ずんずんずんずんずん・・・。遠くから足音が聞こえた。
秋も深まったある日、Before
After(2015.11.24)
そのオトコ達は突然やって来た。
「ええい!ひかえい!!査察じゃ!」
恵比寿幕府で老中を務める緑川氏は、
ゆっくりと口を開いた。
「御主、最近やけに元気が良いが、
蔭で何か企んで居るのでは無かろうな」
「・・・・・・・・・・・・」
吉永将軍の率いる恵比寿幕府より、
老中が大目付と勘定奉行を率いて突如現れたのだ。
「緑川様ご覧下さい。こやつ、こんな所に怪しげなモノを隠匿しておりますぞ」
大目付の中林氏が得意げにシャッターの奥を指さした。
「ほほう!ご禁制の英吉利品があるでは無いか。
阿蘭陀としか交易は許されぬぞ!御主どこでこれを手に入れたのじゃ」
中にはMGBが納められている。
確かに幕府は英吉利とは交易が無かった。
勘定奉行の千速氏がギロリと鋭い目で睨んだ。
千早氏は代官の杉山氏とも懇意である故、
油断ならぬ相手だ。
「老中様、こやつ、まだ怪しげなモノを隠しておるはずです」
大目付がたたみ掛けるように続いた。
すると老中は、
「どうじゃ、騒ぎが大きくなる前に、
隠し持っている禁制品を全て白日の下に晒さぬか、ふふふふ・・・悪いようにはせぬぞ」
「めっそうも無い、さようなことは一切ございません」
とひれ伏すと、
「そうか、そこまで申すのなら仕方が無い、
家捜しじゃ!洗いざらいに探すのじゃ!!!」
「ははー!」
と大目付と勘定奉行は城内を虱潰しに捜索した。
「ややや、老中様こんなモノが」
「ついに見つけたぞ」
大目付の中林氏は証拠写真をバシャバシャと撮った。
「老中様、これでこの領地も恵比寿幕府の天領でございますね」
勘定奉行の千早氏が満足げに語った。
「ホッホッホ、これで吉永将軍も喜ばれるじゃろう」
老中が胸中を漏らすと、
「尾張藩の福田大名も、さぞお喜びになることでしょう、ウッシッシッシ」
と大目付の中林氏が高らかに笑った。
というのはフィクションで、
スバル部品用品本部、
国内部品部の緑川部長が久しぶりに中津川にいらっしゃった。
美味しいお土産をありがとうございました。
同じく部品部の中林課長と、
ロードマンの千早さんも同行された。
「せっかく隣町の飯田市まで来たのだから、
ここに寄らずに帰れない」
査察というのは冗談で、
実は待ちに待った嬉しい訪問だった。
お土産に戴いたバームクーヘンは、
食べたことが無いほど美味しかった。
それだけで無く、
この焼き菓子の儚くもあり、
確かでもある食感は見事と言うほかなかった。
急な来訪のため、
飯田の街を歩き回って選ばれたと言うだけあり、
実に美味しい洋菓子だった。
社員皆で美味しく頂きました。
言葉には出さなかったが、
緑川部長の来訪はお祝いの意味も含んでいた。
部品という部門は縁の下の力持ちだ。
自動車を開発する仕事とは違い、
作ってからが勝負だ。
長い間それを維持するために機能せねばならない。
中津スバルがどんな環境で仕事をしているのか、
それを部下に見せるために来てくれたのだろう。
先月の終わりに名古屋市の中枢部に呼ばれた。
ここは自動車業界を統括する、
中部運輸局だ。
余裕を見て到着したので、
まだ誰も居なかったが会場は奇麗に整っていた。
表彰が始まった。
驚いたのは静岡鉄道の表彰内容だった。
なんと53年間無事故運転を続けて居るのだという。
名だたる大企業に局長自ら表彰状が渡された後、
当社も表彰して戴くことが出来た。
環境に優しい整備工場を作ると言うより、
何を残し何を変え、
何を学ぶかだけを考えていた。
昔は放置していた花梨も、
今では収穫できるようになった。
先週の月曜日に全て収穫した。
欲しい人に差し上げたいので、
よろしければ連絡を戴きたい。
銀杏の落ち葉も堆肥になる。
落ち葉を除けると、
苔が勢いづく。
先週から庭の手入れを全員で続けている。
次はここも手入れが必要だ。
桜を愛でれば、
人が集う。
人が集えば、
笑いが増える。
笑いが増えれば、
皆幸せになる。
「石のベンチを観察したら、どうもおかしい」
社員の洞察力が見る見るうちに変化してきた。
ベンチの周囲を調べ、手分けして掘り起こすと、
コンクリートの廃材がバケツに三杯も出てきたと言う。
土管を埋設した時に廃棄物をそのままにしたのだろう。
可能な限り取り除き、
土を入れた後で、
雨に晒して取っておいた自然石を並べてくれた。
Before
After(2015.11.24)
ここにも苔を移植すれば、
桜も喜び、
中仙道を通る人にも潤いが生まれる。
自然に発芽した山桜は、
姿形が親とそっくりだ。
邪魔になると危惧する人も居るけれど、
どうしても切る気にならない。
六地蔵川の清流に向かって玉竜が伸びている。
ゴミや砕石だらけで荒れていた場所が、
奇麗に整い良い環境が生まれた。
やはり大切なのは根だ。
根を良くするために環境を整える。
それは人の「根」を良くすることにそのまま繋がる。
表彰は社員の励みになる。
ありがとうございました。
励みになるから意識が変わった。
Before廃車置き場も常に清掃し、
奇麗な展示を心掛ける。
After(2015.11.24)
これをゴミでは無く財産だと捉えるようになったのも意識の変化に他ならない。
従ってそこには良い気が満ちあふれる。美しい苔が自然に生えるのはその現れだろう。
掃除中に北原課長がやって来た。
「社長・・・」
「ハイ、なんですか」
「これって、苔じゃ無いですよね」
そう言われて籠の中を見たら、
美しいシッポゴケがたくさん入っていた。
「これは大切な苔だよ。シッポゴケといって、
京都のお寺などで大切に育てているんだ。何処に有った」
と尋ねると、
「裏のマットの上に沢山生えています」
と言う。
「放っておくとマットが滑るので全部取ってきます」
と続けて言うので、
「じゃあ、桜ベンチの周りに移植しよう」
と答えを出した。
これには驚いた。
展示場の片隅で人知れず育っていた。
ベンチの前の殺風景な場所に、
彩りが出たが、
このまま育つかどうかは解らない。
Before
After(2015.11.24)苔は実にデリケートな植物だ。
でも光輪蒲公英も自然発芽してから見事に定着したので、
シッポゴケも生き続けるかもしれない。
最新の状態だ。
マットに生えていたシッポゴケ以外の苔を、
窪んだところに奇麗に移植した。
先週と比べかなり変わった。
ピンセットを使って、
裏返った苔を奇麗に並べ直す。
じょうろで井戸水を掛けながら、
上から圧力を掛け密着させていくと、
苔がイキイキと蘇る。
この色鮮やかな環境を守ることが仕事の質の向上に繋がる。
工房に戻ると、
初めて見るフォレスターが届いていた。
新色のセピアブロンズ・メタリックだ。
なぜか苔のような安堵感を感じた。
デモカーをパールホワイトにして後悔した。
苔を連想させるのはなぜだろうか。
苔を移植しながら仮根を見ると、
鮮やかな緑に茶色や黒が混ざり合う。
そのコントラストを更に土が複雑に彩る。
苔の緑と土を混ぜたような。
実に自然で柔らかな色だ。
また「照り」の良さが見る者を惹きつける。
XVに特別仕様車を作り、
この色を塗ると面白いだろう。
最新のXVに話を戻そう。
「根の重要性」
それが新型XVを端的に指し示す。
XVのベースになるインプレッサは、
既に昨年大幅な改善が施された。
ところが一年遅れてデビューしたXVは、
ハイブリッドと共にキャリーオーバーされた。
今年の初夏になるとインプレッサスポーツにハイブリッドが誕生した。
実はその時、
クルマの開発姿勢に大きな変化を感じ取った。
操縦性能が格段に向上したからだ。
スポーツハイブリッドは、
嵩上げしていない車体に電池を搭載したので、
XVハイブリッドより重心が低い。
そのリヤサスを大きく見直した。
ダンパーストロークを大きく取り、
更に動きを滑らかにしたことで、
とても良く曲がるクルマに仕上がった。
ハイブリッドの場合には、
リヤ周りの荷重も増える事になるので、
大きく上下に慣性力が働くと、
リヤグリップが不足する。
その傾向を思い切った方法で解決した。
WRXの開発手法を導入した。
車体のバンプに合わせトーインするよう、
リヤサスのジオメトリーをチューニングしたのだ。
どうしてそんなことが可能になったのか。
それはWRXの開発を総指揮した、
高津さんがインプレッサ全体の開発責任者に着任したからだ。
XVを含めたインプレッサ系で、
スバルは国内シェアを一気に伸ばした。
その稼ぎ頭を絶対にカテゴリーキラーとして守り抜く。
スバルの決意が見て取れた。
だからかなり思い切った改良を施し、
クルマの質を大幅に高め、
値段をライバルに対して低く抑えられている。
このクルマの諸元を改めて確認したい。
【車名】スバル XV 2.0i-L Eyesight
【型式】GP7E5TC LFC
【主要諸元】全長×全幅×全高(mm):4550×1780×1595
ホイールベース(mm):2640
トレッド前/後(mm):1535/1540
最低地上高(㎜):200
車両重量(kg):1410
最小回転半径(m):5.3
乗車定員 5名
【エンジン】FB20/水平対向4気筒2.0L DOHC16バルブデュアルAVCS
内径×行程(mm):84.0×90.0
圧縮比:10.5
最高出力:110kw(150ps)/6200rpm
最大トルク:196N・m(20kg・m)/2000-4800rpm
【燃料供給装置】EGI
【変速機】 リニアトロニック(マニュアルモード付)
【燃費】16.2km/l (JC08モード)
【標準装備】マルチインフォメーションディスプレイ付常時発光式ホワイト照明メーター
キーレスアクセス&プッシュスタート 本革巻ステアリングホイール
アドバンスドセイフティパッケージ 17インチアルミホイール
運転席&助手席8Wayパワーシート ウエルカムライティング アルミパッド付スポーツペダル
【税抜き車両本体価格】2.490.000円 クリスタルホワイト・パールは3万円高
外観上、ホイールも僅かに変更されたが、
一番の変更点はフロントフェイスだ。
ヘッドライトの「コの字部分」にアイラインを入れ、
白色バルブに変更しくっきりと際立たせた。
グリルのデザインも新しくなったが、
何と言っても一番の変更点はフロントバンパーだ。
L字型のクロームメッキアクセントをフォグランプの外側に配した。
インプレッサではフォグランプの上で横に切り替わるが、
XVの場合は縦に長くフォグランプの下で横に曲がる。
これがXVのフォルムに極めてマッチし、
存在感のあるタイヤとホイールに負けない重厚感を醸し出している。
このクルマにはデイライト機能を果たすLEDアクセサリーライナーが装着され、
周囲にピアノブラック調の加飾が施され、
更にスタイリッシュだ。
メーターは昨年から採用された常時発光式だ。
これはホワイト照明なので、
夜間の視認性もスッキリしたとても良いメーターだ。
燃料が指針式なら申し分ない。
相変わらずその部分が他と整合しないので、
瞬時に見ると燃費計と間違える。
やはり左下のメーターを水温計にして、
右下を燃料計に戻しスバルブランドとしての統一感を持たせるべきだ。
フォレスターのX-BREAKは明らかにXVを意識した特別仕様車だ。
今度はXVがX-BREAKのモチーフを取り入れた。
ステアリングを始め、
室内の要所要所をオレンジステッチで引き締めた。
インパネの左右を繋げるオーナメントは、
これまでの金属調から、
ピアノブラック調のパネルを、
金属調のアクセントで縁取りしたものに取り替えられた。
シートサイドにワンポイントで別素材を折り込み、
オレンジステッチで仕上げた。
更にシフトブーツやコンソールリッドまで、
オレンジステッチで統一感を出した。
上質な本革巻セレクタレバーとブーツにも、
オレンジステッチが縫い込まれ、
ピアノブラック調の加飾パネルで高品質に仕上げられている。
もちろんドアトリムにもオレンジのステッチが配された。
この辺りにピアノブラック調の加飾が施された仕上がりは、
フォレスターも同様だが、
XVは更にスポーティな印象が強くなっている。
それは空間全体がぎゅっと締まっていて、
絶妙な操縦空間を生み出しているからだ。
それに加え、
何と言っても走りそのものが素晴らしくスポーティなのだ。
これはレヴォーグやアウトバックがそれぞれ独自の世界を持つように、
インプレッサとは隔絶した、
XVならではのスポーティーな空間だ。
走り始めてあっという間に70㎞を越した。
借りた時の走行距離を上回ったので、
そろそろエンジンも回してみよう。
驚いたのは静粛性の高さだ。
正直に言うとアウトバック並みに感じる時がある。
物凄く静かになった。
コーヒーと水を購入し、
それぞれをセットした。
飲みながら、
後ろ側だと何となく使い難いな、
と思っていた。
後ろ側だとコーヒーが取りにくい。
まあ、こんなモノかなと思っていた。
次の休憩でチョコレート味のラテを買った時、
取りやすくするために逆に置いた。
すると更に使い難い。
これは何だ、
どうしたことかと逆に置くと、
ホルダーの深さが違うことが解った。
フォレスターは前後均一な高さのカップホルダーだが、
よくよく調べてみると、
こちらの系統は前後で高さが違う。
これまで全く気がつかずに使っていた。
ステアリングリモコンを付けない状態だと、パナソニックの方が扱いやすい。
両側に機能を切り換えるスイッチがあり、ブラインドタッチもし易くなっている。このナビにも臨場感のある音響機能があるが、
ダイヤトーンのようなわけにはいかない。
それより乱反射の度合いを見ると、
三菱の持つボンディング技術を認めざるを得ない。
この日の首都圏はやけに混雑していた。
前日から降り続く雨のせいか、
彼方此方で交通事故が起きた。
こう言う状態でやはりアイサイトは素晴らしい能力を発揮する。
バージョン3は実にナチュラルだ。
この様なシーンでバージョン2との差が明確に出る。
前回乗ったアイサイト付のインプレッサは、
スポーツハイブリッドだった。
残念ながらXVもハイブリッド系はまだアップグレードできない。
都内を走るとETC2.0の効果がより解る。
パナソニックもETC2.0に対応しており、
進行方向の直前情報や、
遠方情報をVICS情報とは違った形で表示する。
しかもパナソニックならその情報をMFDに投射できるので、
視認性が非常に良い。
パナソニックもフリップ操作が可能だ。首都高の出口がようやく近づいた。東京駅周辺は相変わらず道路の付け替えが頻繁で、
慣れないと走り難い。
会議を終えて次の場所に移動する手はずを整えた。
帰路は更に本領を発揮させ、
高速ドライブを楽しんだ。
慣らしも終わりに近づき、
夜が明けるとエンジンが軽く回るように感じた。
背の高いフォレスターも驚くほど操縦性能が良くなったが、
XVを比較の対象にすると、
当然のことながら軍配はこちらに上がる。
高速道路を走っていると、
まずこの辺りでそれが実感出来る。時速80㎞くらいで、
2000回転ぐらいからスロットルを開けた時に、
何とも言えないボクサーサウンドを遠くで奏でながら、
実にリニアに回転が上昇する。
この自然なフィーリングがとても良い。
最近のスバルは電制スロットルの早開きが好きなので、
アクセル操作に対してガバッと開くような嫌いがある。
逆に出たばかりのXVは、JC08を意識しすぎたためか、
スロットルの開きが遅くイライラすることが多かった。
普段使っているフォレスターも、発進時や低速時に、アクセル操作にリニアに反応せず、ガバッと開く印象がある。
危険では無いが気持ち良くない。
それに比べ今度のXVは実に塩梅が良く、
絶妙な走りをもたらしてくれた。
豊田市はガソリンが安い。
高速道路では140円近い価格が、
ここでは121円だ。
かわら版に使う写真を撮るために香嵐渓へ向かった。
ここからXVは本当の凄さを見せ始めた。
竹内流から高津流に調教師が変わると、
クルマというモノはこれほどまでに変化する。
深夜のワインディングを汗をかくほど攻めた。
明らかにリヤのグリップ力が高くなっているので、
コーナリングパワーが明らかに大きくなった。
限界領域まで持ち込んでも、
タイヤは悲鳴を上げない。
旋回速度が驚くほど早くて驚いてしまう。
SUVである事を忘れるほどだ。
フロントグリップだけ支配下に置けば、
リヤサスの動きをアクセルのオンオフで容易にコントロール出来る。
思いがけなく深いコーナーに入った時も、
ステアリングをジワリと切り込み、
スロットルを軽く緩めるだけで、
クルマのヨーレートがグッと高まる。
この感覚は初代レガシィRSで感じた物に近い。
最新のWRX STIにさえ感じることが出来ない、
懐かしい最高の味だ。
一気に750km近く走って、
大いに感動した。
このクルマを選ぶならハイブリッドよりガソリンが良い。
なぜかって。
それは軽さだ。
フォレスターとホイールベースは同じだが、
160㎜短く15㎜狭く165㎜低い。
重量は100kg軽く出来ている。
そう言えばドイツでこんな話が出た。
スバル欧州開発センターの山田所長は、
「代田さん、XVもスポーティーですよ」と言われた。
彼の自動車に対する評価能力は、
富士重工の中でトップクラスだ。
「しまった」と思った。
アウトバックは最新型なので、
それを上回る魅力はあった。
けれども100キロ軽くて、
ここまで完成度が高くなっていたとは思わなかった。
なので、
今すぐにでも、
XVでもう一度NBRを走りたい衝動に駆られている。
それくらい最新のXVは良くなった。
お薦めしたいボディーカラーはハイパーブルーだ。
ハイブリッドの時は要らないと言ったが、
このクルマにはルーフレールが欲しい。
そしてLEDアクセサリーライーナーを当然取り付ける。
エクステリアパッケージも絶対に付けよう。
ハイパーブルーを抜群際立たせる。
そしてナビはダイヤトーンだ。
そして最後に忘れてならないモノがある。
大型ルーフスポイラーだ。
但し気をつけて欲しい。
ボディ同色では無く、
E7217FJ700V2を選択するのだ。
なぜかって?
ブラックで締める方が絶対にクールだ。