オートサロンは如何でしたか。
参加された方は、それぞれの思いを胸に秘めて帰路についたはずだ。
一般公開日のスバルブースは大盛況だったと聞いた。
様々な告知が行き届きスバリスト達の耳目を集めた。
実は様々な人たちが繰り広げた取材内容を、ほとんどまだ目にしていない。
注意しなければいけない事がある。
ジャーナリズムの精神をもってスバルと対峙しないと、これから先、お互いのためにならない。
「飼い犬評論家」なら当面は食うことが出来ても、長い目で見た時にその論評が信用されなくなる。
SUBARUの出展内容はモーターショーの頃から軸が狂った。
東京モーターショーで見せるべき姿は、将来実現可能な高い技術力や、現在の商品群を魅力的に演出する事だろう。
その一番重要な技術力を一つも誇示できなかった。
その狂いが紛れもない事実だと言う事を、本来ならば払拭すべき東京オートサロンで、図らずも証明してしまった。
VIZIV STIを見て能天気に褒める自動車評論家が居たら、「屑」だと思った方が良い。
モータージャーナリストになることが出来ない、飼い犬評論家に過ぎないからだ。
確かに栄光の時代を振り返る事は大切だ。
こうした文化遺産に等しいクルマを見ることで、
東洋のちっぽけなクルマメーカーだったSUBARUが、

貴族の集まりに参加できたと理解できる。
一流のビルシュタインやミシュランがSUBARUを対等に扱った。

今では想像もできないような協力関係だった。
ミシュランは、新たな戦略製品だった、
グリーンタイヤをレガシィに与えた。
まだ当時は未開拓の分野だったエコタイヤだ。
それなのに、
いまやS206を除き、
まともに相手さえしてもらえない。
あの頃のラインアップをこのレガシィのテクニカルスポンサーを見ると、
当時のプロドライブとの関係も良く解る。

最初にレガシィがラリーカーとして選択された時、
余りの驚きに耳を疑った。
夢が現実になった。

と同時に日本では見た事が無い、
ホンモノのラリーカーづくりに度肝を抜かれた。
凄いと思っていたレオーネのサファリ仕様が玩具に見えた。

トランスミッションも自前で作るから、
理想だった6速が当たり前のように搭載され、
その後クラッチレスも開発された。
圧縮空気を用いた電動工具の様なシステムだった。
一度だけデモ用のシステムを操作させてもらったが、
まさにスポーツシフトそのものだった。
バシューン、バシューンと音を出しながら、
ギヤシフトレバーが動いた。
これらは、
いつか絶対に世の中に出るぞと、
胸を厚くさせる匂いを持っていた。
だからかつての栄光を見た途端、
その匂いを嗅ぎたくなった。
SUBARUは世界の場で優勝した記録を見せたが、
これからの未来が全く提示できない。
まずこの事がオートサロンな場を勘違いしていると示した。
ラリー車を見せても、
今の活動と全くリンクしないので、
単なる人寄せパンダに過ぎない。
上野動物園のパンダを今まで一度も見た事が無い。
優れた見世物であっても、
そこに文化性をあまり感じない。
過去と未来がまるで繋がらない。
つまり夢が無いのだ。
トヨタにはとんでもないレーシングカーが展示されていた。

これが単なる見世物かどうかは、
この後の活躍で分かるだろう。
SUBARUにはこのようなクルマを作る能力はないが、
過去にワールドチャンピオンを輩出した歴史がある。
そこを将来に結び付けれれるかというと、
実は悲観的な未来しかない。
スバルブースにドアを開けて座りたくなるクルマは、
残念ながら一台も無かった。
ところがトヨタは違った。

モーターショーでは未完成だったクルマが、
とうとう正式な価格を付けて登場した。

しかも世界ラリー選手権とリンクし、
そのブランドを強化する役目を担っている。

トヨタ自動車のGR開発統括部、
ZR主幹を務められる佐々木良典さんと再びお目に掛かった。
「税込み400万円で売ることが決まりました」

そうですか。
遂にやりましたね、楽しみです。
そんな話をする中で、
GRMN Vitzが試乗車として配車されることも聞いた。

このように、
これから売るクルマを持ってきてこそ、
正当な出展だと言える。
モーターショーで見せたS208を、
綺麗に完売したかとい思ったら、
三度も抽選をやり直しようやく完売したらしい。
その完売したクルマを、
これ見よがしに並べる姿は「頭が狂っている」としか思えなかった。
「GRMNは凄いブランドになりますね。
SUBARUがやって来たことを、
全て実現させたうえで、
更にその先まで手に入れましたよね」
そう話していたら、
佐々木さんの隣にいる人がニコリと笑った。
「実はGRMN86に乗った事があるんですが、
あんな面白いクルマをSTIが作れなくて、
トヨタが作っちゃった事に感動しました」
「その時に、
あれを作った人の事も聞きましたよ」
そう言ったら、

「話は伺ってます。それ僕が作りました」
何という偶然だろう。
となりにいたセーター姿の男性は、
トヨタ自動車TOYOTA Compact Car Company
TC製品企画 ZP主幹の野々村真人さんだった。
一度お目に掛かりたいと願っていたので、
天から降ってきたような幸運に感謝した。
BRZをワイドボディにして、
水平対向6気筒エンジンを搭載して見せたなら、
SUBARUはオートクチュールの意味を理解していた。
それをやらせない企業風土が出来た事が悲しい。
やればやれるのに、
やれない理由を探す会社になった。
乾さんも商品開発から離れてしまったし、
BRZを知り尽くしている佐藤さんも、
他の部署に移動してしまったんですよ。
そう嘆いていたら、
後ろから佐藤さんが現れた。
「呼ぶよりそしれ」では無いけれど、
何かその日の出会いは神懸っていた。

SUBARUとトヨタのラインは、
まだまだ強固な絆を感じさせる。
その背後には、
トヨタの懐の深さがあるからだろう。
本来ならば、
SUBARUは張りぼての使い回しをせず、
フラッグシップセダンをスポーティなプレタポルテとして見せるべきだった。
というのは、
B4のビッグマイナーチェンジに、
大きな期待を寄せていたからだ。
最後のフラット6搭載車として、
マルチシリンダーの幕引きを演じさせるべきなのに・・・・。
マイナーチェンジに自信が無いのだろう。
ますますアメリカナイズされ、
日本でスポーティな魅力を失った。
デビューした時に、
ブリッツェンを作った勢いがどこにも残ってない。
全くつながりが無く、
ステッカーチューンの出展では、
コクピットに座りたくなるはずがない。
ところがトヨタは、
SUBARUがやるべき手本を示した。

SUBARUならフォレスターに時期的同期性を持つクラウンを、
一挙に投入した。

やはり灯火器に欠ける情熱が違う。
光物を配してもクリアランプにせずダークレンズで覆う。
過去のスバルがこだわった手法を、
現在も最前線で続けている。
ケチ臭いリヤコンビランプのスバルと比べると、
額縁のクオリティ、
レンズの深みなどすべてが違うと分かるはずだ。
国内専用車の弱みが出るのは、
ホンダもトヨタも変わらない。

お粗末な取っ手が残念だが、
SUBARUも右に倣えだから笑えない。
暖簾文化の象徴と言える、
ドアグリップレスの構想は品質感で大きく劣る。
SUBARUとトヨタが同じ悩みを持つとは驚いた。

メーターはブラックアウトなので詳細は解らないが、
LCDのモニターを持つ事は間違いないだろう。

それに加えナビ画面とMFDも持つ。
これは完全に時代遅れだと聞くと、
今は言えないが大きな理由があると言った。
それは楽しみだ。
新しい何かを提案するらしい。

ユニークなカップホルダーは、
B4と比べると良く解るように、
アメリカナイズされた配置だ。

米国工場で造られるレガシィは、
カップホルダーが縦に並ぶという、
米国人が好むスタイルだ。

フラットなパネルが沈み込む構造なので、
掃除もやり易く見た目も格好が良い。
助手席側にある内部のスイッチを押すとせり上がるので、
運転席からしか見えないのが弱点か。
慣れの問題ではあるが。
それより一番驚いたのがこのクルマだ。

クラウンをニュルで鍛えたという。
これってSUBARUの手法そのものだ。

走る姿を見た限りでは、
ニュルで振り回すには命懸けだと思ったが、
昨年一年間でSUBARUが何度ニュルでテストしたのかと振り返ると、
絶望的にも思える差だ。
B4をニュルブルクリンクでテストするなど、
今のスバルには考えもできない事だからだ。
その証拠がオートサロンにB4を出せない事なのだ。
こうした「韻」を踏んでこそ、
TRDが優れたクルマを作れる。

ニュルは一切STIに任せたようでは、
本当に良いクルマが出来ない。
コンプリートカーは本体のクルマ作りが常に向上を極めないと、
いくらその後で焼き直しても良いクルマにはならない。
嘆いても仕方がないから、
美女で口直しだ。
オートサロンはちょっと手の届きそうな美女、
そんなクルマの集まりだ。

アメリカンやヨーロピアンな美女も悩ましい。

けれど彼女のように、
直ぐ近くにいそうな美女が、
色気ムンムンで立つ姿にも痺れる。

スズキのスイフトは顔も形もどちらかというとブスだ。
それなのに、
何故これほど魅力があるのか。
200万円以下だ。
6速だ。
手が届く車で性格も性能も良ければ、
当然飼い主はハッピーになる。
要するに結婚相手に近いイメージだろう。
それがウエディングドレスを纏うと、
めちゃくちゃ美人になる。

SUBARUは結婚相手のクルマが理解できない。
全て効率で取捨選択した。
その結果、
オートサロンにウエディングドレスを模したプレタポルテを出せなかった。
それがステッカーチューンの出展だ。
売りたい部品を付けて、
中途半端なステッカーを貼って、
それで振り向けと言うのか。
そんな男が居るはずない。
舐めている。

スズキは手の届く美女を他にも作った。
軽自動車のスケールアップに過ぎないと、
笑う対象ではなくなった。
このクルマはSUBARUに必要な出展の姿勢を秘めている。
ダイハツも過去の栄光を並べたが、
現在から未来につながる姿を見せている。

デトマソは一世を風靡し、
ダイハツに新しいジェネレーションを作った。

これはそれを懐かしんでいない。
昨年のオートサロンを覚えているか。

彼等はデトマソをリメイクするのではなく、
磨き直して新しい提案をした。
SUBARUはスポルヴィータを作ったがすぐ消えた。
ダイハツはスポルザを一年がかりで作って、

見事に市販化に漕ぎつけた。
これがオートサロンの酸化姿勢だ。
スポルザには残念ながら6MTが無い。
そこがスズキに水をあけられている。

でも彼等にはコペンがあり、
MTをしっかり用意している。
しかもオートサロンらしく発売可能なオーバーフェンダーを用意した。
ギヤの強度がもう少しあって、
このクルマがクロスビーのように変わると、
ダイハツもいよいよ本領を発揮するだろう。
それにしても、
こうした筋の通った展開が続く理由は「ヒト」の存在によるところが大きい。

久ぶりにダイハツ工業の横田さんとお目に掛かった。
ショー関係を一手にまとめるエキスパートだ。
こういう人財がSUBARUに居れば、
参加姿勢も筋が通るのに、
惜しいと思う。
横田さんに、
最近のダイハツ車で最も優れているのはキャンバスだと伝えた。
それを売れると嬉しいからね。
すると横田さんも奥さんがとても気に入って、
水色のツートンカラーを注文したそうだ。
やっぱり分かる人には分かるんだな。
昨年のオートサロンの話を続けると、
実に興味深い出展があった。
軽トラックのリフトアップだ。

トレンドになると思った。
まだ若い人だが感性が良かった。

今年はお目に掛かれなかったが、
そのアイディアをスズキとダイハツは見事に具現化した。

そのままパクらずデッキバンでやった所が良い。
ダイハツの場合、
スズキより持ち駒が多いので有利だ。

この発想も面白い。
担当するチームの一人が、
この釣りブランドの一人と飲み友達で一気に構想が固まったと聞く。

チジミ塗装も見事なコーディネートで、
このクルマにふさわしい味を出した。

スズキはモーターショーで果物屋の営業車をプレゼンしたが、
XVコンセプトに刺激されたのか、
ガソリン携行缶をモチーフにした。

ただしデザインではダイハツに劣る。
まずカラーリングが平凡だ。
本来ならスポーツだけでなく、
レジャー要素も見せねばならぬ。
SUBARUはそこも怠り、
むしろ他の一般業者がお手本を示した。

これを嘘でもいいから6MTで出したなら、
SUBARUの株は急上昇しただろう。
ボンネットに穴をあけるのは、
プレタポルテだから許される。
姿が重要でターボ=デカい穴、
そう考える人にとって重要な「韻」だ。

しかもフォレスターのバックランプが暗くて見にくいのは、
昔から重要な改善点として要求されている。

そのような利便性も加味した企画に、
思わずシャッターを切ってしまった。

プレタポルテを選ぶことこそ、
オートサロンの大きな楽しみだ。
そしてベンツを訪れた。
昨年ベンツブースを通った時に、
声を掛けてくれた渡辺さんに会うために。

ベンツはスーパーGTでチャンピオンになった。
そう言うクルマがあるから、

スポーツカーにも華がある。
彼等らしいプレタポルテもあった。

本来の、
いやこれからのショーファードリブンはとっくにこちらに移行している。
渡辺さん、案内していただき有難うございました。
またお目に掛かりましょう。