出陣した朝を振り返った。ホワイトに続き、
オレンジが発進すると、
サービスカーが続いた。
そして運営用のコンテナなどを積んだ、
サンバートラックが工房を出た。
シャッターを閉め、
20Bで後に続いた。
本番に間に合ってサービスカーとして登録できた。
まさか本当にサービスカーとして活躍するとは、
この時微塵も想像していなかった。
サービスパークには一番乗りだった。
どこに陣地を張るか、
あれこれ相談した。
そうこうするうち、
恵那市に住む社員も集まった。
陣地を完成させて朝礼を始めた。
順番に一人ずつ想いを語った。
マリオの力強い抱負を聞き、
皆の気持ちが一つになった。
そして初日が幕を開けた。
可愛い応援団に支えられ、
初日は順風満帆だった。
レッキでは明知鉄道の踏切で、
レールバスに遭遇したようだ。
中津スバルの来訪者に最近評判が良い。
整備を待つ間に、
ちょっと旅気分が味わえる。
来年も応援に来ていただけるようなら、
是非ラリー観戦と共に、
セットで楽しまれては如何だろう。
本当にたくさんの皆さんから、
様々な形でご支援いただき、
改めて厚く御礼申し上げます。
これまで紹介しきれなかった、
支援物資の数々だ。
戴いた順番も定かではなく、
ここに紹介できない物も沢山ある。
その点だけご容赦いただきますよう。
ステキな海老煎餅をありがとうございました。
美味しいロールケーキ、
ありがとうございました。
栄養ドリンクをありがとうございました。
甲州のお菓子をありがとうございました。
京のお菓子、
数々いただき、
誠にありがとうございました。
珈琲とチョコレートをありがとうございました。
こうした物資もさることながら、
終日会場でサポートして戴いたり、
後程紹介するが、
根ノ上でラリーカーを撮影して戴いたり、
人的な支援も数多く、
本当に大切な力となりました。
また、
勝田さんには妻のトレーニングでお世話になりました。
マリオにも無理を言って相棒をお願いしました。
ありがとうございました。
クルーの気合も漲っていた。
特に嫁の勢いは凄く、
そのまま行けば妻に勝つ事はほぼ間違いなかった。
レセプションパーティの段階で、
既にエネルギーは満タンだった。
喰いっぷりが良い。
次々とエネルギーをチャージする、
痛快な光景だった。
実に良い嫁である。
改めて息子の慧眼を見直した。
こうして無事ラリーがスタートした。
ようやく車載カメラの画像を分析する事が出来た。
ここでもう一度敗因を明らかにして、
来年に備え無ければならない。
SS1のタイムコントロールでは、
順調に一号機はスターティンググリッドに着いた。
フライングする事も、
エンストする事も無く、
綺麗にスタートを切っている。
二人の落ち着き方は昨年と全く違う。
2号機もスターティンググリッドに着いた。
カウントダウンに合わせ、
実にキレイにスタートしている。
ナビとの呼吸もばっちりだ。
SS1は昨年も使った高原の道路だが、
順路が逆になり走行速度が上がった上、
道幅も狭くツイスティだ。
フライングフィニッシュが見えた。
ゴールで停車し、
記録してオフィシャルの指示に従う。
地元の選手でも油断すると迷う。
ラリーは速さだけが勝負ではなく、
コドラとの協調性も問われる、
実にクレバーなスポーツだ。
このようにSS1から2へ向かうリエゾン区間も、
凄く気持ちの良いルートになっている。
しかも未開の観戦ポイントが山積みだ。
WRCが開催されたとしても、
充分観客を満足させる事が出来るだろう。
そして鬼門のSS2に到着した。
前方に1号機の姿が見える。
クルマの排気管から出ているガスにも、
見たところ問題はなさそうだ。
順調にスタートを切った。
事前にハンドルを握って、
最終テストした時に、
他のクルマに比べ出力が低い気がした。
既に物理的な金属疲労を、
エンジン内部で引き起こしていたのかもしれない。
今後順を追って調べる。
2号機がグリッドに着いた。
さあFIAの視察で、
あのミシェルムートンが褒めちぎったと言う、
SS2に飛び込む時が来た。
カウンターがゼロになると同時に、
インプレッサはスバルサウンドを高らかに上げた。
メディアも待ち構え、
緊張した事だろう。
まさしく高速ステージだ。
この素晴らしいドッグレッグを見て欲しい。
フルスロットルで駆け抜ける場所だ。
しかもかなりのロングステージだ。
中盤に差し掛かり、
この暗いコーナーの先で、
2号機のクルーは信じられない光景に出くわす。
居るはずのない先行車が居る。
しかも見覚えのある色だ。
ブレーキランプが点灯し、
中にクルーが乗っている事が解る。
この時、
一号機のクルーと電話で話している真っ最中だった。
突然止まったエンジンを、
再始動させる方法を伝えると、
掛かったと言ったが、
彼女たちのレースはこの後すぐ終わった。
妻もかなり動揺しただろう。
何があったのか心配でたまらなかったはずだ。
フライングフィニッシュが近付き、
ギャラリーステージではクレーンの上から、
テレビカメラまで待ち受けていた。
こうして2号機は無事走り終え、
岩村町へ向かった。
そこで昨年の様にインタビューを受ける算段だった。
パブリックビューにその様子が流れたが、
冷静に質問に答えるも、
その眼にはかなりの動揺が見えていた。
SS2を終えた時点で、
サービスパークのチーム拠点には、
リタイヤした事が正式な知らせとして届いていた。
ところが2号車のクルーは知る術がない。
そのSS2がどんなステージなのか、
ここで紹介できる。
なんと、
マリオが助手席で同時に撮影したのだ。
車載カメラの扱いが不慣れで、
連続写真モードになっていた。
撮影音の異常に気付いたマリオが、
とっさに撮ったらしい。
奇跡的な撮影だった。
その時の走行シーンだ。
根ノ上高原で観戦中の、
田口さんによって撮影された貴重な一枚だ。
写真:田口哲也
車載カメラには、
2号機のクルーがTCで飛び出す画像も残っていた。
1号機の状況を心配している様子が解る。
次のタイムコントロールに着くと、
待ちかねたようにコ・ドラのマリオが飛び出した。
情報を集めようとしたが、
この時点で詳細な情報は届いていなかった。
せっかくボランティアの皆さんが頑張っても、
情報伝達に必要な物資が不十分な所もあり、
その力を活かせなかった所も見受けられた。
なので、
来年はその辺りが間違いなく強化されるだろう。
何しろ、
スタッフの運営は素晴らしいの一言だ。
なぜならば、
たった2回目の開催で、
これほどすごいステージを作り上げた。
こうして、
嫁と言うライバルを失った妻は、
気を取り直して孤軍奮闘し、
昨年以上の実績を残した。
祝勝会は出来なかったが、
充分成果を残せた。
慰労会で、
1号車のクルーが出したVサインに、
明日へ繋がる力を見た。
監督として責任を果たすのに、
一体何をすべきなのか。
その課題を背負い東京に向かった。
その答えを持って帰った。
その答えとは・・・・、
即ち
「次期主力戦闘機」の調達だ。
最も中津スバルらしい選択、
それは伊藤健をリーダーとする、
インプレッサ開発チームの手による、
WRXを手に入れる事だ。
出来る事なら、
丸目のスペックCを手に入れたいが、
まともなクルマが残っているとは思えない。
そこでもう一つのチャンピオンカーに狙いを定めた。
涙目を素材から吟味すると、
ラリーカーに適切な個体を見つけた。
決して高額なクルマではなく、
使い果たされた感があるクルマを選ぶ。
それに再び愛情を注ぎ、
次のステージに上げたら、
もう一花咲かせてあげる。
こうしたクルマを、
中津スバルの手で蘇らせるのも、
L1ラリーにチャレンジする大きな理由だ。
さてオレンジの使い道は、
チーム内の誰に託そうかな。
Bライを持つ女性陣、
是非ご主人と共に戦いの場へ。
待っている。