レガシィB4の新型エンジンをアイサイトの効能とともに確認
2012年 07月 01日

新型の自然吸気エンジンFB25を搭載したB4は、
見た目より内容が遥かに大きく変貌した。
一足先にフォレスターで海外デビューした新世代の2,5リットルエンジンは、
静かでなめらかで燃費も良い。
それをレガシィに搭載するに当たり、
専用のチューニングを施した。
そしてリニアトロニックも新しいタイプに置き換えられた。

このリニアトロニックは既にインプレッサに搭載された、
ショートピッチのチェーンバリエーターを使ったものと同一だ。

この新リニアトロニックの特徴を簡単に言うと
高効率だという事。
動力の伝達効率が非常に高い。
これは1.6リットルのインプレッサですでに実証済みだ。
軽くてコンパクトなのに2.5リットルの水平対向エンジンまでカバーできる余裕もすごい。
ショートピッチのチェーンを使うと
トランスミッションの作動音も非常に静かになる。

新しいレガシィをかなり深い領域まで使い込んで、
とても感心した事がある。
クルマそのものも良くなったが、
スバル伝統のビッグマイナーチェンジを統括された人物の存在だ。
初めて
熊谷泰典PGM(プロジェクトジェネラルマネージャー)にお会いして感じたことは、
彼はクルマをまとめる力が非常に大きいという事だ。
それもその筈で、
レガシィの歴史を紐解くと面白いことが解ってくる。
そもそもビッグマイナーチェンジという呼称そのものが、
スバル独特のものだ。
昭和30年代から40年代の初めにかけて、スバル360を長年造り続ける過程で生まれた言葉に
「チェンジレスチェンジ」というものがある。
外観はほとんど変えないが、
中身は毎年コツコツ徹底的に改善し、
常に最良の商品を顧客に提供する想いを込めた言葉だと理解している。
そうしたDNAが平成の時代に花開いたのが、
ビッグマイナーチェンジというスバル独自の概念だろう。
一言でいえば、
「他社ならフルモデルチェンジ並みの徹底的な改善を、
外観をほとんど変えずに成し遂げる」という事だ。
初めてこれが明確に姿を現したのは、
1996年の初夏。
2代目レガシィにGT-Bというスーパースターが誕生した時だ。
スバルは、常にこのようなコンセプトで、
全てのスバル車の改善を続けている。
ところで、熊谷PGMは興味深い経歴をお持ちだ。
彼は平成13年に3代目「新世紀レガシィ」が「スリーキーズ レガシィ」として、
ビッグマイナーチェンジした時に車体設計を担当されたはずだ。
この時の大きな年度改良は21世紀初のビッグマイナーチェンジとして歴史に残るものだった。
発表当時を振り返ると、BH型GT-Bの走行性能の劇的な変化に脱帽した覚えがある。

偶然にもこの時のエンジン設計の取りまとめ役が
現HEV開発部長の大雲浩哉さんだった。
実は、今回のビッグマイナーチェンジも、
当時とほとんど同じ「韻」を踏んで進められている。
レガシィには「レガシィを極める」という掟がある。
この時にチャレンジされた数々の事が、長い時間をかけて世代を超え、
良い形で定着することは嬉しい限りだ。
こうした開発における確立したコンセプトの継承が、
ほぼ10年たってもぶれないクルマ作りを続けられる秘訣だろう。
この時、熊谷さんが目指したのは
「走りの楽しさ」を更に磨き上げることだったと思う。
そのためにフロントとリヤのサスペンション剛性を大幅に向上させ、
ステアリングシステムも全面的に改善したはずだ。
クロスメンバーのロワアーム締結部に手を入れて剛性を高めたり、
当時まだ耳馴れなかったクロスパフォーマンスロッドを追加するなど、
まさに玄人好みの改善を徹底的に施した。

今回発売されたばかりの新型レガシィB4でも、
もともと高い静粛性と質感を持って誕生したレガシィ専用シャシーを
徹底的にブラッシュアップしている。
そのポイントの一つに局部的な支持剛性の向上がある。
これは表現が難しく、
言う事は簡単だが説明してもピンとこない人が多いだろう。
クレードルとフロントフレームの
取付け部に特に念入りな改善が図られている。
リヤサスに
サポートサブフレームリヤが追加されたことも注目点だ。
が、あまりにも改善したことが多くあるので、
消化不良になるといけない。
なので、販売の中心的な役割を果たすであろう、2.5i Eyeshigt
をロングランテストに連れ出して、
自分なりに感じた印象を述べよう。
ここに二つのコップがある。

右側がこれまでのレガシィの器で左が新しいレガシィの器だと考えてほしい。
右のコップを水で満たした状態がこれまでのレガシィだと思って欲しい。
二つのコップは素材もデザインもほぼ同じだが容量が異なる。

右のコップは7~8分目ほど水で満たされている。
新しく生まれ変わったレガシィは
コップが大きいだけでなく、

ほぼ一杯まで水で満たされた。
これが熊谷流の極意だと見切った。
最新のNAエンジンとアイサイトを組み合わせ、
フロント周りもブラッシュアップされたレガシィは、
このような日本らしい風景に良く似合う。

ところで直噴ターボのレガシィB4にも触れておきたい。
このクルマは先代のBL5型レガシィで初めて設定され、
物議を醸したspecBを彷彿させる。
specBは意図的に硬い脚を持っていた。
まるでインプレッサWRXのような特性の脚を持ち、
普通のレガシィとは全く違うトンガリバージョンだった。

DITはその立ち位置に良く似ているので、specBの再来と感じた。
北海道旅行の相棒にしたワゴンのDITとは相当異なるキャラクターだ。
過去の失敗は「B」の持つ意味を理解することなく最高グレードとして拡販した事から生じていた。
GTの上にあるグレードだと誤解した事で摩擦が生じた。
硬い脚だからドライバビリティは良くても
パッセンジャーには厳しい。

今回はその失敗をから学んだことを反映し、
DITと名付けられた最もスポーティーなグレードは、
これまでになかったほど極めてバランスが取れた良い味に仕上がった。

ステアリングに対して非常にシャープに応答するが、
乗り心地も良いし、
どっしりと品質の高さも感じる足回りだ。
さて、熊谷さんに話を戻すと、興味深い縁を感じる。
レガシィB4に初めて4気筒の2.5リットルエンジンが搭載されたのは、
3代目レガシィのビッグマイナーチェンジの際だった。
このクルマの開発目的は、ずばり「RSK」のNAバージョンである。
スポーツセダンの新たな提案として、
6気筒より軽いリニアな特性の4気筒エンジンを搭載し、
ベストハンドリングのクルマを造り上げた。
クルマの評価と販売実績が結びつかなかったのは悲劇だったが、
これもまたADAがアイサイトとして実を結んだように、
最新のレガシィでは遂に中心的な車種となって開花した。
その咲いたばかりの花「NAエンジンのFB25を搭載したレガシィ」を、
アイサイトとともに実感してみよう。

木曽路の風景にすっかり融和したレガシィを、
宿場町から引き離し、

峠道に誘い出す。
やっぱりレガシィB4は凄い。
滑るように走る。
そして室内空間の快適さという点で、
スバルの作る車の中で最高と言える。

十分体になじませたら、
一気にワープ(死語)

新しくなったアイサイトは、
見栄えこそ変わらないが中身には大幅な改良が盛り込まれた。
バージョン2から2.8くらいの成長を遂げたと聞いている。
700キロに及ぶロングテストを敢行して、
このところ常に付きまとう強烈な嵐にも遭遇したし、
高速道路の伸びのある走りや、一般路での扱いやすさも満喫できた。
ここは八王子バリアだ。

どうも様子がおかしい。

この様に警察車両があふれかえっているのは、
この辺りの風物詩だけれど、

ちょっとおかしいのは、
自分の前も

対向車線も、道の上にかかる橋の上にも全て警官がいる。
いよいよ変だと感じたのは、
この瞬間だ。

対向車線に全く車が居なくなった。
そして1台のパトカーが赤色灯を回転させながら走ってくると、
その後ろに隊列が見える。

カメラを持ちドアガラスを開けすれ違う瞬間を狙った。
白バイに率いられた隊列は物凄くかっこよかった。
更に驚いたことに
護衛車両は全て新型レガシィB4だった。

白バイの後ろに、B4 センチュリー B4 センチュリー B4と続き、
2台目のセンチュリーの左右を白バイがばっちりガードしていた。

最後尾のB4が過ぎ去ると

はるか後方に、
一般車両を抑制するためのパトカー2台が続いて、
この非常時体制は解除となったが、
こんな光景は、
数年前に上野駅で天皇陛下に初めて直接お目にかかって以来の出来事だった。
しかし改めて実感した。
護衛する真っ黒なレガシィB4には凄味があった。
スタイルや雰囲気にも格段の成長を感じた。
そのカッコ良さと言ったら映画のワンシーンの様だった。
結局誰を護衛していたのか、
今日の時点でも全くの謎だが、あの光景は目に焼き付いて離れない。
さて、
新しいレガシィは、見た目の変化が少ない。
目で見て最も大きく変わったのは、コックピットの光景だ。
まずSIドライブの切り替えスイッチをステアリングホイール内の
右側クラスターに持つことになった。

手を離さずに操作できるので
非常に使いやすい。
その上、パーキングブレーキのスイッチも本来ならレバーのある場所に移動した。

それで、インパネの右側もすっきりして、
下面方向に隠れていたスイッチ二つと
アイドルストップ解除スイッチが綺麗に三つ並び見やすくなった。
メーターのデザインは大きく変わらないが、
液晶カラーディスプレイがセットされた。
燃費計がそこに収まったので、水温計が復活した。
アイサイトの全車速追従オートクルーズをセットすると、
計器盤の中央に新設された液晶パネルに、
見慣れた表示が現れる。

さて注目すべきSIドライブの切り替えを良く見てみよう。
レガシィの誇るべき性能の一つは、
エンジンを3通りに切り替えできるという事だ。
そのスイッチを見てほしい。
before

以前はこの場所にオートクルーズのスイッチしかない。
after

それがこのように大きく変わった。
2列3段に並んだスイッチのうち、
上段の左右2個はオートクルーズの設定スイッチだ。
中段の左側は車間距離を3段階に設定するスイッチで右側はキャンセルスイッチだ。
注目すべきは下段の左右で、
左側に赤いアンダーラインがあるS#は最も刺激的な加速をもたらすと同時に、
トランスミッションは8段変速に豹変する、
まさしく「狼スイッチ」だ。
再押しするとベースのインテリジェントモードに戻る。
右側のスイッチはスポーツモードとインテリジェントモードを切り替えるスイッチで、
全体的にスポーティでパンチの効いた走りを楽しみたい時に使うと良い。
どちらのモードも無段変速で効率の良い走りができる。
パドルシフトもいつでも使えて、
必要ならマニュアル操舵も随時可能だ。この場合は6段変速となる。
右側のインパネから、
パーキングブレーキのスイッチが消えた。
before

after

真ん中はVDCの解除スイッチで、右側はヒルホールドスイッチだ。
この2つは下から持ち上がった。
左に新設されたのはアイドリングストップの解除スイッチだ。
この様にとても見やすく切り替えもやり易くなった。
そうこうしているうちに東京駅まで来た。
いよいよ東京ステーションの全貌が明らかになってきた。

こういう文化財を残して良かったとつくづく思う。
全館全面改良してオープンする日が待ち遠しい。
会議で真剣な意見のやり取りをして、

お昼御飯だ。
和風を極めたお弁当は非常にカラダに良い。

包みをほどき

ふたを開けるともうそれだけで、

美味しそうな予感が漂う。
この頃どこに行っても、
眠くなる弁当が多い。
だから、
大事な会議の時には昼を抜くことがある。
しかし、この弁当なら全く心配はない。
日本人に合う食べ物は健康の秘訣だ。

2段目を見ただけで涎が出そうになる。

こういう自然な食べモノを摂取すると、
カラダが活性化して感覚が鋭くなる。
この弁当を食べたら、
まさに新しいレガシィと感覚がぴったり重なった。
クルマも同じで、カラダに合うと、
いくら乗っても疲れない。
会議が佳境に入ると外の雲行きが怪しくなった。
季節外れの台風の上陸が近づいたからだ。
風雨の強まる東京を後にし、
西へ向かう。
これ以上の暴風雨では流石のアイサイトも機能を停止する。
しかし可能な限り、かなりの雨の中でも前方をしっかり見守ってくれる。
カラー液晶の効能は大きい。

この様に平常時は穏やかな表情だが、
ブレーキが遅れると、まずメーター内に、
「前方注意」表示を出すと同時に「ピピピ」っと警報を発する。

それでも、何の回避操作も取らずに、
前方を走る車に接近を続けるとどうなるか。
これ以上進むと衝突するという限界で、
メーターのカラー液晶が赤く警報表示を出し

緊急ブレーキがガツンとクルマを停止させる。
以前より確実に停止のさせ方が厳しくなった。
これは素晴らしいことである。
新しいB4を悪条件化で走らせることで、
アイサイトの表示能力も停止させるための限界性能の向上もしっかり確認できた。
リアルワールドで体感する事が何よりも大切だと
今回のテストでも大いに実感できた。
2.5リットルの新型エンジンは2000から4000回転におけるトルクの向上が著しい。
出力の方は170馬力から173馬力と目立ったほどではない。
トルク自体も229ニュートンから235ニュートンと控えめだ。
ところが発生させる領域に大きな違いがあるため
燃費の方はとても良い。
以前の計測方法で比較すると解りやすいが、
EJ25の時にはリッターあたり13.2km/lを何とか絞り出していたが、
今では14.4km/lを余裕でマークする。
アイドリングストップを搭載できたのも大きな理由だ。
これは想像以上の快適さと驚くほどの燃費性能を併せ持つことに繋がっている。
減税補助金に対応したのも大きな魅力だ。
今回の延べ走行距離は700キロオーバー。
流石にレガシィだと実感できる出来栄えだった。
最後に改めて付け加えておきたいことは、
アイサイトの緊急時の制動能力向上だ。
人間がとっさに最大の力でブレーキを踏む性能により近づいた。
同様に、オートクルーズにおけるアイサイトとの協調制御で、
完全停止からパーキングブレーキによる制動保持や、
更にスムーズになった追従機能など、身軽で自然に感じる走りに変わった事だ。
これは値段と性能のバランスが極めて良く、
お買い得だ。
自信を持ってお勧めすることができる。

