東京に向かって高速道路を走り、

改めて「Sの掟」を強烈に意識した。
MTしか意味が無い。
バランスドエンジンが必要だ。
金を掛けたシャシーにすること。

歴代のSの中でも、
203の持つ意義は語り尽くせぬほど大きい。
202がパフォーマンスオリエンテッドで、
少々スパルタンだった事を鑑み、
そのプロトタイプには様々な工夫が折り込まれた。
まず一番軽いスペックCをベースにして、
専用BBS社製鍛造ホイールを開発し、

タイヤにも拘った。
ワイドリム化されて横剛性が高くなり、
ステアリングに確かな手応えを感じる。
ポテンザRE070をイタリアに送り、
S203専用のタイヤを起こした。

それがこのP ZERO CORSA systemだ。
当時はピレリをよく使った。
235/40ZR18と大径ワイド化される事に対応させ、
ウエット性能を大幅に強化した。
タイヤとホイールで1本あたり1.5㎏も軽量化されたので、
ワイド化による横剛性の向上と相乗効果を生み、
路面の細かな変化にも追従する限界の高い脚になっていた。

軽量ドライカーボン製のフロントアンダースカートと、
角度を二段階に調節できる、
ドライカーボンのリヤスポイラーを装備した。

アルミ削り出しのシフトノブや、

エアコンコントロールダイヤルなどで、
特別感を強調し、

マフラーもチタン製を採用した。
極めつけはシートだった。
レカロが欧州のプレミアムスポーツ用に開発していた、
SP-Xをいち早く採用した。

ドラポジは走向安定性の要だと、
Sシリーズがこの時から訴え始めた。

ドライカーボンシェルをアルカンターラで覆った贅沢なシートは、
座った瞬間にドライバーを虜にする。
しかもリヤシート迄バケット風に加工されていた。

ルーフトリムもシート同様にアルカンターラで作り込まれ、

ステアリングもバックスキンで覆われた、
魅力のあるコーディネートだった。

バックスキン調のステアリングホイールは採用に至らなかったが、
ほぼコンセプトカーと変わらぬ形でデビューした。
今から10年前にS203は颯爽と現れた。
新たに仲間に加わったS203の整備が完了した。
11月3日の午後3時半に会社を出た。
渋滞は覚悟の上だった。
ところが杞憂したほどでは無かった。

丁寧にバランス取りされたチューニングエンジンは、
とてもフレキシブルで扱いやすい。
ノロノロ運転でも適当なギヤに放り込んでおけば、

オートマチック車のように走り続けられる。
また、
通常のWRXでは考えられないほど直進安定性が良い。

路面のアンジュレーションをほとんど受けず、
この様に両手を離しても真っ直ぐ走る。
こう言う安定性はBRZ以外には持たない長所だ。
S203は6万キロを超えた個体だが、
ワンオーナーで驚くほどコンディションが良かった。
途中のサービスエリアで黄色いXVに出会った。
実にセンスの良い使い方だ。

S207の黄色には、
STIの森部長の思い入れがある。
この黄色自体は好きでは無いが、
思い入れを持って乗る人を否定するわけでは無い。
XVのオーナーと話をしたわけでは無いが、
センスが生きる乗り方に脱帽した。
S207に特別な思いで乗る人が多いことは、
即日完売したことで良く解った。

だから、
当選した皆さんがどんな風にアレンジするのか、
それを拝見するのが楽しみだ。

東京での仕事は順調に終わった。
色がトレンドに乗らないと、
流石にGT-Rでも350万程度の応札しか無かった。
GAPの衣料品のように叩き売るわけでも無く、
まるで買い手をじっと待つかのようだった。
ハイパフォーマンスカーには、
特別な市場が存在し、
そこでは絶対に損をすることは無いと思われている。
Sシリーズの伝説も塗り替えられた。
今後しばらくの間、
スバルが絶対に阻止すべき事がある。
それはこのような場所に、
デリバリー直後のS207が並ばぬようにする事だ。
1日に80台程度しか作れないS660が、
発売された直後から並んでいた。
一台だけだと思いきや、
繰り返しアチコチの同じような市場で目にした。
STIは全力で、
ブランドを死守する義務がある。
経済市場は自由が基本だ。
強いヤツが弱いヤツを駆逐し、
頭が良くて要領も良い人間が儲けるのは当たり前だ。
但し要領よく目先の事だけを考えて立ち回られると、
これまで努力を積み重ね、
利益よりブランドを重視してきたモノには疎ましい。
今回の抽選は公明正大に進められた。
従って恣意的な当選は一切無い。
だから輸出目的や、
転売で一儲けしようという、
疎ましい行為も防御出来なかったはずだ。
だから発表前から予約したのに、
注文出来ない顧客が生まれた。
逆に締めきり間際に滑り込んだ、
カスタマーになり得ない顧客にクジ運が向いた可能性もありえる。
S207は日本のファンに売るクルマで、
海外に輸出しない。
22Bと同じ失敗をしないよう、
今からでも遅くないから入念な確認が必要だ。
これは即日完売したから言える。
もし売れ残ったなら立場は逆転する。
アチコチに頼んで400台を売り切らねばならない。
頼まなければ売れないクルマをR205とするなら、
S207が売れた要素は何だったのか。
また頭の中に少し残った過去のトラウマが何だったのか、
スバルはよく振り返る必要がある。
それらの躊躇いが、
ブランドの信頼と脅威を少しだけ損ねた。
だから今からでも遅くないのだ。
本当に欲しがっている顧客に、
出来るだけ行き渡るよう頑張って欲しい。
また中途半端に一儲けを企む人は、
思い直すことも大切だ。
早めに手を離すことが一番良いだろう。
コンプリートはこれで終わる訳では無い。
次からSTIに相手にしてもらえなくなると、
どれほど怖いのか、
その事も知る方が良い。
バイイングパワーが通用する相手ではないのだ。
少量生産には少量生産の生き方がある。
たとえモーターショーに出店しても、
その場で特定の顧客しか相手にしないこのブランドには、
「信頼と脅威」が充ち満ちている。
STIが見習う相手はこれしか無いだろう。
仕事を終え一旦帰郷した。
S203という高性能商品を、
安心してお客様に売るためには、
顧客の立場で的確に商品を評価する必要がある。

わざわざ東京を往復したのは、
その能力に衰えが有るのか無いのかを確認するためだった。
その結果、
ワンオーナーらしい良質車である事が確認できた。
ダンパーやブッシュ類は距離を感じない劣化だ。
だがこれにリフレッシュメンテナンスを施せば、
強烈なコンプリートカーとしての能力も更に向上するだろう。
会社に戻ってすぐ、
S203からBRZに乗り換えた。
岐阜スバルの関店が新装開店したので、
お祝いにいくためだ。

S203とBRZの共通点は、
素晴らしい直進安定性だ。
圧倒的に違うところは、
タイヤに頼らないBRZに対して、
S203はタイヤの能力差に応じて引き出せる性能に差が生まれる。
どちらにも高い魅力がある。
だから一方をベストだと結論づけることは不可能だ。
関市の新店舗を任された加藤店長だ。

新しい店のサービス待合室にはコストがふんだんに注ぎ込まれた。
スタッフの皆さんはきっと良い仕事をするだろう。
心から応援したい。

奇麗なサービス工場も出来上がっていた。
関店の皆さん、
おめでとうございます。
お祝いを言って会社に戻り、
木曽福島まで納車に行った。
戻る頃には真っ暗になった。
駅前の老舗旅館が良い雰囲気を醸し出していた。

この様な宿でゆっくりくつろぐのも味がある。
そう思いながら「特急しなの号」に乗車した。

車中で慌ただしかった一日を振り返った。
目にしたばかりの伝統ある老舗旅館は、
今や旋風を巻きおこしている、
低価格のホテルチェーンと根本的に違う。
地域独自の伝統や個性を活かした上で、
あらゆる要素を刷新し、
次世代に向けた努力が続く。
その努力が独特のオーラを放つのだろう。
自動車を売る仕事にその理論をあてはめると、
面白い事実が浮かび上がる。

老舗旅館と比べると、
自動車ディーラー網はホテルチェーンのようだ。
それまでに得たノウハウを徹底的に注ぎ込み、
全国統一の基準に整える。

フリードリンクを揃えるところなど、
東横インの朝食スタイルのようだ。
ディーラー網はホテルチェーンと根本的な違いがある。
サービス部門を持つことだ。

素晴らしく整った設備は、
ありとあらゆる動線を考慮し、
最も効率的に働けるようになっていた。
関の新店舗には、
若さと利便性が羨ましいほどに溢れていた。

小川室長は部下を束ね、
岐阜市から関市を中心に販売促進活動に勤しむ。
まだ岐阜らしさを微塵も感じさせない店舗だが、
まだこれから先は長い。
日本を代表する刃物の街としての特徴を、
新たな店舗に注ぎ込むだろう。
ドイツに行って驚いた。
ゾリンゲンの提唱する新たな包丁は、
岐阜県関市の工房で生まれていた。
その刃物の街に相応しい店造りとは何だろうか。
同じ業種の中に「らしさ」を必要とする企業と、
ナショナルブランド化を目指す企業があり、
それらの店造りは相反する。
そこの部分に目を凝らすと、
極めて面白いアイディアがいくらでも浮かぶ。
木曽町福島は関所の街だ。
関市から関所とは何か因縁めいていた。
つたやの暖簾を見て、
無性に写真を撮りたくなった理由は至って簡単だった。
ナショナルブランドのホテルチェーンには、
優れたフロントは必要だが「おかみ」は要らない。
若くてマニュアル通りに動ける人材に恵まれれば、
日常業務は円滑に進む。
都会のホテルでチェーン店の人気は高まる一方だ。
ディーラー網にも同じ事が言える。
誰でも売れる解り易いアイサイトなら、
全国共通の商品知識で十分だ。
岐阜スバルのトイレも、
まるでホテルチェーンのように整った。
ところがS207を売ろうとすると、
それらとは違うスキルが必要になる。
たとえば店内の一等地にキッズコーナーを置くとしよう。
現在ではキッズコーナーが店造りの大切な要素だ。
でも店内に特殊な高額車を展示すると、
コドモの群がる設備は邪魔だ。
きっとその辺りも、
店長代理の野村君としては頭の痛いところだろう。
どうせ2階の一角に閉じ込めるなら、
整備士よりコドモの方が効果が出ると思う。
偏差値を基に標準的な仕事をすると、
安心で手っ取り早い事が何よりも大切になる。

黄色の持つ意味が何処に有るのだろう。
これは女性には解らない。
ましてやコドモにも理解は不可能だ。
たかが塗装になぜ3万円も余分に払うのか。
それも今回は更に多い5万円をなぜ顧客に求めるのか。
400台中の200台を更に絞り込み、
100台だけサンライズイエローを塗ったのは、
希少性を高めるためだ。
更にサイドシルプレートも黄色くした。

シルバーのサイドシルモールも、
サンライズイエローと相性の良いブラックに換え、

ドアミラーもブラックに置き換えた。
この辺りの変更に対して、
たったの5万円しか請求できないのも辛い。
全くオリジナルの「レモンイエロー」や、
マットブラックを用意して30万円払うだけで、
それ以上の付加価値を与えることも出来た。
スポルヴィータとは格が違うから、
シートベルトも専用品になった。

助手席に座っても、
一目で価値が解るように真っ赤なインパネパネルで飾り付けた。

S203では諦めざるを得なかったバックスキン調のステアリングホイールは、
東レのウルトラスエードを巻いて実現させた。
本来なら鹿革の表皮を使う、
本革の「バックスキン」が好ましいが、
手入れに手間が掛かる。
カタログには「ウルトラスェードという新しい素材を採用した」とあるが、
これは全くの嘘である。
元々スバルは21世紀になると東レの「エクセーヌ」を使い始めた。
アイボリー内装と相性が良く、
肌触りも良い理想的な素材だ。

同時に東レは海外でもエクセーヌを展開した。
アルカンターラという商標を登録し、
イタリアで大成功を納めたのは、
アルカンターラを発明したのが日本の企業だと解らぬよう、
覆い被せたからかもしれない。
S203のプロトタイプには、
そのアルカンターラが巻かれていた。
(量産型では高触感の本革に変更されたが)
アルカンターラは基本的にエクセーヌと同じだが、
日本で目新しさを出すために、
徐々にこちらの「アルカンターラ」を使うようになった。
エクシーガのカタログを開くと、
堂々と表記されている。
今回の材質は「ウルトラスェード」になっているが、
これは元々米国市場で展開したエクセーヌの別名だから、
決して新しい素材ではない。
東レが値段を引き上げるために、
STIを手玉に取ったのかもしれない。
カーボンルーフに出来なかったが、
ドライカーボン製のリヤスポイラーを装備した。

そして以前より大型の翼端板を採用し、
大胆なフォルムと空力特性の向上を実現した。

これらは実際のレースからフィードバックされている。
このWRXはかなりの歌舞伎者だが、
あっという間に売り切れた。
オトナのオトコが、
この様に細かいところを穴の開くほど見て「ウヒヒヒヒ」と喜ぶのが、
正しい「S」の楽しみ方であり、
オンナやコドモでは少し付いて行けない世界なのだ。
それに引っ張られて、
500台のスポルヴィータも売り切れるのか。

スバルのカラーデザインを担う雲野くんだ。
是非スポルヴィータを見て欲しい。
「S」とはまた違った、実に味わい深い彼の思いが詰まっている。
それにしてもマツダの勢いは凄い。一昨年のスバルのようだ。
だが、
会場が暗く少し恣意的だ。

全長の短いロータリーエンジンを、
どうしてこの形で具現化するのか謎だった。
しかし本気で作るらしい。
実に楽しみだ。「期待して下さい」と胸を張った。その言葉に嘘は無いはずだ。
このコーナーも是非見るべきだ。
なぜか。
TOYOTAがロータリーエンジンに興味を持たないはずがない。
スバルという、
ステキなパートナーを手に入れた。
なかなか良い恋愛関係が続いている。
でも資金に余裕のある大旦那なら、
三角関係になる恋人を平気で作るだろう。
それぞれ美しさを競い合うから旦那には都合が良い。
最近では金髪の彼女も作り、
自信過剰で言うことを聞かないスバルにも少し飽きた。

簡単にハイブリッドを与えて貸しを作ったら、
当然次には借りを返す事を願うだろう。
TOYOTAは見苦しい真似をしない。
相手の懐を良く見て上手く付き合う。
運の悪い相手とは協力関係など築くはずが無い。
マツダはそれを手玉に取るのが苦手らしい。「ロータリーエンジンは我々の魂だ」と言い切った。
しかし次の言葉が謎だった。「我々は魂を売らない」
そういう問題じゃ無いと思うけど・・・・
首を捻りながら、日産のブースへ行った。
これは張り子の犬だが、まるでバットマンカーかとおもう程の物々しさだ。

「やっちゃえニッサン」と品の無いキャッチフレーズを連発するので、
出展車にもまるで品が無い。
ホンダはそれより現実味があるけれど、マツダに比べ迷走ぶりが甚だしい。
近くに居た人に説明を求めたら、クラリティの担当だからNSXの事は良く知らないという。
それは好都合だ。
燃料電池車をなぜホンダがやる必要があるのですか・・と問いかけた。
以前からホンダは自家用ジェットや燃料電池など、
実際のクルマ造りとかけ離れたことに金を使う。
それらの質問が不快感を与えたようだ。
いまさらエンジンをやるなんて意味があるのかと、
その方は仰った。
充分に意味があると思っている。
是非ダイハツを訪問して欲しい。
キャストはイマイチだが、
ダイハツには一本通った芯がある。

まず、
「最近のダイハツはデザイン力が今ひとつだね」と、
この大らかな男性に水を向けた。
「え、そうでしょうか」と怯んだので、
「でもダイハツは凄いよね。あのTOYOTAが展示している小さいスポーツカーだって、
おたくと無関係じゃ無いでしょ」
と問いかけると、

「いやー、他所様のことですから、ワタクシからは何も申し上げられません」と頑なだ。
ところが、
顔が全てを物語った。
口とは裏腹に、
「そりゃあそうでしょ、小さいエンジンはウチの得意分野だもん、
それにコペン作ってるから小排気量のスポーツカーがやれないことはないよ」
と脳内で叫んでいた。
あまりイジルと申し訳ないので、
「今日は横田さんはいらっしゃらないの」と聞くと、
「横田をご存じなんですか、あの辺に居るはずです」と教えてくれた。
やっと横田さんに再会できた。
嬉しかった。
覚えていて下さったからだ。

ダイハツとパートナーシップを組んで、
スバルはとても良い思いをしている。

さらにこのコンセプトに痺れた。

スバルでは絶対に出来ない開発だ。
これを売る日が来ると思うと胸がときめく。
日常の生活で求められるクルマの基礎技術だ。
横田さんにホンダブースで聞いた俄に信じられない話をしたら、「本当ですか。そんな馬鹿なことを言ってるんですか」と意見が一致した。
TOYOTAは日本を代表する桁外れにでかい会社で、国策的にも燃料電池を推進する必然性がある。
そのTOYOTAが作ったミライを見て、
素晴らしいが実現にはほど遠いと感じた。
そして更に素晴らしいモノをダイハツブースで見た。
ここにはダイハツの提唱する身近な燃料電池がある。
高圧のガスボンベを背負わなくても、
簡単なカートリッジから化学反応で電気を取り出せるシステムだ。
ブースの中二階を絶対に見逃してはいけない。

自動車用の燃料電池の主流は、
取り扱いに危険を伴う水素に比べ、
水加ヒドラジンは取り扱いが楽だ。
強アルカリ性なので、
直接触れてはいけないが高い圧力に耐える容器を必要としない。

ここで初めて知ったダイハツの奥深い技術だ。
詳しく説明して下さったのは、ダイハツ工業でこの技術を研究中の田中裕久さんだ。彼は工学博士として九州大学で客員挟持もされている。
今後が楽しみな地に足の付いた技術だろう。
このような裏付けを持って、
燃料電池を語るダイハツの言葉には重みがあった。
未来の日本を良くするだろう。
研究の成果が実る日を楽しみに待ちたい。
子供の頃から未来を予言する話は大好きだ。
その一つに「国際救助隊」があった。
災害で危険な状況にあることを察知すると、
高性能なロケットエンジンを搭載したマシンで、
世界中のどこへでもすぐ駆けつける。
思わぬ所でバージルに出会えた。
リメイクされたサンダーバードがテレビで放映中だ。毎回楽しみにしている。
何しろ偵察から輸送、海底から宇宙空間へと、ダイナミックな活動で視聴者を飽きさせなかった。
そしてメカニカルデザインが最高で、飛び上がる瞬間の撮像技術が素晴らしかった。
モーターショー限定で発売された2号のトミカも、
最終日を待たずして完売だった。
特に好きなマシンは、
2号とジェットモグラタンクだ。
あの独特な2号のプロモーションは、
妻を連想する。
思わずむしゃぶり着きたくなるほど好きだ。
サンダーバードは、
キャラクターの私生活がリッチで、
全てのマテリアルに上質感が備わっていた。
基本的に英国風のデザインは好きなので、
サンダーバードや「謎の円盤UFO」のような上質感に痺れっぱなしだった。
S207を撮影中、
一人の外国人が運転席に座ったままで、
なかなか降りようとしなかった。
この人はステアリングを何度も握りしめて、
S207の味を心に刻んでいるようだった。
かなり気に入った様子だ。
どこから来たのかと尋ねると、
「ロシアだ」と答えた。
ロシアの景気は最近良くないので、
スバルの販売台数も急激に落ちている。

最新のSを楽しむには、
まず上質感を詳しく知ると良い。
先述したようにS203のプロトタイプには、
アルカンターラのステアリングが備わっていたが装備を見送られた。
整備士がもし汚れた手で触れると大変だ。
それに手垢を気にしない人は、
すぐ「コテコテ」にしてしまうだろう。
WRCで常識化しても、
スバルの顧客に売る勇気までは無かった。
それに皮脂による汚れは、
体質によって千差万別になる。
説明に手間を掛けないと、
趣旨を理解してもらえない。
軽自動車ならばアウトレットモールで売れる商品だが、
Sシリーズはとてもでは無いが危なすぎた。
両車を混在して扱う時代から、
少しずつ成長してきた。
これがロシア人を虜にし、
何度も握り返したステアリングだ。
Dシェイプにアルカンターラを巻いた、
質感高い握り心地は、
さぞかし開発者にとって自慢だろう。

僅か200台ではあるが、
遂に店先に並べる勇気を持った。

幕張のGAPでは叩き売りが主流だが、
そうでは無いTHE NORTHFACEも共存していた。
S207のシリアルナンバープレートが光る。
これを持つクルマを売るためには、
やはりバックボーンが必要だ。
単純にクルマだけを売るのではなく、
その歴史から誕生に至る時代背景、
また開発者の素顔まで適切に説明できる能力も必要だろう。
カーボンシェルを諦め、
樹脂一体成形のパネル構造を選んだが、
表皮は格段に良くなった。

アルカンターラではなく、
セミアニリン仕上げを施した本革表皮で仕上げた。
日本車のシートに用いる革は、
耐久性、
耐候性、
経済性を重視する。
だから革の表面に塗装をして、
それらの要素を満たしている。
セミアニリンは革のなめし方から始まり、その表面処理まで、
手触りと使用感を最優先に考えて作られている。

シートバックのサイドに埋め込まれた、
レカロのオーナメントが誇らしげだ。
このシートに乗り降りする流儀や、
手入れのやり方をライフスタイルに突っ込んで説明できるか。
その辺りも非常に大切だ。
使い手が最新の「S」を楽しむ為に、
S207を詳細に観察して綴った。
これからのスバルの大切な試金石となる。
それはS203を振り返ると解る。
排気系にも金が掛かっていた。

高価なチタンマフラーや、
メタルキャタライザーを当たり前に装備した。
S203はは4段階に調節できる減衰力調整式のダンパーを採用し、
15㎜ローダウンしたスプリングを装着した。
しかし今回試したS203は、
その操縦性能とは何かが違った。
ステアリングホイールに舵角を与えた時、
そこから感じる手応えが柔らかく気持ち良い。
しかし鋭い操縦性能を発揮し、
クルマを自由に操れる。
先にも記したように、
ステアリングから手を離しても、
クルマの方向性が乱れない。
この操縦安定性や回頭性能は、
シリーズの中で異質の存在だ。
トランクを開けて理由が解った。

このクルマにはパフォーマンスダンパーが装着されていた。
ヤマハとSTIが共同で開発したこのパーツは、
魔法の力を秘めていた。
現在はスバル車用をシムスが製品化している。
しかしこの味をなかなか再現させることが出来ない。
フロント側もアンダーカバーで隠れているが、
装備されていることは間違いないだろう。

それは当時のクルマとボディの構造が大きく異なるからだ。
4輪ストラットで、
しかも高剛性なGDBにはベストマッチだった。
ところが、
これ以降のSIシャシーでは採用が見送られ、
スバル独自開発のフレキシブルタワーバーや、
ドロースティフナーに置き換わっていった。
これらには味の違いが確実に存在する。
その理由はテンションとクッションの違いにあると思っている。
サンダーバード好きなスバリストには、
インプレッサシリーズが確実に刺さる。
番号順に識別できるのも嬉しいし、

メカニズムから発散する色気が溜まらなく好きだ。
S203のグリルを覗くと、
パワステ用のフィン付オイルクーラーが見える。

さらにバンパーの隙間から奥を覗くと、
202では丸見えのエンジンオイルクーラーが慎ましやかに鎮座している。
こんなところを覗いて、
ウヒヒヒヒと喜ぶ人間は、
STI好きのスバリストに決まっている。
S207も
今後益々目が離せないだろう。
どんなふうに楽しめるのか、
掟を守って試してみよう。
おわり