日米のアウトバックは既に比較した。でも日欧間の比較はこれが初めてだ。
最初に大切なことを明らかにする。
車両重量だ。
日本ではアウトバックの基本重量は1570kgだ。この手の車にしてはかなり軽いと言える。
それにサンルーフとナビをラインで付けると30kg加重する。またパワーリヤゲートは10kg加重だ。リミテッドは18インチホイールを履くので、更に10kg加重し結局50kgの重量増加をみなす。
ということはラインオプションを全て付けた国内仕様は、1620kgの車両重量になる。ドイツ版のカタログの諸元を確認した。Leergewicht
自重と表記された項目に、2.0Dの6速マニュアルが1612-1620kg2.0DのLineartronicが1676-1689kg2.5iはLinLineartronicが1582kgとなっている。
ドイツの2.5iに18インチ付きは無いので、国内仕様の1570kgに比べると12kgほど重いことになる。
次にドイツ仕様のディーゼルとガソリンの重量差は最小で94kgだ。最大だと107kg重いので13kgの幅がある。
それぐらいは「泳ぎしろ」を考えておけば良い。
国内のリミテッドの一番重い車が1620kgだから、差し引くと今回借りたフル装備のテスト車は、ディーゼル化で79kgガソリンより重くなったと考えられる。
だから、ディーゼルのサスペンションセッティングは国内とかなり違う。勿論スタブレックスライドなど存在しない。ディーゼル化によって増えた前軸重を、
しっかり受け止める強靱なサスが必要だった。
ドイツのアウトバックは、高速走向安定性を重視して仕上げられた。他にもステアリングに特性の差が出て、
一般路では少しナーバスな脚になる。
あまりにもアイサイトが車線逸脱警報を出すので憂鬱だった。決してアイサイトの問題では無く、運転が下手なせいもある。
しかしステアリング特性は、明らかにいつも乗るアウトバックと違っていた。
一般路走行動画
いよいよ待望のノルドシェライフェに着いた。通行券が必要だ。
ニュルブルクリンクは有料高速道路の扱いなので、
走る時に入り口でお金を払う。
1周から購入できるが、
今回は4周セット料金で走行券を買った。
100€なので日本円に換算すると、
14.000円程度だと思えば良い。
1周27€なので1000円以上お得になる。
勿論他にも様々な方法があり、
シーズンで買うことも出来る。
ドイツ人は幸せだ。
日本人だと、
ここに行く航空券の他に、
レンタカー料金や燃料代が掛かる。
しかも普通のレンタカーで走ったら、
後でとんでもないペナルティを科せられる。
走行記録にニュルブルクリンクが出ると露見するが、
その他にもばれる理由が沢山ある。
例えばタイヤを見れば一目瞭然だ。
ニュルから戻ると、
小林さんのドライブエクスペリエが待っていた。
彼はA・Bそれぞれのプランを順調に消化し、
今回は車検の受取日に合わせてCプランを申し込まれた。
お土産をありがとうございました。晩酌が楽しみです。 帰国直後で出来るか心配だったが、
何とか残務を棚上げにして、
連休中日に無事開催することが出来た。
海外で不足していたミネラル摂取も出来たので、
カラダのためにも役だった。
偶然にも天候までニュルと同じになった。
時折激しく雨が降り、
終日ウエットでのレクチャーになったが、
それはそれで大きな意味がある。
多分、今までで一番沢山の情報を得てもらえた。
そう信じている訳は、
ドイツから戻って間が無いので、
非常に敏感にクルマの動きを感じ取れた。
クルマの挙動から、
ステアリング操作やアクセルワークの癖を俊敏に感じ取り、
すぐにそれらを上手く消す助言が出来た。
ニュルブルクリンクでも、
走行を始めた途端に天候が崩れた。
チケットを買って駐車場に戻り、
コースに進入した。
朝のコースはさほど混雑していなかった。
ツーリステンファルテンという、
一般の人々が思うように走り回る時間帯だ。
強烈に速いクルマが進入後すぐに現われた。
それを前に行かせた後は、ほぼコースを占有した。
雨は降ったりやんだりを繰り返し、
場所によってはかなり激しく降っていた。
アウトバックは典型的なSUVだ。
本来ならばニュルブルクリンクのような高速サーキットが苦手なはずだ。
ところが、
苦手どころか面白くて堪らなかった。
当然借り物なので気持ちを抑えて走る。
クラッシュするなど絶対に許されないことだし、
例えそれがもらい事故だったとしても、
ここを走る以上オウンリスクだ。
飛び石一つ受けること無く、
奇麗なカラダで返す、と心に決めていた。
無理はしないつもりでも、
時折前に現れるクルマをパスせざるを得ない。
なぜなら道を譲ってくれるからだ。
また、
一部で「テロリストファルテン」と囁かれるように、
自爆テロするドライバーが居る。
大した予備知識も無く、
全く練習もすること無く、
いきなり走ると、
他のドライバーを巻き添えにする。
そういうヒトから身を守るためには、
ゆっくり走るとかえって危険極まりない。
ソコソコのペースが必要だ。
とにもかくにも練習が大切だ。
今回は特異だった。
ニュルに滞在中、
雨模様がずっと続いた。
激しく降る中をM4で走行したこともある。
トレーニングの様子はまた改めて書くつもりだが、
この
動画で今回の苛酷なニュルの様子がわかるはずだ。
アウトバックは
4輪駆動なので滑る路面の安定性が高い。
だから結果的に速く走れる。
それも理由の一つだが、
他にも在る。
このクルマのサスペンションは、
国内仕様と全く違う。
タイヤとホイールは同じだが、
ダンパーとスプリングがとてもしっかりしていて、
ニュルブルクリンクのような路面に起伏が多い場所で、
常に安定したグリップを披露する。
意外なほどスポーティだった理由は、
嵩上げ車高ながら、
適度に固められたサスペンションにあった。
ここがスタブレックスライドを使った、
国内仕様のリミテッドと大きく異なる。
たとえば以前の動画を見てもらえば解るように、
柔らかく抱かれるように走るのが国内仕様だとしよう。
それに対してディーゼルスポーツの18インチ仕様は、
まるで印象が違う。
今日、小林さんとDEをしながら、
その理由が解った。
レクチャーカーのSTIと、
脚の硬さに共通する手応えがあった。
だから、
時折前に現れるクルマを余裕でパス出来た。
3週目に入り、
最後にパスしたのはポルシェだった。
ポルシェのドライバーはジェントルだった。後方から追いつくと、右に避け道を空けてくれた。
コーナーで追いつくのだが、その後の直線でポルシェが快音と共に加速し前に出る。
また次のコーナーで追いつく走行を数回繰り返した後、
奇麗にパスすると、徐々にバックミラーから姿が消えた。
シュワルベンシュワルツを抜け、ガルゲンコップから最終ストレートさしかかると、メーターは162㎞/hを指していた。 現在ニュルブルクリンクはツーリステンファルテンで、
車載カメラを用いた撮影を禁じている。
死者が出た動画をアップするモノが居たからだ。
ポケットに入れていたデジカメで走行中の様子を記録した。
3周走って一旦外に出た。
とにかく凄く滑る。
3周目には速度が少し上がり気味になり、
2度ほど4輪ドリフトを誘発した。
雨のニュルブルクリンクでドリフトは御法度(笑)
滑る理由を明かそう。
沢山のスポーツカーが痛めつけた路面が解るだろうか。
痛めつけるというと語弊があるかもしれない。
磨いて磨いて磨き抜かれ、
アスファルトの骨材がむき出しに也、
まるで黒い宝石のように光っている。
速度を落としコースから出て駐車場にクルマを入れた。
傷一つ付けていない。
安心安全を心掛けながら、
ゾクゾクしながらノルドシェライフェを楽しんだ。
クルマの状態を確認し、
最後の一週に臨んだ。
4週目に入る前に、
ここまでの走りを振り返った。
まず3周走ってパスしたクルマは5台だった。
そして抜かれたクルマはコース進入直後の2台だけ。さあ、いよいよ4周目だ。
こうして画像に残すとその時の流れを忘れずに残せる。
コースに入ると陽が差してきた。
あっという間に路面が乾き始めた。
ディーゼルエンジンにムチを与え、徐々に加速していく。ビルシュタインブリッジの下を100㎞/hオーバーで抜け、
ティアガルテンに向かっていった。
撮影しながら片手運転していても全く不安を感じない。
ここはレースで時速300キロオーバーから一気に減速する場所だ。
余裕を持って丘へと駆け抜ける。
この時点でおおよそ時速150㎞ぐらい出ているはずだ。
この後はカメラを収納し、
シュアな走りに徹した。
コース内に速いクルマがドンドン入り、
路面のコンディションもドライになりつつあった。
しかし魔物が住むニュルは、
アチコチでクルマにシャワーをぶちまけた。
フランツガルテンの辺りから、
前方にオレンジ色のスポーツカーが見え始めた。
最後にそれをパスできそうだったが、
無理なことは止め写真だけ残した。
ちょっとピンぼけだが、
良い記念になった。
コースを出て、
再び駐車場にクルマを戻した。
メチャクチャ速い昔のミニや、
ゴルフRなど3台のクルマに追い抜かれた。
だが、
アウトバックディーゼルの逞しい走りを充分試せた。
走行直後のタイヤを観察した。
特に熱を持つことも無く、
16.000㎞ほど走ったタイヤとして正常そのものだ。
今回は濡れた路面なのでタイヤの負担が減ったこともある。
最終的に、
5台に抜かれ、5台追い越した。
アウトバックは、
さほど無理な走りをした訳ではないのに、
気持ち良く前へ、前へと進んだ。
ディーゼルリニアトロニックは、
まだ潜在能力を秘めている。
この日の平均速度より速く、
緑地獄と呼ばれる場所を、
舞うように走った。
これは紛れも無い事実だ。
終わり