最初に結論を言っちゃうと、電動化でどんどん高性能化する事は良い事だ。
但し複雑化の一途をたどる。
更に長寿命化とは逆に、決めた寿命を全うさせる設計に変わる。
そして最もシンプルな組合せは、自然吸気の内燃機と、マニュアルトランスミッションだと帰結する。
クルマのカラダには色々なモノが使われている。日々の改善で軽くなる部分もあるけれど、どんどん肥満化し成人病の要因が増した。
ヒトのカラダには、
オノレの意志で喰ったモノが使われる。

最近、
油揚げにはまった。
これは妻が付知町で買ってきた。
評判の良い味付けでオーソドックスな三角形だ。
良く行く長田屋さんの油揚げも美味い。
シンプルそのもので、
揚げたての姿を見ると、
思わず鷲掴みして喰いたくなるほどだ。
先日テストの途中で油揚げを買うと、
「沢山もらったので良かったらどうぞ」と、
「きくらげ」を戴いた。
生のきくらげを見るのは初めてだった。
長田屋さんの近くは、
比較的気温が低いので栽培に適しているのだろうか。
コンテナに半分くらい、
生のきくらげが入っていた。
長田屋の奥さんの話では、
湯豆腐と一緒に似て、
ポン酢で食べると美味しいらしい。
面白い食べ方を聞いたが、
自宅では娘が創作した。

もやしときゅうりを合わせて、
おひしたしになっていた。
美味しかった。
きくらげの様に、
それ自体は味が無くても、
周りの味を生かして食感を楽しむクルマがある。
eーBOXERのエンジンは、
正にきくらげのおひたしだ。
それ自体は味の薄い直噴エンジンだが、
水平対向エンジンの歯応えは悪くない。
それをモーターの味で加給するので、
料理全体として見た場合に旬の美味しさを楽しめる。
ちょっと面白いクルマで、
野山を駆け巡った。

台風の影響が残る会社の裏山に上ると、
いよいよリニアモーターカーの車両基地建設が始まっていた。

マグレブ式リニアモーターカーは、
日本が世界に誇る独自技術だ。
開発段階では電磁波の影響を強く受けたが、
最新型は周辺環境も含め、
磁気シールドが徹底的に施された。
実はeーBOXERも高電圧が行き来する領域を、
徹底的に磁気シールドで覆っている。
直ぐ近くで始まった工事を見ながら、
近くで国鉄中央線の複線化工事が進む頃を思い出した。
蒸気機関車デゴイチが、
テスト走行で行ったり戻ったりを繰り返した。
もくもくと黒い煙を上げ、
白い蒸気を吐き、
独特のムンとする匂いをまき散らした。
でもあの匂いに嫌悪感は無い。
真黒になったけど、
ガッシュガッシュと徐々に鼓動を高める様子は、
生き物に似た感覚をまき散らしていた。
だから惚れちゃうんだよな。
随分あちこち追いかけ回し、
一日中線路の近くでカメラを構えたな。
そんな小学生時代が懐かしい。
超伝導のマグレブが、
いよいよ商業運転に入る日が見えてきた。
軌道上の様に、
給電が容易な場所は電気の力が便利だ。
容易に給電できない場所だと、
まだまだ内燃機が有利だ。
それらに対してハイブリッドはいくつかのメリットを持つが、
一番有利と思われる長所は、
エネルギーの回生だろう。
但し背負うものが増える。

水平対向4気筒のターボエンジンは、
ガソリン大食いの筋肉系だと思われがちだ。
だが、
それは大食いさせる刺激的な乗り方をするからで、
過給効率の良い所を使うと、
それほど燃費は悪くない。

【車名】
SUBARU FORESTER 2.0XT
【駆動方式】
AWD(全輪駆動)
【型式】
CBA-SH5
【主要諸元】
全長×全幅×全高(mm):4460×1780×1675
ホイールベース(mm):2615
トレッド前/後(mm):1530/1530
最低地上高(㎜):225
車両重量(kg):1470
最小回転半径(m):5.3
乗車定員 5名
【エンジン】
EJ20/水平対向4気筒2.0L DOHC16バルブターボ AVCS
内径×行程(mm):92.0×75.0
圧縮比:9.0
最高出力kW(PS):169(230)/5600rpm
最大トルクN・m(kgf・m):319(32.5)/2800rpm
【燃料供給装置】
EGI
【ステアリングギヤ比】
16.5:1(可変ギヤレシオ)
早速コックピットに乗り込んだ。

純正ナビにリヤカメラをライン上で装着した、
G-BOOK α(アルファ)仕様だ。
これは音声認識システムを持つ。

右上の発話スイッチを押すと、

スポットランプの上にあるマイクが音声を拾う。

正直言って初めて使ったのだが、
意外に便利なのでちょっとビックリした。
ところが携帯電話に内蔵されるようになり、
時代の節目となっている。

夜になって、
もう少し走り回った。
クルーズコントロールも付いている。
この頃からプッシュスタートシステムも当たり前になった。

SI-DRIVEを使えば、
省エネ運転からスポーツ走行まで変幻自在だ。
こんなエンジンを搭載しても、
最近はトレンドに乗れない。
本当はお家芸なのに、
縮小せざるを得ない原油高が聳えている。

悪路踏破力と高速安定性を両立した、
ACT-4式フルタイムAWDは、
軽いトランスミッションと組み合わされて快活に走る。
既に8Wayパワーシートにはシートヒーターを装備して、
今とほぼ変わらぬ利便性を備えていた。
このモデルは、
なんと一回もマイナーチェンジすることなく、
その使命を全うした。
それほど飽きの来ないクルマだった。
こんなクルマはかつて存在した事が無い。
だから、
マイナーチェンジに備えて用意していた、
タンカラーシートは出番を失った。
それが後々、
WRXのA-Lineに受け継がれた。
過去の歴史を良く見ると、
雄弁に今を語る。
このクルマがもし5MTだとしたら、
どんな味なのか。
既に当社のストックには、
二代目SG5のMT車がある。
あのクルマはWRXの匂いをまき散らすが、
このクルマはどんな味だろう。
それを想像するには、
トランスミッションのギヤ比が参考になる。
SH5の5MT車の変速比は、
1速 3.454
2速 1.947
3速 1.296
4速 0.972
5速 0.738
減速比 4.444
実はこの変速比、
先代SG5のターボ車とほぼ同じだ。
唯一違う所は、
SH5のパワーアップに合わせ、
三速が僅かにハイギヤードになった。
このトランスミッションの調律を見て、
愛機と比較したくなった。
愛機はインプレッサスポーツの1.6i-Lブラックレザーセレクションに、
スバル最後の5速マニュアルトランスミッションを搭載した4輪駆動車だ。
【主要諸元】
全長×全幅×全高(mm):4420×1740×1465
ホイールベース(mm):2645
トレッド前/後(mm):1510/1515
最低地上高(㎜):145
車両重量(kg):1260
最小回転半径(m):5.3
乗車定員 5名
【エンジン】
FB16/水平対向4気筒2.0L DOHC16バルブデュアルAVCS
内径×行程(mm):78.8×82.0
圧縮比:10.5
最高出力 115ps/5600rpm
最大トルク15.1kgf・m/4000rpm
【燃料供給装置】
電子制御燃料噴射装置
ギヤ比を比較しよう。
変速比GP3 SG5(H14) SH5(H22)
1速 3.454 1速 3.454 1速 3.454
2速 1.888 2速 1.947 2速 1.947
3速 1.296 3速 1.366 3速 1.296
4速 0.972 4速 0.972 4速 0.972
5速 0.738 5速 0.738 5速 0.738
減速比 4.444 減速比 4.444 減速比 4.444
これが冒頭で触れた、
最もシンプルなクルマだ。
自然吸気モデルでありながら、
5速マニュアルのターボ車と、
ほとんど変わらぬギヤを持つ。
三車ともローは同じだが、
インプレッサはテンロクなのに
2速が他の2台よりハイギヤードだ。
更に3速はSH5と同じだけれど、
SG5よりハイギヤードだ。
それまでの資産を上手く使って、
軽いクルマならではの調律を見せた。
こういうデータを頭に置き、
峠を走らせると、
また一味違った楽しみが増える。
つまり、
慣らしが終わった後、
かなり面白いテンロクになりそうだ。
エンジンが回る様になったら、
峠道を思いっきり引っ張って攻めたい。
そう言えば、
この楽しみはマリオが一番知ってるな。
是非、
マニュアル好きの読者は、
今後のご参考に。
終わり