インプレッサSPORTとホースセラピーで「自動車家畜論」を燻蒸する

今から60年前に遡る。
富士重工の前身である
富士自動車工業㈱の技術者だった、
百瀬晋六は純国産乗用車の開発をゼロから始めた。

そして1年4ヵ月後、
念願のP-1(Pはパッセンジャーを示す)が完成する。
1954年の2月の事だ。
その後P-1は、悲しい運命を辿った。

栄光の中島飛行機は財閥解体でバラバラに分断された。

その中から6社が合併し、
新生富士重工業㈱が誕生した。
新会社の事業計画の目玉が自動車製造だった。

新生富士重工に至る前に着手されたた計画は、
事業計画の一つとして引き継がれた。

初代社長の北謙治は乗用車製造に執念を燃やし、
P-1をすばる1500と命名した。
当時の自動車中でも特に際立つ、
「垢抜けた」スタイルだった。
直列4気筒エンジンを搭載した、
後輪駆動の画期的な乗用車だった。

フルモノコックのボディは、
飛行機技術を活かして練り込まれ、
富士精密の開発したエンジンは高性能だった。

けれど合併したばかりの企業では、
そのクルマを大量生産する体力が無かった。
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                                     Photo by KAZU Ninomiya

その後、紆余曲折を経て遂に乗用車を誕生させた。
それが日本初のFWD「スバル1000」だ。
コンパクトなエンジンと、
特徴的な縦置きミッションは全輪駆動へと発展していった。

そして遂に、
世界初の量産乗用車型4輪駆動の開発製造に至った。

それは悪路走破の性能向上と同時に、
高出力で高性能なモータースポーツの世界にも踏み込むきっかけになった。
4輪駆動スポーツ車の開発も始まると、
後輪重視の駆動力配分を持つ、
まるで動物のようなVTD型4輪駆動システムが生まれた。

4つの車輪を高精度に制御する技術を育んだスバルは、
それを活かし面白いクルマを完成させた。
軽量でコンパクトな水平対向エンジンは、
クルマに積むと重心も低い位置に置ける。
スバルはその特性を活かし、
極めて柔軟なサスペンションを持ち、
流麗で安全性能にも秀でたボディを持つ、
新世代のスポーツカーを開発した。

後輪駆動の乗用車から歩みを始めたスバルが、
FRスポーツを開発した。

新世代と定義する理由はいくつもある。
まず「ピュア ハンドリング ディライト」は何を意味するのか、
それを明確にしよう。
BRZは前後の重量配分が、
歴代のスバル車の中でもっとも理想的だ。
4輪のグリップをアクティブに制御し、
重量配分に優れると後輪のトラクションも良くなる。

ヒトが進化の過程で2本脚歩行となった。
後ろ脚だけで歩行すると、
前脚を自由に使える。
この素晴しさは、
クルマに同じ事を髣髴させる。

四輪駆動から後輪駆動へ進化すると、
ほ乳類から霊長類が分派したように、
足と手を使い分ける高等生物のようなクルマが生まれた。

これが新たな世界に繋がるエピローグだ。

全国スバル販売店の有能な同志達は、
意識改革を忘れず、
「4WD至上主義」では無い、
新たな布教活動に努めて欲しい。

絶対に
「やっぱり4WD」だとか、
「ターボはいつ出るのか」など、
くだらない話に巻き込まれぬよう覚醒して欲しい。

BRZの素晴らしさは、
乗る前から容易に想像できる。

そこで改めてFWDのパイオニアとしての側面から、
スバルの持つ力を見直そう。

それが温故知新だ。

冒頭のインプレッサは、
本格的な積雪路を攻める1.6i-LのFWDだ。
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実は、ここ数年間、
NAのインプレッサを購入するときは
ほぼ100%前輪駆動車を選ぶ。
その理由はFWDでも十分な走破力を持ち、
運動性能も高いレベルにあるからだ。
それをモデルチェンジの度に確認してきた。

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今回もそれに倣い、
新型インプレッサのスポーツにFWDと、
新開発の1.6リットルエンジンを組み合わせた。

厳冬期の開田高原で走らせると、
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期待通りの性能を披露した。
このクルマは、
スバルの前輪駆動車で初めてVDCを標準装備した。
だからこんなに雪深い場所でも、
スタッドレスタイヤだけで自由自在に駆け回れる。

新しい1.6リットルエンジンは、
国際競争力を出すために開発された。
特にヨーロッパを強く意識している。
これから先、
インプレッサで更に販路を拡大し、
世界レベルでクルマの先駆者たちとガップリ四つに組む。
彼らの得意とする技を受け止め、
相手を上手投げでねじ伏せるには、
これからも熟練を重ねる必要がある。

基礎から叩き上げ、
上手投げで勝負しなければならない。
小手投げでは駄目なんだ。
新型インプレッサは、
その辺りを良く考えた造りになった。

シャキッと切れ味の効いた、
優れた仕上がりになっている。

この傾向は既に先代でも感じた。

モデルが円熟期を迎え、
インプレッサXVが派生した時に、
同じようにシャキッとした味を感じた。

その時、スバルは重要な走りのキャラクターを創り上げた。
密かに沈黙を続けているが、
おそらく時期フォレスターは同じ開発者が担当するはずだ。

恐らく周りを驚愕させるような、
素晴らしい車をリリースさせると睨んでいる。

そして、更に新たな要素が加わり、
スバルは奥の深い開発を続けるはずだ。
かねてから語るように、
BRZとインプレッサは、
隣同志で、
お互いを横目で見ながら開発が続いた。
だから彼らには、
二卵性双生児のように似た体質を感じる。

インプレッサSPORTに新鮮な魅力を感じる理由は、
この辺りにあるのだろう。

この真横からのフォルムは実にスタイリッシュだ。
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これを見ただけで、
新型がインプレッサワゴンの原点を意識した事が理解出来る。
流石にSPORTを名乗っただけのことはある。
これは絶対にツーリングワゴンでは無い。

それでいて、先代GH系の持つ「こじつけ」も感じない。
なぜ「こじつけ」と言うか。
それは、
旧型をワゴンと言い切ったからだ。

本来ならば、
新世代のスタイリッシュな5ドアハッチを目指したはずだ。
ところがワゴンの呪縛から逃れられなかった。
その結果、
車検証上に「ステーションワゴン」と入れざるを得なかった。
そこに少し未練がましさを感じた。


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今度のインプレッサSPORTは、
ワゴンらしい上に、
お世辞抜きで格好良い。

1.6のFWDはこのような滑りやすい路面でも、動きがとても良い。
スバルほど雪景色の似合うクルマは無いが、
これはインプレッサ「スポーツワゴン」の歴史上、
最もスタイリッシュ&スポーティーだ。

インプレッサだけに許される、
「スポーツワゴン」の称号。
それを纏うのにふさわしい姿へ生まれ変わった。

まず先代のXVを彷彿させる1.6リットルエンジン搭載車は、
ヨーロッパ戦線を互角に戦える、
玄人好みのシャシーだ。

そして、2リットル搭載車には、
旧型のレガシィユーザーをごっそり引き受ける資質がある。
少し大径のタイヤを履いたので、
外観に重厚間が増しインテリアもクオリティが高い。
アイサイトも装備した2リットル搭載車から、
懐の深さが感じられる。

そんな仕上がりになった。
どのインプレッサに決めるか、
きっと迷う人は多い。
色もそうだがエンジンとボディの組み合わせ、
それに駆動方式にも悩めるほどの魅惑が溢れている。

ぎりぎりの決断を強いられた時の参考にして欲しい。
G4もステキだ。
今届いたばかりのG4は受注第一号車だ。
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プラズマブルー・シリカの4ドアセダンはとてもスタイリッシュだ。
オプシディアンブラック・パールに比べても引けを取らない。

さて、
インプレッサSPORTで開田を訪問し、
雪上テストを繰り返したが、
実はもう一つ重要な目的があった。
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それはホースセラピーを受けることだった。
ホースセラピーと言われても解らない人が多いだろう。

木曽馬の里でデータ取りに協力した。
お世話になった中川剛さんは、
財団法人 開田高原振興公社  木曽馬の里・乗馬センターで
飼育と調教を総括されている。

パナソニックの開発したジョーバにも、
係わりを持たれたそうだ。

色々な話を聞かせて戴き、
とても有意義な時間を過ごせた。

まず乗る前に体にセンサーを取り付け、
心拍数を計りパソコンに入力する。

お相手は可愛い熟女の木曽馬だ。
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ホースセラピーは実に愉しく、
あっという間に時間が過ぎた。

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屋内運動場で馬に乗ったが、
じつはとても寒かった。

この中は暖かそうに見えるが、
もう一枚上着を着て、帽子と手袋も欲しいぐらいだった。
厳冬期の開田高原は、
ほとんど一日中氷点下だ。

ところが馬の背中がとても温かく、
触れると気持ちが良かった。

馬にまたがる瞬間に、
ワクワクドキドキしたのだろう。

あとで解ったが、
この時に心拍数が一気に上昇した。

リラックスして馬の背中に乗り続ける。
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はさしく天然のシートヒーターだから、
快適且つ贅沢な事この上ない。

馬のお尻に久しぶりに触ったが、
まるでぬいぐるみのようだった。

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体を反らしたりする事で、
普段使わない骨格を開いたり、
筋肉の緊張をほぐせるそうだ。

インプレッサで激しい雪上走行を繰り返した後だから、
リラックスできて都合が良い。

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横向きに乗ったり、
後ろ向きに乗ったり、
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馬の背中で楽しんだ。
後ろ向きに乗ると、
不思議なことに心拍数が一気に下がる。

そして最後のプログラムは、
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馬の背中で寝かせてもらう。
しかも頭を馬のお尻の下へグッと下げる。

頭の直下に肛門がある。
写真を見て初めて知った(笑)
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事務所に入り集めたデータを処理した。
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表を確認すると、
仰向けに寝た時が一番低い心拍数だった。
リラックスしている状態を最低値が証明した。

木曽馬の熟女「たからふじ」、
通称「たから」の任務は終わった。

緊張の糸がほぐれたのか、
とても眠そうだ。
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お礼に彼女のカラダをブラッシングした。
首のところが一番気持ち良いらしい。
ここにブラシを当てると、
グッと頭を寄せてくる。
これが何とも愛らしい。
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こうして、初めてのホースセラピーは終了した。
ローマ時代のギリシャで始まった、
癒やしのプログラムだ。

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歴史がある割に、
日本ではまだそれほど身近では無い。
けれども、
これから間違いなく浸透していくだろう。
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かねてから展開している「自動車家畜論」に、
また一つ大きな経験を書き添えることが出来た。
クルマは家畜の延長線だ。

乗ることで癒される。
だからこそ大事な相棒だ。
共に素晴らしい世界を満喫する。

クルマにはドキドキワクワクする瞬間もあるし、
気持ちよくてうっとりする癒やし効果もある。
運転中に思わず眠くなるのも、
そのせいかもしれない。

馬のカラダをブラッシングすると、
洗車が如何に大事か解ってくる。

クルマだって病気になる。
そういう時は医者に見せ薬を与えるだろう。
クルマの医者が我々の仕事だ。
その大切な仕事を、
これからも改善し、
更なる工夫を盛り込みたい。

そのアイディアが尽きることは無い。
スバルだけに存在する、
スバリストなる称号。
スバルの愛好家たちは、
きっとその事が良く解っているに違いない。

これから始まる、
エピローグを、暖かく見守ろう。


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Commented by 韮崎のaki at 2012-01-25 22:23 x
冒頭のインプレッサの写真、思わずニヤケてしまいました^^
開田にペター・ソルベルグ来た~!
FFのVDC、走りますね~。
Commented by b-faction at 2012-01-26 07:18
FWDをスムーズに走らせることが、安全安心を極めることに役立ちます。
それでいて、
けっこう早く走れるようになりました。
このクルマは、とにかく軽く走ります。
VDCも絶妙に作動し楽しめます。
絶対スピードは4WDの方がもちろん速いのですが、
今回のテストでヒヤリとしたり、困ったことは一切ありませんでした。
2リットル車とは、クルマの仕上げ方が全く異なることが良く解り勉強になりました。
無論、この走りには理論を学ぶ必要があるので、
新世代FRスポーツの誕生に備えまだまだ学習は続きます。


Commented by マツダパンダ at 2012-01-27 19:28 x
ご無沙汰しています。最近、怠け癖が出始めたので、気合いを入れ直すために記事を拝見しました。
こりゃ、FF・CVTで十分な気がしてきました。一方、5MTも選択肢としては捨てがたいか・・・。買えないのに、勝手に想像しています。
新型のFFと5mtの車両重量って変わらないんですか?カタログをざっと見て、気づいたんですが。ただし、時速100キロのエンジン回転数はどうなんだろうと疑問もわいています。一概に回転数が低いからと言って燃費が良いと言えるのかどうかも分からないのですが、低回転の方がやはりガソリンを使わないと考えています。完全な素人考えです。すいません。
しかし、新型のフォルムは好きだった初代のフォルムですね。これはいい。
蛇足ですが、ホースセラピーは受けたいです。牛に乗ったことはありますが、馬にはありませんから。
Commented by b-faction at 2012-01-27 20:01
マツダパンダ さん、牛に乗ったというのは相当珍しい体験ですね。4WDとの重量差は60キログラム。もしFWDに5MTがあるなら車両重量はどれくらいになるのか興味があります。ただし、これからはMTをBRZで楽しみたいですね。
Commented by マツダパンダ at 2012-01-27 22:59 x
すいません。なぜか上のコメント非公開にしてしまいました。操作ミスです。非公開の要素は皆無です。
Commented by b-faction at 2012-01-28 11:43
マツダパンダさん、
「牛は、じいちゃんが、以前、和牛を育てていました。まだ幼稚園に行くか行かないときです。調子に乗った母親が無理矢理乗せたのを覚えています。つうか、背中が四角くてまともに座れなかった気がします。
つうか、ドライブの楽しさは、BRZに役割チェンジというところですよね。6MTが乗るんでしたっけ?どうも、貧乏性なのでクーペは高嶺の花という先入観から、自然と自分の対象から外れちゃうんですよね・・・。でも、2リッターだしな・・・。射程範囲かも(笑)」
というコメントですね。

牛は乗るには不向きです。乗るのを見たことがあるのはラクダかゾウくらいですよね。これらは外国や動物園やサーカスの世界であまり身近ではありません。そうすると、やはり馬に近親感を覚えます。だからクルマはこちらに近い。牛はどちらかというとトラクターですね。そういう意味では子供のころすぐ近くで飼われていました。玄関の横で家族同様に暮らしていました。
Commented by マツダパンダ at 2012-01-30 00:34 x
わざわざコメントを公開して下さり、ありがとうございます。お手数をかけ、申し訳ありません。

牛は、確かに家族の一員だったのかも。自分は記憶がないですが、母に言わせると「爺さん(母の父)に牛が甘えて大変だったのよ。私の言うことは聞かないけど、爺さんが近づくと甘い声をだしていた。」とのことです。犬と同じで、牛の中にも家族の順位が決まっていたようです。
さらに、私のひい爺さん(爺さんの義父)は「村一番の牛使い」の評判だったとか・・・。「牛使いの政」と呼ばれていたとかいないとか・・・。
Commented by b-faction at 2012-01-30 07:22 x
マツダパンダさん、牛飼いの血が流れてますね。きっとあなたもその遺伝子で上手く牛を扱えるのではないでしょうか。僕には、「ばくろう」の血が流れているのかもしれません。馬には何かそういう遺伝子の共鳴を感じます。
Commented by buruwan at 2012-01-31 19:25 x
いつも楽しく読まさせていただいております。
雪道の新インプレッサの姿は初めて見ましたがなかなか良いですね。スバルと雪は本当にマッチします。ところで非常に素朴な疑問なのですが、最低地上高145ミリと前モデルよりも低めになりましたが、雪道にはちょっと不利になったような気がしますがいかがでしょうか。
また、アイドリングストップを多用するとバッテリーの負荷が増えるような気がしますが、考えすぎでしょうね。
しかし、AWDとパワーに対する信仰の厚さに自分自身でも驚いていますが、年令と伴に転向は案外と容易になりつつあります(笑)。

馬の背中は温かいのでしょうねえ。おもわずほおずりしたくなります。
Commented by b-faction at 2012-01-31 20:16 x
buruwan さん、こんばんは。最低地上高を実は全く意識してませんでした。というのは、富士重工には独自の規定があると聞いたことがあります。テストコースの「ある場所」を接触することなく通過できないと不合格らしいのです。そういう意味で、スバルには数値ではない信頼感を持っているため、全く気にも留めませんでした。事実、特に困ったこともこの一ヶ月間で一切ありません。アイドルストップについては、本来ならアウトバックの3.6RやWRXでやるべき事なのに、その辺りは甘いくらいです。tSでは手動アイドルストップを常に心がけていました。信号待ちなどでボタン押すだけですから。スバリストならアイドリング中の無駄なガスを少しでも節約し、元気な走りに大いに活用すべきでしょう。だから、ターボタイマーをいまだに使っている人を見ると、思わず注意してしまいます。
今日は最後のTT1型サンバーを納車しました。2WDの素晴らしさに感動で涙が出そうになりました(笑)何事も使い分けだと思います。

馬の背中は素晴らしいですよ。開田高原をご案内しますからぜひ遊びにいらっしゃってはいかがでしょうか。
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by b-faction | 2012-01-27 19:17 | Trackback | Comments(10)

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