夏に詰めた特別のお酒だ。
名古屋にある御園座の近くに、
美味しくてお値打ちな居酒屋「一位」がある。
そこを営まれる尾崎さんから、
素敵なお酒を戴いた。
純米吟醸酒なので冷やして飲む。
蔵出し感抜群の逸品だ。

すきっとした飲み口で、
掛け値なしで美味い。
純米酒らしい、
アルコール臭の少ない澄んだ香り。
最高の味に整えられている。
この日のメニューに、
日本酒を想定して冷奴を加えた。

勿論、
長田屋の寄せ豆腐だ。
緑豆で作る甘味豊かな逸品だ。
普通の冷奴は、
ネギと鰹節と醤油で食すのが美味しい。

確かにそれもそうだが、
これまで随分勿体ない事をした。
その食べ方では、
緑豆の寄せ豆腐の味が引き出せない。
この豆腐の優れた風味が死んでしまう。
酒を飲むと意識すると、
食べ方にも工夫が生まれる。

まず粗塩を用意して、
それをつけて食べた。
やっぱりこの方が美味いし、
純米酒の味も引き立つ。
もう一つの食べ方は、
わさび醤油だ。
と言っても、
醤油に付けたりしたら駄目で、

ワサビを溶かず塊のまま醤油の中に残し、
橋先でひとつまみして豆腐に載せる。
このバランスが大事だ。
何とも言えない最高の味がする。
もう次からワサビで食べると心に決めた。
尾崎さんから、
とっておきの純米酒をもう一本戴いた。
続けて封を切った。

早速続けて味わった。
こちらは加水していない原酒なので、
飲み口がハードだ。
しかも甘味を前面に出すので、

この日の料理の流れに合わない。
しかも炙り明太子などとは相性が悪く、

お互いの良さを殺し合う禁忌の組み合わせだ。
組み合わせは大切だ。
この酒は食前に飲むのがふさわしい。
あるいはこの日の料理だと、
アヒージョ風の茄子のお浸しピリ辛仕上げと相性が良かった。
何事にも順番がある。
それを無視して物事を始めても、
上手きいかない事が多い。
京都の稲田さんが、
急遽来訪された。
雨が降らないチャンスを狙っていたらしい。

お目当てはオリジナルのマフラーだ。
最後の一本が熱烈なスバリストの手に渡った。

下回りを拝見したが、
文句のつけようがない美しさだった。
大事にされて幸せだろう。
快音を響かせながら西へ走り去った。
ff-1はまさに過渡期のクルマだった。
短命に終わったが、
それだけに魅力も大きい。
一番欲しいクルマだが、
結局乗るチャンスを掴めなかった。
その代わり1300Gと思う存分付き合い、
今でもその関係が続いている。
1300Gに乗り、
スバルが本物のクルマメーカーだと、
子供心に確信した。
とんでもない軽量高出力な発動機を持ち、
見た事も無いシャシーと排気レイアウト、
さらに素敵なスバルサウンド。
スバルらしさは「需要の創造」と、
「卓越した走行性能」だ。
その下支えになるのが、
安心と安全だ。
動力性能を置き去りにしたら、
スバルはその存在価値を失いかねない。
稲田さんが帰られた後、
スバルの歴史に残るクルマに乗った。

このクルマをコレクションに加えた理由は、
車格と動力性能が、
同時にブレイクスルーした、
始めてのスバル車だからだ。
車格は大切だ。
企業の足腰がしっかりしていない時に、
超弩級のSVXをリリースし、
大失敗した会社が、
よくもまあここまで立派になったと感心する。

このクルマの順番は間違っていない。
でも日本にクルマの良さを認識するより、
補助金や燃費ばかり重視する土壌が出来上がってしまった。
クルマの良さは、
パトカーに大量導入されたことでもわかる。
このサイズでクラウンが抜けると、
埋められる車がスバルしかないとは驚いた。

ここまでは何とかSTIもアイサイト無しで寄り切り、
ターボ車でtSを出して6MTもリリースした。
このクルマはリニアトロニックだが、
この際そんなことはどうでもよく、
コレクターとして外せない。

こればかりはワゴンでは意味がなく、
スバルの正統派セダンをコンプリートカーの形で手に入れたかった。

距離も驚くほど伸びていないので、
手を入れれば当初の性能は簡単に蘇るはずだ。
最近のインテリアの源流ともいえる、
マルチマテリアルで締めたトリムが洒落ている。

高級車ではなく、
あくまでもミドルセダンのコンプリートカーだから、
手の届く価格で提供できるのも嬉しい。
直下ターボのパンチ力は、
S402で培った特性に似て、
攻めると面白い走りを繰り広げる。
それより、
やはり何より嬉しいのは、
やはり車格が上がった事だ。
クラウンサイズに劣等感を持つ必要が無く、
もはやデザイン力でも頭一つ抜き出ている。
GTらしいGTを大切にしよう。
この後の熟成を楽しみにしてほしい。