GVF型WRXの繊細なブレーキ性能を引き出す
2018年 02月 09日
出張から戻ると急に暖かくなった。
季節の移り変りを感じたので、
望桜荘の周辺を観察したくなった。
自然石を敷き直した部分をちょっとちょっと見てごらん。
こんなに変わったよ。
雪解けが付近の表情を一変させた。
そこで昨年11月10日の記録を紐解いた。
より変化が良く解る。
最初はこんなに粗かったのに、
季節をまたぐと優しくなった。
傍を流れる六地蔵川で石を集め、
通路を作るよう丁寧に敷いた。
それが本日2月9日になり、
見違えるほど落ち着きを出した。
季節の移り変わりを現した。
ゆっくりと雪が溶け、
僅かずつ流れる水が、
寒さで伸び縮みした土の間に染み込む。
その時に周囲の土も連れて行くのだろう。
だんだん繋がりが強くなり、
石もしっかりと落ち着く。
春になるとこの池から何が生まれるか。
中では静かに卵から幼生へと変化が進む。
不思議な世界だ。
乾燥して水が無い時季を過ごしても、
豊かな水が蓄えられた瞬間に、
新たな生命の歴史が始まる。
ここは単為生殖の宝庫でもある。
自動車の世界でも幼生が突然生まれることがある。
工房の前でBLEが整えられていた。
バラバラに分解され、綺麗になっていく。
クルマが蘇る。
また一つ新たな命が蘇る。
このクルマも完成が楽しみだ。
体の隅々までリフレッシュさせれば、
幼生が突然変異するかもしれない。
そして眠っていた才能が、
完全に花開いた時、
このクルマを次の主に託す。
ワクワクするね。
何しろ相棒のGVFはめったに見られぬユニークな個体だ。
タンカラーのレザーインテリアが良く似合う。
非常に数が少なく見ることは珍しいが、
一度気に入ったら離れがたくなる魅力を持つ。
どこに乗って行っても違和感が無い。
クルマ全体の質が高く、
一流ホテルの玄関先でも雰囲気に溶け込む。
更に希少なサンルーフ付きなので、
所有する上での満足度も高い。
8万キロ少しの良質な個体だ。
だけど点検整備を施しただけで、
本格的なメンテナンスが棚上げになっていた。
最初から綺麗に整っていたし、
色々な消耗品も定期的に交換されていた。
文句のつけようがない品質だが、
そろそろ手を加えなければならない事も多い。
だが昨今の忙しさで、
整備工房には中古車を予防整備する余裕が無い。
ブレーキのオーバーホールも必要だ。
点検整備を施したところ、
どこにも問題が無いので、
長距離テストを兼ねて出張の相棒に選んだ。
そして現在の性能がどのレベルにあるのか、
連れていきながら徹底的に試し、
真の実力を引き出した。
往路は富士山が良く見えていた。
今年の冬は寒いのに雪が少ない。
EJ25の発揮する300馬力の最高出力と、
35.7kg・mの最大トルクを十分味わえた。
何よりも良かったのはトランスミッションだ。
レスポンスの良いマニュアルモード付E-5ATと、
VTD式前後不等トルク可変配分型センターデフの俊敏なハンドリングは、
操る者を徹底的に興奮させるに十分すぎる能力を見せた。
しかし高速道路で少しジャダーを感じたブレーキは、
都内でゴーストップを繰り返すうちに、
ムラのある制動力に変わり始めた。
決して危険ではないが、
気持ち良く制動力が出ない。
リニアに効いてほしいのに、
周波数を感じるような制動力が出るため、
スパーツパッドの粘着性と折り合わず、
時々僅かにつんのめるような効き方をする。
グーッグ!と効くからフィーリングが悪い。
それにしても東京のタクシーって素晴らしい。
セドリックを見たのは久しぶりだ。
そう言えばこの型の覆面パトカーも、
中央道の多治見管内で随分頑張ってたな。
マニュアルトランスミッションの、
渋い紺色のセドリックだった。
そんなに古い時代の事じゃない。
MTだから温存してたのかな(笑)
帰路は往路より穏やかな天気だった。
先月の出張で腰を痛めたのは、
かなりの連続走行が堪えたようだ。
帰りに「運転を代ろうか」と言ってくれたので、
ステアリングを託した。
おお!
ドラシューを持ち出したではないか。
ピューマの様なすらりとした脚には、
やはりピューマが似合う。
驚いた。
最近妻はドライビングシューズを愛用するらしい。
颯爽と履き替えドライバーズシートに座ると、
ドラポジをキチンと合わせ、
ステアリングを9時15分の位置で握りしめた。 これで両腕の肘の角度が90度なら100点だが、
レクチャーすると「うるさい」と怒るので、
ご機嫌を損ねぬようおとなしく隣に座った。
ドイツで走った事の無い人は、
腕の角度を直角にすると、
とても違和感を持つらしい。
中には前のめりで猫背だと誤った見方をする人も居る。
ステアリングを押さえつけて、
路面からの反力を抑え込むには、
もう少しチルトを下げるかシートリフトを上げる。
そしてテレスコピックを引き出すか、
シートを前にスライドさせる。
どちらを選ぶかはブレーキペダルとの関係で決まる。
何しろ思いっきり床まで一度踏む必要があるからだ。
思いっきり踏め込めない位置だと、
フルブレーキが掛けられないので極めて危ない。
最近の自動車はVDCが付いているから、
まず緊急時にはフルブレーキをしっかり踏めるようにドラポジを決める。
GVFにはサンルーフが似合う。
ガンガンに走りを楽しむGVBならば、
頭上に重いガラスとモーターはネガティブ要素だが、
このような2ペダルのハイパフォーマンスカーは必需品だ。
寒い日には陽射しが嬉しいし、
真っ青な空が見えると気持ちも晴れる。
帰路は八ヶ岳を見ながら走る事が出来た。
最高だった。
助手席に乗ることは滅多に無い。
なので新鮮な風景だった。
お茶目なウッドパネルが面白い味を出している。
前のオーナーは余裕のある人だったのだろう。
助手席に乗って更に確信した。
このクルマのブレーキに大きな難点があった。
安定した制動力が得られていない。
一般路で徐々に顕著になって、
信号で停止する時などまるで運転が下手になったかようだった。
狙いどうりの場所でスッと気持ち良く止まらない。
高速で強いブレーキをかけると、
ジャダーと共に振動音も目立つ。
高性能車のディスクパッドは粘度係数が高い。
だから精密な整備をしないと、
気持ち良いスムーズなブレーキングが出来ない。
工房に高性能車が並ぶと壮観だ。
SVXも念入りなブレーキオーバーホールが必要だ。
重量があるのでいい加減なブレーキ管理をしていると、
高速からの制動時にパフォーマンスを発揮しない。
錆びたローターを放置し、
巣が入ってしまうと表面積が減るので、
安定した制動力が出せなくなる。 本来なら軽い純正キャリパーで、
バネ下重量を下げたほうが運動性能が高いのに、
STIのブレンボなどを流用するケースが散見される。
それより元々のブレーキを、
常に維持管理し100%の実力を発揮させる方が手っ取り早い。
GVFのブレーキを再度点検し、
どこに問題があるのか探った。
まあトランスミッションの変速フィーリングでその辺りは簡単に診断できる。
想像通りの良いクルマだった。 まずフロントブレーキを確認し、
ローターの限界摩耗度には余裕があるけれど、
表面と言うより全体の摩耗が歪になっている事が解った。
この状態でもローターの粗さが分かるはずだ。
あくまでもローターとパッドの関係に修復すべき点がある。
ローター研磨機に掛けた。
細かな鉄くずが垢を取るようにこぼれ落ちる。
次ひ左側を綺麗に削った。
いよいよ後輪だ。
通常後輪側は制動力配分が低いので、
ジャダーなども出にくいはずだ。
北原課長も後輪に問題はさほどないと考えたようだ。
ハブとの辺り面も融雪剤の影響で嫌な錆び方をしている。
腐食では無いが、
研磨機に欠ける前に丁寧な清掃意を施した。
ローター面を一目見ただけで歪になった状態が解る。
いよいよ研磨するために機械にセットした。
ローターの外縁部を良く見ると、
削れない部分が残った。
綺麗に削れたところと、
そうでない所が同心円状に途切れた筋となって残った。
これが違和感の最も大きな原因だ。
最大限の注意を払いローターの表面を平滑に整えた。
外に向かってゆっくりと削った。
外縁部の歪な部分は完全に消えた。 Bfore
これで安心して走れそうだ。
工房に余裕が出来たらタイミングベルトを交換し、
ブレーキキャリパーのオーバーホールもしてやろう。
ブレーキオイルとパワステオイル、
それにATFも交換だ。
このクルマを飼う人は、
きっと違う側面のカーライフを見つけることが出来るだろう。
良い主が現れる日を待とう。
終わり
by b-faction
| 2018-02-09 22:00
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