中津川には「雨」と言う枕言葉が似合う。
江戸五街道で有名な、中仙道には69の宿場町がある。
ここは43番目の宿場町「馬籠」で、続く「落合」が44番目、中津川が45番目だ。浮世絵師の歌川広重と、渓斎英泉の合作である「木曽海道六十九次」は、起点の日本橋を含めると70枚がセットだ。
それが何故か、中津川だけに2枚の風景画が存在し、制作過程の前半に作られたと言う「雨の中津川」は、とても希少価値のある作品だ。
この浮世絵シリーズをすべて集めるのは至難の業だが、70枚すべてを集めた篤志家が居た。
そして彼はある日、遂に「雨の中津川」を発見した。
ロンドンのオークションに掛けられた、希少な「雨の中津川」を落札し、貴重な文化財を形成させただけでなく、学術的な価値を考慮し71枚全て寄贈した。
なかなかできることではない。
これが田中コレクションの真実だ。
それがこの作品で、一年のうちわずかな期間、恵那市にある中仙道広重美術館で御開帳される。
先日ミシュランガイドに紹介された、中津川市の「わくり」は、その広重の「雨の中津川」をランチョンマットにしている。捨てるには惜しいので、食事後は是非お持ち帰りいただきたい。
蕎麦は日常的な食べ物なので、「ケ」の商品だと思うが、それを見事に「ハレ」の商品に換えたのが彼の凄いところだ。
特別な日曜日のランチを食べたいなら、わくりに行くと良いだろう。
メニューはただ一つ。まず上の画像を注目だ。
渾身の力を込め、まずそばがきを作る。
日本酒が付け合わされ、中津川の銘酒「鯨波」をそばがきの「あて」として楽しむ。
逆の発想だ。
次に、
キリッと冷えたざるそばを味わう。
普通の人は汁を付けるが、正直な所、それは無粋と思えるほど味が深い。
そして鰊蕎麦で締める。実に良い味で、ホーッとするんだ。
酒の飲めない人には甘味が出る。
これで税別2500円だが、ハレの日の食事なので決して高くない。
クルマにも「ハレの日」専用の代表格がある。
それが20Bだ。
本当ならば22Bがもっとハレのクルマで、
超絶にプレミアムだが、

コイツには別の側面がある。
ベースがスパルタンなので、
22Bより更にレーシーだ。
既に13万キロ走っているが、とても元気で凄い咆哮を上げる。
そもそも22Bにドライバーズコントロールデフは危ない。
だってそうでしょ。
ギリギリのラインまで追い込んだ車だ。
特定の人に売るのさえ、
今ならはばかられて実現しない。
軽いクルマのトレッドをギリギリまで広げ、
オーバーフェンダー化とワイドタイヤ化で成り立たせた。
出力もトルクがミッションの限界能力を超えるため、
ずっと定めた閾値を、
このクルマだけ瞬間に引き下げてある。
こうしてワイドボディを成り立たせ、
20年経っても喉から手の出るほど欲しいクルマになっている。
このように、
本当にギリギリのバランスで作られたクルマは、
今の社会情勢で、
例えSTIであろうとも二度と作れない。
それほどの限界設計なので、
VDCなどない当時の製造環境下で、
DCCDを搭載することは無謀だった。
更にレーシーなエンジンを積む、
この20Bはベース車がDCCDを持つので、
当然そのままキャリーオーバーした。
剃刀の性能を薙刀が持つようなクルマになった。
危険極まりない。
それをコンチネンタルのPC6で中和できた。
一日の走行距離が300kmを超えた。

やはりクルマは最低でも300km走らせないと、
本当の意味で対話出来ない。
思わぬ収穫だった。

その足で中山道の馬籠宿を訪れた。
そこにある馬籠茶屋は、
一気にグローバル化して、
まるでここだけG20のHQみたいだ。
相変わらず繁盛していて頼もしい。
スバルのスパルタンなコックミットを見て、
この頃から0次安全が徹底していると感じた。

乗り易いんだ。
グローバルで強いモノは、
やはり本物だと言える。
WRXもグローバルで強かった。

やっぱり軽自動車なんかを作る会社じゃなかったんだ。
スバルは元々、
生き残るために必死だった。
必死になり軽自動車でその糸口をつかんだだけで、
アンフェアでグローバル化できない軽自動車を、
本気で作りたかったわけじゃない。
そこは同じ敗戦国で苦労したBMWも同じだ。
彼等は危険なイセッタを手放し、
別の道を歩んだ。

それはそうと、
最近は真面目な顔をして、
「操作ミスを防ぐためには左足ブレーキが良い」などと、
大間違いを平気で口にするメディアがある。
「井の中の蛙」で狂ってるとしか思えない。
カーショップで誤操作防止のギミックを売れば、
手っ取り早いと阿保が群がる。
すると、
装着のセミナーを開くと言う。
ビジネスチャンスだと、
整備業者が我さきと群がる。
本末転倒だ。
この20Bにはクラッチスタートシステムが付いていない。
だから安全を確認し、
トランスミッションがニュートラルなのを確認して、
座席に座らずエンジン始動が可能だ。
このクルマ以降は、
クラッチを踏まないと始動できない。
得意な例ではあるが面倒だ。
なにが面倒かって。
このロールケージを付けて、
乗り降りしにくいクルマの、
ステアリング少し切り込みたい。
そんな時に、
エンジン掛けないとハンドルが重くて動かない。
このクルマはエンジンがかかった。
何かが起きて、
本質的な教育や習慣の見直しを正さず、
安易に機能制限すると、
物凄く不便になる。
昔なら、
どうにか出来た事が、
どうにか出来なくなる。

このようにハンドルを切って、
タイヤを見せたいから、
外から座らずにエンジンを掛けたかった。
単純な事だが、
今の高齢者の暴走と同じで、
基礎が何かを徹底究明せず、
スイッチ付けて規制した。
本質的に何が悪いのか、
今こそ考えよう。
タイヤにもグローバルで勝負するタイヤと、
ローカルで勝負するタイヤがある。
コンチネンタルタイヤが勝負を掛けた、
プレミアムコンタクト(PC)6で、
200km以上駆け回った。
良いタイヤだ。

このラウンドシェイプと、
ネバッとするトレッド。
コンチネンタルはとても良い。
最後に誰も居ない事を見計らい、
代表的な石畳で、
ゆっくりとタイヤの味を確認した。
これをタイヤの選択指標に役立てる一助として欲しい。
雨の中津川も最高だ。
大勢の欧米人が何故中仙道を歩くのか、
雨の日こそ訪れて欲しい。
素敵な味が解るはずさ。
同じように、
雨の日こそ、
ステキなコンチネンタルが味わえる。
ぜひ高性能なスバルには、
コンチを選んで欲しい。