BRZとSTIの今後を考察
2012年 03月 30日
ストリップドアウトなチョコレートケーキ。
余分な飾りつけなど一切無くて、
チョコの美味さを前面に押し出した。
家族のために材料が吟味され、
時間を惜しまない手作りのケーキが、
美味くないはずは無い。
BRZ誕生(妻も含め)を祝ってケーキを作ってくれたのだと、
勝手に解釈している。
引き続き、WRブルーの「R」も届いた。
初めて見る「R」だが、WRブルーはやはり良く似合い展示場が華やかになる。
こうして並ぶと、「みせづくり」にますます励みが出る。
これでブラックのSが届けば、品揃えは完璧だ。
全てのグレードと人気カラーをお客様にご覧いただくことが出来る。
発表展示会はさくら祭りと併催する。
間も無くかわら版愛読者の皆さんに招待状が届くはずだ。
試乗と桜餅はかわら版愛読者に限らせていただくのでご容赦いただきたい。
待ちに待った発売日の3月28日、
新型ライトウエイトスポーツを東京まで往復する事で徹底的に確かめた。
様々なシチュエーションでクルマをテイスティングし個性や身体能力を発露させてみた。
雑然とした東京駅は現在復元中。
どんどん新しくなり続けるステキな丸の内にまずクルマを停めた。
片道300km強をサッと走らせて感じた。
BRZの味は、
ここ丸の内でリリースされる、
ショコリキサーのようだ。
一杯560円もするが
これをチュウチュウ吸いながら、ウインドウショッピングする楽しさまで含めて例えると、
BRZの味に最も近い。
選ぶならミルクチョコレート味だ。
コクのあるチョコレートドリンクで、
ホイップクリームが山ほど載っているのに少しもくどくない。
太目のストローで吸い込む毎に、
甘いチョコレートの削り節が、
奥歯の間から舌の奥にかけて、
流れるような甘さを作り出してゆく。
その何とも言えない歯触りと、
軽快な甘さが、BRZを操る味わいに通じる。
ここに来た理由は
ゴディバのチョコリキサーと味の共通性を再検証したかった。
それともう一つ。
乗れば乗るほど、STIのブランドは、BRZに似つかわしくないと感じるからだ。
そのことは最後に述べるとしよう。
すれ違う車から熱いまなざしを受けたり、
わざわざ追いかけて来て、
信号で並んで見つめるスバルオーナーも居た。
そして極めつけは信号で並んだときに、
左手でグッとOKマークを突き出してきたRX-8のオーナーだろう。
フェイスブックの「いいね」が耳の奥に響き渡った。
世の中にクルマ好きがまだまだ沢山居る。
多くの視線を投げかけられるだけでなく、
ちょっと駐車して置くだけでこの有様だ。
都心で目的を果たし普通の道を走りながら、
ごく自然なシチュエーションにクルマを佇ませた。
改めて素晴らしくスタイリッシュなスポーツカーであることが実感できる。
特に後ろ向きに駐車して、少しはなれたところからクルマに近寄ると解る。
古臭い言葉で申し訳ないが
「小股の切れ上がったオンナ」と言う表現がぴったりだ。
リヤバンパーの下からマフラー辺りの
全体的な匂いが素晴らしく良い。
スーパーマーケットの駐車場に停めてみた。
リアルワールドに出して
初めて気が付く美しさがある。
これを見つけることが、また面白いんだ。
このような駐車場には
思いがけない段差などがあるので、
室内の空間ばかりで見てきたこれまでの印象と異なる。
光も刻々と変化するから美しさが際立つ。
このシーンでハッとするほどの存在感があった。
冒頭の「ストリップドアウト」という名称は
欧州に輸出するBRZのベースグレードらしい。
日本ではストリップに対して猥褻なイメージがあるから、
絶対に使わないだろうが、なかなか良いと思う。
伝統の名称「RA」の欧州版は洒落ている。
ところで、ベースグレードのRAは決して安っぽくない。
若い人達なら、「ストリップドアウト」を購入し、
まず走ることから始めたらどうか。
東京までの往路におけるクルマの印象はとても良かった。
操舵感の良さは特筆モノだ。
加速感も高い速度からの制動力に関しても文句の言いようが無い。
慣らし運転で抑えているせいもあるだろうが、
極めてスムーズで軽快だ。
クラッチ操作も全くストレスなく出来るし、
シフトフィーリングも淡白だが悪くない。
ドライビングスタイルを変えた効果も絶大で、
このクルマの軽い特性に良くマッチして、
流れるような運転が楽しくて仕方が無い。
丁寧なクラッチミートを心がけているから、
渋滞路で発進するのが楽しみになるぐらいだ。
欲を言えばアイドリングストップが欲しい。
都内の一般路を十分過ぎるほど走り回り
帰路に着いた。
燃料を補給してそこまでの燃費を調べてみた。
400km弱のトータル燃費は
11.2km/lと出たが、
状況から考えて素晴らしい数値だと言える。
時速100kmでエンジンは2400rpmを示す。
6速のギヤはかなりハイギヤードだと思う。
この設定に問題は無いが、小気味良く走るなら5速ホールドで、
頻繁に4速を使うほうが楽しいと思う。
必要に応じて
1速飛ばして6→4速とシフトダウンする時もあったが、
出来れば飛び変速はあまりやらないほうがよいだろう。
特筆すべきことは、
回転アップの触感が気持ちよすぎるほど良いことだ。
Sシリーズのバランスを取ったエンジンのように
極めて軽くアクセルペタルに触れるだけで、
欲しい回転が得られる。
そして3つのペダルの配置も良い。
それらの相乗効果で「つま先」と「踵」とはっきり分けるような
角度を取らなくても、
アクセルペタルを右足の小指から土踏まずにかけて
2~3センチで軽く押さえつけるような感じで踏むだけで、
ヒール アンド トゥが小気味良く決まる。
こんなスバル車は他に無い。
全く無い。
これまでも無かった。一台たりとも無いのだ!!!!
朝からそんな事ばかり頭に巡らせながら走っていて、
もしこのクルマを一言で印象付けるにはどんな言葉がふさわしいか考えてみた。
そして頭に浮かんだ言葉は「無邪気」だ。
更にシンデレラという童話も頭に浮かんだ。
BRZは無邪気で明るくて可愛いのだ。
シンデレラは継母やその子供たちにいじめられた。
普通ならば性格が良くなるはずが無いのだが、
捏造されたストーリーには、客観的に見ると極めていびつさを覚えることもある。
現実なら、優しい母とその子供たちに逆らう
ひねくれたシンデレラもありえるはずだ。
どういう親からどういう子供が生まれるのかと言うことをあれこれ考えていると、
非常に混乱してきた。
その時、偶然トイレに行きたくなり
釈迦堂PAに車を停めた。
すると面白い施設が目に飛び込んできた。
ここには縄文文化の遺物が展示されているから、
気分転換に12,000年前を探訪したくなった。
以前、娘と国立博物館を訪れたとき、
「土偶なんて何が面白くて見るの」と毒づかれたが、
古い時代の面白いモノを見ることは大好きだ。
だからこういう場所を見つけるとつい足が止まる。
日本人のモノづくりの技は凄いとよく言われるが、
そりゃあそのはずで、
12000年も前から、こんな芸術的なものを作ってたんだから、当たり前だろう。
きっと遺伝子の中に脈々と残っているに違いない。
この土器は中期以降のもので、底が平らになっている。
ところが初期のものは
このように尖っていて、
煮炊きに使われたことはほぼ間違いないという。
左側は実験に使われた模型だ。
しかし、ここでは使われた形跡の無い土器が
山ほど出土しているから、古代の謎は深い。
縄文食のヘルシーなレシピを見ると
思わず涎が出る。
残念だが、
それは既に自分が枯れて来た証かもしれない(涙)
それにしても、この量には圧倒される。
ここには他にも凄い数の土器が保管されているそうだ。
ここは縄文時代の文化の中継点だったのだろうか。
土器の次には、謎の土偶に目を向けてみよう。
土偶や埴輪に人並み以上に興味があるのは、
なぜだろう。
多分、それは口の形に理由がある。
妻の顔を見るたび、思わず納得する事が多いのだが、
ぽかんと開けた口の形に癒し効果があるのは、
ほぼ間違いない!
とてつもない数の土偶が出土している。
ほとんどが割られて、ばらばらにされ、
ムラのあちこちに分かれて埋められていたという事だ。
太古のロマンを感じる。
何かその当時のしきたりに沿って、無病息災や豊穣を祈ったのだろうか。
この何とも飾り気の無い説明文に、
縄文らしさが漂っている。
何を考えて当時の暮らしの中でこのようなものを作ったのだろうか。
興味は尽きない。
こんな証拠も出てきたので
当時の様子を3体の人形で再現していた。
見たとたん、モヤモヤが吹っ飛んだ。
父や母に子供の頃から教わり、
子供の頃から無邪気に粘土に親しんだのだろう。
この粘土にさえ「無邪気さ」を覚える。
素朴であり、かつ高度な芸術性を持つ縄文人の暮らしを見ながら、
良く働く父(トヨタ)と丈夫な子を産む母(スバル)から、生まれた素直で良い子(BRZ)の姿が重なり合った。
全く新しい血統の誕生を心から嬉しく思った。
さて、高速道路を途中で降りて、
懐かしい道に向かった。
まだ中央自動車道が伊北インターチェンジまでしか出来ていなかった学生の頃、
半年に一度は往来した場所だ。
まだ雪の残る峠を抜けたら、
最高のシチュエーションが現れる。
当時はまだ大学生で、仕事を手伝いながら、
中津川と東京を行き来していた。
冬は峠越えに苦労して、
後輪駆動のサニーでスピンしたり・・・(笑)
ここはBRZのためにあるような素晴らしいワインディングロードだ。
最新のFA20型水平対向エンジンは、
これまでのEJやFBとはかなり異なる、
直噴エンジン特有のサウンドを持つ。
何となくサクサク感があり、
これはこれで面白い。
サウンドクリエーターの有無でどう音質が変わるのかも興味深い。
通常のエンジンに比べ倍の数のインジェクターを持つので、
その作動音も聞こえるのかもしれないが、
EJやFBともかなり異なるエンジンサウンドだ。
再び中央自動車道に乗り無事帰還した。
良くがんばった「お下がり」のBBS。
つくづく思うが、やはり良いモノは違う。
何年も経過したホイールなのに、表面の劣化は極少ない。
軽い鍛造ホイールなので脚の動きに良い影響を与えるだろう。
スチールホイールの状態であまり走行していない。
だから交換後の効果はよくわからない。
ブレーキもタイヤサイズに不満はなく、
とてもバランスが良い。
重くなる要素を、とにかく可能な限り減らすことが、
このクルマを楽しむコツだろう。
大きなキャリパーもローターもいらない。
ブレンボを装着する必要を全く感じない。
重くなるだけでメリットは無いと思う。
17インチもそれほど欲しいとは感じなかった。
もちろん、良いタイヤに交換すれば運動能力は更に高まるだろう。
ローダウンしたら、神経ばかり使うクルマになるに違いない。
正直に書くと、ベースグレードばかり売れてFHI困るかもしれないが、
RAでも十分な性能を持つので大きな不満は無い。
15インチのブレーキローターでも、
踏力に対して非常に柔軟で良く効く。
サスペンションは適度に硬くて気分爽快に走れる。
VDCは余程のことをやらない限り作動しない。
作動すると独特のこれまでに聴いたことの無い音を発生させる。
峠で一度だけスポーツモードにして走らせた。
軽くVDCが介入する。
安全で良い設定だと思った。
今日の走行距離、
燃費は何と
さて、総括しよう。
このように無邪気なクルマは、まだしばらくの間、母親によってしっかり育てられるべきだ。
ちゃんとした躾も出来ていないのに、
いきなり背伸びさせるのは良くないと思う。
朱に交われば赤くなる。
親が丁寧に育てずに放任すると非行に走るだけだ。
じっくりと「知的」でホンモノのセンスを纏えるよう温かく育てて生きたい。
乗ってみて、良く分った。
昨年の11月に、BRZを戦うクルマとしてエントリーする事に懸念を抱いたことを。
やはり手順を良く考えなければいけないだろう。
レースに出ることは、決まったことだからかまわない。
やる以上は必ず優勝して欲しい。
出番はその後嵐のように押し寄せてくるだろう。
だから、
STIのやるべき事は、ライトウエイトスポーツカーに触ることではなく、
プレミアムスーパーを極めることだ。
すっかり成熟して、
中には熟女の領域に入り込み、
妖しい魅力を放つものを調教し続けて欲しい。
S206の誕生に際し、FHIも含めた彼らの多くが、
「プレミアムスーパースポーツカーとは何か」
と言うことを、まだ余り理解していないように感じた。
だから、そちらに情熱を注いで欲しい。
優先順位を間違えてはいけない。
軽いクルマに迂闊に手を出すのではなく、
重いクルマを重く感じさせない戦略を推し進めて欲しい。
そして、価値観を更に高いレベルに持ち上げて欲しい。
遂にSシリーズも1.5トンを切ることができない時代になった。
しかし、今のところそのデメリットは感じないので、
ポルシェやMに対向できるクルマづくりを目指して欲しい。
だからこそはっきり言おう。
BRZには触って欲しくない。
部品の開発はかまわないが、
STIバージョンやコンプリートカーの開発など不要だ。
逆に母親であるFHIに、この子がライトウエイトスポーツの道から外れて
非行に走らないようしっかりしろと言いたい。
くれぐれも安易にSTIを用いたりせず、
ライバルに負けないように、
中島飛行機の時代から脈々と続く遺伝子をもう一度奮い立たせてほしい。
それは徹底的に軽さを求道し続けることだろう。
STIに任せる事は「M」を凌駕するための道作りだ。
搭載するエンジンも全く変更して
22Bの再来を感じさせるモノ以外任せてはいけない。
その目標価格は1千万円だ。
ただし、
BRZの面倒を見て欲しいと思う家庭教師はすぐにでも必要だ。
決してロッテンマイヤーさん(ハイジのね)のような堅い女史では無い。
BRZのシートベルトの固定方法は良いと思うが
素材も含めて味の出し方は、センスに乏しい。
インテリアのディティールやスイッチの感触も、
スバルでもトヨタでもない宙ぶらりんな印象なので、
これから育てる楽しみは山ほどある。
BBSのホイールのように、
良いモノを極めると、いつまでも燻し銀の光を放つ。
長く使えるからこそ、味も出てくる。
BEAMSという折角素晴らしい仲間との連携が続いている。
ブランドも使い分けする時代だ。
洒落たBRZを似合うように着るセンスを、
彼らを巻き込み早く磨こう。
アウトバックも立派に500台を売り切った。
BEAMSの旗艦店に、堂々とSUBARUの文字が並び続ける日が来ることを、
期待している。