スパイラルは「螺旋」だ。
それが何を意味するか。物事は繰り返す。微妙に形を変えるが、また元のように戻ってくる。
3代目WRXに、RA-Rを超えるクルマが誕生すると信じていた。
しかしそれは幻に終わった。
「S」はおろか「R」さえ難しいのが現状だ。
今のスバルにおいて、
ニュルとSTIの組み合わせは、
スポーツブランドを保つための大きな足がかりだ。
欲を言えば言えば、
交互に産まれて欲しい。
ある時は、
太刀のように「問答無用」でズバッと切れるクルマだ。
ただのspec.Cでは物足りない。
RA-Rのような剥き身の太刀だ。
その後で、
毘沙門天のようにドンと地に貼り付いたようなクルマが欲しい。
ただの「S」では物足りない。
水平対向6気筒を積んだ「S4」だ。
これなら「S403」を名乗る資格がある。
作り手の「都合」では無く、
作り手が「充実感」を持つクルマ、
そういう相棒が欲しい。
その理由は最後に述べる。
長年ラリーで戦った黄色いコメットマークと、
ブルーのシンボルカラーを忘れられない。
それを彷彿させるタワーサインと、
とうとう別れる時が来た。
長年にわたりイエローはスバルのコーポレートカラーとして活躍した。
それが姿を消す日が来た。名残を惜しみ交換される様子を記録した。
クレーン車が登場し、いよいよ切り離しが始まった。
看板を外した朝は、その時まるで見送るかのように、
紺碧の空はスバルブルーを包み込んだ。
あっという間にタワーサインは取り外され、次の作業に移った。看板は解体され、
骨組みだけになった。
巨大なロゴマークはユニックで運ばれ、
その使命を終えた。
21世紀になり更にグローバル化が進み、
明確なスタンダードが必要になった。
この黄色いシンボルマークは、
その象徴だった。
それまでは、
世界各地で勝手気ままにロゴも色もアレンジできた。
SUBARUブランドの確立を目指し、
CIの統一が世界同時に推し進められた。
緩いブランド戦略も、
ある意味自由で楽しかった。
当社はクールな路線を目指した。
新社屋の落成時には、
ブラックのスバル書体を誇らしく掲げた。
そのままにしておくと、
ブランドコントロールが出来なくなる。
特にブランドイメージが比較的高いニュージーランドでは、
勝手気ままなロゴにやりたい放題アレンジしていた。
そういう理由で、
この黄色い商標に統一する必要があった。
当時は今と同じように大きなパラダイムの中にあった。
今こうして振り返ると、
お向かいの「JOMO」ブランドも消滅した。
右隣に写っているコンビニは、
この地域の先駆者だった。
それがファミリーマートの進出で姿を消した。
「すき家」はまだ今の場所に無い。
激流の時代をこの看板はどのように見たのだろうか。
このロゴマークは4代目レガシィとほぼ同時に誕生した。
その頃はスバルにも新しい風が吹いた。
プロパーの社長が誕生した。
中島飛行機から富士重工に生まれ変わった頃、
同じようにプロパーの社長が産まれた事がある。
しかし時代考証から捉えると、
二代目社長の故吉田孝雄氏は、
企業家と言うよりは軍人に近かった。
久しぶりに富士重工の生え抜きから社長が誕生した。
その竹中さんは、
技術開発本部の出身だった。
経営陣も一気に若返り、
高度な技術志向でクルマの開発が進んだ。
その時期、
WRCでの活躍も絶頂期だった。
GMというパートナーと蜜月の時代は、
資金も潤沢にあった。
この黄色いコメットから、
永久に別離する。
そう思うと万感が胸に迫った。
とは言え、
スバルマークが時代と共に変遷するのは無常観そのもの。
その変遷には常に美が伴う。
風雪を忍び、
灼熱の光を耐え続けた看板に、
近くで見ないと解らない苦労が滲む。
感無量だ。
ここにもスパイラルが有る。
淺場さんが誇らしげに現れた。
SVXに付けられているのは、
サブロクのオーナメントだ。
素敵なお土産をありがとうございました。
簡易型のとろろ汁は、
エネルギー充填に大いに役立つはずだ。
ブレーキジャダーが気になると言う事で、
愛機のメンテを承った。
今回は精度を高めるために新しいチップを導入した。
さすがに硬度アップした甲斐があり、
気持ち良く研磨できる。
重量のあるクルマなので、
丁寧なブレーキメンテで、
6気筒らしいスムーズドライブを楽しめるように整備した。
以前から使っているチップと、
新しいチップは色もデザインも微妙に異なる。
これを使って仕上げたローターは、
実に美しく蘇った。
Befor
After
お金を掛ければ、
確実に効果が出る。
ローターも大切だが、
ブレーキ操作に基本的な間違いがあると、
クルマがスムーズに走らない。
そればかりか、
各部に影響が出る。
美味しいブレーキで、
スムーズに減速させれば、
タイヤだって長持ちさせられる。
だから投資しても「得」になって戻る。
例えばブレーキのローター研磨一つとっても、
仕事に「レシピ」がある。
そのやり方が丁寧で、
決められたとおりに出来ればおいしい。
お土産の「とろろ」を作ってみた。
この開発にも様々な苦労があったのだろう。
味噌を少しブレンドしたのは、
何かの臭みを隠すためかもしれない。
食品添加物を一切使わない以上、
それらでごまかせないから、
当然レシピも重要だ。
水はピッタリ80cc用意する。いれたら必ず1分間かき混ぜる。
絶対に1分だ。混ぜ終えても慌てて食べてはいけない。
かならず2分間そのままにする。正確な手順を踏むと、
かなりのモノが出来上がる。
炊きたての麦飯に掛け、
青のりをまぶせば一人前が簡単にできる。
飯は無いが、一気にすすり込むと、なかなかの味だった。
こう言うレシピは大事だ。正しいやり方を守れば、その本質(性能)を全て取り出せる。
温かくなったので相棒をVABにチェンジした。
NAから乗り換えると、
このクルマはまるで食物連鎖の頂点に君臨する猛禽類のようだ。
人に媚びないが、
懐くと頼りになる。
気むずかしい一面もあるが、
その身体能力に惚れると、
普通の鳥では物足りない。
猛禽類の匂いをかぎつけたかのようだった。
浜松から飯尾さんがいらっしゃった。
点検を兼ね趣味の釣りを楽しむためだ。
彼の愛機もVABだ。
おいしい柑橘をありがとうございました。
これを食べて驚いた。とにかく濃い味の柑橘だ。物凄く甘い。それに鮮やかなオレンジ色の果肉が素晴らしい。
妻もその美味しさの虜になり、もう二つ残っているだけだった。
飯尾さんのお土産にも同じ事が言えた。それは食べ方のレシピだ。
これの長所は「甘い」「香りが良い」「皮が柔らかい」「みずみずしい」だ。
最初、指で剥いたら中身が崩れた。とにかくジューシーで、食べた事の無い種類だ。長所の一部は両刃の剣だ。「柔らかく」「瑞々しい」は食べにくいと言う短所に変わる。
それで簡単に食べ方のレシピを作った。まず「へそ」の部分を果物ナイフで水平にカットした。
次に剥きやすいように切れ目を入れた。ご覧のようにちょっと皮に力を掛けただけだが、一カ所破れている。
中には10個の「じょうのう」がある。
その線に沿って剥くと、奇麗に皮から剥がれた。実にスムーズに事が運ぶ。
じょうのう膜は温州ミカンより薄いくらいだ。めくると中の砂じょうが脆いので、ボロボロになってしまう。その上果汁が多く一面にこぼれる。
これじゃあ喰い難い。乗り難いクルマを運転しているような感じだ。
そこで、はたと気がついた。温州ミカンのようにじょうのう膜ごと食べれば良い。
思った通りだった。
じょうのう膜がミカンより柔らかく、簡単に食べられた。ただ硬い種に注意が必要だ。
見かけとは全く違う柑橘だった。
レシピを考え、
ちょっと力の入れ方を工夫するだけだ。
スムーズに食べられるか、
あるいは壊してしまうか、
その差が大きく出る。
クルマの乗り方にも同じ事が言える。
最近のクルマは電子制御が行き届き、
安全面では格段に進歩した。
昔は常識と言われたドライブテクニックでも、
邪魔な事も多い。
ドライブエクスペリエでは、
ブレーキ操作に対して特に目を配る。
鈴木さんはすでにAコースとCコースを履行済みだ。
今回のBコースで遂にフルコースだ。
でもクルマを変えれば、
また奥の深さを味わえる。
その気になれば、
DEをいつまでも楽しむ事が可能だ。
今回はNA6速の体験より、
運転を客観的に見たいと希望された。
愛車にタワーバーを付けるのも、
これからの楽しみだ。
その効能をお気に召したようだ。
おみやげに名古屋名物の「ういろう」を頂戴した。
とても美味しくて、
ういろうを見直した。
3つの味が楽しめる。
昨年の暮れからフォレスターと過ごし、
BRZにもしばらく付き合った。
ういろうのようにクルマの味もそれぞれ違う。
ようやくウインターシーズンも終わり、
サマータイヤの出番になった。
自然吸気のクルマには少し休んでもらい、
眠っていた猛禽類を目覚めさせた。
ちょうど工房の前に、
面白い対比が出来ていた。
赤のレヴォーグも嫁入り先が決まった。
このお洒落なスポーツツアラーと、
真紅のSVXの対比が美しい。
お洒落なスバルデザインのスパイラルを感じる。
反対側には車検で入庫した片岡さんのRSがある。
初代レガシィとWRブルーのSVXは、
猛禽類の匂いを溢れさせている。
初代レガシィRSとSVXは出力志向の代表格だ。
これらのクルマ無くして、
WRXの成功は無い。
久しぶりに小松さんとお会いした。
レガシィをこよなく愛する安曇野のスバリストだ。
久しぶりに奥様と二人のお嬢さんにもお目に掛かった。
沢山のオイルをありがとうございました。
女性社員に好評で、
みんな山分けしました。(笑)
小松さんも初代レガシィRSを愛用していて、
それがきっかけで親しくなった。
今は「S401」のオーナーだ。
点検をえた愛機からオーラが出ていた。
このオーラは舐めるように愛されたクルマからしか出ない。
独特の佇まいに毘沙門天の姿が重なる。
「S」の4シリーズには、
2シリーズとはまた別の味がある。
小松さんのスバル好きは、
そこにスパイラルの存在を感じる。
一夜掛けると、
展示場に異変を感じた。
なぜか苔が落ちている。
しかもかなり新鮮で、
望桜荘から飛んできたように見えた。
この上の展示場に何か居る。
そう直感して調べた。
するとスバリストの鳥が、
こちらを見ていた。
同じようなクルマはいくらでもあるのに、
初代インプレッサのWRXに拘る。
ヤツは似た者同士の匂いを撒き散らす。
いつもの場所に営巣するつもりが、
数日前の強風で吹き飛ばされ、
床一面にゴミが散らかっていた。
ちりとりに集め、
ブルーベリー畑に持っていった。
何しろ100%天然だからゴミ袋に入れて捨てるには惜しい。
保温保湿には苔と小枝が良いのだろう。
長さと太さが微妙に整い、
熟練の技を感じる。
セキレイには高度な会話能力があり、
近くで聞くとリズミカルで楽しい。
スバル好きが高じて遺伝子に組み込まれ、
子々孫々と引き継がれている。
正しくスパイラルの世界だ。
今後は巣立ちを楽しみにして、
温かく見守る事にした。
しばらくGF8を貸してあげよう。
食べ物とクルマに対する評価軸に、
共通する要素がある。
最近は洋菓子を積極的には食べない。
美味しいと思うモノが近くに無い。
朝礼で山本部長が面白い話をした。
多治見市内にある洋菓子屋を訪れ食べ比べをしたそうだ。
片方の店は立派な調度品や元気の良い出店姿勢が魅力らしい。
もう一店は丁寧な単品で「商品」を売る老舗だ。
両方とも拘りを感じるよいブランドだと締めくくった。
肝心な事が抜けていた。
そこで話の後で質問した。
「ところでお味は?」
部長曰く、
「老舗の方がちょっとだけ旨かった」そうだ。
食べ物で一番大事なのは「味」だ。
店構えや調度品や「商品」では無く、
「味」が重要だ。
あえて商品と書く理由は、
味よりもパッケージングを優先するモノが多い。
もっと言うと「味」より、
マスコミへの露出や口コミを重視する事もある。
しかしその口コミが信用できない。
なぜならば、
最近の人達は味覚感知機能が低下している。
どうして低下したのだろう。
それは画一的なモノばかり食べ続けてきたからだ。
特に洋菓子を食べるとそれを感じる。
お金を出してあまり洋菓子を買わない。
でも和菓子なら買う。
今日も妻が納車式のお菓子と共に、
大好物三兄弟を買ってきた。
出来たての和菓子は実に繊細な味がする。
桜餅の塩と甘さのバランスは、
職人技が最も活かせる部分だろう。
これは誰でも出来る事ではない。
味を守るためにはレシピが必要だ。
出来るだけ正確に伝えるためには数値化が必要だ。
そして徹底的に数値化して、
品質も味も一気に向上する。
それが美味しければ大量生産が可能になる。
大量生産で創られるモノは画一化していく。
スパイラルだ。
スパイラルから抜け出すには、
本当に美味しい味を追求し続ける職人の店を探すしか無い。
クルマにも同じ事が言える。
ちょっと見たり乗っただけで、
簡単にクルマを評価するなと言う人も居るかもしれない。
しかし良いモノは良いし、
悪いモノは悪い。
味で解る。
期待以上のモノがあれば、
思った以上に酷いモノもある。
振り返ると相当な数のクルマと出会い、
一つ一つ丁寧に乗ってきた。
当社に入ったクルマを全て記録している。
例えばスズキで一番多く触れたのがエスクードだ。
サイズも手頃で面白かったが、
欲しいと思った事は無い。
美味しくないからだ。
ただし「なんてっちゃって」SUVが多い時代に、
本格的なオフロードカーを造り続ける姿勢は凄い。
パジェロにも随分乗った。
頑強で壊れないが何しろ重い。
不味いクルマとしか思えなかった。
しかしオフロードでこれほど頼りになるクルマは無い。
エクアドルを訪問した時、
街の名士達がこぞってパジェロを愛用していた。
それを見て誇らしく思った。
フォレスターが出る前に、
どうしても乗ってみたくてCR-Vを買った。
乗ってすぐ飽きた。
それ以来ホンダ車を欲しいと思った事は無い。
ところがこれは違った。
昔からロードスターは大好きな車の一つだ。
シートにB-factionとロゴを入れ、
全て貼り直した。
他社のクルマをこんなにカスタマイズした事は他に無い。
二代目以降は全く心に刺さらなかったが、
コイツは良かった。
それに比べビートは心に刺さらなかった。
今年のスポーツカーカテゴリーは、
この2台により盛り上がるだろう。
ここにもスパイラルを感じる。
ホンダが軽自動車のスポーツカーに返り咲いても、
全く興味は無い。
やる事を間違えた気がする。
それに対してロードスターには心を惹かれるが、
小さくしないと軽量化できなかった事が残念だ。
もうひとつ、
初代を凌駕できないデザインも惜しい。
最近のマツダデザインは、
ちょっとイキ過ぎていて暑苦しい時がある。
ユーノスロードスターが素敵すぎるのかもしれないが。
外車も数多く乗った。
このクルマにも興味を持ち、
わざわざ購入した。
スマートだ。
傾斜エンジンを研究するため、
ベンツがサンバーを購入し分解して研究したと聞いた事がある。
上手い具合に並行輸入車が手に入った。
スバルも気になったのだろう。
彼ら自身が購入してテストしたクルマだった。
スゥオッチカーとも呼ばれたスマートは、
日本の軽自動車に近かった。
傾斜エンジンをリヤボディに搭載し、
新規格の軽自動車に近い存在だった。
しかし落胆した。
当時の水準を考慮しても、
このクルマの出来映えは酷かった。
写真を見ても解る。
リヤタイヤのジオメトリーは異常なほどで、
前後のタイヤサイズも違い経済性に乏しい。
リヤ荷重の大きな後輪駆動車をオーバーステアにさせないためには、
フロントのグリップをリヤより減らせば良い。
そうすればアンダーステアになるのは当たり前だ。
そういう魂胆が見え見えで、
乗ると非常に扱いにくかった。
後輪がはみ出ているので、
車庫入れなどでも気持ちが悪かった。
ベーシックカーなのに日常での犠牲が多すぎた。
一番扱いにくかったのは、
6速シーケンシャルミッションだった。
機構的には面白いが、
ギヤを選択した状態だと当然エンジンが掛からない。
いちいちギヤの位置を確認しないとエンジンが掛からず、
MTよりクラッチ操作が無いだけでかえって面倒だった。
走らせて速度を上げていくと、
何とも言いようのない恐怖感を感じた。
良いところもあった。
それはデザインだ。
何から何まで新鮮で日本の軽自動車には無いモノばかりだった。
もう一つの良い所は、
その頃のクルマ造りに共通した次の事実だ。
行き過ぎた電子制御になっていなかった。
クルマ自体も人の手で造り込まれた感覚が残っていた。
それを差し引いても不味いクルマだという記憶は消えない。
スバルのクルマは年度改良毎に素晴らしく良くなる。
これは伝統的にモデルチェンジとは別に改良を重ねるからだ。
これは企業風土による。
もう一つ改善をスムーズに進めるコツを持っている。
昔からは数値化が得意な事だ。
その証拠に、
物凄く昔から「サスキソウ」という秘密兵器を持っていた。
古い時代を知るスバル関係者が、
これを聞くと飲みかけていたお茶を吹き出すかもしれない。(笑)
だが最近それが悪い方にも影響している。
食べ物と同じで味を良くするためには優れたレシピが必要だ。
それを素早く作ると改良の速度も上がる。
数値で作ったレシピは、
大量生産に向くが画一的なる怖さもある。
一定水準までなら美味しいが、
それ以上になると力量が足りない。
少量生産しか出来ない味が出せなくなった。
良いクルマを作れても、
凄いクルマが造れない。
以前R205に乗った時、
どうしても買う気になれなかった。
買うと決めたコンプリートカーの購入を初めて見送った。
カタログモデルなら上出来だが、
ぶっ飛ばすほどに魅力が失せていった。
これに野暮な事は言わないで欲しい。
オウンリスクだ。
451万円という対価を払う以上、
相応の走りを擦るのか試す。
画一的な味が残り、
カタログモデルを凌駕できていなかった。
唯一の救いはアクセルレスポンスだったが、
バランス取りされたエンジンには及ばなかった。
結局RA-Rを何も上回れ無かった。
エンジンスペックはキャリーオーバー。
車両重量も決して軽くなかった。
ベース車のspec.Cの最低重量は1430kgだった。
それに対してR205は1470kgもあり、
RA-Rより80kgも重かった。
高速領域における挙動の安定性でも、
RA-Rを上回れなかった。
購入するつもりだったが止めた。
これを買うとSTIを甘やかす事になると思った。
だからあえて心を鬼にした。
誤解の無いようにあらかじめ伝えておく。
大問題が潜んでいる訳では無いので、
勘違いしないで欲しい。
AT車でもスロットルの開くフィーリングが気に入らない事がある。
でもMT車ほど問題では無い。
ところがMT車だと、
スマートのように扱いにくくて、
気持ちが悪くなる。
それは作り方に問題がある。
数値化による画一性が、
悪い方向に向くとクルマの味が落ちる。
例えばエンジンを掛けて、
一旦バックして走り出す場面をあげよう。
気持ちの良いクルマなら、
クラッチミートと僅かなスロットル操作で動き始める。
クラッチはケーブルで繋がっていてリニアに反応する。
スロットルはワイヤーだ。
数値制御でエンジン回転数が上下する。
ある一定の領域で、
このクルマにマイナス要素が目立ち出す。
クラッチを繋ぐとギクシャクする。
ローに入れて前進させると、
スロットル操作とエンジンレスポンスに開きが生じる。
以前のWRX STIは速く走れば走るほど、
スタビリティの粗さが顔を出した。
新型STIはそういう情けなさを払拭したが、
今度は丁寧に走れば走るほど、
アクセル操作に対して粗さが目立つ。
クルマがスムーズに
反応しない。
これからWRX STIは数々の改善を受けながら育つはずだ。
その時大切にして欲しいのは手作りの味だ。
キーを捻り、
クラッチのミートポイントから、
やさしくスロットルを開ける。
その時、
それにきちんと応えないクルマでは良いとは言え無い。
エンジン回転を足先で微妙にコントロールできるセッティングは、
大量生産のレシピでは難しいのかもしれない。
でもそこを正さないと、
MT好きは増えない。
スバルに求めたい。
ドライバーの動きに正確に答えるアクセルレスポンスを取り戻し、
クルマ好きを増やしていこう。
真のクルマ好きは、
「自動運転」や「ながら運転」を求めていない。
だからこそ、
作り手志向のクルマを出すべきだ。
数値では無く匠の技で練り込んだクルマ。
大量生産で画一的な味を取り払った「真のSTI」を出す時が来た。
STIから「太刀」のような切れ味鋭いコンプリートカーを出す。
さらに、
「毘沙門天」のようにべったり貼り付く重厚感も欲しい。
それは正にSVXのようなクルマだ。
それらを交互に出す事が、
スバルにとっても、
STIにとっても、
大きな今後の課題だと思う。