今から27年前、
忘れられない事件があった。
突如として「スバル360復活」を匂わす発言があった。
昭和63年3月3日、
スバルはサブロク誕生から30年を祝う節目で、
思いもよらないビッグニュースを発した。
「社長の想い」というものは、
実現させて当たり前の執念だが、
「思いつき」だと挫折することもある。
結局、それは実現せず、
「軽自動車で200万円を超えるような企画を誰が責任を持つのか」と、
ねじ伏せられて終わった。
当時はBe-1に象徴されるパイクカーの全盛期だ。
流石の大社長も大勢には逆らわず、
その発言は幻になった。
但し巷の噂は暴走し、
「アレはいつ出るのか」と、
貪欲な期待で喉を潤そうとする奴らが群がってきた。
損を覚悟で限定生産するクルマと、
あざとい商売で話題をさらう仕事は根本的に違う。
出張先で思いもよらぬクルマを見た。
持ち主の思いは叶ったのか叶わなかったのか知らないが、
220万円を切る価格で落札されたのは、
ある意味良識的な世界だったのかもしれない。

このクルマの新車ベースプライスは税込みで198万円。
オートマチックもMTも同じ価格で解り易い。
これは思い切った値付けだが、
その上はいきなり20万円高くなる。
しかも更に20万円価格を上げ、
いきなり新発売時から限定車を投入した。
238万円のプライスをどう受け止めるかは、
個人の価値観だろう。
ところが悲しいかなホンダには、
その責務を担うブランドが無い。
逆にあったとして、
軽自動車をいきなりそのステージにあげるのは問題が多すぎる。
しかもブランドコントロールが出来ていない。
もしかしたら話題性を高めるために、
野放しにしているのかもしれない。

外観は誰が見てもスタイリッシュなウエッジシェイプだ。
気持ち良く割り切ったデザインに、
最新のターボエンジンが仕込まれている。
後方視界や、
利便性などに目を向けずスポーツカーに撤した。

一見すると渋く見えるリヤフィニッシャーだが、
流石のスタンレーも軽自動車用だと限界が見える。
白熱バルブが丸見えでは少し興ざめだ。

安全と軽量化で工夫を凝らした幌だ。
ここにも軽自動車としての限界を感じた。
開放感はどれ位あるのだろう。
ふとVIVIO T-topを思い出した。
しかしワイパーなど細部にも目が行き届き、
作り手の執念は至るところから匂う。

最近のホンダ車のアイデンティティを、
とても上手く表現したフロントフィニッシャーだ。
そこには、
4灯式のヘッドライトが収められ、
ワイドアンドローな雰囲気を見事に演出した。

これは意見の分かれる所かもしれないが、
シャシー開発技術が高いとは思えないタイヤに見えた。

お金持ちが玩具でちょっと買って、
すぐ飽きて売り払うなら問題ないが、
軽自動車らしく考えるなら前後のサイズは揃えるべきだ。

やってやれないはずは無い。
同じところで作る軽トラックは、
前後同サイズになっている。

フロントは165/55R15のタイヤサイズで、
リヤより細い。
フロントとリヤが同じグリップだと不都合があるのだろう。

リヤタイヤはインチアップされ、
195/45R16になっている。

タイヤを前後ローテーションできないと、
ランニングコストは高くなり、
軽自動車としては失格だ。
S660はもともと軽自動車として設計していない、
と言えばそれまでだが、
このクルマにはそれを言う資格が無い。
それにしても、
発表直後に魑魅魍魎が集まる場所に晒され、
随分不憫に思えた。
そのすぐ近くに、
まるで待っているかのように可愛いヤツが居た。
ボディ剛性の高さ、
樹脂製のテールゲートなど、
スバリストをワクワクさせるアイテムも満載。
しかもこの色には何とも言えない郷愁感が溢れていた。
このクルマにはある程度納得できるプライスが付き、
ランニングコストも比較的安く抑えられ、
軽らしさを持ちながらも、
絶対に軽では無いと言うプライドも感じた。
それにスバルは販売店が困らぬよう、
発表と同時に試乗車を配備し、
十分な生産体制も確立した。
R1を連れ帰ると、
次の仕事が待っていた。
中津川市には三菱電機の大きな製作所がある。
長野県飯田市と、
京都府に配下の工場を持つ歴史ある生産拠点だ。

そこで年に二度合同で開かれる展示会に参加した。
久しぶりに他メーカーの担当者と、
情報交換もできた。

隣に並んだのは岐阜スズキさんだった。
顔なじみの斎藤さんからご挨拶を受けた。
最新のスペーシアを展示し、
ステレオカメラの優位性を誇っていた。
初めて現物を見たが、
スバルのアイサイトとは、
まだ相当の性能差がある。
それよりもスペーシアの車両価格に驚いた。
軽自動車全体が高価になった。
だから昔とは異なるのだろう。
誰もS660が200万円を超えても驚かないはずだ。
そのホンダも積極的に参加する。
中津川は歴史的にホンダが強い土地柄だ。
ホンダカーズ中津川の田口さんからご挨拶を受けた。
アクティトラックには4WDのオートマチックや、
スーパーチャージャーが無い。
彼から時々売って欲しいと相談を受ける。
沢山のお客さまを持つ優れた人物だ。
その彼に東京で見てきたことを告げると、
「えっ!」と絶句した。
聞けばそれも当然だ。
彼らは試乗車さえ持つ余裕が無いそうだ。
与えられた初期の販売枠は6台らしい。
特別限定車でも無い限り、
スバルはこの様な商品企画を進めない。
川合元社長が厳禁したからだ。
今回の出張で、
故きを温ねて新しきを知った。
会社に戻り得たものを良く見つめた。
これは1600万年前の残骸だ。

ちっぽけな石ころだが、
その出自が面白い。
最新のレヴォーグを試すには、どこにでもありがちな道路を走っても面白くない。それで厳しいシチュエーションを求め走り回る。最近の大雨でアチコチに土砂災害の爪痕が残る。
この場所も実にリアルで、
自然力を震撼する。

こう言う場所だからこそ発見も多い。
安康露頭という中央構造線のホットスポットを見つけた。

眼下に見える川の中に太古の痕跡が露出していた。

道とは言い難い場所を下り、
川原に降りると、
洪水の爪痕がそこら中に残っていた。
中津川もそうだが、
元々ここ一帯は脆い地質のため容易に崩落する。

この切り取ったような川の両岸も凄い。
目先の端は崩れてオレンジ色の岩石が覗いている。
対岸は緑がかった暗灰色だ。
ここを中央構造線が走っている証だ。
相当昔からあったのだろうが、
1億年以上前に起きた事の名残は、
ちょっとやそっとでは消えない。
雑なようだが、
こう見えても天然記念物だ。

まさに正面の黒い部分が中央構造線の地質境界だ。
日本列島がまだアジア大陸の一部だったころだから、
地上には恐竜が居ただろう。
右側の緑色を帯びた地質を三波川変成帯という。
左側のオレンジを帯びた地質が領家変成帯だ。
緑色岩は主に深海で形成され太平洋プレートに乗って日本に来る。
オレンジ色の部分は御嶽山で良く見るように鉄分を含んだ花崗岩を主にしている。
これは陸上に地下深くから湧き出るマグマによって形成される。
だから二つの場所は遠く離れていたはずなのだ。
それが一億年前から徐々にズレ始め、
間にあった幅60㎞もある地帯は消失したと考えられている。
ずれる現象は地震になる。
断層という太古の大地震の名残を抱いたまま、
日本列島はアジア大陸から独立した。
それが今から約1500万年前と言われている。
中央構造線の地質境界線から少し左に、
もう一つ黒い断層が見える。
この断層を見ながら視線を左にずらす。

するとこの様に2本の断層がある事に気がつく。
1500万年ほど前に出来たと言われる、
「断層角礫帯」だ。

川下に少し移動し近くから見ると、
複雑さが良く解る。
この断層はかなりの厄介者だったようで、
日本列島が出来た後も再活動を始めた。
元からあった断層が、
更に複雑な形になっていく。
巻き寿司の断面は顔でも、
作る時は置き方一つで決まるように、
捻れたり曲がったり丸まったりしたのだろう。
この場所でハッキリしていることは、
北に向かって曲がりながら、
更に60㎞に渡る左横ずれを引き起こしたらしい。
この状態から、
そこまでは解明された。
この断層角礫帯の延長がどこか想像しながら自分の背後を見た。
すると何とも武骨な岩がある。
近寄って観察したくなった。

ここにも断層角礫帯の痕跡がある。

剥離しかけていた岩石を上手く剥がした。
そして記念に持ち帰った。

うーん・・・・。
太古のエネルギーをヒシヒシと感じるぞ。
ズッシリ重いが、
良く見るとヒビだらけだ。

天文学的な年月をかけ、
高い圧力ですりつぶされた異なる地質が、
一つの岩石を形成している。
見れば見るほど奥が深い。
中央構造線沿いには、
不思議なものが点在している。
見れば見るほど引き込まれる。黒光りする部分には何が含まれているのだろう。
底知れない魅力だ。スバルにも、こうした底知れない魅力がある。今回ハッキリと実感したのは、
既にスバルは「自動運転技術開発にメドを付けた」と言う事だ。
しかも最近では無い。
かなり前の事だろう。

既にLEVORGの素晴らしさを、
高速道路から真冬の山岳路まで使い詳しく確かめた。
このリンクに全てが記されている。
「かわら版Vol.202」でLEVORGの特集を組む。取材も兼ねて、最新装備の1.6GT DITをドライブに連れ出した。
今回の走行距離は800キロを超え、
このクルマのオドメーターも1241kmになった。
これぐらい続けて走ると、
自分の手足のように気持ち良く扱えるので、
クルマの詳細な変化も手に取るように解る。
いわゆる「手なずけた」というヤツだ。
まず走行性能を評価する。
今回の年度改良で、
B型のレヴォーグがA型を大きく上回る部分は皆無だ。
次に安全性能を評価する。
これには大きな付加価値が生まれた。
それを詳しく検証する。
どのスバルに乗っても、やはり一番楽しいのはワインディングロードだ。
LEVORGの奇麗に研がれた走行フィールは相変わらず素敵だ。この動画を見ると良く解るはずだ。1.6リットルのダウンサイジングターボと、
リニアトロニックの組み合わせは、
スバルにしか出来ない芸当だ。
急な勾配のワインディングを駆け抜けながら、
カメラを固定しないで撮影する理由は何か。
それはクルマに自信があるからだ。
固定すると人間の目線で記録を残すのと、
また少し異なる虚飾の世界が生じる。
手の動きや、
お尻からの振動がそのまま残る方が、
遙かにリアリティを伴う。
毎年ニュルブルクリンクで走る時に、
オンボードカメラの映像を残すが、
まるで面白くない画像ばかりになる。
以前、当社の大宮が助手席から撮影してくれたが、
同じ時にNBRでGT86を使って先導する動画も撮った。
覚えている人も居るはずだ。
LEVORGの潜在性能の高さは、
この動画にあるように、
加速感が凄い。
上りだと重力の法則に逆らうが、
下りは追い風になる。
その状態を完全に支配下に置ければ、
クルマの評価は大きく高まる。
一昔前のクルマなら、
タイヤも悲鳴を上げるだろう。
こんなに楽しいハンドリングも存在しない。
スムーズなクルマの動きが解ると思う。
隣りに乗りたくなる人も居るだろうし、
ステアリングを握りたくて堪らなくなる人も居るだろう。
それを的確に紹介するために、
800㎞走る必要があった。
新しい「至れり尽くせり」のLEVORGは、専用のパナソニックビルトインSDナビを装着していた。
初めて長時間使ったが、
マルチファンクションディスプレィ(MFD)との連携は、
やはり純正らしい大きな魅力だ。ナビだけでも周辺のパネルと折り合いが良く、専用設計の良さが滲み出ている。
その上機能にも大きな差があるので、汎用品では追いつけないアドバンテージを感じた。
この角度から見ると使い易さが良く解る。MFDに次のインターチェンジの情報も表示されるし、工事中で車線が減少する時も、僅かな目線の移動で状況をチェックできる。
新たなLEVORGの専用装備は、クルマに乗りこみキーを捻れば一目瞭然だ。
まずMFDにADVANCED PACKAGEと大きな表示が出る。
本音を言うと、パッケージなんて安っぽい表現より、もう少しましな表現は無いのかと思った。
さらに中身を精査すると、それほど先進的なアイテムでは無い。
けれどそのキップの良さが嬉しい。
既にあるものを吟味し、アイサイトに融合させた。
しかも一切お金をもらわない。だから逆に言えば「作り手の都合」で名前を付けた。(笑)
MFDに現れるイラストはカッコイイ。
ただし、
所々に「空っ風」の匂いが立ちこめる。
スバルのセンスは抜群なのに、ここは惜しい。
Advancedの後は、 self‐defenserなんてどうかな。
イラストの周りにあるように、アドバンスド・セイフティ・パッケージ(ASP)の機能をアイコン化した。それを解り易く説明する仕掛けもある。
夜間だともっと違いが良く解るはずだ。
スタートボタンをオンにすると、
エレクトロルミネセントメーターが目覚めると同時に、
ステアリングホイールの向こう側で、
キラキラキラと三色のLEDが点滅するからだ。
LEDの数は全部で7つある。
中心に緑色、
その左右に各二個づつの赤色LEDが並ぶ。
そしてその両脇を黄色のLEDで固めた。
なかなかユニークで、全車速追従機能付きオートクルーズをセットし、機能が働くと中心の緑が点灯する。
このランプはACCを動作させないと点灯しない。
頻繁に点灯するのは、最も外側にある黄色のLEDだ。
車線を逸脱しそうになると、両側が点灯し、逸脱しそうな側を点滅させる面白い仕掛けだ。
そして衝突する危険性を察知した時は、赤い4つのLEDを素早く点滅させ、ドライバーに緊急事態を警告する。
詳しくは後述するが、クルマが目覚めると、なんだか賑やかで嬉しくなる。フロントウインドウにちっちゃな信号機のように、三色のカラフルな点滅が現れる。
深夜の滑走路を思い出すような、小洒落た演出を感じる。
車体にも良く見ると違いがある。
まず助手席のドアミラーに「でべそ」がある。
ASPは大きく分けると4つの機能を持つ。
まずスバルリヤヴィークルディテクション(後側方警戒支援システム)だ。
米国で発売されたレガシィにまず着いたシステムで、
バックする時に、死角に入ったクルマを知らせてくれる。
狭い駐車場からバックで出る時に、
近づくクルマがあると「ピピピピ」と警報を鳴らす。
さらにこの様な場合が、

それよりも現実的に役立つ。
死角にクルマが居るとこのようにオレンジのサインを出す。
2つめの機能はハイビームアシストだ。
アドバンスドセイフティパッケージで外観上、
最も目立つ部分かもしれない。

ドラゴンボールの天津飯のように、
3つめの目を持った。
前方から来る光を感知し、
ヘッドライトのハイ/ローを切り替える。
そのカメラと、

防眩ミラーが組み合わされている。
ようやく日本でも標準装備になった。
3つめの機能はサイドビューモニターだ。
ドアミラーのカメラも、
外観上で一番良く解る特徴だろう。
そして4番目が前述したアイサイトアシストモニターだ。
1.6GT EyeSightが、
年改でどれほど進歩したか、
オーナーの立場になって検証した。
借用したモデルはVM4B545 DEだ。
かわら版の制作も視野に入れ、
まず基本データをパソコンに入力した。
特に大きな変化は無い。
【諸元】
全長×全幅×全高(mm):4690×1780×1485
トレッド前/後(mm):1530/1540
最低地上高(㎜):130
車両重量(kg):1530
最小回転半径(m):5.5
乗車定員 5名
【エンジン】
FB16/水平対向4気筒1.6L DOHC16バルブデュアルAVCS DIT
内径×行程(mm):78.8×82.0
圧縮比:11.0
最高出力 170ps/4800-5600rpm
最大トルク25.5kg・m/1800-4000rpm
【燃料供給装置】
筒内直接燃料噴射装置
【変速機】
リニアトロニック(6速マニュアルモード付)
【燃費】
17.6km/l (JC08モード)
【標準装備】
マルチインフォメーションディスプレイ付ルミネセントメーター
キーレスアクセス&プッシュスタート
ファブリック/トリコットシート表皮
電動パーキングブレーキ
215/50R17タイヤ&アルミホイール
オールウエザーパック
ウエルカムライティング&サテンメッキドアミラー
運転席8Wayパワーシート
【税抜き車両本体価格】
2.790.000円 外装色クリスタルホワイト・パールは3万円高
直前まで使っていたインプレッサスポーツに比べ、
車体重量は250kg重く、
馬力は軽自動車一台分に相当する55馬力多い。
発生回転域が大幅に違い800rpmも低い所から出せる、
台形状の馬力曲線を持つ。
同じように軸トルクは10.4kg・m高く、
2200rpmも低い所から発生させられる台形状のトルク曲線を持つ。
コイツはまるで「雨乞いグルマ」だ。
インプレッサスポーツに乗る間、
雨らしき雨が全く降らなかったのに、
LEVORGに乗り換えた途端、
激しい雨が降った。
悪天候になればなるほど、
レヴォーグは凄味を見せる。

激しい雨が降ろうが、
強い風が吹こうが、
高速道路を矢のように走る。
お決まりの渋滞だ。
この日は時間帯が早かったので少しましだが、

出勤時間帯の覚悟を決めて混雑と付き合う。
ACCが俄然威力を発揮する。
モニター表示は出ているが、
この時点でアクティブレーンキープは機能を休止する。

法律も足枷になっている。
現在の国際法では「軌道上」を除き、
自動運転は認められていない。
だから追従だけを繰り返す。
ターゲットを捕捉しているので、
インパネとガラスの間にグリーンのランプが見える。

これは意外に役立つ。
例えばこの先にある永福の料金所で、
思わずブレーキを踏むと、
その瞬間にACCはカットされる。
料金所を抜けた後、
何となく追従機能が作動している気持ちになると、
危ないわけだ。
アイサイトの場合、
万が一そのまま忘れていたとしても緊急ブレーキで止まるから良いが、
想定外の出来事も起きる可能性はある。
つまりぶつかるかもしれないと言うことだ。
ACCの状態を色で認識できるのは、
非常に良い試みだろう。
出来れば目線を移動せずに前方を見たい。
速度が遅いので車間距離を詰めた。
メーターに目線を落とすと、車間距離を示すバーが2つ減り、オートクルーズが時速40㎞にセットされているのが解る。
現在時速14㎞で追従していると数値で把握できる。
ステアリングの右側には、
ブラインドタッチが容易に出来るよう、
優れたデザインのスイッチが並ぶ。

車間距離を減らすには左側の上から二番目のボタンを押すだけだ。
その右がACCのメインスイッチで、
上がアクティブレーンキープを作動させるボタンだ。
これらの機能を使いこなす事は、さほど難しいわけでは無い。
しかし、全ての人が楽に使えるとも思わない。
スイッチに対する嫌悪感は、
人によって異なる。
と言う事は、手っ取り早い話、
これらを全て自動化すれば良い。
「自動運転、一丁上がり」と言うわけだ。(笑)
まあそんなに簡単にはいかないだろうが、
スバルの既存技術を持ってすれば難しい事では無い。
なぜか。
例えば、世の中で騒ぎを起こしている「ドローン」を例に挙げよう。
今でこそ耳慣れた言葉になったが、
世間では「ドローン」の定義は曖昧だった。
しかしスバルの中ではとっくの昔に定義化している。
スバルは1971年からファイヤービーのライセンス生産を始めた。
「ファイヤービー」は、高速無人標的機を指し、
イメージは高性能なロケット花火だと思えば良い。
その技術蓄積を元に開発されたのが、
「ターゲット・ドローン」だ。
これはロケット花火のような単純なものでは無く、
「航空機模擬無人標的機」だ。
最近騒ぎになっている、
あんな玩具のようなものでは無い。
純国産をめざした機体は約4m。
飛行中の戦闘機から発進可能なプリプログラム制御を持つ、
日本初の無人機だった。
開発は成功し量産から5年半で440機を納入した実績を誇る。
この「無人機のプログラム飛行制御方式」は、
1987年度の防衛技術発明賞を受賞した画期的な技術だった。
これらの開発に必要なのは、
システムインテグレーションだ。
ただ開発するだけでは無く、
それを大量に製造し、使いこなすためのソフトウエアも必要だ。
製造から販売までの優れた人員の育成だけで無く、
関連企業との密な連携も求められる。
スバルはこの様なシステムインテグレーターとしての要素を、
1980年代に確立していた。
と言う事で、
冒頭に述べたように、
スバルは何年も前に「自動運転技術開発にメドを付けた」と、
今回ハッキリと実感した。
渋滞が酷くなり、
止まりそうになる。

もはやノロノロ運転から、
止まったり動いたりを繰り返すだけの、
一番嫌な状態になりつつある。
そして遂に停止した。

するとアイサイトはすぐブレーキを保持し、
アイドリングストップを命じた。
クルマはエンジンを止めガソリンの節約を始める。
一向に動く気配が無いと、
次に電動パーキングブレーキ(EPB)を作動させる。
極端な事を言うと、
この時にもし居眠りしても何の問題も生じない。
EPBが作動し、
クルマを完全に停止させている以上、
ドライバーは何の仕事もする必要が無いからだ。
そして先行車が動き出すと、
「ピポ」とブザーが吹聴する。
その音を聞いたら、指先でこのスイッチを軽く上に押すだけだ。

愛馬はとても良く言うことを聞くだろう。
また元のように従順に走り始める。

僅か数項目のソフトウエアと、
スバルにしか出来ないセンシング技術さえあれば、
スイッチ操作など全く必要としなくなる。
ADAの頃はナビゲーションシステムが必須だったのに、
今ではそれさえ必要とせず、
アイサイトはスタンドアローンになった。
たかがスイッチを押すくらい、
自動化するのに2年も掛かるはずが無い。
高速道路に於ける自動運転を実用化すると明言した以上、
流れを読める人なら解るはずだ。
何に載せるかを想像すれば良い。
ここでスバルに関わる全ての人々は、
もう一度過去の見直しをすべきだと思う。
現在のスバルを支えている数多くの施設や資産は、
ある一人の社長が全て決断した。
歴史の影に埋もれているが、
中島知久平以上に振り返る必要がある。
そうしないと罰が当たるぞ。
その人の名は田島敏弘。
1985年の6月に富士重工業株式会社の六代目社長に就任した。
彼は就任直後に大きな洗礼を受ける。
それはプラザ合意を発端とした、
強烈な円高の襲来だった。
それをバネに田島敏弘の撒いた種は凄かった。
関連会社を22社立ち上げた。
それが現在では重要な位置を占めている。
例えばSIAもそうだし、
STIもSRDも欠かすことの出来ない子会社だ。
それ以上に重要な会社がある。
スバル研究所だ。
昭和天皇が崩御された前日に設立されたので、
昭和64年1月6日が設立記念日だ。
この研究所が特に力を注いだのが、
「ステレオ画像認識技術」と、
「自立移動ロボット技術」なのだ。
既に昭和64年の段階で、
アイサイトと自動運転の双方に大きく関わる技術開発を、
この研究所が取り組み始めた。
最新のスバルLEVORGに乗ると、
それらのセンシング技術が、
更に深い深海の中に沈めてある気がする。
スバル研究所が2000年度までに商品化した技術を紹介しよう。
1.ステレオ画像認識技術を利用した低高度飛行用対地高度計(STIAM)
2.床面清掃ロボット
3.トルク配分可変型4WDセンターデファレンシャルシステム(DCCD)
4.STI向けWRC用統合制御電子ユニット
5.高層ビルゴミ分別搬送システム(ヒュー・ストン)
そして将来動力源の開発にも果敢に挑戦していることが良く知られている。
一つだけ誤解があった。
以前のブログで、
「自動車衝突安全を目指す前に、
無人ヘリコプターの高度計にするために開発した」と表記したが、
それは間違っていた。
スバル研究所は設立当初から、
次世代の運転支援システムをカメラ画像による技術で進めると決めていた。
これはスバル本体の意思と違う方向から、
研究所が独自で開発を決めた。
もしスバル研究所で働く人々の情熱と英知が無ければ、
現在の元気なスバルは存在しないかもしれない。
これ以上は今の段階で詳しく語れないが、
その副産物として上記の1として掲げた、
STIAMが生まれたのだった。
これは全く逆の話だった。
この辺りに詳しい開発者の方とご縁が出来た。
出来る事ならお目に掛かりたい。
こうして振り返ると、
スバル研究実験センターの存在も大きい。
構想に着手したのは1981年に遡るが、
地権者との用地売買契約が取り交わされたのは、
田島社長就任直後の1985年7月であり、
87年5月の着工から僅か2年あまりで完成に漕ぎ着けたことは、
彼の功績とみなして良い客観的事実だろう。
これらのことが、
実は「スバルLEVORG 1年目の変身」に大きく関わっている。
アメリカに行って良く解ったが、
現在スバルの生産拠点で能力を大幅に増強できるのはSIAだけだ。
ここでの大幅な増産計画はスバルとしてそれほど大きな投資を必要としない。
しかし初めて作る時は、
いすゞと共に覚悟を決めた決断をしただろう。
昔ならやれたが、
今では無謀だ。
田島社長の時代と、
吉永社長の時代は違う。
既存の資産を上手く使い、
会社を守ることは経営者に取って必須要件だ。
LEVORGはクルマの基幹性能を高めたのでは無く、
安康露頭からの帰り道で、
気になる店が目に留まった。
何かしら引かれる店構えだった。
入ってみて驚いた。

饅頭の専門店だった。
柔らかい饅頭にがぶりと噛みついた。

中にはサツマイモで作った餡がぎゅっと詰まっている。
その時に閃いた。
この美味しい餡がLEVORGだとしよう。
それを分厚い饅頭の皮で包んだ。
その皮がASPだ。

饅頭は皮が美味しくないとつまらない。
あまり厚くすると、
餡の味を損なうし、
皮を良くしても値段はあげられない。
一年目を迎え、
スバルはカンフル剤を与える事にした。
普通のメーカーなら、
カンフル剤と言えば単なる値引きに走るだろう。
スバルは違った。
饅頭を美味くて厚い皮で包み直した。
そうなると当然価格に跳ね返る。
だから年度改良でASPを加え価格も7万円引き上げた。
その上で値引きでは無くクーポンを用意した。
レヴォーグを求める顧客に、
まんべんなく稼いだ利益を還元する。
元気なスバルだから出来る、
面白い作戦だ。
クーポン券ならいくらでもある。
この機会に是非使ってみないか。