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EJ20G型水平対向エンジンの集大成を愉しむ

味は至って平凡で、
取り立てて言うほどではない。
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けれどもカウンターの中は上品で清潔で、
機能的に整えられ、
見せる厨房が出来上がっている。
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非の打ち所がない本屋の中にある喫茶店だ。
物凄い量の書籍があり、
毎日でも通いたいくらいだ。
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時間を忘れて書物を漁り、
一息つきたい時には都合が良い。

軽食もあり時間を有効に使えるので、
真剣に本を探してたくなる。

目の前にある本棚に、
普段見慣れない本も沢山並び、
お茶飲みながら読める。

ここは敷居が低い。

かと思えば、
見た目はカジュアルでも、
敷居の高い店がある。
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美味そうなので、
ジーっと店の前で眺めていた。

すると、
近くにいた客引きのお兄さんが、
「そこ美味いんだよ」と、
こっそり耳打ちしてくれた。

この辺りには親切な人も多い。
以前一人で歩いている時も、
「どこ行くの」と聞かれ、
「ラーメン食べたい」と告げたら、
凄く美味しくて安い店を教えてくれた。

残念ながら飯を食った後だった。
次に来た時に挑戦しよう。

「期待通り」と「期待外れ」がほとんどを占める。

世の中に意外と多いのが、
「期待以上」だよね。

そういうチャンスには、
なかなか巡り合えない。

でも経験則で判断できるようになると、
「確率」が徐々に高くなる。

その反面、
一旦経験則で成功すると、
外れた時の怖さを思い出し憶病になる。

すると行動がワンパターン化する。

あまり無理をしなくなる理由は、
無駄な時間を使いたくないからだ。

外れた店で、
不味い飯を喰うほど、
無駄な時間の使い方は無い。

クルマにも同じ事が言える。
不味いクルマでドライブするほど、
無駄な時間の使い方は無い。

だからズラリと揃ったクルマ達を、
もっと美味しくなるよう乗ってやりたい。

だから少しでも時間を有効に使い、
クルマに乗るチャンスを増やす。
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久し振りにステアリングを握った。
思わず30年前に記憶が遡った。

その噂を聞いた時、
身震いするほど興奮した。

「本気かよ」

こっそりと入手したマル秘データを、
電子手帳に記録した。

「220PS」と記されていた。

その当時、
最強のライバルでさえ205PSだった。
それが一気に15馬力も凌駕した。

デビュー前にも驚かされた。
見た事も無いSUBARUが、
朝のNHKニュースに現れた。

更に実物を見て驚愕した。
ワゴンよりもRSが格好良い。

劇的なモデルチェンジだった。

SUBARUと言うブランドが、
すべての面でガラリと変わった瞬間だった。

「これはいけるぞ」
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今までとは違う自分もそこに居た。

それぐらい、
人生におけるターンニングポイントともなった。
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奇妙な事も多々あった。

過渡期なので仕方がない。

パワステには、
重さの切り替え機能があった。

今でこそ「スポーツ」で丁度良いが、
当時は迷ったのだろう。

スイッチを切ると、
気持ち悪いほど手応えが無く、
シュルシュルとステアリングが回る。

何が目的か想像すると、
その前の主力車レオーネに行き着く。

操舵系で本当に苦労が多かった。

まずステアリングインフォメーションだ。
これが他社より甘い。
特にセルフアライニングトルクが足りず、
ハンドルを切った後の戻りが悪い。

パワステが一般的でなかったので、
ノンパワーのハンドルは相当重かった。

なので、
ゼロスクラブジオメトリーを取り入れるなど、
足回りの開発でかなりの努力を続けた。

等速ジョイントを発明し、
FWDから4WDへと進み、
その走りも極めて普通になったが、
ブーツの破れでは苦労の連続だった。

定期交換の意識すらなかった。

そうした苦労をリセットするかのように、
スバル誕生以来、
初の試みの連続だった。


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ドアの作り込みを見ればわかる。

全く新しいボディは、
全く新しいシャシーと共にゼロベースで作られていた。

今のSUBARUも、
そろそろ上辺のカッコ良さを捨て、
この本質を追求する姿勢まで戻るべきだ。

レガシィにこそ、
ドアのインナーグリップが必要だ。
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このRSにはラリーをイメージして、
BATのデカールを貼り付けていたが、
カッティングシートは紫外線に弱かった。

ボロボロでみすぼらしくなったので、
綺麗に剥がして塗装も整え屋根の下に入れた。
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取材の依頼が来るとは思わなかった。
このクルマに、
スポットライトが当たるのは久しぶりだ。

いつも綺麗に手入れし、
定期検査を怠らず、
常にベストな状態を維持している。

だが継時劣化は避けられないので、
点検して走らせ様子を見る。
取材の後そのまま展示していたが、
また元の場所へ戻した。
そのチャンスを狙って久し振りに潜在能力を引き出した。

生粋のスバリストに可愛がられた、
ワンオーナーの綺麗なクルマだ。

相変わらず凄い。
流石だ。
長年に渡り世界記録を保持しただけのことはある。

当時は今と違って、
10万キロを越えたら価値が消えた時代だ。

スクラップになる運命だったが、
余りにももったいなくて、
リフレッシュ整備のショーケースに使った。

当時可能な限り部品を交換し、
おりしも下取りで引き取った、
VZエアサスのレザーインテリアをスワップした。

だからカタログに無い、
レザーインテリアになったている。

相変わらず快調なエンジンだ。

期待した以上のフィーリングで、
曲がり過ぎると思うほどだ。

クイッと巻き込むように、
交差点を直角に旋回する。
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懐かしい写真だ。
若手の開発スタッフが、
苦労してスキッドパッドを作っ時に撮ったようだ。

ちょっと役得で記念撮影しようぜ。

てなノリを感じるな。
のびのびとした良い写真だ。

これを見て本棚から引っ張り出した。
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「すべて本」と呼ばれる、
今でもお馴染みの自動車雑誌だ。

表紙の画像を見ると、
同じ時に撮影されたことが解る。

本を開くと、
中村孝雄さんの姿もある。

今でいう「PGM」を務められた、

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凄く優秀な人だった。
そりゃそうだ。
とてつもなく優秀だから歴史に残るクルマを作った。
しかもそれだけでなく、
後に続く優秀な人材も束ねた。

このプロジェクトに参画したスタッフは、
誰もが群を抜いている。
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先ほど登場した当時の若手お二人も、
右端にその姿が見える。

一番右端はR1/R2の開発で名を馳せ、
その後電気自動車開発でも才能を発揮した鈴木さんだ。

お隣の方は存じ上げていないが、
活躍されたことは間違いないはずだ。

向かって左端にSTIで活躍する辰己監督の姿も見えるし、
三代目レガシィPGMの桂田さんが赤いボディの間に立つ。

中村さんの向かって右には、
二代目インプレッサPGMの伊藤さんも居る。

これなら凄い仕事になるはずだ。

スタッフの「仕事率」がとてつもなく高い。

過去最高出力のプロジェクトだ。

「仕事率」には様々なモノサシがある。
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クルマのエンジンも仕事率で性能が評価されるから、
必ず2つの項目がカタログに載る。

30年以上に渡り、
トップコンペティターを維持するエンジンを、
この時に産み出した。

仕事率をグラフで表したものが、
ここにある性能曲線だ。
三つの折れ線グラフがあり、
最高出力と最大トルクと燃料消費率が示される。

以前、
フラットトルクと表現したのは、
一番上のEJ18のようなトルク曲線を指す。

トルク特性はとても重要で、
もう一つの一般的な性能曲線である馬力と共に、
エンジン性能を見る上で欠かせない。

馬力は単位時間内に、
どれだけエネルギーを使い、
それをどれくらいの仕事に換えたのかを示す。

だから当然のことながら、
エンジン回転数の上昇に出力は比例する。

その最大値が、
最高出力としてカタログに現れる。

一言で仕事率と括れるが、
最大トルクと最高出力では求める目的が違う。

馬力が大きければスペックは凄い。
でもクルマの重量が増えると、
それに応じて馬力を喰う。

馬力はHPと表記され、
ホースパワーと読めば解り易い。

でも日本ではPSと記すことが慣用になっていた。
HPを英馬力、
PSを仏馬力と言う。

英馬力はヤード・ポンド法、
仏馬力はメートル法

馬力やトルクの詳しい内容には、
誰も疑問を持つことが多いはずだ。

物理の法則だから、
じっくり勉強しないと難しいね。

さてEJ20の話を続けよう。
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一番最初の4カム16バルブターボは、
ちょっと凄いトルクカーブを描く。

EJ18の穏やかな曲線に比べ、
ドッカーンと跳ね上がる。

NAは穏やかだが、
その最大トルクの数値を見ると、
ターボより遥かに少ない。

もしこのピークが高く、
しかも台形状の曲線を描くと、
実に素晴らしい味になる。

ここに関わるもう一つの特性が、
エンジンの回転振動だ。

水平対向6気筒だと、
一次振動や二次振動だけでなく、
偶力振動も打ち消される。
その上トルクもピークの高い台形状の曲線を描くので、
素晴らしく味が良い。

話を戻そう。

そもそもトルクとは、
1秒間にどれだけの重さのモノを、
地上から1mの高さまで持ち上げられるかという単位だ。

どの回転域でも、
なるべく高く維持できるとモーターの様に回る。

そして回転部のバランスが良く、
振動が少ないと、
更にモーターのようにスムーズに回る。

ここで12日のブログを振り返って欲しい。

その後の面白いスバルたちは、
どのように熟成を続けたのか。

まず初代レガシィに加え、
9日から10日に掛けて一気に走らせたクルマを振り返る。

4台のエンジンスペックと重量を羅列する。

【車名】
SUBARU レガシィ RS
【エンジン】
EJ20/水平対向4気筒2.0L DOHC16バルブターボ
内径×行程(mm):92.0×75.0
圧縮比:8.5
最高出力:220PS/6400rpm
最大トルク:27.5kg・m)/4000rpm
【車両重量】
1290kg

パワーウエイトレシオ:5.86/PS
トルクウエイトレシオ:46.9/kg・m

次に
【車名】
SUBARU WRX A-Line
EJ25/水平対向4気筒2.5L DOHC16バルブデュアルAVCSシングルスクロールターボ
内径×行程(mm):99.5×79.0
圧縮比:8.2
最高出力kW(PS):221(300)/6200rpm
最大トルクN・m(kgf・m):350(35.7)/2800~6000rpm
【車両重量】
1490kg
パワーウエイトレシオ:4.96/PS
トルクウエイトレシオ:41.7/kg・m

特に見て欲しいのは台形のトルク曲線だ。
2800から6000回転まで、
そのピークトルクが持続する。

次に、
【車名】
SUBARU インプレッサ S-GT
【エンジン】
EJ20/水平対向4気筒2.0L DOHC16バルブデュアルAVCSツインスクロールターボ
内径×行程(mm):92.0×75.0
圧縮比:9.4
最高出力kW(PS):184(250)/6000rpm
最大トルクN・m(kgf・m):333(34.0)/2400rpm
【車両重量】
1360kg
パワーウエイトレシオ:5.44/PS
トルクウエイトレシオ:40.0/kg・m

最後に、
【車名】
WRX STI TYPE RA-R
【エンジン】
EJ20/水平対向4気筒2.0L DOHC16バルブデュアルAVCSツインスクロールターボ
内径×行程(mm):92.0×75.0
圧縮比:8.0
最高出力kW(PS):242(329)/7200rpm
最大トルクN・m(kgf・m):432(44.0)/3200~4800rpm
【車両重量】
1480kg
パワーウエイトレシオ:4.49/PS
トルクウエイトレシオ:33.6/kg・m

こちらも台形のトルク曲線を持つ。

30年で最高出力は1.5倍、
最大トルクは1.6倍となった。

久し振りに、
本気でA-Lineを走らせた。
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それこそアドレナリンがビュンビュン迸った。
思わぬ面白さに陶酔し、
5速のダイナミックATを駆使して走った。

期待以上だった。

それもそのはずだ。
パワーウエイトレシオは5kgを切っている。
なので、
滅茶苦茶よく走る。

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AT専用に開発された2.5リットルのターボエンジンは、
7000回転まで使えない代わりに、
ピークトルクが幅広く続く。

夜の10時に出発したので、
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道路はほぼ完全に貸し切り状態だ。
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ほとんどパドル操作をせず、
オートマチックモードで疾走した。
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走りながら恍惚感に浸った。

2.5リットルの排気量は、
フラットトルクなエンジンに仕込みやすい。

但しピストンの質量は2リットルより大きいので、
高回転域では2リットルのフィーリングに負ける。

でもオートマチックだから、
その辺りはほとんど気にしなくて良いので、
1500kg未満の軽さを武器にできる面白いクルマだ。

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翌日、
整備後の最終確認を兼ねて、
お客様の手に渡る前に同じコースを走らせた。

これも期待以上だった。

以前から、
このクルマの意外な良さを知っている。

A-Lineと比較したら、
更に素の味が滲み出た。

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ヒラリヒラリと舞うように走り、
このクルマも本当に面白い。

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7500回転まで使えるエンジンも良く回るし、

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燃費も非常に良い。

良く走る理由はトルクウエイトレシオに現れている。
これが、
2.5リットルのA-Lineより秀逸なためだ。

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改めて驚いたね。
本当に隠れた名車っていう奴だな。

こうなると、
矢も楯も堪らなくなる。

おあつらえ向きに雨が降ってきた。
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その日は整備課も遅くまで頑張った。
終礼の後みんなが帰るのを見計らい、
WRXのRA-Rに飛び乗った。

ヘビーウエットなので、
センターデフはオートモードだ。

併せてミシュランタイヤのの性能も試す。
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7000kmも目前なので、
本気で鞭を入れても構わない。

走り始めてすぐ、
トリップメーターをリセットした。
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テスト中の区間燃費を測るためだ。

8000回転まで使えるエンジンなんて、
そうざらにあるもんじゃない。

これも集大成の証だな。

鞭を入れるなど無理で、
AーLineやS-GTが思いっきり羽を伸ばせる場所でも、
このクルマは5000回転以上使えない。

半分以下の能力しか使わず軽々と走る。

確かに質量もサイズも大きいのだが、
明らかに頭抜けて速い。
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この強烈なトルクカーブが、
RA-Rの走りを象徴している。

つまり限界までトルクを高める必要性より、
美味く調律して最大値を揃えているのだ。

何でも出せばよいと言う訳では無く、
10万キロ安心して使えるメーカー品質を維持したまま、
コンプリートカーとしての集大成を目指したのだ。


いつもの高い場所でも気温は9℃あった。
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高速道路を飛ばした。
ずっと登るので、
ここまでの区間燃費はあまり良くない。

けれど美味しい味を満喫できた。

6気筒と違って、
4気筒の場合は直列エンジンより少ないモノの、
対向ピストンで消しきれない一次振動や二次振動が生じる。

ワインディングを下り、
ヒールアンドトゥで減速すると、
バランスドエンジンの妙味が迸る。
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タイヤが充分温まり、
最高のグリップを発揮する。

パイロットスポーツの最新モデルは流石だ。
昨年もM5で走った時に驚いたが、
例えヘビーウエットでも、
路面をネットリと掴む魔法のタイヤだ。

そのタイヤのおかげで、
RA-Rの美味しさが更に際立ち始めた。
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一番使う回転域の振動が少ないだけでなく、
ピタリと狙ったところに回転を合わせられる。

物凄くスムーズにシフトダウンできる。

ピストンの質量を始め、
動弁系の部品を正確に重量合わせすることで、
一次振動、二次振動、
そして偶力振動を抑制できる。

そのため、
それが本質的なパワーアップに繋がっている。

下ってから登り始めると、
難しいコーナーをいとも簡単にクリアし、
S-GT以上に舞うじゃないか。

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あっという間に72kmを走り終え、
そのまま自宅に帰った。

良い汗をかいた。
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翌朝目覚めて燃費を見ると、
リッターあたり8.5km走っていた。

これはなかなか上出来だ。

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改めて前夜の様子を思い出しながら、
まず右前のタイヤに触れてみた。

ニュルブルクリンクを思い出した。
ちょっとねっとりした不思議な印象だ。

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左側も触れてみた。

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見たところ普通のタイヤだが、
触ると何かが違うんだよな。
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どんな秘密が隠されているんだろうか。

暫くじっくり付き合ってみよう。

この集大成は軽さが妙味を出す。
これ以上軽いWRXがを、
彼等がもう一度作れるか。

STIにとって、
そこが次の課題だな。

by b-faction | 2019-03-18 22:00

毎日の活動やスバルについてご紹介します


by b-faction