この時期には珍しく雨がまとまって降った。降り始めた早朝に、チャールサイトイエローの鮮映性を改めて見直した。
本当に鮮やかな黄色だ。
だが、今年のカラー大賞を逃した。
今年の冬に高速度ウルでこのクルマを見た時、良い色だなと思った。あまり目立つ色では無いが、
実にセンスの良いグレーだった。
正直な所、
マツダが大賞を取っても全く不思議では無い。
インテリアも良い。
欧州に良くある色とは言え、
あの色使いの実力差を見せつけらたら、
スバルは勝てない。
センスの問題だろう。
テスト前のG4を綺麗に仕上がった大展示場に飾った。
漆黒の床にダークブルー・パールのボディカラーが滲むように溶け込む。
漆黒の床はアスファルトによって作り出された鉱物系の色調だ。
比較したくなり第一展示場に車を移動した。
こうして並べるとBRZの鮮映性が更に際立つ。
チャールサイトイエローも鉱物由来の色彩だ。
それと同時に同じアスファルトでも、
透水性との違いに気付いた。
透水性のアスファルトには、
昔と比べ違う成分が含まれるのだろう。
大展示場で見た、
ダークブルーが滲むような美しさは無かった。
ダークブルーは藍色を感じ、
鉱物では無く有機質の色彩だ。
これはマツダの目指す色作りでもある。
今のスバルはその道を歩んでいない。
もっと一本筋の通ったコンセプトで、
それを石井イズムと呼んでいる。
鮮映性を極めるためには、
数多くのハードルが待ち受けて居る。
ダークブルーパールの奥に、
平成16年式のレガシィB4が見える。
6気筒を搭載し、
アークティックホワイト・パールを纏っている。
この当時レガシィは白系のボディカラーが、
サテンホワイトとアークティックホワイト・パールの二頭立てだった。
サテンは織物を意味するから有機系の色で、
アークは放電なので有機系では無い。
この色は誕生直後から紆余曲折した。
ソリッドのサテンホワイトに人気が出ず、
アークティックホワイト・パールもパッとしない。
それでビッグマイナーチェンジを境に、
サテンホワイト・パールに統合された。
最新のホワイトも悪い色では無いが、
奥のホワイトの方が鮮映性に勝る。
パールホワイトに卵色が混じる様子が分かるはずだ。
有機系の色だから鮮映性とは少し違う方向に向かう。
石井イズムをグローバルで表現するコンセプトが、
ダイナミック×ソリッドだ。
過去のデザインを捨て去るのでは無く、
必要なモチーフを活かしながら、
躍動的で塊感のあるデザインを目指す。
とても難しい「動的質感」を表現擦るために、
レバー比も用いる。
D×Sの因数を変え車種ごとに特性を変えながら、
デザインポリシーを突き抜くのだ。
雨の中で濡れている白とリーガルブルーの紺色は、
どちらも美しい。
過去から続くデザインモチーフも、
上手く取り入れインプレッサの優れたデザインが誕生した。
しかしボディカラーだけはD×Sの洗礼を受けていない。
一つ前のデザインには金属調の造形をコットンでくるむような演出を感じた。
だから有機的になり鮮映性に欠ける。
ズラリと並んだボディには、
苦しんでいた頃の白が塗られている。
アルシオーネのリバティホワイトと、
インプレッサのフェザーホワイトは、
どちらも鮮映性に欠け徐々に人気を失う。
白不動の座を成し遂げる原動力となったのは、
平成8年のピュアホワイト成功以降だ。
ピュアホワイトの登場は、
他とは違う意外な方法だった。
当時はWRCでマクレーが獅子奮迅の活躍。
最初で最後のダブルタイトルも獲得した。
その記念限定色が、
ピュアホワイトだった。
二代目レガシィのGTに優勝記念限定車が設定され、
GT/VーLimitedと名付けられた。
白、黒、灰、紺と渋い色だけが設定された。
当時不人気だった白の登場に、
販売最前線は戸惑った。
特に岐阜の田舎では、
ディラーの首脳陣も恐れをなし、
誰も積極的に売ろうとしなかったことを良く覚えている。
この時に白の鮮映性に目を付け、
展示用に買い取った。
車両発注担当者も驚いただろう。
白と灰色各二台をまとめて一気に発注した。
それぐらいGTが売れていた頃の話だ。
時代はゆっくりとスパイラルを描く。
今の時代に求められるのは鮮映性だ。
このBRZも発売されたら面白かった。
実に鮮映性の高いボディカラーだ。
実現はしなかったが、
このコンセプトはレヴォーグに引き継がれた。
スティールブルーグレー・メタリックは、
レヴォーグのイメージカラーだ。
だがここまでの鮮映性を持ち合わせていない。
石井イズムは確実に実を結びつつある。
いよいよカラーでもその圧倒的な存在感を表し始めた。
今年のオートサロンで発表されたホワイトは、
非常に鮮映性の高いボディカラーだった。
今年ニューヨークでG4コンセプトが発表された時も、
ボディカラーは鮮映性の高いルビーレッドだった。
今年はマツダの勢いにおいて行かれた所があるけれど、
スバルは負けていない。
だから安心している。
大切なのは継続だ。
デザインには「こじつけ」では無く、
真の統一性が必要だ。
スバルは「造形言語」を絶えきれず捨てた失敗を経験している。
吉永社長にお願いしたいのは、
ダイナミック&ソリッドをこれから10年継続させる長期ビジョンの策定だ。
デザイン無くしてブランドは成り立たない。
上手く流れが整った。
期待して見守ろう。
終わり