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良いクルマ完結編

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食パンのように見える包みの中身は、
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以前紹介した事のある本だ。
PHP出版からリリースされた。
「良く売れているのでぜひ買っておきませんか」と、
わざわざお電話を頂いたので、
孫子のために買う事にした(笑)
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文章が本になると、
なんだかとても嬉しい。

こうして本になるまでに、
編集者の大変な努力を感じる。

この頃、博士号を取るための論文や、
売るために作曲した音楽について、
その正当性を問うニュースが連続している。

そこで感じることは、
いかにマスコミが残酷で身勝手かという事だ。
梯子を登らせるだけ登らせて、
一気に外すと、徹底的に突き落す。
特に一部の週刊誌は始末が悪い。

新聞に載った雑誌広告の見出しを見ると、
吐き気を催す。

雑誌広告を載せた新聞社も、
同じレベルだろう。

今回の本について振り返る。
寄稿しただけだから、
何の報酬も頂いていない。
しかし自分で文章を書く事が好きだから、
何の苦労も感じないし、引き立てていただいた喜びの方が強い。
気を付けたとしても、その文章に誤りが生じることもある。

編集者はそれを指摘し修正する。
またページ内に収まらなければ割愛する必要も出る。
的確に全体の構成を見て、
文章に対して校正を求める。

自分の文章にはこだわりがある。
人に書いてもらおうと思わないが、
適切なアドバイスがあればそれに従う。

たとえば、
新聞社は寄稿という形でコラムを形成する。
時には、その人が書いたとは思えない文章が載る。
出版社も「ベストセラー」を狙って著名な人物に出版を依頼する時、
かなりのグレーゾーンを持っている。

実はここにもエンジニアリングと、
マーケティングの怖さが潜む。

作曲にしろ著名な科学誌への論文にしろ、
マーケティングに踊らされた結末だと感じるが、
いかがだろうか。

今月は「良いクルマ」と「凄いクルマ」を語るところから始まり、
「良いクルマ」には「優しいクルマ」と「気持ち良いクルマ」がある事を述べた。

そしてマーケティングとエンジニアリングについて、
持論を展開した。

エンジニアリングに優れているだけでは、
顧客のハートをつかめず失敗する。

かといってマーケティングの巧妙さで、
上手く世間を渡ろうとしても、
馬脚を現す。

その両輪を上手く回す必要があろう。
今回はセダンについてもう少し深く追求し、
次のレガシィに思いをはせた。

ドイツ国内で様々な車に乗り、
スバルのディーゼル車を体験したことは、
将来の希望を膨らませるのに役立つ。

メルセデスベンツはドイツ国内の実用車において、
大きなシェアを持つ。
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その本場で、面白いクルマを借りた。
4気筒ディーゼルエンジンと6速MTを組み合わせたCクラスだ。
まずフランクフルトエアポートから、
ニュルブルクリンクまでアウトバーンを走った。
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ホテル「ティアガルティン」に到着し、
クルマをじっくり観察した。

室内空間に余裕がある。
運転感覚も「がっしり」していて、
セダンらしいセダンだ。
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トランクは意外に小さい。
そう感じるのは、
実際の寸法に対して、
大きく「どっしり」と感じるデザインのためだろう。
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右手で6速マニュアルを操作しながら
アウトバーンで時速220kmまで出してみた。

まず解るのは、直進安定性が抜群だと言うこと。
日本的な感覚では、
「隔絶された」と言えるほどの静粛性は無い。

でもクルマとの対話感に富み、
なかなか悪くない。
ディーゼルのデメリットなど全く感じない快適空間だ。

これも「優しいクルマ」の部類だが、
クラウンとは全く対極的な硬質感が際立つ。

乗り心地はバシッとしていて、
どこを走ってもとにかくフラット。

いなすような感覚はまるで無く、
「実直そのもの」なシャシーだ。

カチッとしたシフトフィールだが、
ダイレクト感は無く、
レバー比も大きい。

ドイツだからこそ、この質感が必要なのだろう。
改めて、
この国は「自動車天国」だと実感した。

そもそも日本でベンツの乗用車に
マニュアルミッションは存在しない。

よく考えれば、とても珍しい体験だ。
なので、もっとガツガツ撮影するはずだが、
振り返ると写真がほとんど残っていない。

その理由は、
Cクラスはベンツに対する「期待通り」のクルマだと言うこと。

いわゆる質実剛健で、
安心感も十分で移動の道具として申し分ない。
使い勝っても良く、
室内空間も快適でセダンらしいセダンだ。

従ってベンツを良く知る者にとって、
「物珍しさ」は微塵も無い

そういう意味ではレヴォーグも同じだ。
試乗した感想は、
スバルを熟知する者にとって、
「予想した通りの良いクルマ」だった。

実はこれが一番大切なのだ。
「これまで通り良く出来ている」と言うことは、
何にも代えがたい大切な要素だ。

スバルにもベンツにも、
そのような1本の筋がある。
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ディーゼルを搭載したセダンに親しむと、
次が見えてきた。
日本でディーゼルに相応しいクルマが何か、
徐々に解ったからだ。
いよいよディーゼルに相応しいクルマが、
スバルから生まれそうな気がする。
それはXVでもなければ、
フォレスターでも無かった。

ドイツで走っているCクラスと、
ヤナセが日本でリリースするクルマには大きな違いがある。
それは当然だろう。

販売対象の客層が根本的に違う。
キャッスルホテルに展示されていたCクラスは、
遙かに上質な雰囲気を湛えていた。

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メルセデスベンツ
C180EDITION C
【型式】
DBA-204049
【主要諸元】
全長×全幅×全高(mm):4595×1770×1445
ホイールベース(mm):2760
トレッド前/後(mm):1510/1515
車両重量(kg):1500
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当然だが目力も違う。
価格相応に化粧が施されキラリと個性を輝かせている。
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基本的な本体価格は400万円くらいだ。
諸元を見ると意外にコンパクトで驚いた。
ドイツで脚に使って、
そんなサイズには思えなかったからだ。

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ステアリングとインストルメントパネルは基本的に同じだが、
メーターは豪華だしステッチも洒落ていて雰囲気はまるで違う。
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オーソドックスに2方向へ吹き出すセンターベンチレーヨンと、
センターパネルのレイアウトは、
質素だが精密に仕立てられている。

現在のレガシィと良く似た方向性だ。
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センターアームレストを使っても、
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助手席との余裕が充分保たれ、
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カップホルダーもちゃんと機能する。
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スバルでは今、深く静かに「4」戦略が進行している。
先日の土曜日は、工房がセダンだらけになった。
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スバルというカーメーカーは、
まず「しっかりとしたセダン」を作ることが大切だと思う。

G4の諸元とCクラスを比べてみよう。

インプレッサ2.0i-S Limited
【型式】
GJ6C46C 66C
【主要諸元】
全長×全幅×全高(mm):4580×1740×1465
ホイールベース(mm):2645
トレッド前/後(mm):1510/1515
車両重量(kg):1300
G4はCクラスより15㎜短く、
幅が30㎜狭く、
背が20㎜高い。

ついでに左奥にある先代B4の諸元を出しておこう。
余計なことかもしれないが、
このクルマ「だけ」はCクラスのクオリティを超える(笑)
スバル最後の気合いを入れた6気筒セダンだ。
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レガシィ3.0R
EyeSight
【型式】
DBA-BLE
【主要諸元】
全長×全幅×全高(mm):4635×1730×1425
ホイールベース(mm):2670
トレッド前/後(mm):1495/1490
車両重量(kg):1470
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B4はCクラスより40㎜短く、
幅が40㎜狭く、
背が20㎜低い。

ドイツでCクラスに乗って、
「なるほど」と思った。
セダンはやはり「クルマの王道」を行くのだ。

良いクルマが誕生するような、
土壌を作ることが出来るかどうか。

スバルの将来は、
そこに掛かっている。

2月後半が厳しかったせいか、
芝生も一向に芽を出さない。
しかし、なぜ緑色で瑞々しいのか。
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それはのおかげだ。
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芝生の間にビッシリと水苔が生えている。

よく観察すると、
沢山の種類の苔がコロニーを作っている。
そのうち、
ネジリ草など、春の美しい草花が芽を出す。

梅の開花は3月15日だった。
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朝、2つほど咲いていた。
午後になると、
やっと本格的に梅がほころんだ。

望桜荘の庭に目を移すと、
厳しい冬に耐えた苔たちがイキイキしていた。
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池の水が白濁するほど激しく雨が降り、
苔が瑞々しく水分を蓄えていた。
この頃、池の水が白く変わり始めた。
土が痩せたのでは無いかと少し心配だ。
以前、この場所には全く苔など生えていなかった。
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工房の入り口の芝生を手入れした時、
むしった草に苔が沢山付いてくるのに気付いた。

この斜面は道路拡張の際に生まれた。
当時の現場監督と相談し、
全体に高麗芝を敷き詰めて保護した。

いつの間にか芝の間に大量の苔が生えていた。
草と一緒に抜ける苔だけを選りすぐり、
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この場所にひとかたまりのコロニーを作った。
居心地が良いらしく、
徐々に安定したがそれほど増えない。

それで、
六地蔵川に自生する苔を、
少し移植してみた。
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またある一角には、
王滝村の山奥で採取した苔を移植した。
開田ファームでレガシィを撮影した時も、
苔をもらって移植した。
森の中に自生する苔は、
とても元気だ。

全て気持ちよさそうに、
それぞれのコロニーを作っている。
雑草が生えて荒れ放題だった頃は、
そんな気持ちにならなかった。
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でも、今は社員と共に苔を大切に育てている。
本当に素晴らしい手触りだ。
いよいよ春らしくなった。
観察を続けると面白いことがいくつも解った。

この場所は、
苔に優しい要件が揃っているようだ。
近くの清流には、
いくらでも苔が自生している。
風に乗り着床すれば一気に繁殖する。

ところがひとたび人が荒らしてしまうと、
元に戻るのにかなりの時間を要するようだ。

そしてその美しさや、
清々しさも忘れ去られる。
お詫びのつもりで少しだけ人間が手を貸せば、
苔はすぐ正直に答えを出してくれる。
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ミズゴケとスギゴケが勢力争いを繰り広げた。
争うと言っても、
駆逐し合う訳では無い。

ミズゴケは隙間から隙間へと顔を出し、
のしかかるように覆い尽くすので、
ちょっと間引いてやる。
すると素直にすぽすぽ抜ける。
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昨年の秋、
皆でこの様に手入れしたら、
カゴに何杯もミズゴケが集まった。
それを今度は他へ使う。

今は潤いの場になったが、
以前は根元の近くまでコンクリートで固められ、
土の上は荒れ放題。

常に雑草が伸びていた。
6年前の様子だ。
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石ベンチも今より幹に近いところにあった。
それを少し離して、
コンクリートを取り除き、
周辺を手入れを続けてきた。
今週から改善作業を再開し
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先日の雨に洗われたチャンスを活かし、
今年初めて桜の周りを改善した。
埋まっている様々なゴミや砕石を取り除き、
雑草を丁寧にピンセットで抜く。
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ベンチの下には雑草しか生えない。
暫くウッドチップを被せて防草したが、
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思い切ってそれを取り除き、
望桜荘のミズゴケを敷き詰めた。
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すると風雨にさらされた苔は、
徐々にベンチの周りに広がり、
そこに落ち着くと奇麗な緑の絨毯になった。


資料を探していて、
偶然部下に発したメッセージを見つけた。
絶対にこの思いを忘れないでおくために写真に写したのだろう。
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ちなみに「活力朝礼」とは当社の定めた自主的な社員活動だ。
朝8時から50分間の環境改善。
それを終えたら毎日交代でスピーチ。
それに続いてロープレが始まる。
中津スバルの朝礼はとても長い。
このメモを2011年2月27日に撮影していた。
日記ではこの翌日から出張 に出た。

何かの予感があり、
留守を念入りに管理職に託した。
そのころから「自動車家畜論」も意識した。

良いか悪いかは別にして、
軸足が今も全く変わらない事に、
少し安堵感を持った。

このメモの直後、
東日本大震災が多くの人々の命を奪った。
あの大災害は、
今もまだ収束していない。

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ベンチの反対側の表面を、
一度焚き火で奇麗に焼いた。
焼け焦げた地面から発芽したのは、
コウリンタンポポ だった。
それもしっかり根を張った。
下に見える清流をいつまでも残さねばと思う。
桜は来月中頃には満開になるだろう。

あっという間に3年が過ぎ去った。
遂にスバルは次期レガシィを発表した。
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SVXも初陣をシカゴオートショーで飾った。
フラッグシップのデビューを飾るのにふさわしい場所なのだろう。
6気筒搭載にふさわしくなった新型レガシィも同じ場所でアンベールされた。
レガシィがどこのマーケットに狙いを定めているか良く解る。

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美しいメッキパーツだ。
一目見ただけで、
これが何に用いられた部品か解る人は、
紛れもないスバリストだろう。
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新聞紙にくるまれた沢山の部品が、
9ヶ月ぶりに戻ってきた。
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メッキ職人の粥川さんを紹介しよう。
当社にあるサブロクのパーツも彼の手で蘇った。
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この包みを開くと、
47年ぶりに輝きを取り戻した部品が現れる・・・・・。
ドキドキする瞬間だ。
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スバル1000は昭和41年5月14日に発売された。

レヴォーグの発売日が決まった。
平成26年5月13日からだ。
レヴォーグのシャシーはスバル1000の直系だ。

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発表の翌年、
昭和42年2月15日に2ドアセダンが追加された。

この年スバルは月販2万台を突破した。

以前にもスバル1000が、
スバルを最も代表する名車だと伝えた。
レヴォーグにその遺伝子が受け継がれたことで、
さらに証明された。
1000からff1へと、
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そしてレオーネからインプレッサへと、
48年間に渡る絶え間無い研究開発は、
今もその延長線上にある。

スバル1000の発売当時、
その先進性を「FF+水平対向エンジン+4輪独立懸架」と、
他社との明確な違いで明記した。
しかし、マニアックな会社が胸を張って言う事を、
解る人間は少なかった。
ほとんどの整備工場から「直しにくい」と嫌われた。

しかし、
自主開発という伝統に拘り抜いて、
水平対向エンジンを守り続け、
キラリと輝く会社になった。

スバル1000のエンジン搭載方法は、
今でもレヴォーグに継承されている。
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美しく蘇ったパーツを見ながら、
「メッキパーツって本当にいいなぁ」と思った。
少しずつ復権している。
アナログに戻ることは無理でも、
一度余計な電装品は全て取り除き、
軽くて安全で室内の広い、シンプルなクルマを作ろう。
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このホイールキャップはベコベコにへこんでいた。
北原課長が板金修復し、
メッキ職人の手に委ねた。
彼の執念と職人の技が見事に融合した。

レガシィもスバルの歴史の中で、
常に大きな責任を背負っている。

桂田勝は、スバルのセダンに歴史上初めて、
マルチシリンダーを与えた。
記念すべき渾身作だ。

思わぬ掘り出し物に巡り合った。
まるで中津スバルに嫁ぐためにそこに居たようだった。
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3代目レガシィの最終型。
それも「S」だ。
当時は廉価版として「S」が設定されたが、
定義が随分変わってきたなと思う。

初代レガシィはセダンを主体にスタートしたが、
あまりにワゴンが人気を呼び、
その影にだんだん潜んでいった。

2代目レガシィも、世界中のセダンに対して、
際立つ性能を誇った。
モータージャーナリストを唸らせるほど、
素のセダン「TS」は頭抜けた存在だった。
ところが地味な立場から抜け出す事が出来なかった。

それをようやく3代目でセダンの地位を見事に復活させた。
B4のネームが与えられ、
スタイリッシュでスポーティになり、
ワゴンに勝る商品力を纏った。

そのモデル末期に、
「S」はデビューした。

今もそうだが、
最終型には、
それまでとは違う魅力が潜む事がある。
走らせるとシンプルで軽快な印象だ。
楽しくなってくる。
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このエンジンはSOHCで、
軽くて立てつけの良いボディと相性抜群。
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飾り気はないが、大きく見やすいメーターパネル。
走行距離はたったの59000km
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奇跡のようなクルマだ。
欧州車のようなゲート式セレクターが、郷愁感を煽る。
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アメリカにおける経験が長い桂田さんだから選んだのだろうか。
3代目からマッキントッシュのオーディオを採用し、
スピーカーにも拘りを持っていた。
マッキントッシュのオーディオには、
背中をドンと押してくれる魅力がある。
だから黒鰤も買ってしまった。
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レヴォーグにも受け継がれた、
スバルらしいインパネだ。
最近の欧州車はセンターベンチレーションを3つ備えるが、
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スバルはかたくなに独自のスタイルを貫き、
何年経っても変わらぬ味を醸し出す。
この3代目レガシィセダンから、
水平対向6気筒エンジンが搭載された。
それは、正当な使われ方に値する。
でも、
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この時も最初のデビューはランカスター6からだった。
現行レガシィでは沈み行く夕日のように、
6気筒は輝きを潜めている。

理由は簡単だ。
良いマルチシリンダーエンジンは生まれたが、
ボディが小さかった。
したがって品格がマッチしていない。

無理矢理載せてはみたものの、
明らかにボディの長さも横幅も足りないから、
子供が背伸びしたクルマのようになる。
「ちんちくりん」だと言う理由はここにある。
スバリストなら理解出来ても、
世界のクルマ好きにとって、
理解に苦しむパッケージだろう。
4代目も5代目もB4にとって、
マルチシリンダーに相応しいパッケージには到達出来なかった。

息も絶え絶えの水平対向6気筒エンジン は、
アウトバックで何とか絶滅から逃れている。


昨年の今頃、キャッスルホテルでベンツのEクラスを見た時、
「ドカン」と脳内に稲妻が走った。
次のレガシィはここに到達すると直感した。

そして予感通りスバルは秘密裏にその戦略を進めていた。
遂にシカゴで陽の目を見た。
アメリカを主力市場に国際戦略を企てると、
このような分かり易いクルマになる。
レガシィは抜群のマーケティングで練り上げられた。

アウトバックとは一線を画した。

セダンらしいセダンに脱皮させ、
現行レガシィB4を大きく上回る静粛性や快適性を備えた。
どれくらい「優しいクルマ」で、
どこが「気持ち良い」スバルらしさを持つのだろうか。
現行レガシィは、
スバルの歴史の中で、初めてSUBARU1000の

呪縛 から逃れた。 

既にレガシィは、
過去のSUBARU車とは一線を画した孤高の存在だ。
それが更に飛翔したと思えば良い。

呪縛というのはシャシー構造だ。
6代目レガシィも、
非常にコストの掛かるクレードル構造を継続したようだ。
やはりあれはレガシィだけに拘るアイテムだった。
その構造は優れた防音防振性能を発揮する。

全車AWDで、
搭載エンジンはこれまでと同じだった。
ここだけは、
日本の目線で評価すると実に「腑抜け」だ。
パワーユニットのキャリーオーバーは、
フルモデルチェンジであってはならぬ冒涜だ。
でも、これはアメリカ仕様だから関係ない。

アメリカ人はそんな事を全く考えないだろう。
かえってセダンに相応しいパワーユニットとして、
水平対向6気筒を歓迎するだろう。
米国には最新の4気筒2.5リットルに専用設定した新リニアトロニックもある。
むしろ「器」を良くした事を大歓迎するはずだ。

新型レガシィの開発プライオリティは、
ボディとシャシーの劇的変化だった。
まず、器を今以上にしっかりさせてから、
次の手を打つのだろう。
ここまでは国内のパワーユニット開発に重点を置いた。
だから1.6リットルのダウンサイジングターボが凄いのだ。

その傍らで世界戦略を練り、
虎視眈々と次を狙っていると見た。

ここでメルセデスベンツのEクラスを参考にしよう。
実にバランスの良いクルマだ。
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このE250アバンギャルドは4気筒DOHC2リットル直噴エンジンを搭載し、
電子制御7速ATでエンジンパワーを伝達する。

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諸元を見てみよう。

メルセデスベンツ
E250アバンギャルド
【型式】
RBA-212036C
【主要諸元】
全長×全幅×全高(mm):4890×1855×1455
ホイールベース(mm):2875
トレッド前/後(mm):1580/1585
車両重量(kg):1750

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室内の広さも十分だ。
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SUBARUもこれにはまだ追いつけない。
ダイレクトセレクトは今後重要になる安全装備だ。

欧州車はこれが常識になりつつある。

パーキングレンジに入れ忘れても、
エンジンを切れば必ず自動的に「P」の位置に入る。

次に次期レガシィの諸元だ。

新型レガシィ
【型式】
指定前
【主要諸元】
全長×全幅×全高(mm):4796×1840×1500
ホイールベース(mm):2750
トレッド前/後(mm): 未公開
車両重量(kg):未公開


E250に比べて、
84㎜短く、
15㎜幅が狭く、
45㎜高い。

エンジンはキャリーオーバーだが、
6気筒も含めトランスミッションは全て置き換えられた。
全てリニアトロニックになった事で、
5速ATは使命を終えた。

ここでリニアトロニックに眼を移す。
水平対向6気筒エンジンに組み合わされる、
高トルク対応リニアトロニックは新設計の専用CVTだ。

ただし、全くのブランニューでは無い。
既にヨーロッパでベールを脱いだ、
ボクサーディーゼルリニアトロニックを、
ボクサー6用にチューニングした。

欧州でディーゼルエンジンは6MTとだけ組み合わされていた。
昨年アウトバックのディーゼルを投入するにあたり、
悲願のディーゼル車用ATを開発した。
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基本概念は、シームレスに無段変速とステップ変速を切り替えることだ。
既に2リッターDITで採用されたS#の概念を、
アクセルワークに応じて自在に引き出せるようにしている。

これはCVTの持つ滑らかさに加え、
多段式ATのようなダイレクト感を持たせることが目的だ。
ディーゼルエンジンの特性に最適で、
伸びやかな走行と経済性を併せ持つATだ。
その開発にあたり、
高トルク対応型リニアトロニックのケースコンバータとメインケースを補剛した。
ディーゼルエンジンの持つ高いトルクに対して最適化するためだ。
専用のCVTフルードまで新開発したほどだから、
気合いの入れようが解る。

このディーゼル用リニアトロニックのマニュアルモードは7段になっている。
2リットルDITはiとSで6段変速、
s#で8段変速になるが、
これらの経験を踏まえディーゼルでは7段に設定した。
これまでの高トルク対応リニアトロニックと根本的に違うのは、
アクセルの踏み方だけで無断と有段をシームレスに切り替えられることだ。

これを新型レガシィの6気筒専用にアレンジし、
無段と6段変速をシームレスに切り替える。
これは6気筒エンジン搭載車に極めて高いクオリティを与えるだろう。

ここで耳寄り情報だ。
レヴォーグの2.0DITに搭載されたスポーツリニアトロニックは、
マニュアルシフト時にクロスレシオの8速になることは知られている。

実は無段変速時に、
この新概念である「アダプティブ制御+ステップ制御」をこっそりと採用した。

段数は3段だ。
試乗できるようになったら意識すると良い。
無段変速で走行していても、
条件に合わせて3段でステップ制御する。

よりスバルらしい、
「気持ちの良い走り」が生まれている。
新型レガシィでは、
通常のリニアトロニックも大幅にチューニングされた。
トランスミッション内部のフリクションを減らし、
燃費を向上させた。
そしてディーゼルの開発で培った振動騒音低減アイテムを投入し、
静粛性を一段と向上させた。
そして、最新のステップ変速制御を投入し、
よりドライバーの意思に忠実な走りを求めた。

ここで妄想が生まれた。
この従来型のリニアトロニックに、
良いクルマ完結編_f0076731_16563267.jpg
モーターを付けて優れたHEVを誕生させた。

と言う事は、
高トルク対応リニアトロニックにモーターを上手く付ければ、
いとも簡単にHEV化する事が出来る。
寸法上の制限から、
アイドリングストップを装備することが出来なかったが、
高トルク対応のモーター付きCVTを開発すれば、
もう中途半端なアイドリングストップは必要無い。

その上スバルらしいHEVが、パワーユニットに制限されること無く、
展開が可能になる。

先日ヤナセの御好意でE400に試乗できた。
良いクルマ完結編_f0076731_17065648.jpg
クラウンは4気筒エンジンでハイブリッドシステムを構築した。
どんなクルマなのか、まだ乗っていないからわからない。
「優しいクルマ」である事は間違いないだろう。

ベンツはV6の3.5リッター直噴エンジンと組み合わせ、
「気持ちの良いクルマ」に仕上がっていた。
価格は税込み890万円と、
レクサスなどに対して意欲的な価格だった。
良いクルマ完結編_f0076731_17064715.jpg
見るからに質感の高いエクステリアや、
リチウムイオンバッテリーを用いた優位性など、
ベンツの底力を感じる出来映えだ。

これに乗る事が出来たのは大きな収穫だった。
ベンツのアイドリングストップはただでさえ良く出来ているのに、
モーター走行とモーターアシストをシームレスに切り替えながら渋滞路でロスを防ぐ。
雨中の夜間走行で、
混み合った名古屋市内を恐る恐る走った。
なので、
全てを知り尽くした訳では無い。
けれどスバルと良く似たハイブリッドの走行特性で、
とても面白かった。
こういうハイブリッドが増えるという事は、
スバルの方向性が間違っていない事を証明している。

ガソリンエンジンを充分活かし、
きちんと走らせながらパワーブーストし、
エンジンをしっかり停止させガソリンを節約するところが好ましかった。
良いクルマ完結編_f0076731_17071268.jpg
ベンツもぶつからない機能を強化している。
一部にはスバルを真似しているので、と思うところさえ感じるが、
スバルも次のレガシィでベンツを模倣したからお互い様だ。

BSD(死角検地)やLCA(車線変更支援)はベンツが先輩で、
その能力は大した物だ。
但し、アイサイトの機能は依然としてスバルがベンツを超え、
世界一級の内容だと実感できた。

交差点を左折するとき、
歩行者が横断していた。

レーダーセイフティはヒトを認識しない。
またディストロニックプラスは、
左ハンドルに慣れないと誤操作で作動させる可能性がある。

こう言う場合、
自立した危険回避が難しく、
横断中の歩行者に向かって加速した。

それにしても、
ベンツのクオリティは実に正直だ。
良いクルマ完結編_f0076731_17073838.jpg
肌に触れる部分の質感は、
払うお金に比例する。


どうしても黒鰤を手放せない理由も、この辺りにある。
良いクルマ完結編_f0076731_227223.jpg

このクルマのインテリアの質感は非常に高い。
しかし残念ながら室内が狭い。
だから「フラッグシップ」として考えた場合には、
合格点を与えられない。
次のレガシィで期待するクオリティを目指せるはずだ。

すでに中津川に来てから、3500㎞ほど走行距離が伸びた。

良いクルマ完結編_f0076731_21023816.jpg

ところで、新型レガシィのために開発した、
足回りやステアリングの新構造や、
防振防音対策は驚くほど多岐に渡る。

この現行BR/BMモデルの最終型で気付いたが、
使える技術を最終型を投入したかもしれない。
良いクルマ完結編_f0076731_16280149.jpg
このレガシィを動かすと解る。
ショールームに入れた、ベネチアンレッドのスペックBは、
明らかに騒音振動遮音(NVH)がこれまでと異なる。
SUBARUの良い意味での常套手段だ。

いま現行レガシィのB4が売れている。
最終型を気に入っているなら、
買っておくこともよい選択だと思う。

これまでの経験を基に、
最大限の想像をしてみたい。

新型レガシィB4にはボクサーディーゼルが確実に似合う。
しかも安物ではなくフラッグシップとしてのディーゼルだ。

過去に二度ドイツで異なるボクサーディーゼルに試乗したが、
一番のネックは2000rpm前後に発生する独特の燃焼音だ。

それを遮断することが、
レガシィならできそうだ。

ただしマーケティングは難しいだろう。

新しいボディにコストのかかるディーゼルエンジンを組み合わせ、
ベースプライスが400万円を超えるレガシィをどのように売るのか。

遂にATを開発出来たので、
可能性は高くなった。
しかもそれにモーターを付ける計画も、
既に「ヴィジブ」というコンセプトカーで提示された。

これからスバルの腕の見せ所だ。
世界市場を視野に入れて、
どんなフラッグシップに育てていくのか、
楽しみにしているぞ。

Commented by 老人 at 2014-03-14 22:45 x
入念に調べ上げた上での真実のメッセージを心がけておられ、素晴らしい限りです。

レヴォーグは、ファーストインプレッションは強くなるデザインで、多くの人を引き付ける要素が多いですね。インテリアもこれまでのスバルの中で間違いなく一番ですね。レヴォーグは、第一印象にこだわったデザインですが、今年アメリカシカゴオートショーでお披露目された新型レガシィは、最初は引き付けられないデザインですが、見続けているとその深い美しさが感じ取られ、見飽きない造形美ですね。

きっと新型レガシィは10年経ってもデザイン的に評価されると思います。10年ほど前に出た、レガシィ3.0RをCMで見たとき、とても綺麗なデザイン思って購入しましたが、やはり名車となりましたね。

販売する方が、レヴォーグや新型レガシィのそれぞれの美しさに惚れてどのようにプレゼンできるかで、販売台数も変わってくるのでしょうね。もちろん、これまで通り試乗していただき更なる熟成の乗り味を確かめていただけると文句なしでしょうが。

どちらも会心作の車とお見受けいたします。新型レガシィの切り込んだプロとしてのコメント心待ちにしています。
Commented by b-faction at 2014-03-15 11:19
老人さん、ありがとうございます。次期レガシィ、とても良いですね。ベンツを見て奥の深さを感じると、スバルの行くべき道も良く解ります。現行のB4も良いデザインだと思います。このサイズになり、やっとクレードル構造の真価が発揮できると思っています。乗らなくても容易に感じられるので、秋にどれ位ボクを驚かせてくれるのか興味は尽きません。
Commented by タナベ at 2014-03-16 12:01 x
納車準備中ですが取り急ぎ
リング状のメッキパーツ、テールランプの部品ではないでしょうか?
確かに見覚えのある部品なのですが今、ふと思いつきまして。
失礼致しました。
Commented by b-faction at 2014-03-16 12:30
タナベさん、流石です。正解。ただ残念なことに、
一個委託中に紛失してしまい、現在探しています。
Commented by タナベ at 2014-03-16 17:00 x
正解でしたか!(笑)
過去に見た記憶がありまして随分とコスト掛けてるなと思った事がありました。しかしどの部分なのか忘れておりここ数日考えて居た次第です
ちなみにBMWミニのテールをみて思い出しました。

その部品、左右対称なのでしょうか?だとすれば型を取って鋳造にての復元、あるいは現代の技術からすれば素材から削り出す事も可能かも知れませんね。先日金属加工会社の社長と知り合ったのですが本業の応用で時々自動車部品の製作をされているそうでかなり複雑な形状の物も造られていました。
もしもの場合にはご連絡ください。問い合わせてみます。
Commented by b-faction at 2014-03-16 20:11
タナベさん、ありがとうございます。行き詰まったら相談させて下さい。
Commented by とだ at 2014-03-18 22:05 x
2月上旬にレヴォーグ1.6GT-Sを契約、先週末にディーラーへiPadを受け取りに行ったら「生産は6月、だそうです」。納車は遅くとも7月上旬ですかね。
11年ぶりにワゴンへ回帰、そしてスバルと四半世紀の付き合いとなります。
自分も「スバリスト」を名乗ってもいいですか?
Commented by b-faction at 2014-03-19 12:20
とださん、スバリスト宣言ですね!今後ともよろしくお願いします。初夏のドライブが待ち遠しいですね。
Commented at 2014-03-20 16:55 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by b-faction at 2014-03-21 07:09
すずきさん、昨年の特殊なスポーツモデルですね。何年かぶりに復活した限定車でしたっけ。
Commented by すずき at 2014-03-21 15:12 x
SLKクラスに21年ぶりにMT導入みたいですね。
限定ではなくてカタログモデルのはずですよ。
Commented by b-faction at 2014-03-21 15:26
レスポンスで見てスポーツカーに追加されたことは覚えていました。先日名古屋でSLK200に触れる機会がありました。あのクルマならMTも似合いますね。ベース車にダイレクトシフトを導入しないのもMTがあるからかな。
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by b-faction | 2014-03-20 20:09 | レガシィ | Comments(12)

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