正統派の味
2019年 03月 20日

まさにスバルが培った正統派のクルマだ。
それも時代を積み重ね、
その頂点に立った者だけが表せる、
とても深い味を持つ。

本気になるとかなり獰猛。
走る曲がる止まるは天下一品。
華美ではないが、
基本を全て超一流に磨いた絶品の味が自慢だ。
飼い主として、
付き合えば付き合うほど嬉しさが増す、
最愛の家畜だ。

家畜らしい良い声で哭くし、
手綱を引くと感じる手応えも、
まさに家畜そのものだ。
自動車家畜論的見地から、
見た途端に鳥肌が立つクルマに出会った。
銘柄や車種とかではなく、
飼い主との関係だ。

この場所では不釣り合いなので余計に刺さった。
降りてきた男性の仕草で分かった。
彼は仕事でこのクルマを乗り回すには、
とても不自由な事が付きまとう事を存分に理解している。
かえってその事で、
このクルマが愛おしくて堪らない。
だから扱う手順が決っているのだ。
正確なルーティンでクルマを扱う姿から、
IQの高さが滲み出ていた。

何も話さなくても、
「ずっと昔から知っていた」、
そんな直感を得る時がある。
この時も、
職種だけでなくメディアの名前まで脳裏に閃いた。
思わず、
良いクルマですね、と声を掛けた。
嬉しそうに振り向いたその男性から、
もう20年以上乗り続けていると聞いた。
失礼ですがメディアの方ですか。
そう尋ねると、
眼を丸くされ「どうしてそれが解るんですか」と聞かれたが、
そんな事を上手く説明する術がない。
シチュエーションから、
瞬間に眼の裏に浮かんだのだ。
名刺を交換してその場を去った。
仕事を終えて、
もう2か月以上髪を切っていない事に気が付いた。
最近、
床屋に固執せず、
思い立ったらすぐ切る。


確かに、
初めてだったらゼッタイに扉を開かないだろう。
紹介されたから勇気が出た。
そうでなければ素通りしたはずだ。
「カウンターに座って店を眺めればわかる」
彼はそう言うと、
「是非行ってみてください」と締めた。
引き戸を開けた。

玄関の外と、
入り口を開けた中では時空が異なった。

大分産だというドジョウは、
実に肉厚で美味かった。
次は茄子の田楽にしようかと思ったが、
「丸茄子鉄火味噌」と、
何とも魅惑的なお品書きを見つけた。
何か聞いたが、
バイトの女性ではボキャブラリーが足りない。

正統派のこの店が、
飽きられる味を残すはずがない。
美味い。
茄子と味噌の単純な組み合わせより、
緑黄野菜が入るバランスの良さが素晴らしい。
玉ねぎの持つ豊かな甘みが、
素晴らしいコクを産み出している。
あああ。美味しい。

このエンジンと同じバランスの良さだ。

単純ではない濃厚な味と、
喉を滑り込むように流れる通りの良さ。

クルマの味も忘れないで欲しい。
味音痴にならないうちに、
美味いクルマを食い尽くさないか。

花粉でフラフラになりながら会社に戻り、
次の仕事に出た。


ピスタチオグリーンのマニュアル車が、
どうしても一度乗りたかった。

多分一人のオーナーに飼われていた。
あちこちにその名残があり、
大切に掃除してゆっくり熟成させた。
これも正統派の味がするが、
似たような味を偶然愉しんだ。
今日訪れた、
まさに街中にある正統派の蕎麦屋だ。

居酒屋と言い、
蕎麦屋と言い、
この街には新しさと共に、
超絶な正統派たちが生き残る、
凄いエネルギーがある。
ここも直ぐに満員になった。
それを思い出しながら、
一旦車を止めて、
もう一度しっかりと眺めた。

この色はフォレスターに蘇り、
随分気に入っている。
お揃いで乗ろうかと思った時もあった。
けれど、
数少ないマニュアルを、
一人でも多くの人に味わってもらいたい。
だから我慢した。
久し振りの高速道路を、
嬉しそうに走る味はまさにこれだ。

この味は、
スルスル喉を通り抜ける素直さと、
微妙な「プツリ」とした歯ごたえが同居した稀に見る旨さだ。
噛み締めると蕎麦の香りが鼻腔を覆う。
花粉に痛めつけられているのに、
匂いが舞い戻ってくるほど香ばしい。

汁も甘さと塩加減のバランスが良い。
蕎麦湯も楽しめた。
あっという間に蕎麦を啜り込んだように、

あっという間の100kmだった。
忙しく二日を終えた。
良く走ったものだ。
明日は祭日で、
いよいよ飛び石連休が始まる。
さあ、
3月も終盤戦だ。
気合いを入れて臨もう。
by b-faction
| 2019-03-20 22:00
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