ドイツに行ったら、アイスクリームを食べて欲しい。何処の街角にも、
きっとアイスクリームショップがあるはずだ。
過去を振り返る。
2012年にXVディーゼルでアウトバーンを走った。
その翌年にあたる2013年、
社員全員でニュルブルクリンクを訪れた。
その時にフォレスターディーゼルを借りることが出来た。
そのクルマでアウトバーンを駆け抜けたら、
社員の誰もがディーゼルを見直した。
とてもトルクのある力強いエンジンは、
これまでの水平対向エンジンとは次元の違う仕上がりだった。
それらはどちらも手動変速機との組み合わせで、
排ガス規制もまだユーロ6を取得していなかった。
最新のアウトバックは一味違う。
欧州仕様だけに許されるディーゼルエンジンは、
そのいずれの条件も満たした。
フランクフルト国際空港の駐車場で、
アウトバックは静かに佇んでいた。
エンジンをかけると、
聞き覚えのある懐かしいサウンドが、
周囲の静寂をかき消した。
少し甲高いコリコリ感が、
駐車場の壁に反射して増幅された。
それは決して不快ではなく、
己の存在感を誇張する、
心地よい音だ。
フランクフルトから真っ先に向かったのは、
ニュルブルクリンクにほど近いダウンという街だ。
そこにある自然公園がとてもステキだと教えられ、
早速訪れてみた。
この様に火山の火口湖がいくつか並ぶ面白い場所で、
近くには小さな飛行場もある。
そこに典型的なボクサーエンジン搭載車で遊びに行った。
5人で2台に分乗し、
官能的なボクサーサウンドを楽しんだ。
やはりポルシェは最高だ。
世界に誇るスポーツカーは、
ラジカルな運動性能を誇るのに、
まるっきり雑味を感じさせない。
角の無い優れた乗り心地は、
世界中のスポーツカーのお手本だろう。
スバルは水平対向エンジンを極め続けてきた。
今ではポルシェさえダウンサイジングの荒波にもまれている。
そういう時代に水平対向6気筒はお荷物かもしれない。
でも絶対に捨ててはいけない。
スバルのフラッグシップも、
絶対に水平対向6気筒を積むべきだ。
湖の名前はマール湖だ。
その畔にはカフェやレストランが建ち並び、
キャンプサイトまで揃って居る。
そこにあるカフェの一つがアイスクリームショップだ。
研ぎ澄まされたジェラートを食べるも良し。
カラフルなパフェを選ぶのも良し。
アイスクリーム好きには天国の様な場所だ。
しかしあえてアイスクリームを頼まなかった。
出国前の忙しさから、
暴飲暴食を繰り返し、
カロリーオーバー気味だった。
この前夜も沢山飲んで、
深夜に食事もした。
朝ご飯もしっかり食べて、
お腹もふくれていた。
大好物だがグッとこらえてコーヒーを頼むと、
小さなソフトクリームが添えられていた。
日本に無いセンスだ。
我慢しているのを悟られてしまった。
メニューの中でどのアイスクリームが一番好きかと聞かれたので、
思わず正直に「スパゲッティィ~~~」と答えると、
じゃあ、
是非皆で食べてみましょう、と言う事になった。
このスバゲッティを模したアイスクリームは、
見かけより随分アッサリしている。
その食べ心地はシンプルなようで複雑だ。
この洒落たアイスクリームショップは、
ロマンさんご夫妻のお気に入りの場所だ。
モータージャーナリストの菰田さんの友人で、
生粋のクルマ好きでもあるロマンさんは、
東京在住のドイツ人だ。
彼はニュリンクの近くにガレージを買った。
マール湖を良く自転車で散策するそうだ。
その時に、
必ずここに寄って美味しいアイスクリームを食べるのだそうだ。
かねてからここを愛用しているので、
何が美味しいかよくご存じだった。
皿に盛ったホイップクリームの上に、
スバゲッティの様なバニラアイスを山盛りにして、
ストロベリーソースを添えた。
見かけ以上に食感は複雑だ。
バニラソフトクリームの持つ、
想像通りの柔らかな味と香りに、
ジェラートのような歯応えが混じる。
ホイップクリームと、
冷たいアイスクリームのハーモニーも良い。
融点が異なるアンバランスな食感を、
ストロベリーソースが繋ぎとめる。
そんな美味しく面白い味と、
なぜか似ていた。
最新のボクサーディーゼルとリニアトロニックは、
とても魅力的な組み合わせだ。
その第一印象は、
このアイスクリームにそっくりだった。
硬質感を感じさせるボクサーサウンドと、
低速からモリモリ沸き上がるトルクのハーモニーは、
絶対にガソリンエンジンでは表現できない。
日本で食べる事の出来ない、
面白いアイスクリームは、
これまた日本で乗ることの出来ないボクサーディーゼルと、
奇妙に似ていた。
だからこれらに共通の符号を感じた。
甘いがソリッドな舌触り。
蕩けるようでもあり、
突き放すようでもある。
ポルシェサウンドに浸れたことも、
スバル独自の水平対向エンジンを、
客観的に見直す事に役立った。
恋人と楽しく過ごせる、
美しい街だった。