人気ブログランキング | 話題のタグを見る

橙色のSVX、飛翔する

誕生から5年と10か月経った。


あれ以来ほとんど眠っていたが、
先日のスバルマガジン取材で再び目覚めた。

このSVXにとって、
まるで寝ぼけ眼での試走であったにも関わらず、
山本シンヤ氏から「これ欲しいと思う」と言う、
嬉しいコメントを引き出せた。

そうなんだ。

本当に乗る者をディライトさせる!

しかしエアコンが効かないなど、
経時劣化も見逃せなかった。

エアコンのガス漏れ原因は特定できないので、
まず安全整備に取り組んだ。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_21424122.jpg
まず車検整備を施し、
ブレーキを完全にオーバーホールした。

前回の整備から僅かな距離しか走行していないが、
経時劣化は確実に起きている。

奥がフロントの2ポットキャリパーで、
手前がリヤディスクブレーキのキャリパーだ。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_21425429.jpg
オイルを抜き替えるのは勿論の事、
シールを全て交換し、
ピストンとスライドピンを綺麗に磨き上げた。

杉本整備士から、
「とりあえず安全確保はできました」と連絡がきた。

次の課題はエアコンのガス漏れ特定と、
パワステのオイルホースを交換したいと申し出を受けた。

全てにゴーサインを出し、
他の問題も炙り出すため、
高速道路からワインディングを走ることにした。

橙色のSVX、飛翔する_f0076731_21411557.jpg
走り出す前に各機能をチェックし、
ステアリングの手触りを楽しんだ。

やはりアルカンターラは気持ちが良い。

このクルマの性格にぴったりなステアリングホイールだ。

エアコンをチェックした。
レトロフィットと呼ばれる、
新しい冷媒システムに対応させるためのキットを着けた。

橙色のSVX、飛翔する_f0076731_21413019.jpg
エアコンの機能は今のところ安定している。
徐々に漏れる傾向が改善したのか、
クルマに負荷を掛けないと解らない状況だ。

橙色のSVX、飛翔する_f0076731_21414343.jpg
温度を少し下げ、
24℃にセットした。

橙色のSVX、飛翔する_f0076731_21553264.jpg
鉄板むき出しのフロアに、
ペーパーマットが敷かれただけの質素な室内。

シートは拘りの自社コーディネートのスパルコだ。
軽快なエクゾーズトノートが工房に響いた。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_21555162.jpg
バンパーから覗くのは、
手塩にかけたオリジナルのオールステンレスマフラーだ。

SVX用に数年かけて開発した商品で、
純正の消音器を左右に分けて、
排気抵抗を減らしている。

確実に効率が良くなるだけで無く、
ステキなサウンドも奏でる自慢の商品だ。

ほぼ完売し自社用だけが残っている。

橙色のSVX、飛翔する_f0076731_21560493.jpg
トリップメーターをリセットして、
踊る気持ちを押さえながら道路に出た。

この軽快感と、
優れたボクサーサウンドを文字にすることが難しい。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_21585309.jpg
それは官能の世界だ。

次は下りの高速ワインディングだ。
クルマの中でブレーキほど重要な装備は他に無い。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_21590863.jpg
走行距離が短くても、
ブレーキを確実に整備しないと思い切って走れない。

久しぶりに鞭を入れたが、
その走行性能は予想を超え素晴らしいの一言に尽きた。

クルマのイメージは、
ファインチューンしたGC8の軽量モデルだと思ってほしい。

走る、
曲がる、
止まる、
のどれをとっても最高の性能を味わうことができる。

まず90kgの軽量化が最大の効果を発揮した。
軽くすることはNVHの性能とバーターして、
動力性能のを手に入れる事と同じだ。

特に出力よりトルク特性の向上に直結した。

ただでさえ低速から分厚いトルクを出すエンジンなのに、
軽くなる事で足枷が外れ、
トルクバンドが広がったのと同じ効果が出ている。

それに加え排気効率の高いスポーツマフラーを付けたので、
アクセルレスポンスも気持ち良くなった。

フォンフォーンと軽く吹き上がり、
不通のSVXとは全く違う動力性能を示す。

このエンジンを極限まで引っ張るようなワインディングは、
恐らくこの周辺に存在しない。

でもニュルブルクリンクに行けば、
極限まで引き出せるだろう。

このSVXを橙色に塗り、
NBRスペックと名前を付けた理由は、
ニュルブルクリンクで見たお手本があったからだ。

以前このブログで紹介したM3を覚えているだろう。

乗ったことはないけれど、
あのクルマのイメージは、
恐らくこのクルマと同じであるはずだ。

なぜなら、
レクチャーカーのM3は、
素のSVXと共通の味を持つからだ。

長田屋の前で車を停めて、
晩酌用に豆腐を買った。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_21595017.jpg
少し車高が上がっているが、
走行性能は軽快そのものだ。

ダンパーストロークが増えて、
時折痛んだアスファルト路面で大きくバンプした時も、
物凄くスムーズに駆け抜ける。
これはマイナス面は皆無で、
長所の増強に貢献した。

WRX用の18インチホイールが似合うが、
これから絶対にやってはいけないチューンだ。

展示が主なエキジビジョンカーなので、
このタイヤを装着したが、
ホイールハブに掛かる負担が設計基準を超える。

ハブベアリングを破損させる可能性が高くなるので、
16インチホイール、
出来ればBBSの純正品を装着する方が良いだろう。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_22011299.jpg
軽量化したことで、
トランスミッションも楽しくなった。

マニュアルモードを持つが、
ほとんど使う必要が無い。

右足だけで簡単にシフトコントロールできるからだ。

重い時は吹かすと直ぐキックダウンして、
「ちょっとホールドしたいな」と思う時があったけれど、
このスペックだと簡単にキックダウンしない。

だからアクセルでスピードコントロールしながら、
シフトダウンしたい時だけキックダウンスイッチを踏み込む。

オートマチックならではの繋目の無い走りが気持ち良い。

丁寧にオーバーホールして、
ローターの精度を高めればブレーキも簡単に音を上げない。

だから下りにおける減速も、
無暗にエンジンブレーキを使わず、
ブレーキペダルを微妙に扱いスピードコントロールする。

そのように均一で精度も高い操作を心がけると、
軽量なSVXはドライバーをまるで金団雲に載った孫悟空の領域に誘う。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_22012770.jpg
ルーフだけマットブラックにした効果で、
よりスタイリッシュなリヤビューが実現した。

SVXを長く大切に乗るなら、
絶対に重くなる方向にクルマを振ってはいけない。

なぜなら軽量化とVDTの特性に密接な関係がある。

このクルマは軽量化によって、
ノーマルより1.5%ほどフロントヘビーな傾向になった。

それはアンダーステアの誘発や、
制動力配分の偏りなどクルマにとって良くない要素だ。

ところが実際に走らせると、
ドライ路面では圧倒的に早い。

コーナリングスピードが全く違う。

当時のコンピュータマッピングがどのレベルなのか知らないが、
基本的に35:65の駆動力配分なので、
電子制御が介在せずオープンの状態だとフランとタイヤの仕事が少ない。

従ってコーナリング時に横方向の摩擦力に余裕が生じるためか、
旋回性能が格段に気持ち良く高まる。

結果的に全体が軽くなったことで、
運動性能はバランス良く高まり、
前の荷重が相対的に増えたことで前輪摩擦も増加した。

クルマの手ごたえが凄くダイレクトになって、
操る心地よさは最高レベルに達した。

それは4速だから良いんだ!

そう結論付けるに相応しい走行距離を走った。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_22022538.jpg
当時はまだE-5ATが開発できておらず、
E-4ATを搭載しているのだが、
変速せずとも車速の乗りが良く4速のネガティブさを感じない。

もしE-5ATや6MTがあったとしても、
両方とも重量がかさむので軽量化の足枷となるはずだ。

だから徹底的に軽くしたSVXは、
当時同じコンセプトで動力性能を極めた、
WRXやRX-Rと「味」の部分でよく似ている。

面白いクルマだ。

橙色のSVX、飛翔する_f0076731_20361798.jpg
比較検証にもってこいのクルマが完成した。
鳥川さんの愛機だったSVXを、
スーパーGT応援カーに仕立て上げた。

毎年妻が応援に行く。

今年も土日に中津スバルを代表して鈴鹿に突撃する。

渋滞がひどいので、
MTよりATを使いたいと希望した。

現在彼女は秋のラリー参戦に向け、
GC8を日頃の脚にしている。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_20363016.jpg
そこで10万キロに満たない、
比較的快調なSVXに乗るよう進めた。

乗り手が変わるとネガが噴き出る。
そこで杉本整備士に点検整備を依頼し、
終わったのを見計らってテストに出た。
すると猛烈な雨が降り始めた。
前が見えないほどで、
ワイパーを最大速度に切り替えると、
助手席側がご臨終なされた(笑)

やはりテストは重要だ。
実際にハードな環境で使うと隠れた問題が露呈する。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_20364151.jpg
とりあえず締め直し、
高速道路に乗った。

まさしくゲリラ豪雨だ。

1キロ先の天気が全く違う。
ウエットコンディションなので、
全く同じ比較ができたかと言うと、
そこには違いが存在する。

ただし18インチのアルミを履き比較にはピッタリだ。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_20365386.jpg
結論を言おう。
何の問題も無いSVXだが、
比較した相手が悪すぎた。
橙色のSVX、飛翔する_f0076731_18443459.jpg
眠くてしょうがないほど刺激がない。
しかしながら、
走行距離も少なく愛情を注がれた個体だ。

今後のリフレッシュのコアとして、
非常に優れた能力を温存している。

これはこれで楽しみな逸材だ。

それにしても、
コーナリング特性も、
橙色のSVXの持つ、
加速性能は別次元のレベルだった。

とくにエンジンフィールが違いすぎる。
軽量化と排気効率の向上、
そして徹底的なリフレッシュが両者の差を明確に分けた。

罪なクルマを作ってしまった。
これが率直な感想だ。

いつかこれで東京往復を楽しみたい。
それには少しスパルタンかもしれないが。
そんな日を夢見てこの項を終わる。

名前
URL
削除用パスワード
by b-faction | 2017-08-21 21:59 | Comments(0)

毎日の活動やスバルについてご紹介します


by b-faction