スバルの開発した4WDシステムの中でも、
特に画期的で歴史に残る発明が、
このMP-T(マルチプレート トランスファー)だ。
レオーネの4輪駆動オートマチック車に、
搭載するために作られたシステムだ。
これは世界で初めて、
前後のタイヤをギヤで繋がない4WDとなった。
ギヤの代わりに用いられたのは、
油圧多版クラッチだ。
それで前後の駆動軸を締結し、
滑らかに走る4WDは、
スバルならではの仕組みと言える。
このシステムは、
かなり前に完成したが、
今でも現役バリバリで、
4速オートマチックと組み合わせられている。
今日から、
ミッションのオーバーホールに取組んだ。
症状はかなり酷い。
10万キロ近く走行し、
ATFの管理も悪かったため内部が損傷した。
まず正常に発進しない。
油圧の変化に伴い、
内部のクラッチが正常に作動しにくい状況だ。
駆動力デバイスとしての、
油圧多版クラッチも同じオイルで繋がっている。
だからその交換も必要だ。
クルマをリフレッシュ整備する事も、
今や我々の重要な仕事の一つで、
得意な分野となった。
今回のリフレッシュでは、
担当整備士が、
車上でエンジンとトランスミッションを切り離した。
後端にあるプロペラシャフトも切り離す。
トルクコンバーターと、
ミッション本体、
それにトランスファーが繋がった状態で、
まずクルマから降ろした。
この画像は、
輪切りのような状態だ。
まずエンジンから動力を伝える、
トルクコンバータ部分が外された。
次に、
動力を前後に分配する、
油圧多版クラッチ(MP-T)が取り除かれた。
MP-Tはミッション後方にある、
エクステンションケースの中に納まっている。
それも丸ごと取り除かれている。
残った真ん中の変速機を、
中身を取り出すために、
立てた状態にした。
中にある部品を全て取り出し、
ロークラッチを交換すると、
見事に性能が蘇るはずだ。
取り出した古い部品が右側だ。
左の新品に比べ、
色が違うのですぐ分かるはずだ。
一見しただけでは、
色以外に差が無いように思われるかもしれない。
だが、
中心にある穴の周辺に装着された、
油圧作動部の動きが悪くなっている。
そこに大きな差があるので、
スムーズに発進出来なくなった。
部品の損傷によって発生したスラッジが、
オイルと共に変速機全体に浸潤してしまった。
混入した異物を、
全て取り除くのは困難を極める。
ミッションの内部を洗浄し、
全体に回ってしまった汚れを取り去り、
部品の状態を良く見て組み直す。
こういったことが起こらないようにするために、
オイルを確実に定期交換し、
クルマの正しい使い方も熟知して欲しい。
前後でサイズの異なるタイヤを履いたりするのが、
もちろん一番いけない事だ。
それ以外にも、
セレクタレバーの操作方法も重要だ。
クルマが動いている間は、
レバー操作をしてはいけない。
確実に停止してから、
次の操作をして欲しい。
特にクルマが坂道などで、
惰力で動いている間に、
セレクタレバーを逆に入れてはならない。
大きなパワーを持つクルマほど、
充分な注意が必要だ。
(2006年3月1日16時58分投稿を補剛)