最果ての地をレガシィツーリングワゴン 2.0GT DITで彷徨う
2012年 05月 20日
その一人が自分であることを否定しない。
わざわざクルマで北海道まで行くなんて・・・
と思う人もあれば、
それ凄く羨ましい、絶対自分もやってみたい!
と思う人もあるだろう。
他にも中津川に変わった人がいて、
市内のど真ん中の河原でトンビを餌付けしている。
早朝から舞い降りるトンビに向かって全力でパンを投げている人を見て驚愕した。
法律で禁じられているわけではないが、
こんなことをしていいのだろうかと、ふと思った。
しかし、
振り返ると、多かれ少なかれ誰しも似たようなことをする。
直接、誰かを傷つけたり権利を侵しているわけではない。
度が過ぎているか、いないかという事が判断の分かれ目になるところだろうが、
行き過ぎれば法律で禁止したり、
制限をしたりする。
国家間の条約ができる場合だってある。
これが法治国家という枠組みだろう。
ああ、クジラが食べたいな。
小学生の時に給食で味わった懐かしい食べ物だ。
申し訳ないけど、シーシェパードという組織に金を出している人間には、
到底同意できないし、価値観も全く違うと断言しておく。
八戸のフェリーターミナルで現地調査をした所、
蕪島という場所はすぐ近くにあるらしい。
受付のお姉さんに「蕪島というところはどこですか」と尋ねると、
「ああ、この道をまっすぐ行ってください、すぐわかると思います」
と、あっさりのたまう。
紹介してくれた人も「行けばわかります!」と思わせぶりなので期待に胸が膨らんだ。
しかし、そのような場所を案内する看板も無ければ、受付の女性も、
あそこは素敵ですよ、というような雰囲気を全く匂わさないのだ。
あまり先入観でものを見たくないので、知らないなら知らないで良いと思った。
したがって何も調べずに八戸まで来た。
「さあ、蕪島へ行ったら、次に温泉に行こう」、というと、
「そうだねー」と皆嬉しそうに微笑む。
そのあとは居酒屋で一杯飲むのはお決まりのコースだからだ。
そんな感じで、よそ事考えながら運転していら、
道に迷ってしまった。
まっすぐ行けと言われて、その通りに来たつもりだが、
来たのは波止場にある廃墟のような場所だ。
良く見たら冷蔵倉庫のようだが、ガラスは割れているし、
あちこち錆びていて人の気配も全くない。
ここではっと気が付いた。津波の被害にあった倉庫なのではないかということだ。
テレビでさんざん放映された場所よりはるかに離れているが、
東北の太平洋岸は甚大な被害をこうむっていた。
振り返ると太陽が沈みつつある。
哀愁を感じながら良く見ると、太陽を背にして何やら鳥が渋い姿で佇んでいるではないか。
近寄っても逃げようともせず、
なんとなく図太く感じ、
さっそく得意のバードコールを取出し会話を試みるが、
どうも、このような繊細な鳴き声の種族ではないらしい。
全く反応の鈍い図太い鳥に愛想をつかし、
ふと北の方を眺めると、何か異様な風景が目に飛び込んできた。
煙が舞い上がるように、鳥が羽ばたきながら舞っている。
胡麻塩を振ったような山肌の白い点は先程の鳥の様だ。
あれか!行けばわかるといわれた通りだ。
遠くからでも、
めったに見られない面白そうな場所だという事が良く解るじゃないか。
さっそくクルマに戻り、波止場を迂回して数百メートル先のその場所に向かった。
まだ日もあるのに誰もいない。
駐車場にいるのは鳥・とり・トリ・・・・・・図太そうな鳥だらけだ。
以前、山形に行ったとき水族館の敷地内でウミネコの餌付けをしているところを見たことがある。
空中に餌を投げると上手に受け取る。
その時はかわいいやつらだなあと思った。
基本的に野生動物を悪戯に餌付けするものではないと思っている。
昔からそういう光景を見慣れているので、
ちょっとぐらいという気持ちがあることは否めない。
高校生の時に初めて北海道を一人旅した時、
キタキツネをチョコレートで誘い出だして食べさせることが流行っていた。
冒頭で述べたように、中津川では
異様な鳥の群れというものがカラスも含めあちこちにある。
だから鳥の群れには親しみこそあれ、決して嫌いではない。
しかし、どう見てもこいつらは人を舐めているようにしか思えない。
公園の鳩はあまり好きではないが、あれ以上に図太い。
同じような格好をして、じっとこちらを眺めているので、
さすがにためらいながら外に出ると、
流石にムッと来た。
大事な新車の上に断わりもなく乗りやがる。
とんでもない看板を見つけた。
図太いはずだ、爆弾を抱えているらしい。
迎撃態勢は十分整っているぞと、
第一飛行部隊が毅然と整列している様は、
なんとなく臨戦態勢に思える。
階段を上ると、
何とも異様な臭いがあたりに立ち込めている。
そりゃ、当たり前だわな。
鼻先の階段にこってりとフンがこびりついているのだから。
奴らは上質な海産物しか食わないようで、
中津川あたりの鳥の匂いではなく、
あたり一面に釣り餌をぶちまけたような独特の空間が出来上がっている。
繁殖期の真っ盛りなので、至る所で卵を抱いているが、
それぞれの陣取っている場所や、雄が待機している場所に、
ある種のヒエラルキーを感じる。
ちょっと卵を見せてみろ、と念じたら、
腰を上げて見せてくれた。
あまりたくさん産むわけでは無いらしい。
こいつは素直な方だが、大奥の鳥は極めて威厳がある。
箱入り娘は箱の中で産卵するらしいが、
こいつらに対して同じように念じて近づいたら、大きな口を開けて威嚇しやがった。
くちばしの先端の朱色と、、
何とも言えない黄色い口の中、それにたちの悪い目つきは、
どう見てもブスだ。
その時、奇妙な気配を感じるので、
振り返ると、こいつらがヒトの目の前で、何といたし始めた。
こちとら、娘を連れているんだぞ!
なんて奴らだ!!と、近寄った瞬間、
あろうことか下にいるメスが「あはーん」と鳴きやがった。
あまりにふざけた奴らばかりだ。
そういえば、子供のころ動物園か遊園地のサル山に連れて行ってもらった時、
いきなりオスザルが後ろからメスを抱きかかえ「いたし始めて」ぶっ飛んだことがあった。
ここはまさしくサル山ならぬトリ山なのだ。
神社にお参りしてカランカランと鈴を鳴らしても、
なんとなく落着けないし、
妻も娘も逃げ腰に近くなっている。
じゃあ帰ろうか、と階段を下り、
爆弾防止の傘を返すと、
ちょっと油断した二人は、鳥を追っかけたりして悪ふざけをした。
ところが奴らはほとんど動じないのである。
バカな事をして虚しくなったのか、
妻はおもむろにレガシィのリヤゲートを開けた。
レガシィツーリングワゴンの最も絵になる光景だと思わないか。
妻が取り出したのは近所のピエニュで買ってきたパンだった。
「昨日買ったんだけど残ったんで食べようと思って持ってきたのよ。
ちょっとやばいかな、ヘヘヘ」と袋から取り出した。
「おう、美味そうじゃないか、贅沢品だから鳥にはもったいないな」
などと呑気なことを言ってそのパンを受け取り、
封を切って、良い匂いがあたりに広がったとたん、
奴らの目の色が変わったのを見逃さなかった。
ただでさえ目つきが悪いのに、一斉に見られるとさすがにギョッとする。
ほらー、とちぎって空中に投げたら、
遠慮がちに取りに来るかと思ったら甘かった。
次の瞬間、耳元でバサバサバサと羽音がして、
しかもいくつかの羽が耳や頭に当たった。
この瞬間だ。遠い記憶の中にあったヒッチコックの名作「鳥」のワンシーンが強烈によみがえった。
妻と娘は、鳥の様子を素早く察知して、一足先にレガシィの中に避難し、
一部始終を見て大笑いしていたらしいが、
こっちはそれどころではなく、パンを放り投げて一目散に逃げた。
その時確信した。
ヒッチコックは絶対同じような目にあって、「鳥」という作品を作ることを思いついたのだと。
体中から何となく魚のえさのような臭いがする気がして気持ちが悪い。
しかし近くに水道も無い。そこでウエットティッシュで手を拭き、
レガシィで退散したのだった。
さて、その後が傑作だった。
娘に「さあ、いよいよこれから居酒屋でも行こうか、あとの運転は頼むぞ」
と告げた途端、
妻が半泣きの顔で「敏洋さん、温泉には行かないのっっっ!」と悲壮な声を上げたのだ。
「わりいわりい、行くよ」となだめ、暫くドライブすると、
ほぼ理想通りの温泉が目の前に現れた。
他にも大きな看板で案内されている温泉があったが、
クルマで旅する醍醐味はまさしくここにある。
自分で探す楽しみと偶然の出会いのコラボレーションだ。
こういう、地元の人たちの日常生活に溶け込んだ銭湯が、
かけ流しの温泉ならもう言う事は何もない。
中津川に近い下呂温泉という天下の名湯にもそういう場所がある。
だから、温泉には一言があるわけだ。
にらんだ通り素晴らしい温泉だった。
サウナに入って地元の人たちの会話を聞くのがとても楽しい。
なぜかって、98%理解できないからだ(笑)
頃合を見計らって、中津川から八戸に着いたばかりだという事を皆さんに話し、
会話が全く分からないので教えてほしいというと、
皆さん大笑いされ「大した事を話してないから聞き流せばええよ」とおっしゃった。
こういう、さり気無い触れ合いが旅の一番の土産だと常々感じている。
そこで近くにある居酒屋は御奨めかと尋ねると、
「そうだ」という事なので、
風呂上がりの渇いた喉を癒すために、突撃した。
娘は酒を飲まないので誠にありがたいが、実は相当強いことは事実だろう。
いざという時にハンドルキーパーを任せられるので長旅には都合がよい。
この店は回転ずしのようにタッチパネルで注文できる。
おなじみのメニューもあり選びやすい。
まっ昼間から営業しているようだ。
美味しいものは売り切れがこの時間から発生している。
アブラボーズというものが食せなかったのは残念だが、
その代わりにアブラメを頂いた。
喉の渇きにビールが待ちきれない。
旨そうな刺身が登場した。
正直なところこれが何だかよくわからないまま、
一気に完食。
その後も一気にカロリーを補給し、
お店の人も笑っていた。
いよいよ、フェリーに乗る時間が近くなり、
余裕をもって埠頭に移動する。
僅か数分で到着すると
先ほどとは打って変わり、乗船を待つ車の列ができていた。
驚いたことに北海道に向かって運ばれる牛が沢山いるのだ。
まさにドナドナの世界だ。
人懐こい牛の顔を見たら
最果ての哀愁がこみ上げてきた。
ここで娘にレガシィをまかせ、我々二人は徒歩で乗船する。
受け取ったチケットを
フロントで提示して
二等船室の奥にある一等船室への通路を進む。
これから快適な海の旅が始まるのだ。
窓から外を見ると、
先ほどまで居た、乗船待ちの車が良くわかる。
後で聞いたら、このころは意外にも孤独感にさいなまれたのだそうだ。
そんな事は露知らず、呑兵衛の妻と誘いあい、
船内の食堂へまっしぐらだ。
二人ともまだ呑む気はバンバンで、
ビールとつまみをオーダー。
暫くすると娘が使命を無事終え合流した。
が、
その時はすでに酩酊しており、証拠写真を撮られてしまった。
海の旅は極めて快適で、
北海道の旅の期待はさらに高まる。
しかし、それだけでは終わらない。
用心深いところは誰に似たのか、
まさかの時の逃げる手段の確認も怠らないのであった。
6時に苫小牧に着いた。
乗船した時と反対側のハッチが開くので、
あっけないほど簡単に下船できてしまう。
早朝の苫小牧は人影も少なく、
さっそく高速道路に乗ることにした。
クルマでの旅はやはり楽しくて余裕がある。
下船の時は時間に余裕がなかった。
だがすっかりマイペースで札幌に向かう。
そしてサービスエリアで朝の身支度を整え直し、余裕を活かして急遽積丹半島に向かう事にした。
高速道路で行けば、小樽まで僅かな時間だ。
小樽で坂本竜馬の作った会社の支店を見た。
なかなか風情がありレガシィと良く似合う。
海岸をドライブして、こんな看板を見ると
最果ての地であることをさらに強く認識した。
せっかく楽しい場所を見つけたのだが、残念ながら休館日だった。
ラッセル車を近くで見たかったが、次の楽しみとして残しておこう。
その時はこのレストランで食事をしたい。
こういうモノに妻も娘も興味がないらしくレガシィから降りようともしない。
今は喰う場所よりも、現物至上主義なのだろう。
ああ、ひもじいのか、と気が付いて、
小樽の名物を味わわせることにした。
ご機嫌である。
三人それぞれの丼をオーダーし、
交換して味わいながら楽しい時間を過ごした。
あら汁もおいしかった。
My丼は「おまかせ丼」で、
観光地のど真ん中の店だが味も値段も納得できる、
良い店だった。
朝昼兼用の豪華な丼でお腹も満たされて大満足。
午後2時から札幌で式典がある。
オフィシャルな場なのでスーツに着替えなければならない。
午前中に札幌のホテルにクルマを滑り込ませ、
お色直しをすることにした。
続く・・・・・・・
僕もこんな旅がしたいです!(万年独り旅なので…w)
かなり早い時間から飲んでおられたとの情報が九州にも届いております(笑)
私の方、中学生の娘がいますが10年後にこんな旅が出来るのか・・
関係の修復が必要でしょう。。。
続編も楽しみにしております!
見知らぬ地への車の旅は、何が起こるかわからない・・・・・。
そんなコトは関係なく、なんでも受け入れてしまう?楽しすぎるレポートです ♪
何度読んでも楽しい!
札幌編、待ってます。
娘は弱い所を包丁でグサグサ刺すような情け容赦のない言動をしますね。どこも一緒だと思いますよ。
柔軟なのは僕の取柄かもしれません。ようやく半分できました。
以前にフェリーを使って九州一周をした時を思い出します。
ツーリングワゴンのハッチを開けて荷物を積み込む時の何とも言えない「ワクワク感」が大好きです。私もあの後ろ姿が「ツーリングワゴンと暮らしている!」と実感する時です。
続編楽しみにしています。
ところでNBRチャレンジ2連覇ですね!
おめでとうございます!
八甲田山が悪天候で登れず、何の予備知識もなかったです(為念)。