猛暑の中津川を象徴する、美しい笠置山だった。
会議室の窓から格別な眺めを楽しんだ。村上さんは島根県にお住まいのSVXオーナーだ。
今年の2月に初めてお目に掛かった。
笠置山の夕日と重なる、
オレンジ色のSVXと記念写真を撮った。
その村上さんから陣中見舞いが届いた。
面白い梱包で大切に輸送された逸品だ。
瓶詰めしたばかりのお酒に驚き、
早速冷蔵庫に収納した。
美味しいお酒をありがとうございました。
生田さんからも凄いモノが届いた。
まず蕩けるような甘さを持つスイカだ。
そして次に沢山の軟骨が届いた。
とても美味しい恒例の贈り物だった。
社員に精を付けて欲しいという、
温かいメッセージも添えられていた。
この場を借りて心より御礼申し上げます。
岐阜スバルの杉山君から、
美味しい沖縄土産が届いた。
しっかり試飲したと、
嬉しい事を言ってくれる。
確かに美味かった。
珍しい泡盛をありがとうございました。
皆さんからの応援で、かわら版の制作に弾みが付く。
ブログの更新にもやり甲斐が産まれる。ドラフトが完成した翌日も暑かった。
イベントに備え、望桜荘の庭を手入れした。植物にも少し疲れが見えていた。
でも苔はスクスクと増えた。井戸水をミスト化して与え続け、乾燥を防ぎ続けた。
草取りしていたら、妙な物に気がついた。
棒を突き刺したような穴がある。樹種によって穴の数に違いがある。たとえば花梨の近くには全く無い。ところが梅の周りには、アチコチに沢山ある。興味深い事に、
根の張る方向に沿って穴がある。
まるで地中の根を記すようだった。
穴の上を辿ると、蝉の抜け殻があった。地中で7年間ほど過ごし、ようやく出てきたのかと思うと、とても儚い気分になった。
この後は生殖行為にふけり、雄は猛り狂ったように鳴きながら、地上で最後の晩餐を繰り広げるのだ。 銀杏の木も、
根元にたくさんの穴が開いている。
頭上を見ると、
ギョッとするほど抜け殻がある。
羽化したばかりアブラゼミが、
葉の間に見えた。
7年前、この望桜荘が誕生した。
因果関係がある。
その時、蝉が卵を産む環境が整ったのだろう。
トノサマガエルにしろ、
蝉にしろ、
この小さな庭の中に一つの宇宙が出来た。
蝉の一生はとても永い。
7年間も地中で生活し、
コツコツと力を蓄え華やかな時を迎える。
最近の研究結果で、
蝉の地上生活期は意外に長いと解明された。
クルマの開発も、
蝉のように長い間水面下で進められ、
地上に商品をして現れる。
長い間熟成された技術は、
一気に「糖化」して咲く、
それは竜舌蘭にも重なる、
代々継承される事象だ。
やはり残ることが、
何よりも大切だろう。
ふと望桜荘が誕生した時を思い出した。
「こけら落とし」に森宏志さんをお招きし、
新世代のWRX STIを熱く語って戴いた。
まさかその直後にWRCから撤退するとは、
夢にも思っていなかった。
森さんは三代目WRXの開発責任者だが、
その前は新世紀レガシィも担当した、
技術開発本部のエースだ。
スバルの歴史に残る、
カーオブザイヤー受賞車は、
落ち着きを取り戻したスバルの開発環境から生まれた。
潤沢な開発資金と、
優秀な技術者に支えられ素晴らしいクルマが産まれた。
当時の開発環境からすれば、
その後産まれる三代目インプレッサにも、
同じ期待が集まった。
しかしレガシィ風の安定性と、
重厚感を求めるクルマ造りは、
市場の期待を裏切った。
そしてリーマンショックによるラリー撤退へと繋がる。
さらに記憶を遡る。
二代目インプレッサの誕生も波乱に富んでいた。
21世紀を見据え、
急遽始まった二代目の開発は、
とんでもない荒技の繰り返しだった。
そこを乗り越え、
一気に3つの車型を同時に出した。
今のスバルでは絶対に出来ないだろう。
更にリコール問題の発生は、開発に大きなブレーキを掛けた。
インプレッサは、常に時代の狭間で波瀾万な産まれ方をする。
今から四半世紀前の1990年に遡る。この年はスバルに取って不毛だった。
主力車種がモデルチェンジの谷間を迎え、新型車は新規格サンバーだけ。そのサンバーも4気筒エンジン搭載を急ぐ余り、品質管理に課題が多かった。それは販売最前線に試練を与えた。
まさに売れば売るほど苦労の連続だった。
長期間フルモデルチェンジが無く、待ちに待った顧客が多かった。そのためよく売れたが、
それが製造現場の混乱も招いた。
なにもかも朝令暮改の連続だった。
ネコの目のように、
補修部品の番号が変わった事を昨日のように覚えている。
エアコンもオプションだった。
だからディラーの部品センターも苦労が絶えなかった。
同じ年式でも、
純正部品番号が違う。
どうしてかと思うほど、
エアコンキットの部品の品番が異なった。
CVT搭載とスーパーチャージャーエンジン誕生は、サンバーにハイパワーを求める顧客に受けた。
だが技術的に目新しく、いくら性能が良くても販売の現場と富士重工の理想は乖離していた。
乗用車を目指したディアスと、過去の上級貨物系「try」が混在し、レパートリーも混乱。熱心に開発しても、
軽自動車なんて「所詮使い倒し」だった。
それにやっと気がつき、踏ん切りを付けるまで20年以上掛かった。
翌年の1991年には、SVXが誕生した。
ようやく明るい兆しが見え始め、VIVIOの誕生で落ち着きを取り戻した。脆弱だったREXの商品力を一気に引き上げた。特に後年の「ビストロ効果」は、
末期モデルでスバルが見せる底力を、他のメーカーに思い知らせた。
富士重工の経営は決して良くなかった。工場稼働率も非常に厳しく、日産パルサーの受託生産を決定したのは、1991年1月18日の事だった。
この時代の節目に、思い切って社屋を一新した。だからその時代を良く覚えている。
その当時、クルマの技術開発に置ける高機能化を、最新の計測技術が支えていた。当時の専門誌だ。あの浜松フォトニクスも、自社の得意とする技術で燃焼解析を誇示していた。右ページの堀場製作所は、排気ガスアナライザーだけで無く、人間に変わって運転席にセットし、運転状況を正確に再現する高性能ロボットを開発していた。
周辺の技術革新は相次ぎ、1992年以降、各メーカーから壊れにくくて高性能な自動車がゾクゾクと誕生した。
この安定期に誕生したのがインプレッサだ。どんなライバルが居たか振り返る。まずトヨタから、マークⅡ、チェイサー、クレスタのⅢ兄弟が誕生した。そしてホンダからはドマーニが誕生した。2つは消滅したが、
インプレッサは残った。
当時発表された、3車それぞれの「開発の狙い」を紐解く。
「トヨタ マークⅡ三兄弟」1.洗練されたプロポーションの美しいスタイル2.安らぎと高まりを両立させた高質な走り3.人と地球に優しいクルマ造り
「ホンダ ドマーニ」1.永く、そしてセンス良く使いこなすことを前提とする、取り回しに優れたサイズ、デザインの追求2.ドライバが、安心感に裏打ちされた気持ち良い走りの出来る、クラスを超えた安全性能の追求3.乗る人全てが実感出来る、多角的な領域から捉えた快適性能の追求
「インプレッサ」1.流麗で高品位なスタイリングの実現2.軽やかな加速感、このクラスでは卓越した走り味の実現3.ファミリーカーとして必要十分な快適性の確保
何を言っているのか分かり難いホンダに比べ、トヨタとスバルは開発の狙いが解り易い。
この強烈なライバルの中で、なぜインプレッサだけが残れたのか。
そのキーワードが開発の狙いの中に見事に現れている。
それは「卓越した」という表現だ。
スバルはいつも「卓越した」何かを持っている。それさえ忘れなければ永遠に不滅だ。
卓越するとどんな味になるのか。
そこが今回のキーワードだ。
天昇堂の高橋さんが来店された。
素晴らしいお菓子をありがとうございました。社長に就任され、
これからの活躍が楽しみだ。
おめでとうございます。
戴いたお菓子は、
初めて見るものだった。
結ばれた二つの袋を切り離す。
最中の皮を出し、
もう一つの袋を開ける。
中ににある見事な羊羹を取り出す。
それを最中にして、
パクリと食べる。
餡と求肥の見事なハーモニーで、
香ばしさと「もちもち感」が秀逸だ。
若尾さんご夫妻からも、
ビックルするような贈り物が届いた。
いつもありがとうございます。
宮古島のマンゴーは、
とても甘い。
大きいマンゴは勿論美味しい。
でも今回は驚いた。
初めて見た小さいマンゴーが、
強烈に甘かったからだ。
プルーン位のマンゴーに、
ナイフを入れ皮を剥く。
種もしゃぶり尽くせるほど甘い。
南国のフルーツならではの、
「もちもち感」がマンゴーの魅力だ。
滋賀県から中瀬さんがいらっしゃった。
お土産に大津名物を戴いた。
近江の和菓子も、
京都の影響なのか極めて美味しい。
中津川の和菓子も、
近江商人によって伝えられたのだろう。
味の共通性を感じる。
封を切ると美しさに見とれた。
白い部分を餅羹と呼ぶ。
風味は名古屋のういろうにも通じる。
中津川の郷土菓子「からすみ」も似ている。
素朴で柔らかだ。
程良い粘りけが「もちもち感」を盛り上げる。美味しいお菓子をありがとうございました。久しぶりにスポーツブルーのWRXを預かった。
車検と同時にペイントを施し、
車体を若い頃に蘇らせる。
このGC8も「もちもち感」が高い。
どうしても手放せない気持ちが良く解る。
切っても切れない同志なのだ。
伊藤さんのGGAも、
同じ雰囲気を漂わせていた。
リフレッシュメンテナンスが終わり、最終確認の高速テストで、完成度の高さを見直した。恵那山トンネルもリフレッシュの真っ最中だ。
上り線のトンネルの方が新しいが、
良く見れば中はボロボロだ。
上下線とも側壁の補強が進んでおり、
間もなく改善されるはずだ。
高速走行性能は申し分なかった。
眠気予防には、
ファミマのホットコーヒーが良い。
だが苦みが残る口の中に水が欲しい。
クルマを止める。
湧き出る水が「もちもち」して甘いのだ。
水にも味がある。
清水をコップで受けた。
何の変哲も無い水だが、
そこには卓越した何かがある。
先を急いだ。
国道19号線に出ると、
前にR2がいた。
R2が右折し、
その前の車に追いつく。
湧き水を飲んだ時、
走り去ったサンバーだった。
サンバーの向こうからR2が現れた。
世の中は軽自動車に席巻された(笑)
軽快に走るサンバーを、
登坂車線で追い抜き中津川市内に入った。
今度はミライースだらけになった。
対向車線に目を移して、 思わずギョッとした。
プレオを先頭に軽自動車のオンパレードだ。軽自動車だけでなく、プリウスもそうだけど、「燃費」という分かり易さと、税の安さで大ブレイク。
移動の手段に、現在の軽自動車は何の不便も無い。異常繁殖は歪な環境が生んだ必然の結果だろう。
会社に帰ると次のテスト車が用意されていた。
リフレッシュメンテナンスの完了したGDBだ。
同じインプレッサでも、
その特性はかなり異なる。
両方ともB&Bサスを装着し、
モチモチ感のあるクルマになった。
際立つクルマに蘇らせるために、
リフレッシュメンテを施す。
いよいよ仕上がりだ。
ヘッドライトは丸い方が良い。
マイナーチェンジ後のブラックベゼルに惹きつけられる。
スバルを熟成すると「もちもち」になる。
整備も同じだ。
万全に仕込んだB&Bサスペンションを付け、
遂にリフレッシュが終わった。
いよいよ主の元に帰る。
中津スバルオリジナルのダンパーは、
乗り味に拘った設定にしてある。
二代目から三代目にモデルチェンジし、
更に四代目のデビューでどのように蛻変するのだろうか。
どうしてこれほどのヒット作になったのか振り返るため、
相棒を乗り換えた。
4万5千キロ以上走行した2.0iに、
モチモチの色気を感じた。
岐阜の表彰式から開田高原を経て、
南信を回った。
発売当時の2リットルFWDに500km以上乗り、
FWDの良さを見直した。
「もちもち感」のある性能は、
前輪駆動車の方が解り易い。
最新型とはまた違う、
熟れた味だ。
「改善の積み重ね」が1.6i-Sや、
特に1.6のFWDとどのような差があるか。
改めて良く解ったことは、
「もっちり」感だ。
ここに「クルマの面白さ」が有る。
「ひとくくり」に出来ないイキモノだ。
このエンジンは普段使っているフォレスターと同じだ。
それを、
軽量で駆動損失の無い車台と組み合わせると、
これほど「もっちり」した味になる。
これは驚きだった。
むせかえるような夏の空気を感じた。
ユニークなお店を発見した。
これはアルシオーネの味に似ている。
「ましのワイン」は製品の宣伝をほとんどしていない。
偶然通りかかって見つけたお店だ。
スバリストの琴線に響く味だとおもう。
当たり前のように山葡萄のワインがあるが、
野生種を畑に降ろして栽培したそうだ。
シードルもオリジナルの製品だ。
この辺りは又ゆっくり紹介しよう。
うっかりしてお名前を聞くのを忘れたが、
愛車はスバルだ。
レヴォーグへ乗り換えを計画中らしい。
翌日、岡山から岡田さんが愛機を受け取りに来られた。
久しぶりにエンジン音を聞いた。
当社にも動態保存されているが、
しばらくエンジンに火を入れていない。
この個体には、
何か誕生の秘密がある。
実際に売られていたクルマと、
何かどこかが違うのだ。
初代フラット6は、
コクがあって甘酸っぱい味がする。岡田さん、撮影させて戴きありがとうございました。アルシオーネVXのフロントオーバーハングは長い。
執念で6気筒を押し込んだのでやむを得ない。オーバーハングの長さが、甘酸っぱさに繋がるのだろう。これは当時のスバル車全般が持つ、共通した瑞々しさかもしれない。
地中で活動する蝉が、不完全変態の最終局面を迎えるように。
地中からトンネルを掘って地面に頭を出した。その瞬間かもしれない。
エンジンを上から見て、オーバーハングの大きさを実感する。車軸とエンジンの関係は、AWDである以上変える事が出来ない。しかし、この後改良を積み重ね、ドンドン短くなった。
上下を比べると良く解る。下は入れ替わるように入庫した奥村さんの22Bだ。
羽化のために樹を登り始めた蝉が、パックリ背中を開いた瞬間だろう。
究極の4WDでここまで詰めた。インプレッサ22Bの「もちもち感」は、オーナーの魂の入り方でそれぞれ異なる。
だからちょっと例えようが無い。
量産品では無く、
手造りしか出せない味が1台毎に醸し出されている。
b&Bサスペンションが出来上がった。
22Bのリフレッシュが遂に終わった。
奥村さん、ありがとうございました。
北原課長も、
満足できる仕事が出来たと喜んでいる。
久しぶりに主と再開し、
22Bが本当に嬉しそうだった。
尻尾を振りながら走り去る姿が、
目に焼き付いた。
モチモチしたクルマは、
全て卓越した何かを持っている。
そんなクルマと出会えると、
人生にまた一つ大きな喜びが生まれるだろう。
おわり