これはLSDを持たないのでCPとの価格差は僅か14万円しかない。機械式LSDの装着を視野に入れると、このオプションコードXBCも面白い選択だ。
念のため伝えたいが、スムーズに走らせるならLSDなど不要だ。
でも滑る路面で車両の走破性を高めたり、サーキットでドリフトするためには、パフォーマンスパッケージが必要になる。
フォレスターの時のように、
完全なクローズドコースでは無いので、
慎重な走りを心掛けた。
でも操縦性は軽快そのもので、
いくらでもアクセルを踏めるから、
滑る路面が凄く愉しい。
少しくらいスライドしても、
クルマが掌に収まっているので、
何も不安が無い。
「R」にパフォーマンスパッケージを付けると(オプションコードBMC)、
車両本体価格は249万円だ。
CPとの価格差は26万円になるが、
自動的に3万円のスポーツインテリアパッケージが付帯されるので、
実質的な差は23万円しか無い。
他の差額を推定すると、
17インチのアルミとタイヤ差額に約5万円、
2スピーカーシステムに約3万円、
助手席ウオークインスライドに約3万円、
赤ステッチドアトリムに約2万円、
メッキインナードアハンドルに約2万円、
カップホルダーとバニティミラー2個に約1万円、
DC電源もう1個とトランクルームランプに約1万円、
リヤ&クオーター濃色ガラスに約3万円、
マフラーカッター2個とマニホールドカバーに約1万円、
ざっと計算すると21万円。
後から追加出来ない部品も含まれるので、
見えない部分にコストも掛かるだろう。
こうなると、
価格を据え置いた「R」の輝きが増す。
結局249万円の「R」を発注した。
次のドライブエクスペリエを楽しみにして欲しい。
CPの誕生は「撒き餌」となるに過ぎないかもしれない。(笑)
2月も残り4分の1になると、日増しに暖かさが増していく。
丸の内は小春日和だった。首都高速から抜け出ると、風景が少し変貌していた。
東京駅の前が先月来た時に比べ、
明らかに違う道路に作り替えられていた。
すぐ左手に中央郵便局があり、
前に丸の内ビルが見える。
右側のビルはビームスの入居する新丸の内ビルだ。
このビル群も長期間の工事で建てられたが、
東京駅の前は更に長い間続く。
信号が青に変わると、
タクシーは猛烈な勢いで走り始めた。
そして丸の内ビルの前で急激に右方向へターンした。
また赤信号で停止し、
新丸の内ビルの前から東京駅を望むと、
可動式のガードレールを、
まるでジオラマのように組み合わせ、
通行車両を迂回させていた。
慣れたタクシードライバーなら、
平気な走り方でも田舎者には辛かった。
こういう時にBRZは鋭い走りが可能だ。
まるで軽飛行機のようにヒラリと舞うように走るので、
タクシーの流れに負けずに東京駅北口にスルリと回り込んだ。
流石だ。
これぞスポーツカーの神髄だろう。
相変わらず色褪せないBRZの走りが、
マイナーチェンジで更に良くなるのは間違いない。
下から見た時は意味不明だったが、
上から眺めるとまるで箱庭のように一目瞭然だった。
上に見えるのが日本郵政の建物だ。
建て替えで揉めに揉めたので覚えている人も多いだろう。
その前を急加速し、
右側の丸の内ビルを右に旋回した。
まるでロサンジェルス並みの、
スリリングな走行シーンだった。
パチンコの玉のように、
右下の新丸の内ビルの辺りから、
左手の駅に向かってクルマを進入させた。
腕を磨くには良いかもしれない。(笑)
オリンピックに向けて東京は何かと景気が良い。
景観はしばらく落ち着きそうに無い。
再び掘り返している。
そして埋め、
きっとまた掘り返すだろう。
埋めては掘るの繰り返し。
環境改善では無く、
人間の都合に合わせた複雑化は、
これからも続くのだろう。
そしていつか又リセットされる。
高速道路も混んでいた。
BRZはMTであるにも関わらず、
渋滞で苦労が少ない事だ。
何しろ2速に入れておくと、
アイドリングでノロノロ運転をキープできる。
6速マニュアルを躊躇う人にとって、
役立つ情報ではなかろうか。
アイドリングの850rpmのまま、
2速で走行すると、
時速13キロを維持出来る。
まるでオートマ車でクリープするようだ。
車体の軽さと、
トルクのあるエンジンの相乗効果だ。
その恩恵は他にも沢山ある。
とても軽快なスピード感は、
ターボのMT車とは異質で、
フォレスターの鷹揚で懐の深い6MTともまるで違う。
BRZは直前まで乗っていたフォレスターと、
真逆のクルマだから比較するのが愉しい。
使用目的から作り手のコンセプトまで、
全てに渡って逆なのに、
スバルの共通性に富むところが面白い。
どちらのスバルも道を選ばぬ走りを楽しめる。
その中で何が一番違うのか。
それはダイレクト感だ。
スロットルに応じて、
軽々と湧き出るようにトルク感が厚くなる。
一気に高速道路に駈けのぼると、
「さあ、これからスポーツカーの世界だ」と、
脳内スイッチを瞬時に切り替えてくれる。
これがまず最初の快感だ。
そして高速道路を巡航すると、
まるで軽飛行機が空を舞うように爽快な走行性能を味わえる。
空気抵抗が少ないことも有り、
アクセルワークに対するクルマの反応が俊敏だ。
走行安定性が高くスピード感が無いので、
同じ速度で比較すると疲れも少ない。
ステアリングに対するダイレクトな応答は、
クルマに乗るのでは無く、
「操縦する」気持ちを掻き立てる。
だから他のクルマより「ワクワク感」が深い。
それは低μ路においても変わらない。
再び開田に話を戻す。
雪景色は美しいが、
実際の生活面では大変なことが起きていた。
今年の雪の重さは尋常では無く、
少しずつではあるけれど被害が出始めた。例えば二宮さんの家も、重い雪でひさしが折れた。車庫も潰れそうになり、
閉めることさえ難しくなっていた。
BRZの後方に、
修復された梁が見える。
元気そうではあるけれど、水が抜けないから風呂にも入れないらしい。ますます仙人らしくなっていた。
雪が深い間は、
パイプを作りながら毎日過ごしているそうだ。
材料の木を計算して削り、
パイプの形に整える楽しさは格別らしい。
BRZのサスペンションにも、
この様に贅肉をそぎ落とし、
軽量化を進めた形跡が至る所にある。
フロントサスペンションは、
ロングストロークなストラットだ。
レガシィなどに使われている、
L型ロアアームをひっくり返して取り付けた。
だから同じように操縦性が良い。
惜しいのはアルミ製じゃ無いことだが、
肉抜きした軽量なスチール製でも悪くない。
全体にサクサク感のある美味しい仕上がりだ。
低い姿勢に合わせ専用設計した。
フォレスターと比べると、
「共通性」と「相違性」が良く解る。
軽くするための工夫が多々施され、
追従性も良く面白いリヤサスだと思う。
桂田さんが三代目レガシィで、
覚悟を決めて開発したマルチリンク式リヤサスペンションが、
よもやFRスポーツカーに昇華するとは、
当時誰も想像だにしなかったろう。
出来上がった今の作品を、
より理想の姿に近づけるはずだ。
今回のマイナーチェンジで、
二宮さんがパイプの型を整えるように、
佐藤PGMはBRZのボディ剛性を高めた。
リヤサスの取り付け部分の板厚を増したので、
走りの進化は著しいはずだ。
なぜか。
マルチリンクはダブルウイッシュボーンの発展型だ。
メルセデスベンツが世界をあっと言わせたが、
弱点もあった。
それはリンクが多い分だけ、
フリクションが増える点にある。
ボディの剛性が低いと、
サス全体が動くのでフリクションが増え、
唐突な動きが生じる。
それをヒステリシスに感じた。
新型フォレスターのリヤサス全体の改善は、
BRZの改良にも共通しているだろう。
フリクションを相当減らせたはずだから、
精度を高めたダンパーを付けるとどうなるか、
乗る前から容易に想像できる。
電動パワ-ステアリングのアシスト特性の変更にも興味をそそられる。
現行型でも文句は無いが、
BRZで感じることが出来るだろうか。
そこでもう少し現行型の潜在能力を引き出した。
雪原から霧深い高速道路へ駆け抜けた。
ウエットなターマックでも、
素晴らしいスポーツ性能を確かめた。
BRZに身を沈めると、
何とも言えない囲まれ感があり、
ボクサーサウンドも気持ち良く奏でられる。
加速時の気持ち良いサウンドには、
文句の付けようが無いほどだ。
BRZの試作車は、
四代目レガシィのB4から産み出された。
B4のspec.Bは、
質の高い走りをもたらす。
BRZはこのクルマと共通する味になるかと思ったが、
トヨタと共同で開発を進めるうちに、
四代目B4が消滅した。
そしてレガシィは大きくなり、
G4が次の役割を担った。
したがってリヤサスに、
このマルチリンクでは無く、
ダブルウイッシュボーンが採用された。
上のマルチリンクと、
下のBRZのリヤサスを同じ角度で並べてみた。
その差は一目瞭然だ。
B4はそれほど古いクルマでは無いし、
走行距離も7万キロ台だが、
ハブ周辺には錆が目立つ。
その理由は最近の膨大な融雪剤の散布だ。
特に中央自動車道では、
少し異常に思えるほど散布される。
だから高速道路で不用意に散布車の直後を走ったりすると、
知らないうちにクルマが蝕まれる。
錆びた部分が点検で多数見受けられたので、
この際徹底的に改善することにした。
まず酷い状態のバックプレートを新品に交換した。
この時、右に伸びるアームを見て感心した。
spec.Bは、
フロントのロワアームだけで無く、
リヤサスのリヤアームや、
アッパーリンクまでアルミで出来ている所が凄い。
マルチリンクなので、
BRZと若干構造は違うけれど、
目指す性能は同じだ。
アルミは錆びないし、
同じ重さなら強度を高められる。
リヤサスのパーツ剛性が高くて困る理由は何も無い。
BRZのハブ周りを内側から見た。ハブは当然アルミでは無いし、ほかのパーツにもアルミは使われていない。バックプレートを交換する前に、
同じようにB4のspec.Bを撮影していた。
贅沢に出来ている事が良く解る。
下の画像はBRZのサポートバーだ。三代目レガシィのマルチリンクから発展したことが良く解る。同じパーツでも、
下の画像に写ったB4のバーは、同じ目的で装着されているが、その質にはかなりの違いがあるように見受けられる。BRZもけっして悪くないが、
こうした質そのものを高め、良い素材に置き換えていくのも大切な仕事だ。B4のアルミにパーツに鋳抜かれたマルフとJAPANの刻印に凄味を感じた。これは水平対向六気筒に相応しい足回りだ。
STIはスバルらしさを匂わせたフラット6を、BRZにこそ搭載すべきだ。 再び期待を込めて伝えたい。
BRZで22Bのような特別なクルマを作るべきだ。
スーパー耐久に挑戦し、
もし総合優勝する日が来たら、
この美しいボディを、
更にワイドでグラマラスな姿にリメイクする。
今のスバルデザインなら、
ピータースティーブンスに頭を下げなくても、
自前で簡単にできる。
そして、
エンジンキャパシティが増えるから、
重量増加も気にしなくて良い。
バッテリーもトランクに移し、
リヤ周りの重量をきちんと計算して増やせば、
前後重量配分もより理想的になるだろう。
このリヤサスから出る味を求め、
6気筒しか出せない上質な走行フィールも手に入れる。
その日が来ることを心から願う。
終わり