
NBRのドラトレでコンビを組んだM3と別れを惜しんだ。
二日間にわたるトレーニングで、
全行程600Km以上M3のステアリングを握った。

一日目は2人交代でこの206号車をドライブした。
二日目は単独で使用することが許された。

その時に貸与されたのがこの208号車だ。
乗った瞬間に感じた。
この子はどうも他の個体とは特質が違う。
エンジンは良く回るし、
クルマ全体の追従性が俊敏だった。
なぜか解らないが個性が際立つクルマだった。
クルマは家畜だと良く説くが、
どんな経歴を持つのか、クルマがその様子から語りかけてくることがある。
208号車との相性はとても良く、
全く疲れ知らずで2日目を過ごした。
M3は素晴らしいクルマだ。
まるで高性能4WDのように、卓越した安定性を雨天でも発揮する。
ドシンと地に根を張ったような安定感は、
安全と安心を絶え間なく与える。
高額なクルマ故、
電子装備も満載だ。

セレクタレバーも電子制御で、ポジションを間違えても安心だ。
デュアルクラッチ式の7速シフトは、
オートマチックモードを選択していても、
パドルを操作した瞬間にマニュアルモードに固定される。
セレクターの左側に並んだ3つのスイッチ。
一番下はVDCのカットスイッチだが、
「絶対に切ってはならぬ」と厳命される。
ロバートの言うところの『モダンなクルマ」の定義はまずそこにある。
実際に超高速でノルドシェライフェを走り、
迫り来るコーナーを次々にクリアしていると、
そのモダンさに痺れてしまう。
とても切る気になんかならない。
カットスイッチは、あくまでも
雪道や砂利道などの、エマージェンシー用だ。
真ん中にあるEDCはエレクトロニックダンパーコントロール。
ここではノーマルを使う。
雨が降ったらソフトを選択する。
一番上はオートマチックモード時のスポーツ切替だ。
ユニークなのはセレクトレバーの直下にある楕円形のスイッチ。
これでパドルシフトの感度を調節する。
左に押すと感度が下がる。
右を押すと感度が上がる。

シフトポジションを示す数字の右にバーが並んでいる。
これがインディケーターだ。
3目盛りの中間値にしているが、
インストラクターの推奨値は2目盛りだった。
このように数々の高性能な飛び道具を持つM3は、
NBRを美しく舞うように走る。

このカルーセルに飛び込むと良く解るが、
絶対的な操縦安定性が国産車とは全く違う。
カルーセルの路面を近くで見ると解ると思うが、
こんな場所はリアルワールドにほとんど無い。
4月にGT86でここを走った時、

VSCがいとも簡単に作動した。
初めて中津川でトヨタ86に乗った時にも感じたが、
下りコーナーを高めの速度でクリアしようとすると、
外側の後輪がグリップを失うのか、
少し安易すぎるほどVSCが働いた。
この違いが価格差から来るものだろうか。
そうでは無いだろう。
僅か2%だが、
これが重量配分に対する執念の差だ。
M3は良いクルマだが、
ネガティブな要素もある。
絶対的な重量だ。
高トルクな8気筒エンジンのおかげで、
軽々と走るが、
慣性マスの大きさは隠しようが無い。

燃費を気にする人が乗るクルマでは無いが、
100㎞走行するのにほぼ19㍑必要だ。
欧州式の燃費表示を翻訳すると、
1リッター当たり5.29kmの燃費となる。
そうなると必然的に燃料タンクも大きくなり、
色々な制約に繋がる。
次にどんな展開を見せるのか非常に楽しみだ。
既にMINIブランドを手に入れ、

馬鹿っぱやいFWD車をニュルで開発したBMW。
全く商売が上手い。

同時に走ったミニチームには撮影部隊まで随行し、
プロモーションに励んでいた。
それだけ数も売れるからだろう。
こちらの分野では相当遅れていたBMWだが、
ようやく人並みのメーカーになりつつある。
それに対してスバルはFWDとAWDのパイオニアだ。
その分野で素晴らしい物作りを進めてきた。
そして彼等がFRスポーツカーに本腰を入れたらどうなるのか。
その答えは既に明快だ。
水平対向エンジンを極めると、
FRスポーツカーに行き着く。
ドイツで過ごした1週間、
使用したクルマは全てFRだった。
陽気なキャビンアテンダントと共に

ルフトハンザでセントレアに戻る。

駐車場で静かに待つ「きゅうはち」に跨がり、

久しぶりに道路の左側を走る。
重厚でへばりついた感覚とは違うが、
華麗に道路を舞うように走るBRZはやはり最高の相棒だ。
思う存分スロットルを空けて、
仕事場に復帰した。

どう受け取るかは自由だ。
えっ?
と驚く高燃費。
そして、関東への出張になった。
久しぶりにオートマチックを借りて出かけた。

ほぼNBRを走行したに等しい距離を一気に駆け抜けた。

これも想像に任せるが、
驚愕の燃費だ。

AT車の効率の良さは特筆モノだ。
DSGのようなツインクラッチ式の伝達効率も高いが、
日本に於ける使用環境では低速時のデメリットも大きい。
過去にGT-Rに乗って辟易としたことがある。
BRZの楽しさは山岳路で際立つ。

この場所は以前にも紹介した日本で唯一の隕石クレーターだ。
絶景に佇むBRZ。

この場所に行くと解るが、
丸いクレーターの円周部カラス越下に道がある。
従って、この下は深いクレーターの底になる。

強烈な圧力で木っ端微塵にたたきつぶされた痕跡だ。
この辺りはこの様な地質で溢れている。
直径45メートルの隕石が落下した頃、

世界中で同じような事が起きたのだろうか。
温暖な気候が急に冷え込むなど、
余程の天変地異があったに違いない。
氷河期の太古に心を馳せ、
深い谷を駆け下りた。

旅人の喉を潤わせる場所を見つけた。
管理人には申し訳ないが、
命をかけて飲む水。
生水を呑むことを人々は忘れたが、
時には呑むことが強さを生む。
大丈夫だと書かれていても、
それを保証するものは何も無い。
でも、呑む。
日本ならではの豪快な楽しみだ。
海外では絶対にやらない。

そして湯に浸かり疲れを癒す。

わずか300円で最高の天然温泉に出会えた。

ドイツの温泉も素晴らしいが、
日本の温泉も最高だ。
こういう場所に日本の誇る最高のスポーツカーで出かける感動を、
是非一緒に味わわないか。
続く・・・・