夏のような一日だった。
神奈川から栗原さんがいらっしゃった。
イベントの陣中見舞いに、
美味しいお土産を頂いた。

これは冷やして食べる、
川崎の名物だった。

明らかに手作りで、
薄い和紙と銀紙で美しく包まれ、
箱にギュッと入っている。
ホワイトチョコレート包まれた和菓子だ。
そっとかじると、
中には洋風の黄味餡が入っている。
菓子の味や姿に対して、
名前が少しへんてこりんだが、
絶対忘れないから良いだろう。
「梨の花子」と言う。
要冷蔵で賞味期限はほぼ一週間だ。

この創作和菓子は、
全体を通してクオリティが非常に高い。
クオリティの高さは大切だ。
それを言うのは簡単だが、
その本質は実に深い。
大量生産のクオリティも重要だ。
近所にある洋菓子チェーン店の前で、
無性にイチゴのショートケーキが食べたくなった。
娘も「大量生産の割に美味しい」と褒めている店だ。
おっさんが、
「イチゴショートケーキを一つください」と言っても、
嫌な顔一つせずに手渡してくれた。
一個税込で280円だった。
繁盛していて、
色々な商品が飛ぶように売れていた。

ケーキを持ち帰るためには箱が必要だ。
2個入れるために考え出された箱だろう。
この行き届いた配慮はなかなかのものだ。
何しろ初めての事ばかりだ。
まず自分で食うためにケーキ屋へ行く。
こんな事は最近一度も無い。
ましてや一個だけ買うなど、
ほとんど経験した事が無い。

この箱にはミシン目が入り、
取り出しやすくする工夫が施されていた。
この箱に感激した。
このケーキも要冷蔵で賞味期限が短い。
黙っていても保冷剤が入っている。
それにスプーンまで添えてある。

流通に関するクオリティは抜群だ。
これなら突然食いたくなった時、
衝動買いしても大丈夫だ。
公園などで誰にも見られずに、
イチゴショートケーキを貪り食う事が出来るぞ!!!
箱から取り出し皿に置いた。

丁寧に巻かれたビニールを取除くのが、
何ともまどろっこしい。
バタークリームケーキ世代にとって、
生クリームのイチゴショートケーキは、
1年に一度か二度しか食べられない贅沢品だった。

ヒヒヒヒヒ・・・・いよいよ久しぶりの甘露の世界だ。
柔らかいクリームを舌先でチョロリと舐める。
ふっくらしたスポンジケーキを唇の裏で挟み込み、
舌先で捩じ上げた。
何と嫌らしい食べ方だと、
自分を褒めたくなる程だった。
ケーキとネットリする様な濃密な時間を過ごそうと思ったが、
相手の反応は意外に淡白だ。
美人だけれど恋愛の対象にならない。
そんな感じかな。
確かに娘の言う通り美味しい。
ライトなテイストで、
全てがスムーズ。
クオリティに問題もなく、
文句のつけようがない。
しかしこの軽さは何だろう。
このショートケーキと、
「梨の花子」を見た時、
子供たちはどちらを見て喜ぶだろうか。
全てにクオリティが高いディズニーランドは、
意外にその作り手の顔が見えない。
お面を被ったネズミは、
ステレオタイプを子供に与え続ける。
だから変わらない表情を、
ヒトの柔軟な頭脳はイキモノとして自分勝手に演出する。
このショートケーキも作り手の顔が見えない。
ショートケーキの姿から、
実際には存在しない味や香りまで、
柔軟な頭脳が演出するのだろう。
大量生産で究極のクオリティを目指すと、
味がどんどん薄くなる代わりに、
利便性や経済性に加え話題性も反比例して大きくなる。
確かに美味しいし、
鮮度管理も抜群だ。
でも虜になるような濃密さは、
残念ながら漂わない。
CROSSOVER7の味は、
とても濃い。
メーターの色まで微妙に内装とアレンジされた。
オレンジ色に近いタンカラーと、
コーディネートされている。
オレンジ色は食欲をそそる。
何となくイグニッションスイッチを入れただけで、
味の濃さを予感する。

エンジンは最新の2.5リッター「FB25」だ。
見慣れたエンジンルームに水平対向エンジンが収まっている。
世界市場で戦う主力エンジンだから、
抜群においしい味がする。
アウトバックもそうだけれど、
豊かなトルク特性と、
リニアトロニックのおかげで、
大きなクルマを大きく感じさせない、
抜群の走行フィールだ。
いわゆるフレキシブルな印象で、
クルマをスイスイと前に出そうとする。
日本の国情には、
やはりCVTがベストマッチだろう。

高速道路で時速100キロまで加速し、
巡航状態に入って、
その時の回転数が1750rpmだ。
このエンジンは、
仕向地によって油圧パワステポンプも駆動する必要がある。

ブラケットは残るが、
油圧ポンプは無い。
エンジンの駆動損失が限りなく抑え込まれている。
もう一つ驚いたのは、
良く止まる「アイドリングストップシステム」だ。
理由は良く解らないが、
明らかに新型アウトバックより、
アイドリングストップが丁寧に働く。
電動パワステだが、
昨年来のスバル車全てに共通する改善が施され、
油圧に比べてほとんど差を感じない。
操舵感のクオリティはより高く磨きこまれた。
ドアグリップの形状は残念ながらそのままだ。
けれど、
ピアノブラック調のパネルは気持ちの良い手触りで、

美しいメッキのドアハンドルと協調性が高い。
左手に目を移すと、
操作系が品よくリフレッシュされ、
格調高いセレクトレバーを更に引き立てている。

パドルシフトはBP/BL系レガシィの名残を残す。

トレンドはステアリング直付けだが、
こちらはステアリングポストに備わる。
これはどうでもよい。
なぜなら、
このクルマの場合、
パドルシフトなどいらない。
スムーズなスロットル操作だけで、
クルマはいくらでも柔軟に走る。
かえって手動変速より、
自動変速の方が早くてスムーズに走るだろう。
パドルシフトなど使わない方が、
とてもジェントルでスピーディなドライブが可能だ。

ステアリングの右側にアイサイトの制御スイッチが並ぶ。
この部分までクオリティはしっかり管理された。
良い意味でトヨタの基準に負けない造り込みだ。

シートヒーターから、
アイドリングストップのメインスイッチ、
それにSIーDRIVEの切り替えまできれいに並ぶ。
ブラインドタッチがやり易く、
とても良いレイアウトだ。

リニアトロニックの良さは、
既に多くの人たちから報告されている。
いわゆる歯車を何枚でも拵えてしまうような、
柔軟で静かな走りは、
他車の追随を許さないだろう。
時速60kmから軽くアクセルを踏み込み、
80kmに引き上げるような場合、
その快適性に目を見張る。

コンビネーションメーターから、
左方向に目を移す。
これまで横長の小物入れのあった部分が閉じられて、
タンカラーのレザーを貼ったガーニッシュに置き替えられた。

ピアノブラックのパネルとの取り合いが凄く美しい。

その左は金属調パネルでドアトリムにつながっている。
こうした造り込みがとても良くて、
プレミアム感が半端ではない。
バリューな価格だがプレミアムな商品に肩を並べている。
シートのグリーンステッチも、
このクルマには似合う。
なぜなら、
エクシーガそのものが基本的にスポーティなクルマと言えるからだ。

中央のシートのピローも、
とても質感が良い。

センターアームレストのカップホルダーは、
今では別に珍しいものではないが、
全体のクオリティが高いので、
思わず造り込みに目が留まってしまう。

要するにエクシーガは、
作り手のポリシーを言葉ではなく、
運転席で合体したドライバーに肌で伝える。
大量生産の日本車の中で、
久しぶりに個性あふれるクルマに出会った気がした。
おわり