古川編集長からご連絡を頂いた。
クラブ レガシィの次号は71号だった。
訂正させて戴きます。
アグレッシブなSTIを使いこなすと、
高性能なデジタル一眼レフに似た痛快感がある。
ビックリするほど美しい写真が撮れた時、
自分の腕がにわかに信じられない事がある(笑)。
スイッチ一つでクルマの特性を明確に変えられると、
6速マニュアルミッションを操る悦びがこれまで以上に高まる。
これまでもSTIは、
凝ったデファレンシャルギヤを3つ持っていた。
それが最新型では、
より高性能に磨き込まれた。
センターコンソールのスイッチは、
スバリストには堪らない必須アイテムだ。
でもスバルになじみの無い人には、
そこにいったい何が描かれているのか、
すぐ解らないかもしれない。
でも安心して欲しい。
実はそれほど難しい内容では無い。
でもこれが有るのと無いのとでは、
クルマの性能に大きな差が出る。
だから何か知ることで、
操る面白さは大きく変わる。
だから解り易く説明するために、
デジタル一眼レフを例えに上げた。
カメラにもいくつかのスイッチが並ぶが、
STIはこのスイッチより単純だ。
愛用しているEOSを使うと、
とても奇麗な写真が撮れる。
一見難しいように見える各種の機能だが、
使っているうちに体で覚える。
シロートにだって優しいし、
プロ並みの要求にも応える。
ここにスバルWRX STIと共通性を感じる。
ラリーを通して磨かれた、
スバルの伝統技術は、
今も脈々と磨き続けられている。
だからドライブエクスペリエを考え出した。
ちょっと手ほどきさえすれば、
「スバルにはちょっと縁が無いな」と思い込んだ人にも、
WRXの奥深さを解り易く説明できる。
そこに興味を持つ、
楽しい来客があった。
「いったい誰のために」
「何を」
「どのように進めるのか」
それらを丁寧に説明した。
スバルの得意技で有る4WD技術には、
様々な方式がある。
なかでもWRX STIは戦闘力を考えたシステムだ。
だからフロントにはヘリカル式のLSDが奢られ、
リヤデフはトルセン式のLSDだ。
どちらもスムーズでありながら、
確かな差動制限をもたらす。
これらは珍しいものでは無い。
けれどもドライバーズ コントロール センターデフ(DCCD)は、
スバルの「伝家の宝刀」とも言える欠かせない機能だ。
エンジンも面白い。
SI-DRIVEはエンジンの性格さえ変える。
シフトレバーの手前にある丸いスイッチが、
エンジン特性の切り替え用だ。
その手前にある楕円の複合スイッチで、
駆動トルクの配分を決める。
前後の配分を自在に変えるために、
まず左側のスイッチでオートとマニュアルを切り替える。
そして右のトグル風スイッチで、
配分比を変更する。
カメラの絞りやシャッタースピードを調節するような物だ。
これがデフォルトの状態だ。
SI-DRIVEは「S」
センターデフは「AUTO]と表示が出ている。
基本的にこのモードで走れば何の心配も無い。
激しい雨の時など、とても効果的だ。
ただ雨にも色々ある。
ヘビーウエットもあれば、
ちょっと湿ったワインディングロードもある。
こういう時に少し味付けを変えると、
クルマ好きには堪らない楽しみ方が出来る。
特に高速道路での違いが明確になり面白い。
客観的に見るとどのような差になるのか、
試してみたくなった。
デフの効果を比較するため、
まずオートの状態でスイッチを上にスライドさせると、
+側の液晶表示に明かりが灯る。
するとセンターデフの締結力が高まり、
標準モードよりクルマを安定方向に振る。
AUTOの状態から下にスライドさせると、
-側に明かりが灯る。
センターデフの締結力は弱まり、
駆動トルクは後輪重視で配分される。
DCCDは機械式デフでもあり、
その作動トルクを状況に応じて変化させられると思えば良い。
ではマニュアルは何のためにあるのか。
楕円スイッチの左3分の1を押し、
マニュアルモードに切り替える。
表示が切り替わり、
見慣れたグラフが現れる。
前輪が41%で後輪が59%という、
極めて微妙な不等配分が決め手だ。
グラフの目盛りが一番下にある時は、
センターデフを電子制御でアクティブにコントロールしない。
実は基本的にこのモードが好きだ。
右側のスイッチを上にスライドすると、
電磁クラッチを使って締結力を徐々に高められる。
全部で4段階の調整が可能だ。
そして一番上まで明かりを灯すと、
センターデフがロックする。
いわゆる直結四駆という、
最強の脱出力を持つ4輪駆動車になる。
晴れた日ならマニュアルのオープン、
雪道ならマニュアルのロックが好きだ。
ドライブエクスペリエで、
彼らもその面白さを解ってくれたはずだ。
それにしてもナイスガイばかりだ。
編集長の古川教夫さんに初めてお会いしたが、
クラブレガシィが多くの人に愛される理由が良く解った。
マリオとカメラマンの雪岡さんも、
明るく楽しい。
この人達と一緒だと、
面白くて有意義な時間があっという間に過ぎ去った。
次号は12月に発売予定だ。
新たなフェイズを迎える、
記念すべき創刊71号を楽しみにして欲しい。
今回の記事が掲載されるはずだ。
是非ご覧頂きたい。
既にご承知のオーナーも多いと思う。
STIを手に入れたら、
この機能を積極的に使って欲しい。
デジイチを使うなら、
肩に力を入れ無い方が良い。
狙った獲物をAUTOモードで仕留める。
少し慣れてきたら、
早い被写体にはシャッター速度を優先してみたり、
被写体深度を変えるために絞り優先を選ぶじゃ無いか。
DCCDも同じだ。
オートモードの設定だけで、
変化する走りに気持ちが高揚する。
さあ、安い買い物だ。
最新のSTIを是非手に入れて、
徹底的に調教して欲しい。
オートモードでは、
-
↓
AUTO
↓
+の順に締結力が増す。
走った画像だけでは参考にならないかもしれないので、
ディティールを言葉で捕捉する。
まずAUTOで進入すると、
こんな感じで極自然にターンする。
次に「-」側にして進入すると、
前輪の駆動力が下がる分だけ、
タイヤに掛かる横方向の力に対して強くなるので、
よりシャープに曲がる。
そして「+」側にすると、
明らかにラインが変わる。
というより、むしろ変える必要がある。
直結の4WDは、
前後の駆動力配分が等しくなる。
だから路面に対する動力伝達効率は高まる。
+モードでは、
積極的に締結力を強くするので、
4つのタイヤに均等に駆動力が掛かる。
だから雨の日など滑りやすくなると、
とても安定する。
スバル車は元々フロントヘビーだ。
前輪荷重が大きい上に、駆動力も掛かる。
AUTOモードはその特質を上手く生かしている。
高速道路のヘビーウエット路面で、
クルマをアクセルのON/OFFだけで操れる。
すなわち、
ステアリングに頼らずとも、
自由自在に走行ラインを選べる。
逆に路面の摩擦係数の高い場所では、
前後の回転差がストレスになり、
旋回性能にシャープさが欠ける。
そういう時には「-」モードに入れる。
こんなに面白いクルマは他に無い。
戦闘力を重視したマシンは、
慣らしが終わらないと全体的にぎこちなく重い。
それは当たり前で、
はじめから「ゆるゆる」では耐久性に問題が出る。
完全に慣らしを終え、
スムーズなクルマにするために必要なことは何か。
それは一つしか無い。
時間の許す限り、
どこまでも、どこまでも、楽しく走り続ける事だ。
台風18号が去るのを見計らい、
中津川から神奈川に向かった。
気になる雲が左手から流れてきた。
山の向こう側には御嶽山がある。
時折まだ強い風が吹く。
生まれて初めて「串揚げ屋」に行った。
藤沢周辺は台風の影響が大きかった。
海鮮物が入らず居酒屋は臨時休業。
そこで比較的穏やかだった街に行き、
「串揚げ」を食べた。
とても美味しかった。
とてもあっさりして、
思わず手が伸びる。
次々と出てくる串揚げは、
肉類よりも野菜が多くとても旨い。
左にある丸い二つの串揚げは、
「タレに漬けず塩で喰へ」と言われた。
一風変わったチーズの串揚げだったが、
塩が実にまろやかな味で、
想像以上に美味しかった。
実は揚げ物があまり得意では無い。
若い頃は平気だったのに、
食べた後に胃がもたれるからだ。
脂質分解能力に問題があるのかもしれない。
だから徐々に揚げ物から遠のいた。
食べた後、
激しく眠気を催すこともある。
ところが、
「手作りの串揚げ」は驚くほど体に優しかった。
いくらでも食べられそうで、
怖いくらいだった。
たらふく食べて、
焼酎で締めた。
ぐっすり眠って、
朝が来た。
雲一つ無い青空が広がっていた。
カラダもその青空と同じくらい爽やかだ。
眠りから覚めたWRXと、
都会の喧噪の中を初めてWRXと一緒に走った。
一日で一気に300㎞近く走ったので、
そろそろクルマも馴染んできた。
元々クラッチ操作は軽い。
シフトチェンジがサクッと決まるようになり、
一夜で串揚げの味に変わった。
この308馬力のハイパフォーマンスカーには、
隅々までWRXのDNAが漲る。
そして初代から想像できないほど剛性感が高まった。
サイズは大きくなったが、
運転席からの見極めも良いから、
都会でも扱いやすい。
STIはS4と同じボディを纏うが、
同じクルマとは思えない。
その理由はクルマのアチコチから
戦闘力を感じる。
最新型のSTIは、
胃にもたれない串揚げのようにサクサクしている。
歯触りが良いだけでなく、
実際には濃い味なのに、
山ほど食べても、
カラダの負担が少ない。
クルマの最大の目的は、
「A点からB点に安全で快適且つ早く移動する」
ということだ。
「GT」に求められる究極の性能とも言える。
STIはそれとは明らかに異なる。
S4はGTそのものだが、
STIは「濃い快楽」をもたらす。
翌日も最高の天気だった。
圏央道から中央自動車道へ向かった。
高速道路をひた走り山奥の絶景を求めた。
和の風景にもよく似合う、新しいWRXだ。
高速道路を3時間ほど走り、
山並みが美しく見える場所へ来た。
国道から逸れると、細い細いワインディングロードが続く。
高い山に囲まれた美しい場所に着いた。
この日は噴煙が見えなかったが、
向こう側に御嶽山が位置する。
噴火後に多くの火山灰が降ったそうだ。
左へ視線を移すと中央に恵那山が見える。
遠くに雲を頂きどっしりと構え、
存在感を誇っていた。
大きな山だ。
恵那山の向こう側に中津川がある。
後ろを振り返ると、
そこには更に大きな山が聳える。
南アルプスの仙丈ヶ岳だ。
再び前方に目をやり、
右の方へ視線を移す。
中央にある経ヶ岳と、
左に見える駒ヶ岳の山麓の間に権兵衛峠がある。
トンネルを抜けると木曽谷だ。
ここをSTIで走るのが何よりも楽しみだった。
伊那谷には秋の味覚も溢れていた。
店の外までキノコが溢れている光景に、
ちょっと驚いた。
その前の週もキノコを沢山購入した。
それがこの三種類だ。
その時、雨が降らず松茸が高騰し始めた。
それで松茸1本の半額以下で、
この三種を手に入れた。
匂い松茸、
味シメジという。
これは侮れないキノコだ。
迷うこと無く炊き込みご飯になった。
その日も、更に翌日も腹一杯食べた。
これは苦み走った男のキノコか(笑)。
伊那谷では茹でてショウガだまりで食べるそうだが、
七りんで炙るほうが好きだ。
より苦みが増すが、
表面からジワリと滲む旨苦い独特の味が最高だ。
コムソウも美味しい。
安いが歯応えはピカイチだ。
色々な食べ方があるが、
湯がいて大根おろしで食べるのが一番好きだ。
これに味をしめて、
目新しい旨そうなキノコを探し求めた。
とにかくキノコの種類が凄い。
このマイタケは旨いのか、とそこに居たオヤジに聞くと、
「物凄く旨いから買ってってくれ!」と言う。
これは天然かと聞くと、
「ハンテンだ」と言う。
種を植え付け山で育てるから、
半分天然で、
それをハンテンと呼ぶらしい。
本当に美味いから・・・とまるで絞り出すように訴える。
沢山あっても食べきれないので、
手頃なサイズを買うことにした。
一皿たったの270円だ。
ホンシメジも相変わらず沢山あったが、
次の獲物を探した。
クリタケに的を絞ると、
こちらには養殖と天然物が混在していた。
どちらも味は変わらないと言う。
せっかくだから天然物を購入した。
600円だった。
もう一品欲しくて、初めて聞くキノコを買った。
モトアシという大きめのキノコは、
「すき焼き」にすると物凄く旨そうだった。
これは勘で買うしか無い。
400円と随分お買い得で、
全部合わせて1270円だった。
消費税を入れてもコイン3つでおつりが来た。
買い物を済ませ、
伊那谷から木曽谷に向かった。
権兵衛トンエルを抜ければ、
国道19号線に繋がる。
もう高速道路を使わないので、
中津川迄の区間燃費を計るために、
トリップメーターをリセットした。
ワインディングをS#で走り続けると、
区間燃費はどのように変わるだろうか。
国道19号線に入り、北の空を眺めた。 すると伊那谷では見えなかったが、
青空の中を明らかに濁った雲が流れていた。
19号線を自衛隊の機動車両が隊列を組んで走り、
道の駅はどこも騒然としていた。
ここには山梨方面からの消防隊員が集結していた。
御嶽山を見ると、
山頂には雲がかかっていた。
そのため捜索は全て打ち切られたらしい。
隊員の表情は複雑で、
安堵感と無念さが混在していた。
ヘリが飛び交う中、
噴煙は明確な軌跡を残した。
3000メートルの上空から吹き出す火山灰は、
遙か遠くまで棚引いていた。
多くの犠牲者を出したが、
一つ救われる事がある。
この物質は自然界にあるものだ。
もしこれが原子力発電所の事故だと思うと、
背筋が寒くなる。
どうしても思い出さざるを得ない。
目に見えないが、
今も垂れ流されている放射性物質の事を思うと、
心が痛む。
核物質で汚染された地域では、
キノコを採取し食べることなど、
したくても出来ない。
断層だらけの日本で、
原子力発電所を稼働させることが、
如何に危ないことなのか改めて解った。
そのまま国道を走り、
中津川に戻った。
工房の入り口には、
S204が待ち受けていた。
並ぶと正統な血を引く子孫だと良く解る。
権兵衛峠でリセットしてから80㎞あまりだ。
その区間燃費は、
13km/lだった。
そして今回のトータル距離は、
716kmになった。
オドメーターは1700kmを超えた。
700㎞の長距離走行における平均は、
リッター当たり9km弱だった。
時にはアストンマーチンをリードして走った。
速く安全に走るためには燃料も必要だ。
この燃費を悪いと思う必要は全くなし!
その日、
家では家族が今か今かと待っていた。
キノコの下準備は娘によって終わっていた。
好き焼き鍋から、
キノコがはみ出している。
クリタケと、舞茸をまずぶち込んで、
少し水分が抜けたところで、
モトアシを投入した。
すき焼きのタレをぶっかけて、
肉の味をキノコの旨味に馴染ませる。
この光景は飛騨牛がはみ出すより嬉しい。
ここでまず「我が家の首領様」が飛騨牛を食される。
それを厳かに待ち、
鍋に蓋をする。
待つこと数分で、
世界最高のすき焼きが誕生した。
一回り縮んで、ぬめりが出たモトアシは、
松茸など吹き飛ばすほど旨い。
満を持して登場したすき焼きの名脇役だ。
ここで卵を割る。
卵をかき混ぜずに、
白身だけに付けて温度を下げる。
このまま食べるのも好きだ。
そしてビールをギュットあおる。
堪らない魅力だ。
しかし、
天然物には思わぬ副産物もある。
「お父さん、良い物見せてやろうか」
と娘が小悪魔のような笑みを見せた。
キノコの載ったザルをどけると、
なにやら胡椒の様なモノが散らばっている。
見てると一つ一つがワープするでは無いか。
ぴょん、ぴょんと視界から消える。
凄く早く動くので消えたように見える。
キノコに付いていた虫だった。
虫が付くほど安全な証だ。
佐々木さんに頂いた、
純米酒を頂き、
美味いすき焼きはあっという間に胃袋に収まった。
鍋に馴染んだモトアシの味は、
慣らしの終わったWRX STIの味そのものだった。
たらふく食べると、
体重増加が気になる。
でも人間には必要な重さがある。
それと同じように、
WRXにも必要な重さがある。
新型STIは重さを意外に感じない。
夜も更けたプールに立つ。
体の切れに悪さを覚えたら泳ぐことにしている、
自己弁護のようで申し訳ないが、
2日連続で泳いだ。
木曜の記録は、
極めて良い結果だった。
やはり大きさに合わせた重さも重要だ。
WRXにもシンプルさが似合う。
それを実感する、
楽しい旅だった。
でかい羽根は必要無いし、
STIに限ればトランクリップスポイラーも無用だ。
その方がマッシブで、
黒いボディが獰猛に見える。
品の良い締まった野生感がとてもステキで、
用意していたSTI製のホイールより、
黒く塗られたホイールの相性が良い。
高価な鍛造ホイールはレヴォーグの物となった。
これはこれですこぶる似合う。
以前ほどビルシュタインサスペンションの必要性も感じなかった。
率直に言うと、
カヤバのサスに味が有る。
この会社の製品は、
物凄く良くなった。
あまりお金を掛けていない不十分なダンパーなら、
ビルシュタインにすることで効果が出るが、
最近ではその差は簡単に体感できない。
だから最も安いSTIが最善の選択だ。
「なんて商売が下手だろう」と自らを嘆いた。
いつもベースグレードが良いと言い切ってしまう(笑)
おわり