季節はあっという間に巡る。
厳しかった冬も終わりを告げた。
3ヶ月があまりに早かった。
2月21日の朝、
窓から見た笠置山は穏やかだった。

ただし、
春の陽がもたらす空気の色は、
秋と色と全く異なる。
それはまるで世界経済のようだ。
リーマンショックの前から、
まるで秋から冬に向かうように景気は動揺した。
長かった冬の時代が終わり、
春の蠢きを感じる。
雄大な風景の陰には、
雪の爪痕が残る。

樫の木が酷い姿で横たわり、
思わぬ被害が隠れていた。
ここは中仙道に面した、
スバル アルシオーネベースの裏だ。
この辺り一帯は、
痩せた赤土で被われている。
特にこの土地は荒れていた。
いつ頃植えられたのか解らないが、
育ちきれない4本の樫の若木があった。
古い民家を望桜荘に改築し、
大工小屋だった場所はSABに生まれ変わった。
その時に、枯れかけた4本の若木を、
数カ所に移植した。
その時、一番元気に成長していた樫は、
あっという間に枯れた。
環境の変化について行けなかった。
良いと思えた場所も、
決して良くは無かったのかもしれない。
スバルにとって軽自動車は、
まさにその姿と重なる。
SABや望桜荘を作ってから、
かれこれ7年になる。
今年の豪雪は重かった。
この樫は酷く頭をもたげながら、
逞しく耐えた。
隣りに並ぶレガシィの姿と重なり合うようだ。
一方、丈夫に見えた樫が思わぬ折れ方をした。
まるで、
「看脚下」と自然がヒトに忠告しているかのように。

押しつぶされ広がったような、
不思議な倒れ方だった。
そこで根元をじっくり観察した。
この木は一昨年くらいから、
突然元気になり、
まるで何かが弾けたように育った。
急激に上と横へ大きく広がり始めた。
そこへ2度の豪雪が襲った。
驚くほど重い雪は、脆い部分を如実に露呈させた。
これを見て、
企業も全く同じだと感じた。
元気なように見えても、
問題の潜む場所が突然折れる。

あるいは腐る。
倒れた部分を切り落としたら、
幹の半分が古傷のために死んでいた。

腐るとは、
まずそのもの自体が劣化し役に立たなくなる事だ。
もう一つ、
周りに悪影響を及ぼす事も意味する。
過去の古傷から、
海綿腐朽菌が進入した。

スカスカになった部分が、
雪の重みに耐えかねて折れ、その重みで引っ張られた。
下から生えた元気な枝まで、一緒に引きちぎられた。
そこで倒れた部分を全て切除し、

薬を塗ってやった。
気候が良くなったら、もう少し手当てしてやりたい。

しぶといから、きっと立ち直るだろう。
心の眼を開くと、自然はいつも親切に教えてくれる。注意深く足元を見て、
将来の姿を見据える「長い目」も必要になる。

折れた樫の木を見て、
ベストカーに掲載された特集記事を考察した。
その記事の中に、
ジャーナリストによるインタビューがあった。
オートサロンの会場で進められたようだ。
これを記事にまとめるのは大変だったに違いない。
STIはまるで逃げの一手だ。
聞かれたことに答えず、
はぐらかしている。
同じ時に、
会場でSTIの社員と話したが、
納得のいく話は聞けなかった。
東京オートサロンで何が納得出来なかったのか。
それはSTIのプロディースしたレヴォーグだ。
STIは誰の目から見ても他のチューナー達より条件が良い。
そういう環境で企画したはずだが、
明らかに見劣りしていた。

そもそも、
STIは同じ場所に並べられ、
同じ目線で比較されるようなブランドじゃ無い。
腹立たしかった。
更に腹立たしいのは、
そういう扱いを平気で甘受することだ。
レヴォーグのコンプリートカーが中途半端な理由は、
ブレーキもホイールもノーマルに毛が生えた程度だから。
STIのプロデュースしたクルマなら、
他の4台に比べ、
極端なほど先行開発的な要素を匂わせなければならない。
ポルシェ博物館で、
この場所に行くと、
タイヤの大径化、太幅化が常に世の趨勢だと解る。

1962年の8気筒水平対向エンジン搭載車。
既に210馬力を発揮した。
タイヤサイズは185/70R15だ。

2年後に、

30馬力アップし、

タイヤサイズは205/70R15になった。
結局、水平対向8気筒では思うようなポテンシャルが発揮できず、
2年後に6気筒ボクサーが登場する。
Porsche906 Carrera6
徹底的にエアロダイナミクスを追求したレージングカ-だった。

タイヤサイズは、
5.50Lー15だ。
今見ればショボイサイズだが、
スバルにとって15インチは、
レガシィ以降に本格採用したサイズだ。
この黎明期を実物を見て振り返ると、
なぜ20インチまで視野に入れないといけないか理解出来るだろう。
10年以上前に発売されたBP/BLレガシィは、
そのツボを押さえていた。
いつの時代にも言える普遍的な事実だ。
今後19In、20Inが当たり前になる。
STIに対して、その弱点を突くと、
必ず「アイサイトを搭載する」という大義名分を引っ張り出す。
これは、出来ない理由にすり替えただけだ。
蹴飛ばす力が無い以上、
負け犬根性と言われても仕方が無い。
そもそも、STIがアイサイトに関わる必要などまるで無い。
レヴォーグはEPBをほぼ標準装着した。
なぜそんなに気前よく奢ったか。
それはアイサイトのACCをより効果的に働かせるためだ。
リヤブレーキが車種によって過剰品質な理由もそこにある。
スバルがアイサイトに拘るのは当たり前だ。
しかしSTIは蹴飛ばせば良い。
1.6リットルのGTなら、アイサイトの無いクルマも選べる。
これは嬉しいことにサイドブレ-キを持つ。
STIはスバルに無理を言って、
こいつを引っ張り出すべきだった。
そして前後のブレーキを、
一番得意とするモノブロックキャリパーに交換し、
19インチのハイスペックタイヤを装着する。
もちろんスプリングやショックはSTIオリジナルを付ける。
アイボリー内装をチョイスし、
胸を張って1.6GTのフラッグシップ化すると面白かった。
すると次に、
ようやくSTIの小物が生きる。
各部にテンションを掛けたり補剛するパーツは、
クルマ全体の能力を高めずに付けても、
肥えた目を持つ物を驚かすまでには至らない。
さて、ベンツに話を移す。
この頃、彼等は実に「スバル臭い」クルマを作る。
名古屋のヤナセは、

ベンツ博物館をいつも訪れるご褒美に、
招待状を送ってくれた。
はっきり言いたい。
レヴォーグの真のライバルは、
VWゴルフよりも、
VOLVO V40よりも、
BMW3シリーズよりも、
Audi A4よりも、
メルセデスのAクラスだ。

スバルまで負け犬根性になってはいけない。
そこにしっかり視点を定め、
セールスマンを育成して欲しい。
「失礼な、何が負け犬だ」と憤慨するようなら、
このステキなクルマをとくとご覧あれ。
サウンドだけでも痺れるほどだが、
中身を見たら「あれっ」と思うだろう。
こちらのA45は、
油圧多板式クラッチを使った4WDトランスファーを心臓部に持つ。

これは、スバルが世界で初めて作ったシステムだ。
メルセデスは横置きFWDのAクラスを、
卓越した性能を誇るスポーツカーにするために、
迷うこと無く4WD化した。
ベース車の性能は同じ直噴でもスバルの方が凄い。
ところがハイチューン版ではメルセデスが、
いとも簡単にそこまで能力を引き上げた。
以前からSTIのリリースする「S」シリーズには、
最低でも「360馬力」が必要だと訴え続けてきた。
メルセデスがそれを実現した以上、
それでは収まらなくなった。
確実に400馬力を目指すべきだ。
昨年の東京モーターショーで、
技術本部の武藤さんにお目に掛かったとき、
お客様から800万円頂けるクルマ造りをお願いした。
「冗談言うなよ」と顔に出たが、
冗談で言った訳ではない。
400馬力出せば買う気になる人々を数多く見てきた。
それがなぜ冗談扱いになるのか、
またなぜ出来ないのかようやく解った。
簡単な理由だ。
現在の6速MTではこれ以上出力を上げられない。
ドイツ軍団には7G-DCTが存在する。
スバルは高性能で低燃費なリニアトロニックとは別に、
高性能なスポーツミッションを持つ必要がある。
そのために必要な方法は2つだ。
まずレース用は使い捨てのシーケンシャルと割り切る。
そしてSTIの開発力をMTに特化し、
現在の6速マニュアルトランスミッションを上回る、
高出力対応が可能な新型6MTを開発することだ。
もう一つの方法は、
BMW並の高精度なDCTを持つことだ。
7速デュアルクラッチトランスミッションを、
既にニュルブルクリンクで3年間に渡り試した。
その高精度で素晴らしいフィーリングは、
きっと更に磨かれたに違いない。
苦手とする市街地での変速ショックもそれほど目立たない。
高精度で剛性感の高いミッションだ。
昨年開かれた名古屋モーターショーで、
BMWのM4を見た。

今年の夏は、
必ずノルドシェライフェでこいつと対峙する。
そして対話し「まぐわう」。
詳しいスペックはまだ届かないが、
STIはこの様な進歩を目指して欲しい。
パワーユニットもトランスミッションも、
期待させる何かを備えている。
新しいトランスミッションと、
逞しくて澄んだ「真のボクサーサウンド」を溶け込ませると、
A45のライバルになり得る。
何しろ、
ベンツはこんな興味深いクルマまで用意した。

間もなく日本にも登場するWRXは、
このメルセデスが放ったCLAと良きライバルになるだろう。
ここまでの流れから、スバリストなら解るはずだ。
メルセデスベンツとスバルは、
昔ミツビシと対峙したように、
お互いに良いライバルになる。
そのために最優先すべき事は、
戦闘能力だ。
さて、
米国で発表された「STI」を見た。
今のところパワーユニットもトランスミッションも特に目新しさは無い。
米国向けEJ25型エンジンの出力は300馬力オーバーに向上した。
ただしパワートレーンはキャリーオーバーだ。
たかだか300馬力では少しもワクワクしないが、
スバルにとってそれは余計なお世話だろう。
WRXのもっとも売れる国はアメリカだ。
なにしろアメリカ人は視点が違う。

それはキャデラックを見れば良く解る。
このビジュアルは、
まさにアメリカのSF映画そのものだ。

アメリカンな雰囲気は決して嫌いでは無い。
世界を席巻したiPhoneもアメリカ生まれだ。
このメーターは同じ臭いがする。
スバルは確実なマーケティングで、
とても強くなった。
ただし注意が必要だ。
日本と米国ではSTIに求める価値が違う。
ここでそろそろSTIの冠を持つクルマは、
320馬力をいとも容易く凌駕せねばなるまい。
確実に400馬力を目指してクルマ造りを進める。
もし不可能なら、
樫の木と同じだ。

STIという名前を、
メーカーのグレードに使われているだけでは、
久世さんが草葉の陰で泣くだろう。
ベストカーを買ったその脚で、
思い切ってSTIを訪問した。

ギャラリーに歴史が飾られていた。
これほど凄いクルマを作ったのに、
今は全く「執念」を失った。
エンジン出力を、12年もの長い間、
凍結した事は淋しいの一言に尽きる。
実は、EJ20型エンジンの出力向上など、
容易に出来る事が解ってきた。

これを飾るなら、
それに相応しいクルマをリリースせよ。
BRZなどにかまけている暇は無いはずだ。
スバルの実力を持って臨めば、
まだまだいくらでもパワーアップ出来る。
それを使ってSTIだからこそ出来る、
売り手が買い手を選ぶクルマ造りをすべきだ。
こうして流れを辿ると、
パワーアップが凍結された理由も見えた。
三鷹の総本山を訪れて、
栄光のSTIが手足をもぎ取られてしまったように思えた。
富士重工の言いなりでは、
卓越した性能を誇示する、
「S」シリーズなど作れるはずが無い訳だ。

これから先を占う。
このまま放置すれば確実に根元から折れる。
それではラリーに復帰するのか。
その方法もある。
みすみすワールドラリーチャンピオンを、
トヨタに渡す必要は無い。

もし世界のToshiが、
トヨタラリーチームに加入したら、
章男さんの高笑いが目に浮かぶ。
スバルが育てた「新井敏弘」という世界のブランドを、
渡してしまう必要がどこにあるのだ。
SUBARUでは無くARAIが表に立ち、
WRCと関わり続ける『道』もあるだろう。
サーキットよりラリーフィールドの方がスバルには似合う。
国内も大切だが、
やはりスバルは国際舞台で活躍すべきだ。
STIは藁をも掴む思いで、
NBR24時間レースを続けている。
昨年のレースを見て、
6速MTを使うのは止めたらどうかと思った。
すると、
今年のトランスミッションはシーケンシャルになったという。
このトランスミッションの詳細は表にほとんど出てこない。
昨年から計画していたが、
耐久性を高めるために熟成したらしい。
そこで取材に行ったはずのマリオに聞くと、

「ミッションの内容などほとんど聞きませんでした」と言う。
その数日後、
久しぶりにシムスから営業マンがやって来た。

新井敏弘と組んで世界選手権を戦った栄光のブランドだ。
だからスバル用のシーケンシャルミッションや、
ドグミッションに詳しい。

遠山さんと飲む酒は実に旨い。
久しぶりにお互い二日酔いになったほど、
愉しく語らった。
STIがNBRで使うシーケンシャルミッションは、
別に珍しいものでは無いようだ。
だから冒頭の話に戻る。
スバルは優れた自主開発力を持つはずだ。
NBR24h参戦を通して、
次世代のMTを完成させるべきだ。
富士重工は高い耐久力のあるトランスミッションを、
STIに開発させれば良い。
きっと良い物を作るだろう。
そういう仕事をさせてこそ、
この会社の存在価値も高まる。
ところでまた4代目レガシィの話に移る。
良いクルマと、
凄いクルマは全く違う。

この二つは以前にも紹介したように、
とても良いクルマだ。
嫁に出した3.0R spec.Bが整備で里帰りした。
久しぶりに2台が寄り添い合う所を見て、
間もなく世に出る新型WRXに思いを巡らせた。
日本では普通のWRXを、
どのように売るのだろうか。
「STIではないWRX」
をB4のspec.Bとして蘇らせてはいかがだろう。
この2台のクルマは、
シフトフィーリングも、
リニアで伸びやかなエンジンフィールも、
驚くほど気持ち良い。
「気持ちが良い」と「優しい」では少し違う。
例えばクラウンを例に挙げよう。
本気で良いクルマだと思っている。
このブログをまとめるために、
180km程全開走行してきた。

静かで行儀の良いインテリア。

塩だらけの高速道路のランプを、

滑るように駈けのぼる。
とてもパワフルだ。
ゼロクラウンはパトカーにも採用され、
高速性能も決して悪くない。

最新のかわら版を受け取りに、
岐阜まで往復した。
ハンドルを握りながら、
「なるほど」と思った。
このクルマはとても優しくて良いクルマだが、
スバリストにとって、けっして気持ちの良いクルマでは無い。
クルマ離れなどと、
難しそうに言うけど根本は違うのだ。
クラウンの存在は、
元来日本にクルマ好きそのものが少ないと証明している。
トヨタはそういうことをしっかり理解した上で、
クラウンを作り続けている。
決して間違っては居ない。
新型をリリースした時、
「ピンクのクラウン」という破れかぶれの戦術を用いたが、
これなども実に的を得た刺激策だろう。
今、トヨタとスバルは本気で付き合っている。
そして良い関係も構築出来た。
この様な人物と知り合うと、
トヨタの底力をつくづく感じる。
ガズー推進室長の長浜さんだ。

トヨタにもクルマ好きが豊富に居る。
彼と交代しながらNBRで「TOYOTA 86」を試した。

その時、
見識の凄さを知った。
彼はそんじょそこらのヒョウロンカでは足元にさえ及ばないほど、
世界中のクルマに愛情を持っている。
長浜さんに、
ゼロクラで感じた印象を正直に伝えた。
なぜ良いクルマか。
それは「すれていない」と言う事だ。
意味もう少し解り易く言うと、
田舎で大切におっとりと育てられた娘のようだ。
真逆のクルマが、
例えばマセラティだとしよう。
名古屋モーターショーで見て、
少し驚いた。
昔に比べて買いやすい価格ではないか。
正直なところ、
一目見て、
このジブリが目指したのはクラウンだと感じた。
それを長浜さんに伝えると、
実際に試乗した印象をコメントしてくれた。
「代田さん、鋭いですねえ!少し前のV8搭載GTやクワトロポルテも意外なほど運転しやすいクルマでしたが、これはもっと普通で、トライデントマークや皮素材の感触を除けば、ドイツ製・日本製と言われても不思議でない位なんですね。ただ自動車業界的には、フィアット・クライスラーグループの大きなチャレンジのごく一部でもあり、そこが要注目だと思えるのですよ」
TOYOTAの作る良いクルマは、「優しいクルマ」だ。
SUBARUの作る良いクルマは、「気持ちの良いクルマ」だ。
そこに決定的な違いがある。だからSUBARUはこれからも安全で気持ちよいクルマを作れば良い。
それがブランドステートメントに繋がる。
そこで新型WRXに俄然興味を引かれた。レボーグのスペックを見るだけで、筋肉質なアスリートになった事は疑いない事実だ。
だから普通のWRXをまず引き立てるべきだろう。そのベンチマークに是非「ブリッツェン」を置いて欲しい。
上質で硬質で精度の高い、「違いのわかる」ヒトのために煮詰めるべきだ。
そしてSTIにはその上のクルマを作らせる。人々の度肝を抜くような「凄いクルマ」だ。ぜひSTIをそういう会社に育てて欲しい。
-終わり-