橙色のSVX、飛翔する

誕生から5年と10か月経った。


あれ以来ほとんど眠っていたが、
先日のスバルマガジン取材で再び目覚めた。

このSVXにとって、
まるで寝ぼけ眼での試走であったにも関わらず、
山本シンヤ氏から「これ欲しいと思う」と言う、
嬉しいコメントを引き出せた。

そうなんだ。

本当に乗る者をディライトさせる!

しかしエアコンが効かないなど、
経時劣化も見逃せなかった。

エアコンのガス漏れ原因は特定できないので、
まず安全整備に取り組んだ。
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まず車検整備を施し、
ブレーキを完全にオーバーホールした。

前回の整備から僅かな距離しか走行していないが、
経時劣化は確実に起きている。

奥がフロントの2ポットキャリパーで、
手前がリヤディスクブレーキのキャリパーだ。
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オイルを抜き替えるのは勿論の事、
シールを全て交換し、
ピストンとスライドピンを綺麗に磨き上げた。

杉本整備士から、
「とりあえず安全確保はできました」と連絡がきた。

次の課題はエアコンのガス漏れ特定と、
パワステのオイルホースを交換したいと申し出を受けた。

全てにゴーサインを出し、
他の問題も炙り出すため、
高速道路からワインディングを走ることにした。

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走り出す前に各機能をチェックし、
ステアリングの手触りを楽しんだ。

やはりアルカンターラは気持ちが良い。

このクルマの性格にぴったりなステアリングホイールだ。

エアコンをチェックした。
レトロフィットと呼ばれる、
新しい冷媒システムに対応させるためのキットを着けた。

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エアコンの機能は今のところ安定している。
徐々に漏れる傾向が改善したのか、
クルマに負荷を掛けないと解らない状況だ。

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温度を少し下げ、
24℃にセットした。

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鉄板むき出しのフロアに、
ペーパーマットが敷かれただけの質素な室内。

シートは拘りの自社コーディネートのスパルコだ。
軽快なエクゾーズトノートが工房に響いた。
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バンパーから覗くのは、
手塩にかけたオリジナルのオールステンレスマフラーだ。

SVX用に数年かけて開発した商品で、
純正の消音器を左右に分けて、
排気抵抗を減らしている。

確実に効率が良くなるだけで無く、
ステキなサウンドも奏でる自慢の商品だ。

ほぼ完売し自社用だけが残っている。

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トリップメーターをリセットして、
踊る気持ちを押さえながら道路に出た。

この軽快感と、
優れたボクサーサウンドを文字にすることが難しい。
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それは官能の世界だ。

次は下りの高速ワインディングだ。
クルマの中でブレーキほど重要な装備は他に無い。
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走行距離が短くても、
ブレーキを確実に整備しないと思い切って走れない。

久しぶりに鞭を入れたが、
その走行性能は予想を超え素晴らしいの一言に尽きた。

クルマのイメージは、
ファインチューンしたGC8の軽量モデルだと思ってほしい。

走る、
曲がる、
止まる、
のどれをとっても最高の性能を味わうことができる。

まず90kgの軽量化が最大の効果を発揮した。
軽くすることはNVHの性能とバーターして、
動力性能のを手に入れる事と同じだ。

特に出力よりトルク特性の向上に直結した。

ただでさえ低速から分厚いトルクを出すエンジンなのに、
軽くなる事で足枷が外れ、
トルクバンドが広がったのと同じ効果が出ている。

それに加え排気効率の高いスポーツマフラーを付けたので、
アクセルレスポンスも気持ち良くなった。

フォンフォーンと軽く吹き上がり、
不通のSVXとは全く違う動力性能を示す。

このエンジンを極限まで引っ張るようなワインディングは、
恐らくこの周辺に存在しない。

でもニュルブルクリンクに行けば、
極限まで引き出せるだろう。

このSVXを橙色に塗り、
NBRスペックと名前を付けた理由は、
ニュルブルクリンクで見たお手本があったからだ。

以前このブログで紹介したM3を覚えているだろう。

乗ったことはないけれど、
あのクルマのイメージは、
恐らくこのクルマと同じであるはずだ。

なぜなら、
レクチャーカーのM3は、
素のSVXと共通の味を持つからだ。

長田屋の前で車を停めて、
晩酌用に豆腐を買った。
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少し車高が上がっているが、
走行性能は軽快そのものだ。

ダンパーストロークが増えて、
時折痛んだアスファルト路面で大きくバンプした時も、
物凄くスムーズに駆け抜ける。
これはマイナス面は皆無で、
長所の増強に貢献した。

WRX用の18インチホイールが似合うが、
これから絶対にやってはいけないチューンだ。

展示が主なエキジビジョンカーなので、
このタイヤを装着したが、
ホイールハブに掛かる負担が設計基準を超える。

ハブベアリングを破損させる可能性が高くなるので、
16インチホイール、
出来ればBBSの純正品を装着する方が良いだろう。
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軽量化したことで、
トランスミッションも楽しくなった。

マニュアルモードを持つが、
ほとんど使う必要が無い。

右足だけで簡単にシフトコントロールできるからだ。

重い時は吹かすと直ぐキックダウンして、
「ちょっとホールドしたいな」と思う時があったけれど、
このスペックだと簡単にキックダウンしない。

だからアクセルでスピードコントロールしながら、
シフトダウンしたい時だけキックダウンスイッチを踏み込む。

オートマチックならではの繋目の無い走りが気持ち良い。

丁寧にオーバーホールして、
ローターの精度を高めればブレーキも簡単に音を上げない。

だから下りにおける減速も、
無暗にエンジンブレーキを使わず、
ブレーキペダルを微妙に扱いスピードコントロールする。

そのように均一で精度も高い操作を心がけると、
軽量なSVXはドライバーをまるで金団雲に載った孫悟空の領域に誘う。
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ルーフだけマットブラックにした効果で、
よりスタイリッシュなリヤビューが実現した。

SVXを長く大切に乗るなら、
絶対に重くなる方向にクルマを振ってはいけない。

なぜなら軽量化とVDTの特性に密接な関係がある。

このクルマは軽量化によって、
ノーマルより1.5%ほどフロントヘビーな傾向になった。

それはアンダーステアの誘発や、
制動力配分の偏りなどクルマにとって良くない要素だ。

ところが実際に走らせると、
ドライ路面では圧倒的に早い。

コーナリングスピードが全く違う。

当時のコンピュータマッピングがどのレベルなのか知らないが、
基本的に35:65の駆動力配分なので、
電子制御が介在せずオープンの状態だとフランとタイヤの仕事が少ない。

従ってコーナリング時に横方向の摩擦力に余裕が生じるためか、
旋回性能が格段に気持ち良く高まる。

結果的に全体が軽くなったことで、
運動性能はバランス良く高まり、
前の荷重が相対的に増えたことで前輪摩擦も増加した。

クルマの手ごたえが凄くダイレクトになって、
操る心地よさは最高レベルに達した。

それは4速だから良いんだ!

そう結論付けるに相応しい走行距離を走った。
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当時はまだE-5ATが開発できておらず、
E-4ATを搭載しているのだが、
変速せずとも車速の乗りが良く4速のネガティブさを感じない。

もしE-5ATや6MTがあったとしても、
両方とも重量がかさむので軽量化の足枷となるはずだ。

だから徹底的に軽くしたSVXは、
当時同じコンセプトで動力性能を極めた、
WRXやRX-Rと「味」の部分でよく似ている。

面白いクルマだ。

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比較検証にもってこいのクルマが完成した。
鳥川さんの愛機だったSVXを、
スーパーGT応援カーに仕立て上げた。

毎年妻が応援に行く。

今年も土日に中津スバルを代表して鈴鹿に突撃する。

渋滞がひどいので、
MTよりATを使いたいと希望した。

現在彼女は秋のラリー参戦に向け、
GC8を日頃の脚にしている。
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そこで10万キロに満たない、
比較的快調なSVXに乗るよう進めた。

乗り手が変わるとネガが噴き出る。
そこで杉本整備士に点検整備を依頼し、
終わったのを見計らってテストに出た。
すると猛烈な雨が降り始めた。
前が見えないほどで、
ワイパーを最大速度に切り替えると、
助手席側がご臨終なされた(笑)

やはりテストは重要だ。
実際にハードな環境で使うと隠れた問題が露呈する。
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とりあえず締め直し、
高速道路に乗った。

まさしくゲリラ豪雨だ。

1キロ先の天気が全く違う。
ウエットコンディションなので、
全く同じ比較ができたかと言うと、
そこには違いが存在する。

ただし18インチのアルミを履き比較にはピッタリだ。
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結論を言おう。
何の問題も無いSVXだが、
比較した相手が悪すぎた。
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眠くてしょうがないほど刺激がない。
しかしながら、
走行距離も少なく愛情を注がれた個体だ。

今後のリフレッシュのコアとして、
非常に優れた能力を温存している。

これはこれで楽しみな逸材だ。

それにしても、
コーナリング特性も、
橙色のSVXの持つ、
加速性能は別次元のレベルだった。

とくにエンジンフィールが違いすぎる。
軽量化と排気効率の向上、
そして徹底的なリフレッシュが両者の差を明確に分けた。

罪なクルマを作ってしまった。
これが率直な感想だ。

いつかこれで東京往復を楽しみたい。
それには少しスパルタンかもしれないが。
そんな日を夢見てこの項を終わる。

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by b-faction | 2017-08-21 21:59 | Trackback | Comments(0)

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