土曜日に東京から秋田さんがいらっしゃった。

B4をお預かりしてからほぼ一ヶ月が過ぎた。
特急「しなの」で景色の変わった木曽路を楽しまれたそうだ。
確かに新宿から中津川へ塩尻を経由すると、
車窓がとても美しい。
つい先日まで紅葉のシーズンだった。
クルマでもあれほど楽しめるのだから、
車窓からの眺めも格別だろう。
リフレッシュメンテナンスで、
B4のシャシーを深部まで徹底的に蘇らせた。
同乗走行して感想を尋ねると、
あまりの変化に驚かれたようだった。
新品の部品をふんだんに使い、
本来の性能を取り戻した。
それに加え、
整備士の手で隅々まで締め付けられたシャシーは、
みずみずしい性能も手に入れた。
それが良い味として、
オーナーに伝わる。
この魅力があるから、
リフレッシュメンテナンスは、
難しいけれど楽しい。

秋田さんにステキなお土産を戴いた。
包装紙を見ただけで、「おっ!」と直感した。
吉祥寺「小ざさ」の最中だ。

この手作りの和菓子には、
添加物が一切入っていない。

みずみずしく、
柔らかい甘さだ。
まさにこの味はリフレッシュメンテナンス後のB4に通じる。
大げさかもしれないが、
人の手で心を込めないと、
この味は出ない。
今度の年改で、
インプレッサは高性能に磨かれた。
あまりの変貌ぶりに驚き、
エンジンとトランスミッションの性能を高め、
ダンパーとステアリングギヤ比の設定を見直した。
インプレッサから感じた、
走りのクオリティ向上や、
素晴らしいハンドリングもまた、
「小ざさの最中」に通じる味だ。
インプレッサの改良で創り出した味は、
スバルの開発者達にしか出せないかもしれない。
和菓子屋なのに洋菓子も作る人がいる。
「それがどうした」と言われるかもしれないが、
実はあまり好きになれない。
和洋折衷も良いが、
優れた味を産み出すには「究極の奥義」が必要だ。
それは子々孫々にまで伝わるような、
秘伝だ。
軸足が二つ以上あっては、
そう簡単に極めることは出来ないだろう。
小ざさに「たかが最中」と言わせない凄味を感じる。
モノ作りの観点から見ると、
菓子にもクルマにも「究極の奥義」が必要だ。
味を大切にするクルマは飽きが来ない。
良いモノほど長く使える。
手を掛けると味が蘇る。
なるほどそういう訳か。
味はやっぱり大切なのだ。
スバルの味も、
「究極の奥義」で創り出されている。
Active Styleに乗って、
スバルには「秘伝」があると直感した。
「The ツーリングワゴン」と定義づけたのは、
こうした理由からだ。
するとXVは対極的なインプレッサだ。

けれどもBP系のツーリングワゴンに対して、
これがアウトバックかというと全く異なる。
XVには独特の世界があるからだ。
生田さんにもらった「三日月麺麭」を食べて、
なるほど、と実感した。
オーブントースターに入れ炙ると、生地の持つ旨味が引き立つ。
表面のコーティングがちょっと焦げるくらいが良い。
サクッと噛んだ瞬間に、脳みそまで染み渡る香りのハーモニーは、
何個でも食べたくなる魔力を持つ。

XVを連想する味だ。
Active Styleも同じルーフレールを持っているが、
XVは腰下のデザインが異なるので、
背の高さも加わり塊感の強いスタイルだ。
ハイブリッドも含めたXV系は、
フォレスターと同じ時期にデビューした。
だから外観にほとんど変化は無い。

インプレッサ系のルーフアンテナは、
以前と変わらない可倒式のロッドだ。
シャークフィンが好きな人は付け替える事が出来る。
爆弾低気圧が暴れ始めた頃、
中津川を出発した。

最新のXVを試すには、
最高のシチュエーションだった。
まず高速道路に乗り、
EyeSight Ver.3を試す。
他のVer.3に比べインプレッサ用は独特の仕様になっている。
まず3つの新機能を羅列する。
・プリクラッシュステアリングアシスト
・アクティヴレーンキープ
・AT誤発進抑制制御(後退速度リミッタ)
これらの中でプリクラッシュ「ステアレリング」アシストを持っていない。
ただし、衝突回避が可能な速度領域を大幅に高め、
歩行者横断への対応性能強化という点では全く同じ能力を持つ。

次にはみ出さない技術を活かした、
アクティヴレーンキープ機能には、
白線を認識する技術が欠かせない。
上のメーターに車間距離を示す中央のバーグラフが出ている。
その両脇に白線のマークがまだ出ていない。

車線にも色々ある。
実際にこうして写真にすると良く解るが、
実線もあれば点線もある。
EyeSightはどのように白線を認識するのか。
ステレオカメラという眼で、
車線中央から路肩に向け、
輝度急激な変化点を水平方向に探索する。
そして中にある画像処理エンジンという脳で、
「白線候補点」を算出する。
簡単に言うと、
この候補点を掴み、
実際の車線形状データを算出する。
この「候補点」という認識技術のおかげで、
複雑な車線も読み取ることが可能になった。

だから例えばこの様な雪筋を、
白線と認識しないよう判定する能力も備えている。
そして、
算出したデータを元に、
車線形状モデルを求め、
・車線曲率
・対車線ヨー角
・車線横位置
・先方横位置
を瞬時に算出する。

するとメーターの中に車線を認識したとメッセージが出る。
アクティブレーンキープには、
車線中央維持機能と、
車線逸脱抑制機能の二つがある。
右車線マークの上にあるのが、
メインスイッチ表示だ。
システムを使うためにはこれをONにする必要がある。

ACC(オートクルーズ)を作動させる必要は無い。
走行中にもし車線からはみ出しそうになると、
メインスイッチ表示が緑色に変わる。

運転者の操作を邪魔せず、
意図しない車線逸脱による事故被害を軽減させることが目的だ。
逸脱を防ぐためにEPS(電動パワーステアリング)を使う。
通常より運転者がステアリングを切り遅れた状況を認識し、
支援を始める。
運転者が切り遅れに対応するまでの余裕を多く取るために、
アシストを続ける。
最終的に逸脱支援が終わると、
運転者は自らステアリングを操作することで、
意図する車線内の横位置に復帰できる。
この車両挙動を発生させる制御技術を、
車線逸脱抑制と言い、
作動中は軽くステアリングに手応えを感じる。
もうひとつの機能である「車線中央維持」は無い。
中央維持を続けるためには、
より複雑なフィードバック制御が必要になる。
その上フィードフォワードも大切だ。
カーブを旋回するための操舵角を算出しなければならない。
フルモデルチェンジのタイミングで投入すべき技術と、
モデルの年度改良で投入できる技術をきちんと見極めている。
AWDやVDCのような車両制御技術も、
同じようにフルモデルチェンジで投入すべき事と、
そうで無いモノがある。
要するにどこまで安全性を追求するか、
実際に走らせて得た結論が製品に反映されている。
だから三つ目の新機能である、
AT誤後進抑制機能を装備している。
この機能はステレオカメラ、エンジンECU、VDCで構成されている。
そして二つの機能を持つ。
・後退飛び出し抑制機能
ブレーキと間違えてアクセルを踏んだ時、
後退時にも誤発進を抑制する。
アイサイトが「おかしい」と感じると、
クリープ加速度程度に抑制する。
・後退速度リミッター機能
アクセル操作だけでは、
踏み間違いだと認識できない場合に備え、
必要以上に加速しないよう設定できる。
低速(10kph)中速(15kph)高速(20kph)の三種類が選べ、
もちろん切ることも出来る。
いずれもペダル踏み間違いによる人身事故を防ぐことが目的だ。
なぜなら、
踏み間違い事故には次の大きな特徴がある。
・高齢者に多く発生している。
・踏み間違い事故の死亡率が高い。それは全ての交通人身事故平均値の17倍だ。
伊那市で高速道路を降りた。
激しい雪に見舞われ、
彼方此方で雪だまりが出来ていた。

こういう時にXVだと余裕が生まれる。
除雪車が残した雪だまりを、
モノともせずに乗り超える。
優れた走破性が魅力だ。

まだこの時は気温が高かった。
翌日の嵐の予感はしたものの、
気温は4℃を上回りっていた。
湿った雪が路面を覆い、
極めて滑りやすい危険な状況だった。
VDCを試す絶好のチャンスだ。

下りのカーブにワンステアリングアングルを保ったまま進入した。
橋が架かり路面のμが刻々と変わる。
この場所で縦方向の制動力は、
ABSで容易に確保できる。
少し速い速度でコーナーに入ると、
遠心力が働き始めタイヤのグリップが徐々に失われる。
そろそろ滑り始めるか・・・、
その瞬間に路面の雪が無くなりグリップがいきなり戻る。
こう言うシチュエーションは、
クルマの挙動が大きく乱れとても危ない。
XVのVDCは実に俊敏に働き、
即座にクルマを進行方向に向けた。
アクティブトルクベクタリングを持っていないが、
雪道での安定性に問題は無い。
むしろ、
アクティブトルクベクタリングは、
「何故動作したのか」とたまに不思議に思うことがある。
次の日は大寒波が襲来した。
雪が降り続き、国道も真っ白だった。
スバル車に最近ウインタースポーツタイヤを推奨している。
でも今回のようにいきなり雪が大量に降り、
強烈な寒波でカチカチに凍る状態だと、
一番滑らないタイヤを求める人も多い。
滑らないという点を最優先に考えれば、
やはりスタッドレスタイヤが一番安心だ。
様々な相談を戴くので、
ここ数年間でデビューしたタイヤで、
ダンロップのウインターマックスは、
耐久性も高いしお値段も手頃だ。

しかしブリジストンも負けていない。
フラッグシップスタッドレスは、
価格が高いのによく売れていて評判も良い。
XVで激しく雪が積もった路面を走ると、
スバルの確かな雪上走破性能に改めて驚いた。

静かで燃費の良い新型エンジンと、
内部損失を大幅に減らしたリニアトロニックの組み合わせは、
燃費だけで無く走りの気持ち良さを大幅に高めた。

ここでスロットルを開いて気持ち良く駆け抜ける。
違う個性を持つスノーエキスプレスだった。

回転計と速度変化を読み取ると、
日本の道路に何故無段変速機がマッチするのか良く解る。
ギヤをいくらでも作り出せるCVTは玉手箱だ。
更に気持ち良くなったXVで、
お正月を楽しもう。
今ならまだ間に合うぞ(笑)