秋の飛騨路を眺めながら高山に向かった
この列車に乗って、
何となく不自然さを感じた。
何かが普通じゃない。
奇麗で快適なんだけど、
室内が何となく奇妙なんだ。
空いていたので、
自由に動き回る事が出来た。
窓はなぜか汚くて外を見難い。
乱反射が厳しく、
確かにワイドビューなんだけど、
そのクオリティが何となく低い。
せっかくの絶景が、
これでは全く楽しめない。
足元も変なんだ。
足を踏み外すまで気がつかなかったけど、
通路には奇妙な凹凸がある。
脚をくじくところだった。
ビックリした。
よく見たら通路が一段低くなっている。
これは独特の構造だ。
これは電車だと思っていたが、
いわゆる気動車だった。
あらゆるところに軽量化を試み、
その結果ワイドビューな窓も樹脂なのだろう。
内燃機関の鼓動が心地よかった。
予定通り11時前に高山駅に着き、
風情のある改札を抜けると、
懐かしさの溢れた、
高山の街が広がっていた。
気動車をたて続けに乗り、
思い出したことがある。
昔はこの分野におけるかなりのシェアを、
スバルの富士重工が持っていた。
鉄道車両の製造から撤退してから、
もうかなりの年月が過ぎた。
でも、
輸送人員の少ない鉄道区間において、
それらは今でも活躍している。
大がかりな気動車ではなく、
レールバスのような、
面白い交通機関として生き残っている。
明知鉄道もその一つだ。
中津川の隣にある恵那市から、
南にある明智を結ぶ第三セクターのローカル線だ。
富士重工製のレールバスが現役で活躍している。
乗り物が好きなむっちゃんは、
これに乗るとご機嫌だ。
やたら運転席に入ろうとするので、
繋いでおかないと心配だ。
やはりヒトは電車よりも、
内燃機関を持つ乗り物に愛着を持つ。
鉄道博物館へ行くと、
やっぱり主は蒸気機関車だ。
今でもイキモノのような、
呼吸と鼓動に惚れている。
あの吐息に魅せられ、
離れられないヒトは多い。
三菱製のC57が、
東芝製の電気機関車に変遷した。
両車には35年の隔たりがあるが、
画期的な変化では無い。
東海道新幹線が全国に広がったが、
軌道上を鉄輪で駆け抜けるという基本に、
どれも変わりは無い。
そこに新しい乗り物が現れた。
リニアモーターカーだ。
駆動用の鉄輪も無ければ、
電線も無ければ、
モーターも内燃機関も無い。
但し冷凍機を駆動するために、
スターリングエンジンを搭載しているが、
それは「外燃機」である。
蒸気機関車もリニアモーターカーも、
外燃機に頼るところに面白さがある。
リニアモーターカーの姿を見ると、
決して画期的ではないし、
着陸用のゴムタイヤを持ってる。
これらは全て軌道上を往復するだけで、
自由気ままに動き回ることは出来ない。
従って自動車家畜論で言うところの、
「家畜」には相当しない。
けれども、
クルマは家畜の末裔だ。
高山で受け取ったレガシィを走らせ、
4時間近く掛かった往路を、
2時間ほどで帰る。
「鉄道に乗ると疲れるのに、
クルマだとやっぱり疲れないな」
改めて実感した。
自由自在に走れる内燃機関が好きなんだ。
クルマ好きには堪らない、
BOXER4のエキゾーストサウンド。
鞭の代わりの右足と、
手綱を引く両腕。
人馬一体感を楽しみながら、
高山から帰る途中、偶然にも素敵な場所を見つけた。凄いな。
日本には独自の文化があり、
今でも大切に育まれている。
神社や仏閣に来ると、
何故心が和むのか。
それはオトナになったからだろう。
オトナには重い責任も生じるが、
数々の「特権」も持てるようになる。
クルマは典型的なオトナの特権だ。
鉄道を使えばコドモ一人でも遠くへ行ける。
だが、
コドモがクルマを操り遠くへは行けない。
若者がクルマ離れして問題だと言うが、
問題と言うよりも、
現在の状態では仕方が無い事だろう。
面白くないからだ。
これは比較級である。
○○に比べてクルマは楽しいか。
そこに様々な要素が媒介する。
以前、
「良いマーケティングはクルマを駄目にする」
と伝えた。
同時に、
「良いマーケティングは店造りもダメにする」と伝えた。
そのココロは、
永続性より小手先の安易な手法を優先するからだ。
地道にファン造りを続けるより、
小手先で刺す方が効果が解りやすい。
ところが更に困ったことに、
今や政治そのものも、
「安易なマーケティング」の急先鋒に踊らされている。
民主党政権になったとき、
二大政党の道を歩むには時期尚早と思った。
結局その通りなり、
その間の出来事はほぼ無駄になった。
再び自民党が政権を握り、
お坊ちゃん首相が財界の手のひらで踊らされると、
足元しか「見えない」政治に終始するようになった。
消費税導入後の、
激烈な販売環境の変化を肌で知らない。
だから、
相変わらずクルマに掛かる重税感は消えない。
それどころか、
ようやく日本に生まれつつある、
自動車文化まで叩き潰そうとしている。
旧いクルマへの追徴課税は、
自動車先進国にとって愚かな行為だ。
「ミライ」と言う素晴らしいクルマが生まれた。
トヨタ自動車が世界に先んじて、
フューエルセルを搭載したクルマを誕生させた。
これには敬意を払い、
心から「おめでとうございます」と伝えたい。
ただのミライならニュースに氾濫している。
けれども、
このGAZOOがスポーツサスを組んだ、
モータースポーツバージョンを見た人は少ないだろう。
新城ラリーでゼロカーとして走り、
オートポリスで開催されたプリウスカップでも展示された。
産油国に振りまわされない、
日本で独自調達できるエネルギーを、
リアルワールドで遂に活かした。
更に付け加えたい事は、
トヨタがメディアに先がけ、
ラリー会場でお披露目した事だ。
自動車文化を重視する、
クルマファンを大切にしている。
これは素晴らしい事なのだ。
スバルは最高の相手とタッグを組めた。
それを改めて誇りに思う。
その上で若者が「クルマは楽しいな」と思えるような、
インフラの整備を「国」に希望したい。
だからこそ言いたいことがある。
ようやく育ちつつある自動車文化を、
摘み取るような真似をせず、
大切に育む事べきだろう。
国は「旧車」と言われる文化遺産を、
もっと大切にうるよう考えて欲しい。
「古いクルマを作る」などと、
まるで寝言のようなセリフが、
人気取りに奔走するアホな政治家から聞こえてくる。
それよりも先にやることがある。
現在使われているクルマを、
もっと大切にさせることだ。
旧車は燃費が悪く排気ガスを撒き散らすと言うが、
車検を的確に通過させることを前提に、
不公平な税金を課すべきでは無い。
言い換えれば、
旧車を大事にする人を、
不公平に扱ってはいけない。
旧車の自動車税や重量税に、
大きな差を付ける事は不当だ。
クルマ好きのオトナは本当に多い。
旧車を楽しむヒトも居れば、
一台のクルマを長期間に渡り愛するヒトも居る。
神戸の鈴木さんのように、
S402をリフレッシュする人も居る。
4代目の優れた味を、
STIの匠の技で煮詰めた逸品だ。
その味が忘れられず、
長く乗りたいと仰った。
美味しいお土産をありがとうございました。
静岡の淺場さんも、
念願のSVXを当社に持ち込まれた。
想いが共鳴したからだろう。
整備後に感想を戴いた。
「何が不満かと言えば、自制心を維持する事です。
乗ってみてアルシオーネ本来の走りは”この感じ”と思いました」
喜んで頂けて嬉しい。
横浜から竹内さんがいらっしゃって、
アウトバックのリフレッシュを希望された。
偶然にも引き取りの淺場さんと、
持ち込みの竹内さんが、
同じ電車で中津川駅に到着された。
鉄道を使いクルマを更に深く楽しむ。
そんな「オトナの遊び」を楽しめる時代が、
もうすぐやって来るだろう。
自民党の坊ちゃん首相でかまわないので、
目先の増税延長ではなく、
ホンモノの政治を進めて欲しい。
不況に喘ぎながら、
これから年末の最後の商戦に向かおうとしたが、
一気に風向きが変わった。
今更本当に選挙など必要なのか。
立場の危うい地方の議員や、
大臣を順番待ちしている政治家達からの、
見えない圧力に踊っている。
スバルも同じなんだよ。
安直なマーケティングが、
いつまでも上手く続くはずが無い。
調子に乗るとしっぺ返しを喰らう。
だから早く気付いた方が良いだろう。
レヴォーグの立ち上がりを覚えているか。
動くクルマを見ないまま、
スバルを信じて注文したヒトタチが何人居たのか。
それをもう一度胸に刻もう。
中津スバルのお客様は、
レヴォーグを今か今かと待っていた、
発売の延期が発表された時も、
誰一人として一言の文句も発さなかった。
このようなファンの存在を、
絶対に忘れてはいけない。
彼らに支えられている事を忘れ、
「恵比寿」を向いた出向者の姿勢で、
安易なマーケティングに踊らされてはならぬ。
手っ取り早く売る事よりも、
真のファンを喜ばせ、
それを増やす方が良い。
マリオもその一人だ。
ジャーナリズムを重視するが、
その一方で純粋なスバリストでもある。
マリオから美味しいお土産を戴いた。
この狭山茶は、
茶道を極める彼らしい逸品だ。
彼はジャーナリズムの面から、
ドライブエクスペリエに興味を持った。
この日はちょうどクラブレガシィ誌の取材日だった。
古川編集長や、
雪岡カメラマンと共に、
何故この企画を考えたのかと真意を聞かれた。
メーカーさえやらない事を、
なぜ地方の弱小一ディーラーがやろうとするのか。
それを興味深そうに質問された。
それはね、
「まず櫂より始めよ」と言うではないか。
クルマの運転が大好きで、
もっと上手くなりたいと思う人に、
何が出来るのかを考える。
次にアイディアが浮かんだら、
あれこれ思案するよりも、
まず実行する事が先なんだ。
それを聞くと、
「社長らしい!」とマリオが叫んだ。
無償サービスじゃない。
だから興味が無ければやる必要はない。
お金を払ってもいいから、
レクチャーして欲しいと言われたら、
損得抜きで一所懸命やる。
まあ夢中になっちゃうから、
時間的に採算が合わないけどね(笑)
記念すべきDEの第一号は、
現在単身で東京にお住いの中田さんだ。
フランスのカンヌに行かれたそうで、
ステキなお土産を戴いた。
美味しいチョコレートと、
珍しいオリーブオイルを、
ありがとうございました。
メディアで活躍する一人として、
カンヌ映画祭に参加された。
このレクチャーが、
運転を見直す良い機会になったそうだ。
ステアリングワークの奥深さが解るだろう。
ドイツで学ぶ最新の理論は、
日本における最良の理論だ。
このAプランは1時間の基礎レクチャーだ。
名古屋から水野さんが来訪され、
DEを体験された。
本来ならAからBに移行が原則だが、
VABを本気で「飼う」つもりだと聞き、
今回特別にBプランから始めた。
中津川の環境は、
クルマ好きとって恵まれている。
名古屋や東京など、
都会からもさほど遠くない。
豊かな自然に溢れ、
クルマが喜ぶ道がアチコチに存在する。
時には、
更に遠い所からドライブエクスペリエの参加申し込みを受ける。
牛尾さんは現在香港に駐在中だ。
帰国したらDEを受けたいと申し込みが入った。
限られた帰国の合間に、
順を追ってDEを体験された。
美味しいお土産をありがとうございました。
Cプランにも参加され、
スキルアップを目指された。
スバルが大好きななんだ。
そんなヒトは、
運転すること自体も大好きだ。
牛尾さんは仕事や趣味で、
他の珍しい乗り物も操る。
例えば、
こんな資料を見せて戴いた。
まだスバルがポラリスと蜜月だった頃、
牛尾さんは面白い仕事に没頭していた。
それがこのウオータークラフトだ。
エンジンはスバルブランドの「ロビン」なので、
富士重工に出向されていた時もあったと言う。
並んで疾走する、
デモ機の左側が牛尾パイロットだ。
このウオータークラフトは、
残念ながら日本で成功を納めなかった。
でも相当な台数をアメリカで売切った。
更に面白い話を聞かせていただいた。
この本にはその時の様子が記載されている。
スバルエンジンを搭載した、
面白い選手権が開催されていた。
このレーシングホバークラフトは、
滅多に見るこたが出来ない貴重なものだ。
その改造部門で、
見事優勝した経歴をお持ちだ。
クルマの競技に当てはめると、
最も過激なダートラのDクラスだろう。
その機体を操る牛尾さんの姿が載っている。
ロビンエンジンをチューンナップし、
レーシングホバークラフトに搭載した最強の愛機は、
見事に総合優勝を勝ち取った。
彼はその世界のワークスマシンを駆り、
富士重工の心臓を堪能した。
だからこそ、
WRXが大好きなのだ。
紅葉の美しい高原を6時間走った。
あっという間に時が過ぎた。
その翌日、
名古屋から鈴木さんが来訪されえ、
2度目のDEに参加された。
これはマニュアルトランスミッションの魅力を、
更に深めるためのレクチャーだった。
お客様感謝ディの特別プログラムを、
2度目のDEとして予約された。
その感謝ディで、
お客様からアンケートを戴いた。
どのようにDEを捉えているのか。
その結果、
遠くの方だけでなく、
この地域のお客様も、
かなり興味をお持ちだと解った。
もちろん、
興味がないと仰る方も多い。
ただ予想を上回る回答だった。
想像していた以上に興味をお持ちだ。
これは勇気になった。
アンケート総数96件中、
「はい」 と答えたヒトが29名 30%
「いいえ」と答えたヒトが43名 45%
「無回答」が24名 25%
という結果だった。
鈴木さんも天候に恵まれながら、
Cプランに参加された。
自動車家畜論にも精通しているので、
WRXと人車一体の走りを目指した。
元気なクルマで元気な場所へ。
こうしてココロもカラダもリフレッシュ!
クルマは大切な文化財だ。
自然と同じように大切に残そう。
東京出張後に、
次の取材が待っていた。
それは今年の夏、
ある残暑が厳しい日に、
岡さんが当社を訪れた。
彼のお友達が笹子トンネルの事故で命を落とした。
そう、
あのシェアハウスに住んでいた若者達だ。
亡くなった友人の自宅を訪問する前に、
岡さんは当社のインプレッサWRXを見学された。
それがご遺族に伝わると、
皆さんとても喜ばれたらしい。
それを聞いた朝日新聞の記者から、
記事にまとめたいと取材を申し込まれた。
丁度二年目にあたる、
12月2日の記事を書くために、
若い優秀な人物が中津スバルにやって来た。
偶然にもその日は、
日本中である事が一斉に進められる。
坊ちゃん政治家の我がままで、
12月2日は選挙の公示日になった。
そんな中で、
笹子トンネルの崩落事故が、
人々の記憶から消えてしまわないために記事を書く。
熱い!
ご遺族が一番懸念する、
「記憶の風化」を何とか食い止めたい。
彼はそう言った。
年に一度は蘇ったWRXを走らせ、
その願いに一役買うのも良いだろう。
これも重要な文化財だ。
大切に残す。
2014年11月24日の記事を更新