
ようやく正式な露天風呂に入ってもらった。
仮設風呂に入ってもらってから13か月が過ぎた。
しっかり作られた信楽薬の風呂桶は、
実に入り心地が良かったらしい。
良く見たら正当なタオルを頭に載せている。
インプレッサハウスの流儀にのっとた素晴らしいマナーだ。

寒さもひと段落し、
随分過ごしやすくなった。
ビールで乾杯して宴会が始まった。

翌朝台所を見たら、
娘のメモが落ちていた。
しっかりレシピを用意して、
大好物を中心にしたメニューを考えていてくれた。
刺身好きなのでめにゅーから欠かせない。
その事は娘も良く解っている。

でも今回は、
マリオも食べやすいようにカルパッチョになっていた。
野菜系も欠かせないので、
茄子が好きな事も良く知っている。

どんな酒にも合うので嬉しい。
メインディッシュはいくつかの肉を候補に挙げたようだが、
肩ロースを選んで最初に弱火で焼き始めたようだ。

生クリームを最後に振って、
まろやかな味に仕上がっていた。
豆腐好きなので、
宴会の内容を予測してサラダにしたようだ。
スターターとして、
コーン缶をバター炒めした小鉢も用意されていた。
何が飲みたいかと聞くと、
煮込んだ肉にはワインが合いそうだと言う。
そこでビールの後で赤ワインを楽しんだ。
ペロリと一本空にしたので、
以前から考えていた壮大な計画を打ち明けた。
それは純米酒しか頑なに造らなかったある酒蔵が、
年に一度だけ生絞りで瓶詰めするめでたい酒だ。
以前から毎年それを楽しんでいるが、
インプレッサハウスの構想を思い浮かべてから、
大きな冷蔵庫の中で寝かせ始めた。
その最初の年が平成26年だ。

それを二人で開けて飲み、
味がどのように熟成されるのか体を張って試した。
プロの蔵人でも心配する。
その理由は酵母には寿命があり、
徐々に死滅してひね香を放つからだ。
純米無濾過の生原酒は保存に限界がある。
ましてや管理を怠ると、
あっという間に瓶の中は積乱雲のような澱が湧き上がる。
例えば酒屋の冷蔵所のように、
しょっちゅう開け閉めする場所だと、
瓶の中が嵐のようになってしまう。
このように大型冷蔵庫の中で保管されると、
4年経っても澱など全く現れない。

しかし一抹の不安もあった。
何しろ未体験ゾーンに突入するわけだから、
期待と不安が入り混じる。

栓を開けるとポンと言ったが、
ガス感はまったくない。
酒が若いと僅かだがガスを出す。

一流ホテルで働いていただけの事はある。
テイスティングの前に香りを楽しんでいる。
いよいよ一流のモータージャーナリストへの階段を上り始めているようだ。
「味の分かるオトコ、
それがマリオ高野だ!」
そう言われる日が着実に近づいている。

僅かに琥珀色を漂わせている。
実に香しく一口飲むのが惜しいほどだ。
早速口に含んだ。

この笑顔を見れば、
どれくらい美味いかわかるだろう。
物凄く深みがあるのにスッキリ爽やかで、
コクのある甘みが口中に広がると、
どーっと生唾が押し寄せる。
滅茶苦茶旨かった。
日本酒の飲めない妻も、
一口飲んで目を見張った。
上質な醸造酒を、
デリケートに扱って長期熟成させると、
とんでもない化け物の様な味を見せる。
ここでしか楽しめない物がまた一つ増えた。
旨い日本酒はチーズを求める。

これは本当の話で、
この酒も飲むごとにチーズを求めた。
ワインのために用意したチーズは、
ごく普通の6Pチーズだが、
この味と良くマッチする。
翌日に備え日付が変わる前に就寝する。
ベッドルームが組み立てられた。

こうして長い一日が終わった。

テーブルには今月いっぱいで閉店するピエニュのパンを用意した。
翌朝のために。
その翌日、ひょっこりさんからメールが届いた。
ミニカーが全車完成し写真が添えられていた。
ポルシェ917似の車と、試作した2代目から初代に改造したインプレッサのレシピも添えられていた。
リアカウルが無いフェラーリF40は、何とリフトに乗って整備中になっていた。
とても面白い発想だ。
ルノーエキスプレスのタイヤをランチャストラトスに転用し、
ご自身がスペアパーツで持っていたトミカのタイヤに変更してあるらしい。
凄いな。
どれもピッカピカだ。
ポルシェ917のモデルは、この写真らしい。
これをベースにすると、赤い四角とまるで囲ってある部分の形状がほぼ一致するそうだ。
917は製作した時期や、その時のレース仕様で細部が異なり、ひと括りでは特定できない証拠だ。
これがフロントフェンダーだ。
現状ではホイールアーチが前後に長く、似ても似つかない形状のため、板金製作したものをボデーに貼り付けパテで全体を成形してある。
そしてシャシーも合わせてパテで成形された。
続いてインプレッサのレシピが続いた。
インプレッサのトミカは2代目しかなく、初代が作られたことは一度も無い。

GDBとGC8を比較すると、フロントとリアは大きく異なるが、側面はよく似ている。
そこでフロントとリアだけ改造加工したところ、上手く製作が進んだそうだ。
二代目のリアはストンと切り落とされたような形だが、
初代は丸みを帯びているので、パテで整形して見事な形になった。
フロント周りは肉厚があったので、パテを使わずに削り込んで成形してある。
グリルを更に追加で製作した。これがその写真だ。
ボディに貼り付けると、このようになった。

こうして二代目をベースに、
ステキなチャールサイトイエローのGC8が誕生した。
ちなみにフロントバンパー、
ルーフ、
ドア4枚とトランク上面、
それにリアスポイラーには全く手が加えられていない。
灯火類はカッティングシート仕上げだ。
素晴らしい。それにレシピも凄い。
ひょっこりさん、ありがとうございました。