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権利

入院の前日、
溜まった仕事を片付けた。

名古屋へ遊びに行った妻と、
中津川の駅で待ち合わせ、
居酒屋に行った。

美味しい物が揃っていた。
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でかい牡蠣を見て、
思わず注文した。

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海のミルクとは、
良く言ったものだ。
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マスターに入院する事を話すと、
「俺もポコンと出てるよ」と言った。

上手くボコンと出ているだけなら、
無理せず付き合えば良い。

突然痛んだりしなければ、
急を要する治療ではない。

ところが、
なぜ急いだのか。

それは執念に他ならない。

なんとしても、
来月迄に完治させたかった。
M2でニュルブルクリンクを走るためだ。

あそこでドイツ人と肩を並べて、
3日過ごすためには、
体の落とし穴を塞がねばならぬ。

執念の他には何も無い。

午後2時までに、
入院せよと言われていた。
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入院して病室に着くと、
真新しい戸棚がある。
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冷蔵庫も綺麗だ。
なんと収められたばかりの、
真っ新のユニットだった。
だから院内は、
納入業者でごった返している。

四人部屋は満室だ。
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テレビも見放題。
便利になったな。
しかもお試し期間だ。
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WiFiも完備され、
通信環境も万全だ。

前日は、
食事制限は全く無い。

食べて良いと言われても、
普段から朝は何も食べない。

入院前だから、
やる事はいくらでもある。

約束していた取引先様と、
見積もりを協議したり、
約束していたお客様の、
来訪を待つだけで、
あっと言う間に時間が過ぎた。

お昼を食べ損ねたので、
クルマの中でリンゴジュースをのみ、
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病室に入ってから、
妻が買ってきてくれた飲み物を解いた。

おお、
これは懐かしい。
久しぶりにフルーツ牛乳を飲んだ。

書き遅れていた、
アンケートの礼状をしたため、
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最終検査を受けた。
口腔外科の次にCTを撮影。

クッキリと体内の様子が分かる。

ポコンと出ているのは、
まだ腸ではなく、
内臓脂肪だと言う事が分かった

でも油断は禁物で、
ここに腸が飛び込み、
嵌頓状態になると、
あっと言う間に壊死して腹膜炎になる。

10時間以上飛行機に乗るし、
強烈な縦Gを長時間食らう。

執刀医と打ち合わせ、
どう進めるのか説明を受けた。

執念がなければ、
ここまで来れなかった。

ニュルブルクリンクを走るためだ。

担当していただく伊藤医師は、
まだ若くて聡明な人だ。

全てお任せします。
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夕食を食べた。
止めようかと思ったが、
ご飯を見たら食欲が湧き上がった。
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ものすごいご馳走に思えた。

和え物の味だけが今ひとつだが、
あとはとても美味しい。
ジャガイモの味付けは、
塩味薄めで甘さが引き立ち、
とても美味かった。

綺麗に食べ終えると、
9時に下剤を渡された。
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予定の位置に印が入った。
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その日のブログに、
最後の校正を入れ、
眠りにつこうと、
電気を消した。

遠くでチャイムが鳴る。
聞いた事がない音だな。

するとナースが三人ぶっ飛んで来た。

ナースがナースを呼ぶための、
緊急コールを押したらしい。

「ビックリした」と呟いた。
ゴメンなさい。
プロが緊急時にとる初動の凄さを垣間見た。
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色々なボタンがありすぎて、
使い方がわからない。

インプレッサのステアリングも、
他車から乗り換えたら、
きっとこんな感じかもしれない。

説明の仕方を工夫しなくちゃ。

朝を迎えた。

水分は10時までなら摂って良い。

「おしもを見せてください」

どうぞ。

「下半身は綺麗ですね」
そうですか、
ありがとう。

毛を剃る必要はないそうだ。
緊張してたので、
肩透かしにあったみたいだ。
刻々と迫る。

シャワーを浴びて、
冷水をかぶった。

いよいよだな。

部屋の前に人が来るたび、
「ドキ」っとする。

血圧を測りましょう。
上150
下93
そりゃそうだ。
緊張感に潰されそうだ。
体温は7.3度。

冷水で体温上げた効果が出た。

時間を過ぎたが、
なかなか知らせが無い。

「ワタシ今のうちに食べる物を買ってくる」
そう言って妻が部屋を出たら、
「そろそろ行きますよ」とお迎えが来た。
そんなもんだよね。
何か急に心細くなる。

それにしても、
この病院、
どのナースも美人ばかりだなぁ。
歩いて案内され、
ステンレスの自動扉が現れた。

「中央手術室」
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入って左に曲がると、
担当チームが待ち構えていた。

大きな場所だ。

「生物」を扱う雰囲気に溢れている。
言いようが無い、
スペシャリストのために、
用意された別世界だ。
右の部屋を案内された。

この辺りから、
もう周りの景色が、
白くなり始め、
なんとなくキラキラし始めた。

あか〜ん。

手術台に腰かけて、
足をベッドに乗せた。

足を載せたら、
何かに包まれ、
とても暖かい。

なぜかホッとする。

天井しか見えない。
手際よく両腕にチューブが付けられて、
まな板の上の鯉が出来上がった。

全身麻酔を掛け、
呼吸も止めてしまう。
リモートコントロールで執刀するので、
微細な動きも手元を狂わす。

左腕のチューブに、
大きな注射器が装填された。

チューッと何か入った。

その瞬間、
スイッチは完全にオフとなった。

再び、
パッとスイッチが入った。

戻ってきた。

「終わりました。
右側にも少しありましたが、
今治療すべきほどのものでは無いです」

そこまで聞こえた。

喉が苦しいが、
我慢できないほどでは無い。

再び声を失った。


あっという間に病室に運ばれた。
苦しくて眼を開けられない。

あの場所がいがらっぽい。
あの場所と言うのは、
激しい咳き込みの原因になった気管支だ。

気管まで管を入れたからだな。

妙な尿意が止まらない。
出ないけど。
尿管導入したからだろう。
痛みは全くない。

右の頭から背中が重く、
ちょっと気持ちが悪い。
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眼を開くと天井しか見えない。
予定より時間がかかったみたいだ。

重い二日酔いの時に、
横になりたくなる苦しさ、
あれと同じだ。

お腹は切った所が痛いと言うより、
むしろ内臓が痛い。

あの時と同じだ!

昨年、
M5でニュルブルクリンクを走った。

初日のトレーニングが終わって、
部屋に戻った時の苦しさだ。

思わず仰向けに横たわり、
しばらく動きたくなかった。
あの苦しさに似ている。

全てが思い当たる苦しさだ。
深く呼吸が出来ない。
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腹筋を使うのが怖い。

直後の体温測定で
数値を聞いて、
置かれている状況が分かった。
6.1度と低体温だ。

血圧は忘れたけど、
覚えが無いほど低かった。

痛みが取れない。
ただし、
通風より楽だ。
でも、
お腹が痛いのは心理的にキツイね。
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妻が記録代わりに、
画像を残してくれたので、
直後の様子を客観的に見られる。

その後、
体温が戻った。
6.8度。
血圧は上昇し、
上が150、
下が100もある。
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血栓を防ぐための、
機器がふくらはぎに取り付けられ、
これがとても心地よい。
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第二の心臓と言われる、
大事な場所だ。

夜になり、
体温が7.3度になり、
良い感じに戻ってきた。

夜中の2時に初めて立った。
ナースにお願いして、
トイレに寄り添ってもらう。
排尿してホッとする。
違和感は無い。

朝になり、
血圧は上が113で、
下が72と模範的だ。
体温が少し下がったので布団をかぶる。
6.6度だった。
そして、
朝食が出た。
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食べる気にならない。
ドリンクヨーグルト飲み、
味噌汁すする。

食べられないのは、
歩かないからだと、
ナースに助言を受けた。

午前11時43分
血圧101と69
体温6,9度
動けないとこうなるのか。

血圧って正直だね。
大事に扱わなくちゃ。

ゆっくり立ち上がりトイレへ。
二度目の排尿。

お昼ご飯
半分食べる事が出来た。
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午後15時に、
点滴取り外し。

長いようで、
振り返ると短い。

そして17時55分、
手術から丸一日がすぎた。
体温7,3度
血圧は上が127.
下が72

夕食が届いた。
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美味しそうだ。
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内臓が痛いので、
恐る恐る食べた。

半分残すと、
それを見透かしたのごとく、
山本部長から指導メールが届いた。

「無理してでも食べないと回復が遅れますよ」
こういう時に、
本気で心配してくれる相棒の存在に、
改めて心から感謝した。
妻が面会に来てくれて、
七福のアンミツを食べさせてくれた。

美味しい。
まさに「甘露」とはこの事を言うのだろう。

そして最後の試練が来た。

お腹の中のガスが抜けない。

夜の11時から、
30分トイレに座ったが、
何の気配も無い。

ベッドに這い上がり、
目を閉じても痛みが繰り返し襲ってくる。

意を決して、
歩いてみる事にした。

夜中の2時に、
ナースセンターの周りを歩く。

昼間のうちに、
やり方を教えてくれた。
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30分間ヨチヨチ歩き、
ナースに効果なしと告げた。
我慢せず飲めと言う。
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困った時のロキソニン。
やっぱりこれに尽きる。

無意識にかばうから、
出す事が出来ないのだった。

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こうして朝を迎え、
薄皮を剥ぐように回復している。

入院する直前に、
理解し難い不幸な事件が続き、
生きる事と、
死ぬ事の難しさと向き合う。

人を道連れにして死ぬよりも、
死にたいなら楽に死なせてやる方が良い。

麻酔から醒めた瞬間に、
「これなのか」と思った。

眠ると目覚めるを、
自由に支配できる人類は、
その進歩と並行して苦悩も深める。

あんなに苦悶して、
見境なく人を殺す。

狂っていると言ってしまえばそれまでだが、
喉を掻き切って死ぬとは尋常じゃ無い。

ベッドに載せて、
優しく言葉を掛けて、
死なせてあげる方法もある。

殺す権利はなにびとにも無い。

法だけに許される。

じゃあ、
死ぬ権利はどうなのか。

そこにはカオスしかない。

権利を明文化し、
正しいルールを設けて、
カオスから引き出す選択もある。

あの、
手術台の上で、
チューッと腕から薬が入った時、
得も言われぬ安堵感を味わった。

それまでの恐怖や緊張感が、
あっと言う間に遠のいた。

死ぬ権利の明文化が、
そろそろ必要な時代になったなぁ。
今日は妹が様子を見にきて、
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身の回りの世話をしてくれた。
助かりました。
ありがとう。

夜になると、
妻がアイスクリームを持ってやって来た。
そして今度のニーュスレターを校了した。
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こいつは手作りなので、
明日から印刷を始める。
みなさん、
ご心配をお掛けしました。

なぜか、
夜になると痛みが増す。

復帰まで、
今しばらくお待ちください。

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by b-faction | 2019-06-02 21:00 | Comments(0)

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