新型WRX STI TYPE「RA-R」総論
2018年 12月 14日
だからこそある事柄を成した時、
何かを「教科書にした」と、
「今度のクルマは、
だから、
軽さを極め性能を引き出し、 価格を抑えると言う離れ業を、 教科書通りに進めていた。
さあ最新型のRA-Rを総括しよう。
はっきり言うヒトを尊敬する。
平川さんは、
はっきりと言った。
教科書通りに作るよう徹しました」
その教科書を語るには、
インプレッサの父とも言える、
「伊藤健」を忘れてはいけない。
彼が現役時代に、
世へ放った最後の全力作、
それがインプレッサ WRX STI spec-C Type「RA-R」。
シンプルでありながら、
獰猛な眼力が印象的だった。
「走りだけをとことん研ぎ澄ませたインプレッサ」は、
独特の雰囲気を隠すように世の中へ溶け込んだ。
そして究極のロードゴーイングバージョン「S204」と、
対極の位置に鎮座するクルマになった。
「だから私はパールホワイトのRA-Rが欲しかったんです」
WRX「STI」の最新コンプリートカーは、
僅か一日で完売した。
その事を嬉しそうに悔やむ、
平川さんの言葉が印象的だった。
伊藤さんに聞いたことがある。
「平川さんはS202を指差して、
『こんなのはまだ全然やり切ってない』と仰いました。
それは何故でしょう」
それに対して伊藤さんは次のように答えた。
「それは平川が恐らく丸目のスペックCに対して、
衝突安全性能と軽量化をトレードしたと考えたからだろう」
実に端的な分析だった。
以前このブログで、
丸目のスペックCを取り上げた事がある。
いわゆる「有事」の状況下で、
伊藤さんが戦闘能力を高めるために究極の選択をした。
それがボディから徹底的に肉を削り落とすという、
戦闘力オリエンティッドな開発だ。
「衝突安全の平川」と、
自動車業界の隅々まで名を成す彼だから、
それに忸怩たる思いがあったのは当然だろう。
その後残念だったのは、
スペックCが涙目になると、
戦闘力開発の方向にブレが生じた。
伊藤さんから引き継いだ開発責任者は、
幅の狭い開発に陥った。
「筑波アタック」のようなタイムアタックを前提に、
車両開発を進めたからだ。
いくら国内しか視野に入れないクルマと言えども、
それでは走りが良くなるはずがない。
良い日本のハイパワー車を、
ダメにしてしまうのは、
「筑波アタック」で速さを競う事だ。
サーカスのような企画に有利なクルマは、
実はあまり面白くなかったりする。
その証拠にGDBは涙目からデフの開発で迷走し、
徐々に気持ち良さを失い戦車的になっていった。
その結果、
WRXに何が起きたか。
ニュルブルクリンクのオールドコースを走っても、
少しも楽しくないクルマになった。
丸目を作り、
涙目から鷹の眼への変遷を、
伊藤さんは違う立場で見守った。
そして誕生したのが、
S203とS204という、
ヨーロッパのハイパフォーマンスカーと肩を並べた名車だ。
更に伊藤さんは、
S402と言う究極のプレミアムセダンの開発を、
ニュルブルクリンクをベースに進めた。
そこで当時のM3に引けを取らない走りを極め、
世の中に具体的な形で提案した。
その経験がRA-Rの開発で生きている。
実は初代のRA-Rは、
ニュルブルクリンクのオールドコースで振り回す、
そんなイメージで開発されている。
筑波は視野の一部に過ぎず、
それまでのSシリーズより、
NBRで遥かに楽しめるクルマなのだ。
その時代を経て、
GRBからGVBそして現在のVABに繋がる。
すると今度は平川さんにとって、
逆のシチュエーションが生まれた。
人生とは、
常に翻弄される定めなのか。
究極のロードゴーイング「S208」は世に出せた。
ところが対極のRA-Rを創るには、
極めて難しい状況となった。
ベースになるスペックCがもはや存在しない。
そのためRA-Rは、
眼を剥く様な軽量化に至らなかった。
「思ったほど軽くなっていませんね」
そう言うと、
彼は正直に「ゴメンナサイ」と言った。
しかし物事を極め続け、
教科書に辿り着いた結果、
彼は遂に凄いクルマを創った。
流石にRA-Rと名乗るだけあり、
これまでのSシリーズとは違う。
SUBARUの車体設計のコアとして活躍した人物だ。
車両設計から製造現場にまで踏み込む力を持つ。
削り落とせるものは、
ただ一つを除き、
落とし尽くせたようだ。
カタログに「ロスアイテム」が羅列されている。
だが、
走らせて感じた事を素直に言うと、
何やら奥深い秘密が隠れているようだ。
発進時の気持ち良さは、
過去のSTIコンプリートで、
全く味わった事の無い美味しさだ。
この点ではS208を超えたかもしれない。
S207を完全に凌駕しているからだ。
動力性能の37%しか使わず、
シャシーも本来の性能を出すほど慣れてない。
生まれたばかりの家畜の様に、
愛でるように操る。
大事に大事にシフトを操作し、
2速に入れる前に十分すぎるほど「タメる」。
そのような扱い方にもかかわらず、
すこぶる回頭性が良く、
操舵応答性も秀逸だ。
スパルタンとは程遠い、
充実した装備とNVHは、
レーシーな性能と全くトレードせず、
GTとしても十分通用する。
これが過去のWRX「STI」と同じ履歴を重ねた時、
一体どうなるのか。
それを想像するだけで空恐ろしい。
切り替えが効くエンジンは、
GRBの頃に比べ「一皮むけた」感がある。
コンプリートカーのSI-DRIVEは、
吊るしのクルマとはフィーリングが異なる。
そのメリハリはすさまじく、
包丁から刀へ、
そしてオーナーの要求によっては鋭利なカミソリになる。
だからこそ、
この「可愛い悪魔」を標準車として目立たぬように乗る。
RA-Rと言うクルマは、
秘かに腕を磨き続けるための「男の道具」だ。
トランクには黒いリップスポイラーが似合うだろう。
徹するぞ。
このクルマこそが「羊の皮を被った狼」
古い死語だが、
その言葉を久し振りに思い出した。
長寿命で高性能。
STIらしい作品だ。
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小暮
at 2018-12-15 04:23
x
RA-Rも順調な感じで年明けお伺いする時には、順調に育ってる状態を見せて頂きたいです。
ちなみにGDBのメーターの赤は油圧の
警告設定が高い位置にあるのが原因だと
思います。多分、2キロ位かと・・
思いますので、下げてあげれば消えるはずです。
ちなみにGDBのメーターの赤は油圧の
警告設定が高い位置にあるのが原因だと
思います。多分、2キロ位かと・・
思いますので、下げてあげれば消えるはずです。
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at 2018-12-15 06:38
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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b-faction at 2018-12-15 11:07
小暮さん、なるほど。ありがとうございます。売る立場で言うのも何ですが、あのメーターはカッコいいけど扱いは面倒ですね。新春フェアでお待ちしてます。
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b-faction at 2018-12-15 11:11
佐藤さん、今後とも宜しくお願いします。これからますます美味しいクルマになるはずです。RA-Rはあとちょっとで1000KMです。STIをスバルファン皆で育くみましょう。お目に掛かれる日を楽しみにしています。
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米澤
at 2018-12-15 11:15
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社長こんにちは。
スバル好き故にSTIを知ることができ現在もSTI意外は考えられません。
WRXは試乗レベルでしか乗ったことがありませんが、STI自体ネーミングでシリーズ分けされているのは解りますが、最近小さくまとめ過ぎな感じがしてなりません。
コストパフォーマンス、価格設定はありがたいですが、どこを目指しているのかもう一度確認する良い時期に来ているのでは。AMG、ALPINA、Irmscherなどチューニングメーカーが良い例だと感じます。
スバル好き故にSTIを知ることができ現在もSTI意外は考えられません。
WRXは試乗レベルでしか乗ったことがありませんが、STI自体ネーミングでシリーズ分けされているのは解りますが、最近小さくまとめ過ぎな感じがしてなりません。
コストパフォーマンス、価格設定はありがたいですが、どこを目指しているのかもう一度確認する良い時期に来ているのでは。AMG、ALPINA、Irmscherなどチューニングメーカーが良い例だと感じます。
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b-faction at 2018-12-15 11:40
米澤さん、おはようございます。STIは基本的にトランクのあるクルマで凄いヤツを作り続けるべきです。ハイブリッドの背高車やSUVには不向きですが、売れるクルマを創りたいと言う思いも強いので、時々ブレます(笑)。だから散々苦労するのですが人の入れ替わりが激しく「懲りない」所があります。 彼等がすべき仕事はレースを通じて常に「S」とは何かを追求することです。そういう会社に脇目も振らずなるべきですね。そうすると対極にあるRA-Rも良くなります。ALPINAはちょっと別格で日本人には作れません。逆立ちしても!・・・です。ですから「アレ」が良いと思う人は「アレ」を買うべきです。「M」なら丁度良いけど、目指すには歩幅が広がりすぎたかな。でも付き合ってみると彼等も結構苦労してますよ(笑)。
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ワタナベ
at 2018-12-15 12:46
x
熾烈極めた筑波アタック、懐かしい響きですね。当時、性能や速さを唄う車逹には、同じコースでのタイム争いと言う指標も必要でした。 歴代タイムを見ると、一位の35R以外はほぼ90s00sですよね。時代は流れ、排ガス規制安全性能燃費重視の重量増加、その上で高性能車には気持ちの良いドライブフィールや感覚的な高揚感まで演出しなければならない。しかもストリートというあらゆる場面でです。大人相手には上質感まで必要だもん。価格も。これらは純粋に速さを求めるといらないもので、もちろんサーキットユースでは必要ありません。サーキットではタイムさえ出れば使い捨て、まさに奴隷です。その、オトシドコロが難しいですよね。昔みたいにstiはスパルタンな競技ベース車、ほかグレードはフィーリング重視て言うんじゃ販売がヤバそうですしね…
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b-faction at 2018-12-15 13:22
渡邊さん、僕はあの手の記事をあまり読まなくて、横目で「ふーーん」と眺めてました。色々な所を走るようになり曲芸が無駄な自己満足だと解ってきました。
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ワタナベ
at 2018-12-15 14:04
x
社長様
曲芸が自己満足。間違いないです。
ドリフト走行が好きで、マツダ、日産、トヨタばかりに乗っていましたが、借りたスバルに乗った時は目から鱗でした。車体剛性と足周りですか、ストロークのある足はやはり乗りやすいです。マツダの足もよいですが、スバルは接地感覚がつかみやすいとおもいました。
結局、車とお金捨てていると気づくまで随分かかりましたけど。
両立するなら、やはりフラッグシップ開発しかないかと!プラット8 4000CC ツインターボかモーターのクーペかセダンで700万、でStiはカーボンルーフ、8速ATを6mtでお願いします!
曲芸が自己満足。間違いないです。
ドリフト走行が好きで、マツダ、日産、トヨタばかりに乗っていましたが、借りたスバルに乗った時は目から鱗でした。車体剛性と足周りですか、ストロークのある足はやはり乗りやすいです。マツダの足もよいですが、スバルは接地感覚がつかみやすいとおもいました。
結局、車とお金捨てていると気づくまで随分かかりましたけど。
両立するなら、やはりフラッグシップ開発しかないかと!プラット8 4000CC ツインターボかモーターのクーペかセダンで700万、でStiはカーボンルーフ、8速ATを6mtでお願いします!
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b-faction at 2018-12-15 14:16
渡邊さん、いずれニュルまで一緒に行きましょう。緑地獄は多くを語らず深さを知らしめます。
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ワタナベ
at 2018-12-15 14:29
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尊敬する代田社長様の深い御言葉、私などには勿体のうございます。社長にどこまでもついて行きます!!ありがとうございます!!
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at 2018-12-15 17:03
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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b-faction at 2018-12-15 20:39
渡邊さん、こちらこそありがとうございます。
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b-faction at 2018-12-15 20:40
佐藤さん、M5のようなクルマですね。レガシィベースならあり得ますね。6発で強烈なクルマが欲しいですね。
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gda6985_z83 at 2018-12-15 23:41
代田社長
この度のブログもまた大変勉強なりました。体感的な部分は理解するに遠く及ばず、想いを巡らす事しか叶いません。しかし社長から譲って頂いた可愛い愛機がその本質を教えてくれています。私の仕事では、往復1000キロを日帰りするシチュエーションが有ります。その時に勤めを終えた充足感の中でハンドルとアクセルを愉しく操作できる、おおらかで高性能なセダンを仕事のパートナーに出来たら…と妄想し、それが次世代のSTIのセダンならばどんなにか素敵な事だろうと思います。群馬県 阿部文昭
この度のブログもまた大変勉強なりました。体感的な部分は理解するに遠く及ばず、想いを巡らす事しか叶いません。しかし社長から譲って頂いた可愛い愛機がその本質を教えてくれています。私の仕事では、往復1000キロを日帰りするシチュエーションが有ります。その時に勤めを終えた充足感の中でハンドルとアクセルを愉しく操作できる、おおらかで高性能なセダンを仕事のパートナーに出来たら…と妄想し、それが次世代のSTIのセダンならばどんなにか素敵な事だろうと思います。群馬県 阿部文昭
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シルバーインプ
at 2018-12-16 07:51
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GDBは良いですね
GC8 25万キロ越えから維持を断念 当時 次に考えたのがRA-Rが欲しかったのですが高すぎた
自分の理想の距離と値段のバランスの取れた個体がなかったですね
S204はその上を行っていました^^;
今は最終型のGDBに乗ってますが 走りが楽しいですね
GC8 25万キロ越えから維持を断念 当時 次に考えたのがRA-Rが欲しかったのですが高すぎた
自分の理想の距離と値段のバランスの取れた個体がなかったですね
S204はその上を行っていました^^;
今は最終型のGDBに乗ってますが 走りが楽しいですね
ご無沙汰しております。
WRXは僕みたいな未熟なドライバーにも、応えてくれて、対応力の高さに驚かされる日々です。やはりコンプリートカーには、何とも言えないオーラがありますね。
tSやSTI sportとは全く異なる凄みを放ってるように思います。生で見たら、うっとりすると思います笑
骨格と心臓に手がかかったモノは本能を呼び覚ましますね。
凄みのある車に乗れるよう、僕はまずはスキルですね(^◇^;)
何とか時間を作ってまたお伺いしたいと思っております。DE2回目でも、乗り換え商談でも、またお世話になるかと思いますのでよろしくお願いします!
RA-R、動画も楽しみにしております!!
WRXは僕みたいな未熟なドライバーにも、応えてくれて、対応力の高さに驚かされる日々です。やはりコンプリートカーには、何とも言えないオーラがありますね。
tSやSTI sportとは全く異なる凄みを放ってるように思います。生で見たら、うっとりすると思います笑
骨格と心臓に手がかかったモノは本能を呼び覚ましますね。
凄みのある車に乗れるよう、僕はまずはスキルですね(^◇^;)
何とか時間を作ってまたお伺いしたいと思っております。DE2回目でも、乗り換え商談でも、またお世話になるかと思いますのでよろしくお願いします!
RA-R、動画も楽しみにしております!!
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at 2018-12-16 09:25
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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飯塚
at 2018-12-16 11:38
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こんにちは。
購入当初あまりピンと来なかったS207は45000km過ぎた今、最高の相棒となりました。
いつも書かれているようにSTIコンプリート大したものですね。
TC380は納車されましたら乗ってみて下さいませ。結構面白そうです。保証などはだいぶ制限があってチューニングカー経験者向けで、万人に合わせなければならないSTIコンプリートは改めて大変だと思いました。
購入当初あまりピンと来なかったS207は45000km過ぎた今、最高の相棒となりました。
いつも書かれているようにSTIコンプリート大したものですね。
TC380は納車されましたら乗ってみて下さいませ。結構面白そうです。保証などはだいぶ制限があってチューニングカー経験者向けで、万人に合わせなければならないSTIコンプリートは改めて大変だと思いました。
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b-faction at 2018-12-16 12:43
阿部さん、こんにちは。SGPの将来を予言されてますね(笑)。
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b-faction at 2018-12-16 12:44
溝上さん、こんにちは。慣らし終えたら動画を取ります。間も無く1000kmになりますが、降ろした時と何にも変わりません。こりゃあ時間かかります(笑)
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b-faction at 2018-12-16 12:54
飯塚さん、こんにちは。なるほど、あちらを予約されてたのですね。ぜひお願いします。新車を中古車で買うと割り切れば面白い買い物ですよね。昔はそんな事をシムスと組んでちょくちょくやりました。その頃はSTIも「コンプリートとは何か」を完全に掴んでない頃でした。今度のRA-Rは何か・・・・人に言えない事も仕込まれてそうでムラムラします。STIと言う女衒が「おぼこ」に仕込みを入れた・・・そんな感じかな。どんなオンナが現れるのか。今までに感じた事のなかった、かなり性的な欲望を覚えます。
by b-faction
| 2018-12-14 22:00
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