クルマ好きは、洗車が大好きだ。さらに徹底的に清掃する。磨いて磨いて磨き倒すヒトも居る。すると行き着く先はエンジンルームだ。平成になったばかりの頃は、エンジンルームの中にも、ホンモノの出す凄味があった。
過去に「アマデウス計画」が存在した。スバル アルシオーネSVXのワゴンだ。
もしクーペより先にアマデウスを出していたら、
現在のスバルはまた別の側面を持ったはずだ。
どうしてアルファロメオを引っ張り出したのか。
スポーツツアラーの元祖のような姿に魅せられた。それとアルファロメオの多気筒エンジンに興味があった。
赤いアルファロメオ156スポーツワゴンのスペックだ。
【年式】
平成13年
【型式】
GF-932B1
【主要諸元】
全長×全幅×全高(mm):4430×1750×1410
車両重量(kg):1470
乗車定員 5名
【エンジン】
32401/V型6気筒2.5L DOHC24バルブ
【変速機】
4速オートマチックトランスミッション Qシステム

最終型のアルシオーネSVXと比べてみたい。
【年式】
平成8年
【型式】
E-CXW
【主要諸元】
全長×全幅×全高(mm):4620×1770×1300
車両重量(kg):1590
乗車定員 5名
【エンジン】
EG33/水平対向6気筒3.3L DOHC24バルブ
4速オートマチックトランスミッション
アルファ156スポーツワゴンは、
アルシオーネSVXより、
190㎜短く、
20㎜狭く、
110㎜高く、
120kg軽い。
比較的美しく維持された個体だが、
14万キロ近く走り、
内科的疾患を多数く抱えていた。
「アルファが調子悪い」と聞くだけで、
腰が引ける人も多い。
誰も自ら積極的に触ろうとしなかった。
このクルマに対する基礎知識さえ皆無だし、
調べる気にもならなかった。
だからアルファの事がまるで解っていなかった。
でもなぜか赤いクルマに取り憑かれた。
「乗れば全て解る」とクルマが囁く。
乗りたくても年度末で忙しく、
点検整備が進まなかった。
水曜日しかもうチャンスが無かった。
「一度テストをしたい」
それに北原課長が応えてくれた。
実はその日に、今一番売れているフォレスターをテストするつもりだった。
フォレスターSリミテッドを借り準備万端だったのに、その約束を反故にしてまでアルファを試した。
リフトアップして、
このクルマに惹かれた理由が解った。
背後からスカートの中を覗くと、
思わずドキドキした。

下着の色はSTIのようだ。
ところが素肌はSTIを遙かに凌駕した。

クロスメンバーに取り付けられたリンクは一体何だ。
こりゃ驚いた。
色気が凄い。
ちょっと残念だ。
黒化粧なんて野暮だろう。

磨き取りたい衝動に駆られた。
リンクの付くクロスメンバーは、
全てアルミ合金で出来ている。

それに驚きながら前に回った。

何かに遮られ良く見えない。
手前に何かの黒い構造物がある。
これを見た瞬間「ドキッ」とした。

そこにスバル1300Gの残影を見た。
いわゆる「象の鼻」だ。
フロントダブルウイッシュボーンサスペンションの象徴とも言える。
リフト上のエンジンルームに手を伸ばし、
カメラをかざした。

写ったのは薄汚れているものの、
独特の存在感を示すインテークマニホールドだった。
ステンレス製で燻し銀の輝きを持つ。
エンジンは快調だ。
ただしエキゾーストパイプから排気ガスが漏れ、
パワステ系統からオイルも漏れていた。
だから動かす度に、
けたたましい異音を放った。
タイヤも心許なかった。
それを北原課長が見事に整備した。
夜までに全ての不調が改善され、
安全に走れる状態に蘇った。
その日は山元さんも来店された。
愛車レガシィの法定点検にあわせて、ドライブエクスペリエを体験された。
やっとスケジュールが合い、素晴らしい天気も花を添えた。
普段はATに乗る山元さんだが、DEを「役に立った」と喜ばれた。とても嬉しい。ご来店戴きありがとうございました。
DEを始めて良かった。充実した気持ちで仕事を終え開田に向かった。
最近はマニュアルシフトの車が少なくなった。「何故だろう」と自問自答するうちに、次の結論に辿り着いた。
MTが売れない理由は何か。
まず売り手に「情熱」が欠けている。
でもこれは仕方の無い事だ。車を効率的に売るのがセールスの仕事だ。
わざわざ難しいクルマを売らなくても良い。なぜなら、その魅力を知らない人が多い。
良く解らないクルマを売ろうとしても、そう簡単に売れるはずが無い。だから売りやすい物を売る。それが自然の摂理だ。
でもMTを必要とする人は居るし、大好きだからDEを始めた。
これが意識改革と言うヤツだ。話を戻そう。
では「情熱」の次に何が欠けているか。これを説明するために、売り手も含めた「クルマの使い手」に視野を広げる。
なぜ売れないのか。
一つ目。クルマは完全に日用品になった。
二つ目。MTの本当の良さを知らない。
三つ目。
的外れな使い方をしている。
世の中に「的外れな事」は多い。

4月に残る雪を求め高原へと向かった。
「雨が降って御嶽山が見えなくて残念ですね・・・」ある人にそう言われた。
そう言われても「はい」と素直に頷けなかった。
「開田の事がまるで解っちゃいないのだ」
いつも御嶽山を見るために、開田に来ている訳じゃ無い。
なんて神秘的なんだろう。時折現れる美しい風景だ。これを「雪霧」と呼んでいる。
これに興味の無い人なら、
御嶽山が見たいだろう。
残雪と7度未満の気温に飽和状態の湿度。
それらが重なり合った時、
乳白色の面白い光が額縁の中に絵画を創世する。
御嶽山をバックにした美しさとは、
まるで対極的だ。
でも、
この日の雨を「幸運」だと思う者には、
「御嶽山が見えないと残念」というロジックが、
極めて的外れだ。
的外れな人にマニュアルミッション車を売ってはいけない。
基本的に運転の好きな人しか価値が解らない。
DEに参加されるようなクルマ好きは、
例え今ATに甘んじていても、
的外れな対象では無い。
ではどんな人が的外れか。
それは「ながら運転をしたいヒト」だ。
「物を食べながら」
「音楽を聴きながら」
「歌を歌いながら」
「友達と会話を楽しみながら」
以上、全て御法度だ。(笑)
もちろんテレビを見るヤツなんて言語道断だ。
クルマという機械の、
装置と合体し両手両足、
全身全霊で操るから面白いのだ。
ナビだって御法度だ。
そもそも地図を頭に入れ、
コースセッティングとコーストラッキングをしなければ、
楽しく乗れるはずが無い。
Qシステムを考えた人は、
クルマというモノは、
「両手両足で操ってこそ価値がある」と、
明確に意識して居たはずだ。
我慢した甲斐があった。
ドライバーズシートに収まり、
初めてアルファを走らせる記念すべき日が来た。

当てにならない燃料計と見にくい時計がセンターに鎮座。
念のため30リットル入れて、

トリップメーターをリセットした。
テストが終わる頃には14万キロだろう。

ドライバーオリエンティッドな空調パネル。
慣れるとブラインドタッチのやり易い、
好感の持てるレイアウトだ。
視線を下にずらすと、

こういうセレクトレバーを初めて見た。
縦にP、R、N、Dと並んでいる。
そこは理解出来るがDレンジから左へ倒すと、
アップダウンでは無く、
Hパターンのシフトゲートが用意され、
タコメーターにシフトポジションがでる。
何を意味するのかしばらく理解出来なかった。
走り出すと、
太いトルクを発生するエンジンは、
濃密なビートも刻んだ。

面白い手応えのトランスミッション。
コイツは実に面白かった。
これが4速オートマチックを手動操作する「Qシステム」だ。

比較的気温も高く、
サマータイヤで正解だった。
久しぶりに雪霧の中に身を委ねた。
あちこちで爪痕も深かった。
今年の雪は重かったからなぁ。

アルファロメオに乗ったのは初めてだ。
このクルマが届いた時、
その個性に目を見張った。
しかし何となくスバル車と共通する匂いを感じ、
オークション会場に旅立つ所を引き留めた。
これまでアルファロメオを走らせた事も無ければ、
商いを通じて関わった事さえ一度も無い。
けれど、
スバルとアルファには縁がある。
スバル1000とアルファスッドには有り余るほどの共通性があった。
アルファ自体はどう思っているか知らない。
でも国産自動車が欧州車のコピーや模倣をしている時代に、
逆の事象が生じた。
結果的にスバルの持つ高い開発能力を証明した。
またスバルがGMグループに属していた頃は、
アルファの親会社もGMグループに属したから、
お互いに急接近した。
アンドレアス・ザパティナスさんは、
アルファロメオのデザイン部からスバルに移籍した。

現在活躍中の若きデザイナーに与えた影響は大きい。
「ダイナミック&ソリディティ」の、
隠れた因子になっている事も間違いない。
そうした関係もトライベッカやR1がパッとしなかった事もあって、
徐々にトーンダウンし、
GMの破綻で一気に幕を閉じた。
アルファを時々オークションで見かけると、
必ずと言って良いほどエンジンルームを覗き込んだ。
クルマ好きを惹きつける「匂い」を持つブランドだ。
アクの強い顔をしているが、
スタイルは抜群だ。
このクルマに積載性だとか、
ドライバビリティだとか、
在り来たりな比較を持ち出すのは空しい。

後方視界はメチャクチャ悪い。
カーゴネットをあげると尚更だ。

斜め後ろも決して見易いとは言えない。
けれど問題じゃ無い。

とても14年も前のデザインには思えない。
最新型のホンダ車さえ、
リヤドアハンドルをコピーするほどだ。
テストを終えた翌朝、
自宅の車庫で新型レガシィと並べた。

改めて振り返った。
ロングテストの夜、
開田で眠りに就く前に、
とっておきの日本酒を楽しんだ。
それで比喩したい。
一つ目は能登の浮田さんに戴いた生原酒。

これは美味しかった。

端麗でありながら、
コクが喉へ静かに広がる豊潤な酒だ。

これは正に「アウトバック」のドライブテイストに通じる強くて優しい味だ。
二つ目は尾張の佐藤さんに戴いた、

岐阜県のどぶろくだ。
恥ずかしい話だが、
この味は「純米酒」そのものだが、
口の中に食べ物としてズドンと刺さる。
噛むように飲むのが旨さをより際立てる。
アルファ156の力強く走る印象は、
「どぶろく」そのものだ。
平坦路を時速60kmで走ると、
ロードノイズも小さく意外におとなしい。
堅めの脚だけれどダンピングが程良く効き、
ビルシュタインの良さが際立った。
ただし内装のアチコチから、
路面の段差を拾う度に「ギシギシ」と音が出る。
年式と走行距離を考えれば仕方ないか。
エンジン回転数は1750rpm。

静かなはずだ。
大きなトルクを発生するエンジンだと、
ストレス無く走れる。
ほとんど3000rpm以下しか必要としない。
それなのに最高回転数は7000rpmもある。
グッと踏み込むと、「ブオーー」と咆哮を上げる。
これで無くっちゃ。
やっぱりスポーティーだ。
ただし絶対速度は低い。
二宮さんのところへ行った。
全ての毛を伸ばし続けていた。

寒いからだ。
そして髪の毛が伸びるのと比例して、
パイプの仕上がりが進んだ。
既に完成したパイプは、
とても素人の作品とは思えなかった。

とても味がある。
パソコンの中で良く似た男が唄っていた。
今ビージーズがお気に入りで、
絶え間なく流れている。
どちらの男にも味がある。
画一的で無い味だ。
味のある男に、
味のあるクルマを見せた。
撮影も順調に進んだ。

156スポーツワゴンは、
ヘビーウエットな路面をスイスイ走る。
フロントヘビーなので、
アンダーステアが強いかというと、
そうでは無い。
ワインディングでQシステムに切り替えた。

3速から2速に落とし、
クッとステアリングを切ると、
軽くノーズの向きを変える。
たとえばこの様に急なカーブで、

ステアリングを僅かに切り足すと、

思いのほか簡単にノーズを巻き込む。
どんなステアリングギヤ比か解らないが、
バリアブルレシオのように、
切り足すと巻き込む量が増えるように感じた。

なかなかよく曲がる。
コーナーから立ち上がり、
3速に入れ直線を「ブオー」と加速し、

そこから4速に叩き込む。
最近のクルマにないダイナミックな演出だ。
男臭いクルマかというと、
決してそうでは無く、
エレガントな外国人の女性のようだ。

シフトレバーにニュートラルの位置が儲けられている。
これが面白い。

その部分はフリーに動くが、
元のギヤのままだ。
ニュートラルになったりはしない。
しかし、
その「タメ」があるおかげで、
よりMTらしさを感じる事が出来る。
つくづく思った。
もしアマデウスが誕生していたら、
きっとこんな味だったんだろうな。

向かい合わせてみると、
双方の良さが滲み出る。

アルファで絶滅したからといって、
スバルで途絶えさせてはいけない。

多気筒エンジンは、
オトナの自動車メーカーとして生き残るために、
欠かす事の出来ない必須アイテムだ。
それを支持する顧客を作るのも、
スバルの宿命と言える。

まずこのエンジンルームをピカピカに磨く。
足回りのリンクも奇麗に蘇らせる。
しばらく手放せないな。
何故かって。
それは次の赤鰤が、
こんな色気を持つ事を願っているからだ。
赤鰤を買うようなスバリストは、
燃費などどうでも良い。
レギュラーガソリンで走る必要も無い。
良いサウンドや、
色気のあるエンジンルームに魅力を感じる。
現在のプラスチッキーなエンジンルームから、
もう一皮剥けて欲しい。
この4気筒より、
まだ6気筒は飾り気がある。でもプラスチッキーなのは否めない。
燻し銀の輝きを持つ世界に変えて欲しいのだ。
それを具体的にスバルに提案するために、
アルファ156はもってこいの逸材だ。

これほどの作品を生み出したメーカーだ。
やる気になれば出来るだろう。
樹脂を使って軽くしたい気持ちもわからない訳では無い。
しかしBMWは同じ樹脂でも一味違う。

最新のクルマで面白い仕掛けを見せた。
スバルもマンネリから脱するために、
そろそろ意識改革が必要だ。
この土日もブログの愛読者がゾクゾクと来店された。
皆、クルマ好きばかりだ。
岐阜市の棚橋さんも、待ちに待ったレヴォーグのオーナーなられた。
おめでとうございます。
DEも続いた。
東京から角さんがカップルで来店された。

同時にリフレッシュ車検をご予約戴いた。
車検の打ち合わせの前に二人でDEに参加された。
最新のSTIとGC8の差は歴然でも、
乗り換えより車検を選ばれた。
理由は愛着だろう。
いつまでも磨き続けて欲しい。
最近はスバルオーナー以外の愛読者も多い。
愛知県碧南市から榊原さんが来店された。

オートマチックを希望されたので、
遂に純米酒「宗玄はつしぼり」の出番が来た。

ドラポジをアドバイスした。
左手の位置が理想だ。
これまでは右手のような持ち方で、
肘の角度が適切では無い。

とても喜んで戴けた。
美味しいお土産をありがとうございました。

碧南のパティシエが作った、
豊潤なケーキだった。

すり下ろした碧南のニンジンが美味だ。
ニンジン好きにとって、
この上ない喜びだ。

ELMATEは多店舗展開せず、
手作りを重視する。
地元に密着した洋菓子店だ。
ぱさついたケーキでは無く、
とても瑞々しい味だった。
榊原さん、参りました。
続いて山形から平方さんが来店された。
ロイヤル車検Ⅱをご用命戴き、
一泊二日での施工となった。

和菓子を買うけど洋菓子など買わない・・とブログに書いたが、
美味いモノを知らないだけだった。
平方さんのお土産は、
鶴岡市にあるオーボナクイユの焼き菓子だった。

休憩の楽しみに社員で分け合い、
その美味しさに驚いた。

このクルミに惹かれ、
先に封を切った。
平方さんが不敵に笑う姿が目に浮かんだ。

「どうだ、美味しいでしょう」
耳の中に彼の声が響いた。

チョコレートの練り込み感と言い、
味のバランスと言い、
素晴らしい。
一口囓っただけで「参りました」と兜を脱いだ。
日曜日になると、
まるでブログを読んだかの如く、
春日井の奥村さんが来店された。

オイル交換と同時に、
リフレッシュを打ち合わせた。
ピカピカの22Bから弾けるように水滴がしたたり落ちる。

洗う事が大好きな人は、
雨天に乗る事を厭わない。
マット処理されたインパネもオリジナルの状態を維持している。

特別な車庫で保管されているわけでは無いが、
とても良いコンディションに保たれている。
足許を見て驚いた。

キャリバーが奇麗なルビーレッドになっている。
ご自分で丁寧に塗られたそうだ。
これほど手入れが行き届けば、
コンディションが良いはずだ。
エンジンルーム撮影したいとお願いしたら、
快く承諾して戴けた。
見慣れたエンジンルームだが、
何かが違う。

ボンネットステーを引き出しフードを固定した。
そのとき、手触りに「オヤッ」と驚き見直した。

こんな部分までぴかぴかに磨かれ、
使い込まれた美しさを放っていた。
それに驚き目を凝らした。
そこにホンモノを愛するスバリストの執念を見た。

全てオリジナルだが、
磨けるモノは徹底的に磨かれている。
何の変哲も無いように見えるかもしれないが、
些細なステーまでピカピカだ。
インテークマニホールドのチジミ塗装が残念だと謙遜されたが、
これは使い続けて出た味だ。
中途半端に塗らない方が良い。

エアコン配管までピカピカに光っていた。
配管や配線の接続部分もピカピカだし、
ナットの頭も燻し銀の光を放った。
中でもこのパイプが凄かった。
目を見張るほど奇麗に磨かれ、

思わず保管しているGC8と見比べた。
完全にオリジナルだが、
まるでカスタマイジングされたように見えた。
樹脂も適切に光沢を持ち、
薄汚れた感じが一切無い。

この頃のスバルはアルファのような、
触り甲斐のあるエンジンルームを持っていた。
蘇らせて欲しい。
クルマ好きにとって痺れるほどの世界を。
「中津スバルの濃いスバリストに贈る情報」の新着記事をお知らせします!
記事を見逃さないように通知を受け取りましょう
(ログイン不要・いつでも解除可能)
新着記事を受け取る