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続:GDBとS207の比較からSGPを考察

二代目インプレッサの特徴は丸いヘッドライトだった。
それが思いの外不評だった。

当時はプロドライブと関係が深く、
英国のデザイナーを使う糸口があった。

22Bの開発でデザインを担当した、
ピーター スティーブンスに依頼して、
ソフィスティケートされたフロントセクションが生まれた。

同時に4代目レガシィ用に開発中だった、
等長等爆のツインスクロールターボエンジンを前倒して搭載した。
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しかもSTI用のワークスエンジンとして、
等長等爆のエキゾーストシステムが初めて採用された。
動画を見れば解りやすい。
最後の外科手術を受けて、
その走りは一気に変わり、
凄く滑らかで気持ち良くなった。

念のために断わっておくが、
この走りは涙目のこのクルマしかできない。

その理由は最後に述べる。

ここまで良くなった理由を解説したい。
まず基本的にユニークな記念限定車だった事が、
劇的な面白さに繋がっている。
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前のブログで述べたように、
2003V-LimitedはWRX STIとWRXの二種類がある。

このクルマはSTIのほうだから、
トランスミッションは6MTでエンジンも高出力の280馬力仕様だ。
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ベース車には「spec C」もあったのだが、
遮音の効いたより快適なSTIをベースにして、
装備を限りなくスペC化した。
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マニアが泣いて喜ぶルーフベンチレーターを付け、
後述するメーカーオプションのDCCDを標準装備した。

流石にこのBBS社製鍛造ホイールは、
ベース車同様にメーカーオプションだった。
当時はWRXのために開発されたRE070を履いていた。
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このクルマには鍛造ホイールがついている。
1本当たり4万円追加支払いが必要だった。

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組み合わせたタイヤは、
コンチネンタルのMC5だ。

良く撓るラウンドシェイプの軽快なタイヤで、
価格以上の性能を軽々と発揮する。

シフトフィールに不満があったので、
シフトリンケージをオーバーホールした。
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ノブとブーツを外し、
リンクを露出させる。
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このロッドで変速しているので、
内部のブッシュも含めて交換できるパーツを新品にする。
ケーブルはバックに入れる時のリングに繋がっている。
取り外した状態が下の画像だ。
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右上にあるのが交換したリンケージで、
左側の上下に並んでいるのが、
圧入された上側のゴムブッシュと、
差し込まれている四角いゴムブッシュだ。

これでしっかり「パチン」と入るシフトレバーになった。
オプションのSTI製シフトノブに交換されているので、
炎天下で乗り込むと火傷するほど熱い。
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でも手触りは最高だ。


次に操縦性に影響が出るミッションマウントを交換した。
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古いマウントを取り外し、

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新品のマウントに付け替えた。

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エンジンを支えるクロスメンバーや、
衝突安全を高めるサブフレームはボロボロに腐食していたが、
ミッションを支えるメンバーは頑強だ。
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赤い丸の部分に上のマウントがくっつき、
車体とミッションを繋ぐ。
深刻な腐食は一切出ていない。
左側の黒いゴムが古いブッシュだ。
4つとも右にある新品と交換した。
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ボディにも同じことが言える。
2代目WRXの防錆処理のレベルは高い。

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更に面白いことが分かった。
このクルマのセンターデファレンシャルギヤには、
電子制御のクラッチが仕込まれている。

オートモード付DCCDと呼ばれる過渡期のタイプだ。

なぜ過渡期かというと、
この後大幅に刷新されることが決まっていた。

マニュアル電子制御ではあるけれど、
駆動力配分をダイヤルで切り替える初代のDCCDは、
スバル研究所を代表する発明だ。

まだ生産車に搭載されていない秘密兵器を、
当時社長だった久世さんが、
無理やり研究所から引っ張り出してきた。
初のインプレッサコンプリートのために。
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それがこの資料だ。
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前後の駆動力配分は35:65という、
まるでFRスポーツのようなセッティングだった。
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このインディケーターの中に、
自動的に各種センサーからの条件を演算する機能を入れ、
ロック率をアクティブに変えるのがオートモードだ。

オートモードが無いとカミソリのような切れ味になる。

タイヤがしょぼいとスピン必至。
危ないからS202では採用が見送られたほどだ。

この後に出た「鷹の目」になると、
アクセルオンに対する車体の追従性をさらに高めるために、
機械式のLSDがDCCDの中に組み込まれた。

そして以降の駆動力配分は41:59に封印され、
S207に至るまで10年に渡って使われている。
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この涙目では、
当然の如くデフォルトでオートモードになるよう設定され、
タイヤの限界を超えにくいよう安全モードが働くようになった。

過渡期を証明するように、
センターコンソールの空きスペースに切り替えスイッチがついている。
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それをマニュアルモードに切り替えた。
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次にダイヤルを確認する。
一番上に回すと前後のデフがロックされ、
駆動力配分は50:50になる。
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インディケーターに[Lock]と表示された。
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ワンクリックごとに表示が変わり、
前後の締結力が弱まったことを示す。
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よほど技量のある者なら、
この間の差がわかるのだろうが、
正直なところ、
真ん中あたりは演出の様に思える。
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少し締結力を残してほぼオープンになった状態から、
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最後にワンクリックすると、
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完全にフリーな状態となりダイヤルは止まる。

ここで面白いのが前後のデフの組み合わせだ。
そのころはまだシュアトラックのLSDが良く使われていた。

その後トルセンの時代がやって来た。
カタログモデルのSTIには、
DCCD付きと無しがある。
DCCDを持たないSTIは、
フロントもリヤもシュアトラックを使う。
DCCDと組み合わせる時は、
フロントにヘリカル式のLSDを入れ、
リヤには機械式のLSDを組み込んだ。

ところがSTI 2003V-Limitedは、
フロントにシュアトラックを入れ、
リヤに機械式のLSDを与えた。

独特の操縦感覚が楽しめる。

この特別仕様車に乗ると、
現在のDCCDに動的質感の不足を覚える。

センターデフフリーで、
前後の駆動力配分を35:65にした時、
タイトなコーナーで目が覚めるほど気持ちが良い。

それを味わうと、
S207でも出せない味を感じる。

センターデフの締結力が高いと、
腕のあるドライバーがクルマをねじ伏せるのには都合が良い。

しかし、
柔らかいタイヤで路面を踏みしめるように走る時には、
DCCDという電子制御のセンターデフに、
あえて機械式のLSDを組み込む必要を感じない。

締結感が強すぎて、
動的質感を損なうからだ。

基本構造は優れているが、
戦うための道具として磨き抜かれたDCCDでは、
次のSGPと整合しないだろう。

涙目のGDBがスバル4WDの行く手を示唆してくれたようだ。

SGPも動的質感を極めるために生まれた。
まず入れ物ができた。
さあ、パワーユニットと駆動力配分装置はどう進歩するのか。

今後のスバルからますます目が離せない。

Commented by akira at 2016-08-20 01:18 x
デフロック時の前後駆動力配分=前後荷重配分の表記がさすがですよね。50:50なんて嘘を書かない所が素敵過ぎです。
Commented by b-faction at 2016-08-20 06:41
akiraさん、鋭いですね。前後重配の重要性を認識している表現だと思います。スバルはどうしてもフロントヘビーになりますから。
Commented by 福岡人 at 2016-08-22 19:28 x
代田社長、こんばんは。社長はいつも元気いっぱいでご活躍ですね。私はやっと一休みの月末です。GDBを手放せない理由の一つが、オートモード付ドライバーズコントロールデフの存在です。
フリーにした時の山岳道、ロック状態での高速など、道路状況にあわせて6速を駆使して、頭と体を使って走るらせる醍醐味は何とも言えません。ちょっと疲れているときはオートで3速、4速なら結構楽ちんですしね。
GC8のとき経験したルーフベンチレーターも、思った以上に風が入って、夜のドライブは特に快適でした。森さんはやはりスぺCなんですね。以前の車の話ばかりしてますが、最近、妻(もとBSの社員で妙にタイヤにうるさい。)が、レヴォーグSTIスポーツのCMを見てしまい、「これなら満足できるのじゃないと。」何かと圧力をかけられています。
Commented by b-faction at 2016-08-25 10:50
福岡人さん、こんにちは。動画を撮りました。明後日頃から見ることができると思います。正直なところ、想像以上でした。
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by b-faction | 2016-08-20 00:00 | Comments(4)

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