新型レガシィ アウトバックは予想以上に快適だった。
東京を往復して得たリアルな情報をお届けする。
1週間前には鈴鹿ツインサーキットでB4を試した。
20分ほど自由自在に走らせて、
気持ちの良い走りに感動した。
今度はアウトバックをロングツーリングで試した。
その結果、アウトバックとB4に、
男女のような性の違いを感じた。
その新鮮な驚きは、
洞察力を刺激した。
XVで既に成功させた商品戦略を、
恐らくアウトバックでも進めるつもりだったのだろう。
レガシィで思いとどまったのは正しい判断だ。まるで男女の性のように異なる二つの個性が混在する、
新たなレガシィブランドはとても楽しい。
アウトバックに長時間乗ると、「レガシィを極めたな」と感じる。
些細なことだが新鮮だった。
たとえば出張に備え大宮主任がメーターを調整した。
「燃費の良さを表現して緑色にしました」と言う。
始めは違和感があったが、
今ではすっかり慣れて目に優しい。
日中でもヘッドライトを付けて走るので、
メーターの照度調節を最高にする。
新型の調節ダイヤルを操作しても、
全く変化しない。
良く解らないまま走り続けたが、
トンネルに入り謎が解けた。
暗くなればオートライトのセンサーで照度を自動調整する。
調整しなくても夜になればメーターの照度を落とし、
朝になれば明るくなる。
飛び道具は無いけれど、
「レガシィとは何か」に狙いを定め、
丁寧に造り込まれた。
Newレガシィの真の良さは、
高速道路を走らないと解らない。
レーンチェンジや、
高速からのブレーキングでクルマの姿勢変化が少ない。
ステアリング、ブレーキ、アクセル、路面状況など、
クルマの姿勢に変化を与える要素はたくさんある。
どの要素に対しても、
クルマの姿勢があまり変わらず、
思うように動く。
コーナリングのロールは少なく、
動きはシャープだ。
けれども乗り心地は穏やかでとてもステキだ。
クルマの荷重が適切に移動し、
4輪の接地性もずば抜けて良い。
それが安心感につながる。
車高が高いのに、どうして不安定にならないのか。
荷重変化が穏やかな理由はサスペンションにある。
まず4輪独立サスのトラベルの量が多い。
多いから抑揚が効き懐の深い乗り味になる。
フルバンプに近い状態から、
一気に伸びてもしっかり路面を掴む。
だから下り坂でブレーキを掛けた時も、
本当に気持ちが良くスムーズに減速する。

天気が良いので気持ちが良い。
でも強い風が吹いていた。
高速道路上を強風が吹き交うと、
安定性の悪いクルマには酷だ。
ちょうど眼の前にアウトランダーが現れた。

車線規制になり少し速度が落ちたのに、
風の影響を受けると、
走行車線を左右に揺れながら不安定に走った。
その時アウトバックは、
風が吹いていることさえ全く意識させなかった。
前輪トレッドの等価剛性は30%アップも高くなった。
その効果もあるのだろうが、
それだけでは絶対にこの安定性を出すことは無理だ。
新しいレガシィにしか感じない、
絶対的な安心感の高さは、
ありとあらゆる道を走り込み、
辿り着いた結論なのか。
それがアウトバックで強い風の中を2時間走り、
一番驚いたことだった。
奇麗な紅葉を眺めながら、
ほぼノンストップで東京まで駆け抜けた。
新型アウトバックの、
スタビレックスライドにも感動した。
これはグランドクルーザーの要件を満たすための、
必須装備だと言える。
このダンパーも「気持ち良く」どこまでも走るための必須アイテムだ。
我を忘れるほど感動を繰り返した。

ここまでの区間はほぼ80%に渡りS#モードを使用した。
元気良く走ると当然のことながら燃費は伸びない。
それでも、274km走った時点で、
走行可能距離は247kmと表示された。
その驚くほどの高速スタビリティに、
燃費を考える事がばかばかしく思えた。
そのため平均燃費は僅かに二桁を下回る9.7km/lだった。
道路も比較的空いていて、
予定より早く東京に着いた。
会議が開かれるホテルイースト21に入ると、
内田PGMが目の前を歩いて行く。
会うのは初めてだが、
その姿からクルマ好きに共通するオーラが出ていた。
鈴鹿でB4を操りながら、
毛塚主査は気になることを言った。
「新しい試みを色々加え、
そのたびにPGMとアチコチ良く走り回りました」
スバルの開発者達は、
皆クルマ好きだ。
そして良いクルマを産む者ほど、
競技にも目を向ける。

古いプレイドライブが頭に浮かび、
本棚から探し出した。
芸文社の代表的なモータースポーツ誌だ。

群馬には熱いモータースポーツの血が流れている。
カラーグラビアには、

STIの看板男の姿もあった。
渋谷真と辰己英治は、
スバルの社員としてではなく、
プライベートで腕を競い合っていた。
それと同じ匂いが内田PGMから漂った。
彼は間違いなくスバリストだ。
初めて新型B4に跨がった時、瞬時にその走りに痺れた。
この時きっと、
内田PGMと同じ「スバル好きの血」が共鳴したのだろう。
思わず「内田さん、新しいレガシィ良いですね」と声を掛けた。
その時のキョトンとした顔が忘れられない。
エンジンをFB25だけに絞った事に共感し、
新型アウトバックに乗ってきたと言うと、
「ここまでの燃費はどうでしたか?」と質問された。
10㎞を少し割ったことを知ると、
「帰路は是非14.7km/lの燃費を目指して欲しい」と言う。
JC08値を超えろと言うことだ。
「それなら簡単、むしろ15キロ以上軽く行く」
と思わず口にした。
その自信があった。

吉永社長にお目に掛かった。
消費税が増税された4月以降の国内販売は、
想定以上に厳しかった。
数値上の結果より実質的な落ち込みは更に酷い。
全体の需要はマイナス2.8%と発表されているが、
とてもそんなもんじゃ無いと言われた。
その通りだと思う。
毎月苦労の積み重ねだ。
ただ明るい状況があるのも事実。
一つはレヴォーグの評判がとても良い事だ。
スバルは初代レガシィの開発を境に、
ドイツを中心とした欧州でクルマ造りを進めた。
NBRに開発の拠点を置き、
WRCでも爪を研いできた。
しかしドイツのアウトバーンを走る性能と、
米国でフリーウエィを走る性能は両立しない。
その上で日本には日本の特質があり、
国内のスバリストがそっぽを向くような車では、
会社の存在自体が危うくなる。
その全ての矛盾を解決したのが、
レヴォーグだ。
吉永社長がレヴォーグの投入を加速したことで、
増税後の暗い販売環境の中でも、
スバルは輝きを失わなかった。
その結果、
レガシィを更に大きく豊かに出来たので、
アメリカで強い支持を受けた。
吉永社長はこう言った。
「米国でこれほど強い支持を受けたことは、国内でも利する要素である」と。
こうしてレガシィはアメリカで成功し、
満を持して日本市場に導入された。
これでスバルのラインナップは、
かつてないほど充実した。
既に吉永社長は、
「際立とう2020」という中期経営ビジョン発表している。
「長いスパンで経営計画を考え、
お客様の気持ちの中に際立つようなブランドに向かうのだ」
と彼は言った。
たとえば「色」だ。
具体的に何をするのかも明言した。
今後は「カラー特装」を積極的に展開し、
製造現場も含め更に際立つ商品群に育て上げるそうだ。
これはとても楽しみだ。
ちなみに上半期にレヴォーグは27.326台売れた。
遂に発売以来、
アイサイト装着車も累計で25万台を超えた。
スバルの登録車全体でみると、
実に86%の装着率だ。
先日JNCAPの予防安全評価でも、
「最高評価」を獲得した。
アイサイトが凄いのは、
例えバージョンアップしても、
以前からあるシステムに古さを感じさせないことだ。
ステレオカメラの技術は、
まだまだアドバンテージが高い。
吉永社長にレガシィの良さを伝えた。
「今度のレガシィは車格と品質のバランスがとても良く、
エンジンを2.5のNAに絞った事が素晴らしい」
そして、
「実質的に価格を引き下げたのに走りが凄い。
今日の強風下をびくともせずここまで来ました」
といった。
「だから日本でも売れる」と続けると、
とても嬉しそうに頷かれた。
以前からスバルは、
高級車を作るべきメーカーでは無いと思っている。
でも高性能車は作るべきだ。
その高性能車は多くの人に行き渡る価格設定が前提だ。
新型レガシィは、
その点で理想のクルマになった。
その上で、
「吉永社長が乗るクルマはまだ出ていないね」
と告げた(笑)。
すると、
「その話をもっとしよう」と言うことになった。
「吉永さんにはH6のB4、
ボクにはディーゼルのOUTBACKが似合う」
それが合い言葉になった。
まだまだ時間がかかるだろうが、
それが実現出来るように、
まず今のラインアップをしっかり売る。

それが一番大切だ。
別れ際に写真を撮った。
帰社してこの写真を見た妻から、
「あまりにも態度がでかい」と咎められた。
確かにそう見えるので、
少し言い訳させて欲しい(笑)。
宴会場を出た時、
すぐ側に居たスバル関係者に、
「ちょっとシャッターを押して戴けませんか」
とカメラを渡すと、恐れおののくように、
「い、い嫌です」と後ずさりした(笑)
「なんで、どうして、いいじゃないの」
とさらに頼むと、
すかさず吉永社長が「写真撮らなきゃダメだよ~~」言われた。
周囲は笑いの渦に包まれ、
その社員もようやくカメラを受け取り、
写真を撮影してくれた。
「人の振り見てわが振り直せという」

何故スバル関係者は写真をあれほど怖がるのか。
この画像がトラウマなのか。
我が身にも当てはまり、
大いに反省した。
そう言えば最近の清田代理は、
やけにデリケートだ。
時には影のように付きまとい、
写真を撮ると「ブログに使わないで」と懇願する。
そんなに心配しなくて良い。
油断して本心を見せる男の方が、
尻尾しか見せない人よりも100倍魅力的だ。
いま、スバルが元気な理由は、
5代目レガシィが米国で正統な評価を受けたことに端を成す。
久しぶりに日月(たちもり)丈志さんとゆっくりお話しできた。

5代目がデビューした頃は、
米国で年間に20万台売るのがやっとだった。
それが今では何と50万台に手が届くところまで成長した。
倍以上売れるようになった理由はシンプルだった。
「スバルって凄くいいよね」と、
みんなから言って貰えるようになったからだと言う。
その立役者が日月さんだ。
スバルオブアメリカ(SOA)の社長として大活躍し、
今年から商品企画本部に凱旋され、
取締役専務執行役員として活躍されている。
彼が来たからには、
これからスバルは益々輝く。
今後リリースされるクルマは、
強い光を放つだろう。
日月専務の後を受け、
SOAの新社長となった中村知美さんとも縁が深い。
平成8年にB-factionブランドを立ち上げた時、
彼は清田さんのように中津スバルを担当する部長代理だった。
10年ほど前に、
北海道で繰り広げられた「第一回ラリージャパン」でお目に掛かった。
スバルが見事に優勝した時だ。
その時はマーケティング推進部長として、
辣腕をふるっていた。
それ以来会ったことは無いが、
12年の時を経てスバルの羅針盤となる役職に就かれた。
彼には心から「おめでとう」と伝えたい。
大ヒットになった新レガシィと、
彼の笑顔が重なった。
朝を迎えた。

絶好の天気だ。
内田PGMとの約束を果たさねばならないが、
簡単に達成しても面白くない。
そこで都内の道路をリアルに移動し、
都民になった気持ちでクルマの扱いやすさを試した。

ホテルをチェックアウトした。
一般路を渋谷方面に向かう前に
トリップメーターAをリセット。
ここから帰路の燃費を計測する。

時刻は午前8時12分。
気温は19℃だった。
東京は活況に溢れている。
都内は建設ラッシュだ。
地方の閉塞感とは無縁だと感じた。

道が混んでノロノロ運転になった。
交通事故だ。
ラッシュアワーなのでたちまち長い渋滞が出来た。

既にご存じの方も多いだろう。
スバルは本社を恵比寿に移転した。
そこを目指してアウトバックを走らせた。

広尾に入り目的地に近づいた。
しかしスバルビルは見えない。
地図が必要だ。

目的地までもう少しだ。
野生の勘を失わないためナビはまだ装着していない。
方向の感覚が鈍くなったのだろうか。
目と鼻の先なのに辿り着けない。
路肩に止めてホテルからの距離を見た。
ここまでの燃費は8.2kmで、
アイドリングストップした時間は26分以上だった。
節約した燃料も馬鹿にならない。
670㎜リットルも無駄にならなかった。

再び走り始めると、
目の前に有名な場所が現れた。
そこで路肩に車を停め、
ハザードを付けた。

車を降りて、
恵比寿ガーデンプレイスに入った。

洒落た建物の奥へ向かい、
ガードマンに道を尋ねた。

近寄って「スバルビルを知りませんか」と聞くと、
「知らない」と言う。
仕方が無いので、
「駅はどっちの方向ですか」と聞くと、
「あっちです」と指を指した。
その方向に目を向けると、

目指す建物の看板だけが見えていた。
クルマに戻ると、

アウトバックの後ろにベンツがいた。
この付近のベンツ遭遇率は異常に高い。
街の風景を壊さないアウトバックに惚れ直した。
目指す方向に向かった。

スバルビルはどこだ。

方向に狂いは無いはずだ。
でもビルが見えない。
左手にガラス張りのビルがある。
そのビルに気を取られ、

左折しなければいけないのに、
通り過ぎた。

スバルビルは目の前の交差点の左にある。
コンビニの数軒先も似たようなビルだ。
どこにも「ス」の字さえ無い。
人が居る。
「スバルビルを知りませんか」
と聞くと、
「知らない」と言う。
記憶を辿り、
もう一周した。
ようやく辿り着いたスバルビルは、
美しい姿に変わっていた。

真向かいのビルに、
有料駐車場がある。
そこにアウトバックを入れた。

このサイズでも収容できるように作られていた。
他にもコイン駐車場がいくらでもある。
都内で置き場所に苦労しない時代になった。
30分300円くらいが相場だ。

何も不自由すること無く、
クルマを置くことが出来た。
1リットル近く燃料を節約できた。
スバルビルに暫く滞在し、
恵比寿を後にした。
ここで一旦生産直後からのトータル燃費を再確認した。

トリップメーターをBにすると、
オドメーターの距離と一致する。
ラインアウトしてから、
ここまでの比較的過酷な走行状況で、
どんな燃費なのか。
新車から863㎞走り、
燃費は10.2kmだ。
これを未来のオーナーへの判断基準として提供したい。
駐車場を出て、

渋谷に向かった。
明治通りを走り新宿から中央自動車道に乗るためだ。
相変わらず工事が盛んで走り難い。
おっと、面白いクルマだ。

目の前に現れたのは、
アウトバックを真っ先にコピーしたブランドだ。
あちらの最新型はどのようにモデルチェンジしたのだろうか。
気になる存在だ。

新宿に着き、
初台から高速道路に乗った。

そこまで渋滞が酷く燃費は最悪を記録した。
ところが高速道路に乗った瞬間に状況は一変した。

僅かな距離でグングン回復する。

走行可能距離も比例して増える。
こういう時は実に数値を見るのが楽しくなる。

更に伸びる。
中央自動車道で燃費を計ると、
東に向かって走るより、
西に向かう方が不利に感じるが、
そうでも無いらしい。
リッター15㎞がいよいよ目前となった。この時、走行可能距離とトリップメーターを見比べ、確実にワンタンクで帰還できると確証を持った。
そして中津川インターに着いた。
直後に撮影した証拠だ。
リッター当たり15.3kmを記録した。
決して我慢を重ねた燃費では無い。
そしてもう一つ、
東京をワンタンクで走り切ることが出来た。
成功させるのには自信があったが、

インターチェンジを出で、
すぐ中津スバルの左側にあるガソリンスタンドに滑り込んだ。
給油すると、

燃料は59リットル入った。
このガソリンスタンドで満タンにして出発し、

結局一度も給油することなく無事戻れた。
店員も驚く計算通りの結果は、

クルマの性能を、
余すこと無く引き出せる、
素直なクルマに跨がったからだ。

帰路のアイドリングストップは45分49秒だった。
節約した燃料1ℓオーバー。
実に楽しい旅だった。
スバルビルの情報もお楽しみに。