いよいよWRXとインプレッサが離別する時を迎えた。
2011年 11月 03日
あっという間だ。
初めてステアリングを握ったインプレッサは、
漆黒のWRXだった。
それまでもレガシィRS等のハイパワー車を相棒にしていたので、
どんなクルマか見当は付いていたが、
高速道路に駆け上るランプウエイのフィーリングが素晴らしかった。
この時、インプレッサというクルマの真実を知った。
コツコツ積み重ねた努力の結晶だと言うことを。

ここは望桜荘の玄関の前だ。
この周辺にアスファルトとコンクリートを一切今後は使わないと決めている。
しかしアスファルトで出来た市道から、
雨の後などに玄関まで来ると靴が汚れる。
そこで自然石で通路に石畳を作ることにした。
簡単なことでも続けることは難しい。
しかし目標を決め、
コツコツ続けていくうちに形になってくる。
嬉しくてたまらない。
この石畳の材料は、付近の改善作業を進めた時に出てきた石だ。
それを何ヶ月も雨晒しにして奇麗に整え活用した。
一ヶ月かけてここまで延びた。

小さな事を積み重ね、大きく育てることは本当に清清しい。
ここで大切なことは期限だ。
いつまでに何をやるか。
石畳には市道というゴールがある。
インプレッサも軽自動車とレガシィの間を埋めるためのクルマから、
ずいぶん逞しいクルマに生まれ変わってきた。
WRCと言う戦いの場で、
時には毎月のように期限が定められ、ゴールを目指した。
その結実がどれほど大きいのか、
このクルマからしっかり感じ取ることが出来る。

WRX tSにこの「護符」を貼った。

これは、
本気でこのクルマを確かめる心構えの現れだ。
昨日、一気に250キロほど走り、
このクルマの性能を誤解していたことに気付いた。
以前借りてロードテストした広報車は、
明らかに何かが狂っていた。
だから本来の性能を発揮していなかった。
また、開田高原では3月といども路面温度が非常に低く、
サマータイヤではクルマの性能を引き出せなかった。
それに加えテストの真っ最中に、
東日本大震災が襲い掛かってきた。
その帰路ではクルマを味わうどころではなく、
心は緊急事態モードに切り替わっていた。
だからtSに対して期待したほどの凄さを感じられなかった。
そのインプレッションを正直に辰己部長に告げた。
すると「それは気になるところである。もう少し試乗して確かめて欲しい」、という回答があった。
コメントの内容は以下の2点。
①高速道路で「ピョンピョン」跳ねる様な挙動を示す。
②サウンドを始めクルマから発せられる何かが物足りない。
それもそのはずだ。
その時借りたクルマは、
年末の取材から始まり、各地のSTI御用達のお客様に、
毎日のように蹂躙されていた。
奇麗な姿でもカラダを相当酷く痛めつけられたのだろう。
エンジンや車体に何か問題があったわけではないのだが、
「人車一体感」が余りにも乏しかった。
クルマが本来の調子では無ければ、
ボタンの掛け違えが起きて当たり前だ。
その不信感をまず一気に払拭したのがNBRに於けるクラス優勝だ。

これでtSを見る目が一気に変わった。
東京へ出張するチャンスを活かし丁寧に慣らし運転をした後、
サーキットで安全に能力を引き出す。
そして正確なフィーリングを掴もうと思う。
生誕20年を目前に、
いよいよ四代目のインプレッサが登場する。
今こそ知識と経験の全てを注ぎ、
インプレッサとインプレッサWRXを、
もう一度しっかり振り返り正しく伝えたい。
まずWRXの「離別の時」を燦然と宣言したい。
そもそも初代のインプレッサは、
レガシィと軽自動車を繋ぐための中間車として計画された。
それは比較的良く知られた事実であるが、
開発の初期にはセダンしか存在しなかったことはほとんど知られていない。
「存在しなかった」というより、
むしろ当時のプロジェクトチームは経営陣に「スポーツワゴン」の存在を隠していた節がある。

それは開発予算のためだろう。
レガシィの用にフラッグシップとして別格の扱いを受けるクルマや、
時代の寵児として開発された「SVX」のように格別の取り計らいを受けたクルマに比べ、
インプレッサには2つの車型を開発する程の潤沢な予算が与えられなかったはずだ。
インプレッサの開発者たちは初代から熱く燃えていたに違いない。
手腕を力の限り発揮して
死に物狂いで良いクルマを追い求めた。
そういう魂に共鳴する。
また心の琴線が触れ合うので、歴代のインプレッサに痺れに痺れた。
まさしく惚れて惚れて惚れ抜いた姿が今の自分なのだ。
話を戻そう。
初代インプレッサが開発のクライマックスを迎えると、
別の重大なテーマが浮上してきた。
それがWRCにおける「世界制覇」。
そこから豪快な夢へのチャレンジが始まった。
「インプレッサWRX」について、以前にもその詳細を綴ったので、
興味のある方は過去のブログを紐解いて欲しい。
インプレッサは発売当初から「日常の脚」として扱い易く設計され、
シティランナバウトとしての性能を重視したパパママ車としての側面を持っていた。
またそれとは対象的に、
世界を相手に戦うスーパーウエポンの側面も持つことになった。

この大きな格差を併せ持つことが魅力であることは間違い無い。
けれども改良に改良を重ねるうちに、あることがはっきりして来た。
それは明確な上下2分割だ。
8年もの間、熟成に熟成を重ねた結果、
本来なら主力になるはずだった1.8リットルは消滅。
その代わり、
隠し玉だったはずのスポーツワゴンが主力車種に躍り出る。
C’zというグレードが誕生した時だった。
4WDもFFも1.5リットルに統一され、販売に一気に火が付いた。
セダンWRXはWRCで勝利を積み重ね、ハイパワー車の象徴として定着し、
シティランナバウトのワゴンと双璧を築いた。
そういう背景を知ると、インプレッサのモデルチェンジの変遷が良く理解できる。
クルマは妥協の産物である。
しかし2代目のインプレッサは、その妥協を極めて高次元まで引っ張りあげた。

この時初めてインプレッサには冒険が許されるのだと思った。
大胆な丸目にモデルチェンジした姿はステキだった。
非常に意欲的な作品で大いに気に入ったのに、
市場からは大反発を食らった。
後に自分の目が間違いではなかったと実感した。
今こうしてS202を見るとそう思わないか。

さて、高次元な妥協の何が凄いか。
基本骨格がしっかりしていた。
更に安全重視を徹底し、
ハイドロフォーミングで複雑な形に仕上げたサブフレームを有していた。
するとフロントヘビーにならざるを得ない。
そこで重量増加を改善するために、
全てのインプレッサにアルミのボンネットを与えた。
その上、アルミホイールも全車標準装備。
1.5リットルのベース車までアルミホイールを標準装備するなんて、
過去にはあり得ないことだった。。

次に凄かったのは、
WRX専用のワイドボディが同時にラインナップされた事だ。
WRカーでは当たり前だった「待望」の6速ミッションが搭載された。
しかもスバル内製の専用ミッションだった。
クルマが全体的に重くなったが、努力に努力を重ねた形跡が見えた。
ただ少し残念だったのは、サスペンション形式も、基本的なエンジンの搭載方法も
ほぼキャリーオーバーだった。
そこにインプレッサが持つ「自己矛盾」の片鱗を見た。
しかしそこからの熟成は見事だった。

驚いたことに
3度もの整形手術を敢行。

改良に改良を重ねた結果、
ワゴンもセダンもハイパワーターボも1.5リットルもバランスよく売れた。
ロングセラーの商品としてスバルの屋台骨を支え続けた。
そして満を持してフルモデルチェンジを迎えた。
ところが突然現れた2つの大きな外的要素により、
インプレッサの持つ「自己矛盾」は最大のピークを迎えた。
1つ目はWRCで戦うためには「セダン」が不利な状況に陥った。
列強各社はコンパクトな3ドアHBを持つ。
従って世界で戦うルールが彼等に有利になるよう書き換えられた。
2つ目は瓢箪から駒の様なGMとのアライアンスだ。
スバルは巨額の開発資金を「濡れ手に泡」で手に入れることができた。
ほとんどレガシィに注ぎ込まれたが、
3代目のインプレッサも人的資産を握り締めた。
アンドレアス・ザパティナスをヘッドハンティングできたことだ。
スバルの歴史上最も美しいハッチバックボディがザパデザインと呼ばれる理由はそこにある。
スタイルだけで無くクラス唯一の脚を手に入れた。
リヤサスは専用のダブルウイッシュボーンに改められた。
これがなぜ自己矛盾のピークなのか。
それは、アンバランスの極地といえるからだ。
3代目インプレッサでは、
国内仕様のためだけに新型のロングストロークエンジンを開発した。
とても贅沢なエンジンを搭載したのに高い値段をつけられない。
なぜなら、業務車両やレンタカーにまで安く売りさばかねばならない。
せっかくの高級なサスペンションをフワフワにしてお茶を濁した。
逆に基本的に貧相な内装材を使わざるを得ないので、
高額なターボ車には不似合いで、ベース車には過剰品質なところもあった。
この時既に先を見越していた。
インプレッサとWRXを分離し、別ブランド
にすべきだと提唱した。
その後、約半年遅れでWRXが登場すると、
STIがグレード化されておりその矛盾は更に決定的になった。
ようやくWRXにセダンが誕生し、

少し本来の姿に戻りつつある。
まだここで新しいインプレッサを語れない。
ただし先月綴ったブログで考察した内容を決して裏切るものではない。
そればかりか
想像以上の商品力を持っていた。
デビューが楽しみだ。

我々の地域は少し遅れての体感となるのですが
それは楽しみでなりません。
本来の立ち位置に戻るインプレッサ
だけどただのパパママ車ではない!

確かにGHのリアはフワフワしますね…うちはリミテッドのスタビを付けてあるのでだいぶしっくり来る様になりました。ちなみに、フレキシブルタワーバーも入ってます(笑)
昨日、tSのA- Lineに試乗する事が出来ました。僕は動きが軽く感じました。でも、乗り心地は適度な感じでむしろ純正よりしっかりしていて良かったです。


SVXの記事にコメントしようか迷いましたが、歴代インプレッサに乗る者としてはこちらに書かねば!と思いコメントいたします。
某研修会では、突然お声をかけてしまったにもかかわらず気さくにお話くださってありがとうございました。
GC/GFから始まったインプレッサも今回のFMCで4代目、どおりで私も年をとるはずです・・・。
これまでターボ・MTばかり乗り継いできましたが、ついにNA・CVTという時代の流れに飲まれることになってしまいました。
が、最新のエンジン、CVT、そしてEyeSightを搭載した新型は、自信作と呼べる仕上がりですね!
この車がスバルの今後の基盤となり、高い商品力を維持してくれることを願っています。
そのためには我々現場もがんばって売らねばなりませんね!

またぜひ御会いしましょう。声をかけていただきとても嬉しかったです。ありがとうございました。

最近近所では、トレジアの台数が増えています。特別仕様車が発売されるようで、こちらもいいなと思う今日この頃です。5ナンバーサイズは田舎では重宝します。なんせ、センターラインを割ってはいる対向車や追い越し車線から強引に入ってくるお馬鹿さんまでとんでもい運転をする人が多い者ですから。自己防衛は大事だと思います。
車幅が狭いので言えば、軽自動車も当然です。ダイマツ・ミラウースの実車を見てvivioを思い出してしましました。顔だけビストロ仕様をスバルで販売したら楽しいかな(あくまで個人的な意見です)。
でも、私は変態なので、ボンネットの見えない乗用車は乗りにくいです。自己防衛だとやはり新型インプレッサ(旧型のFF5Fでもいいけど)に期待します。

。

ディーゼル+6MTが個人的に実現してほしいですが国内はやっぱりいろいろと厳しいんでしょうか。
また近いうちに伺えたらと思います。よろしければまたお話を聞かせてください。
