利き足も大切だが、
無意識にコントロールされる軸足の重要性は、
それ以上だろう。
2016年東京オートサロンが開催された。
長い間通い続けるが、
こんなことは初めてだった。
開門を待ち、
行列に並んだ。
ゲートをくぐり真っ先に向かったのは、
最も奥にある東館、
それもホール8のブースだった。
そこにはTOYOTA GAZOO Racingがあった。
久しぶりに間近で章男さんにお目に掛かった。
相変わらず元気はつらつだった。

まず先にお礼を言いたい。
我々の魂を磨いて戴き、
本当にありがとうございました。
悔しい思いもあるが、
それは5%程に過ぎない。
トヨタだからこそ出来た快挙だろう。
スバルもその気概に応えた。
前代未聞のホワイトボディの供給を決断した。
ラインから取り出された真っ新のホワイトボディは、
トヨタの元町工場に送られる。
LF-Aを誕生させた元町工場は、
MIRAIの生産も進める、
トヨタでも異端の工場だ。
そしてエンジンは別の所に送られ、
全てバラバラにされ一つ一つ組み立てられる。
その場所はトヨタテクノクラフトだ。
横浜に送られた水平対向エンジンには、
ニュルブルクリンクのレースを通じて開発された技術が投入され、
ベースエンジンに対して、
最高出力は147kw/7000rpmが161/7300に高められ、
最大トルクも205N・m/6400~6600から217/5200に引き上げられた。
解り易く言うと、
より上に回るようになっただけで無く、
増大数は僅か0.2kgだが、
ベース車より1200回転も低い所で最大トルクが出るようになった。
車両重量に大きな変化は無いが、
カーボン素材を多用し重心高が下がったので、
別次元の走りを見せるだろう。
今回のショーを総括すると、
トヨタ以外に大した見所は無かった。

レース参戦車両は3台がアンベールされ、
ニュルブルクリンクに小型SUVでチャレンジする計画も発表された。
女性を使わずに、
イケメンでマッチョな男性を使う戦略も面白い。
振り子がこちらに戻る予感を、
トヨタは完全に察知していた。
残念だが、
スバルの展示はトヨタに完敗だった。
恐らく多くのスバリストも、
トヨタがハチロクにどんな愛情を注いだのか知りたいと思っているはずだ。

抜群のクオリティを誇るカーボンルーフ、
それにカーボントランクリッド、
そしてカーボンボンネット。
どれもLF-A譲りのすばらしい出来映えだった。
しかも驚いたことにリヤウイングのステーまでカーボン製だ。
グズグズしているうちに、
完全においていかれた感がある。
室内に目新しさは無いが、86共通のコーディネイトが冴えていて、質感も高い。
バックスキン調のアルカンターラで統一され、
肌触りも良かった。

恐らくギヤ比を刷新された専用の6速トランスミッションだろう。
ドライブシャフトまで軽量化され、
しかも高剛性の専用品だ。

シートはレカロだ。
既にSTIが具現化した物だが、
軽量化が図られているかまで解らなかった。

完全なツーシーターとして割り切り、
容易にロールケージが装着できるようになっていた。
細部の仕上げも良好だ。
トヨタのレーシングスタッフも、
雰囲気がまるで変わった。
これまで感じた、
レース界特有の厭なオーラも霧散して、
フレッシュで爽やかな空気に満ちていた。

軸足に狂いが無いと、
結果として良い物を得られる。
トヨタもニュルブルクリンクにチャレンジして10年目を迎えた。
その取り組み姿勢が間違っていなかったことを、
数多くの結果が証明しただけで無く、
クルマにも正直に現れた。

それがこのハチロクだろう。

生産台数は限定100台。
何しろエンジンの供給能力は1日当たり2基と少し。
単純に計算しても全て作るのに2ヶ月以上掛かる。
既に申し込みは2000人を上回ったらしい。
トヨタはスバルのような失敗をせず、
本当に欲しい人にこのクルマを渡して欲しい。
価格は600万円だ。
ハッキリ言って安いと思う。
そこで、
当社のスタッフに、
このクルマが欲しいか聞いてみた。
大宮は即答した。
「いらないっす」。
結構結構。
魂を磨いて戴き、
御礼申し上げると共に、
これに乗る興味は尽きない。
早く乗りたい。
けれど所有意欲は湧かない。
なぜならTOYOTAの製品で、
スバリストの心の琴線には触れない。
良いクルマと欲しいクルマも違う。
我々の魂を注ぎ込んだ商品を、
中津スバルは飾る。
もちろん、
我々とは即ちスバルチームのことだ。
じゃあスバルはどうなのか。
それは次のブログで。