昔の人は本当に適切な言葉を残してくれた。
涙目のWRXが品薄で、
乗りたい人にとって高嶺の花になっている。
木曽福島から生駒さんが来訪され、
愛機の車検を承った。
もう愛車では無く人生の相棒に近い。
そんな相棒のメンテナンスを任されると、
整備士も凄く遣り甲斐を感じるはずで、
杉本君が熱心に、
そして丁寧に作業を進めていた。
素敵なお土産を戴いた。
なるほど!
御嶽海の命名が正当だと良く解る、
御嶽山の由来が記されていた。
郷土の誇る関取が、
大成してくれて本当に嬉しい。
木曽町には力士を育む土壌があった。
御嶽海はその地で燻蒸された、
長期育成プログラムに沿って誕生した。
けっしてぽっと出の力士ではない。
土壌と言うのはとても大事で、
強く育む力を持つ。
だが余りにも強烈に力を吸い取ると、
他のモノたちに悪影響を及ぼす。
共に育たないと土壌も燻蒸しない。
切り株をまたいで、
この周囲だけ異常なほど土が硬い事に気付いた。
この場所には、
少し不向きだったかもしれない。
望桜荘にも適切な日差しが差し込むようになり、
小春日和に過ごしやすくなった。
そんな小春日和に、
大掃除を前倒しで進め、
天井から床まで徹底的に掃除した。
あわせて格納庫も清掃して、
思わぬものを見つけた。
14番と15番のケースに、
新聞紙に包まれた多くの感謝状が入っていた。
数年ごとに保管したようで、
状態はとても良い。
中興の祖、
田島社長から戴いた感謝状もあった。
懐かしい。
どの社長も素晴らしい人達だった。
中期計画が軌道に乗る頃、
表彰状の形式も見直され、
滑走路から飛び立ち、
上昇気流に乗ると、
表彰盾の形式が変わる。
水平飛行から着陸、
そしてバトンタッチ、
概ね同じ型式が使われる。
航空機メーカーらしい韻を踏む、
素晴らしい考え方だ。
純正部品部門の感謝状も見つかった。
これまで置く所が無く、
倉庫の中で眠っていたが、
今は違う。
置くべき場所が整ったからね。
望桜荘の価値が更に高まった。
年代別に分けてから、
飾り棚に綺麗に並べた。
良い収まりだ。
ここを望桜荘と名付けた理由は、
すぐ向かい側に子供のころから大好きな、
ヤマザクラの古木があるからだ。
今年の七月に撮った写真を見て、
しみじみと実感した。
10年以上手入れを続けた甲斐があった。
異変に気付き改善を始めたのは、
2008年の事だった。
同じ七月の事だ。
葉が少なくスカスカに見えた。
その時は気のせいかと思ったが、
秋になって落葉した時、
散り方がまばらだった。
まるで葉を落す力が下がっているような気がした。
広葉樹にとって落葉は、
次に備えて意志をもって葉を落とすことだ。
つまり、
それは現象では無く、
行為だと思っている。
根に問題がある。
コンクリートで固めたら、
樹木が養分を吸収できない。
だから可能な限りコンクリートを砕いて、
丁寧に取除いた。
丁度今頃の季節だった。
土の中の異物を取り篩にかけて、
発酵肥料を混ぜて根元に戻した。
良樹細根と言う。
このヤマザクラは元気になる。
根本を踏まれないよう柵を付けて、
根本を綺麗に整えた。
2008年12月の事だ。
大みそかには、
元気になる事を願い、
藁を敷き紙垂を作って幹に取り付けた。
まるで関取のような存在感だ。
これは正に節目だった。
先ほどの盾は、
ここまでのピリオドなのだ。
桜には厄年だったが、
スバル同様に跳ね上がる転換期だった。
そこからSUBARUも10年かけて、
ブランドステートメントを大幅に変革した。
中津スバルも、
軽に依存する体質を転換し、
グローバルな視点でクルマ文化を捉えた。
つまり人にとって、
クルマとは何かを、
ビジョンを定めて深く探求し始めた。
それが「自動車家畜論」だ。
いくら根に心を込めても、
腐朽菌と言う敵は手強い。
腐朽菌は電動化技術に固執する流れのようなもので、
じわりじわりと樹木を腐らせ、
最後には息の根を止める。
コイツと適度な関係性を持たせるには、
先ず樹木そのものの抵抗力を付けることだ。
次に病巣を取除く。
良いプロと知り合えたのも、
この桜が縁を取り持ったからだ。
桜を上から見たいとお願いした。
この角度からしか見た事が無い。
上から見たいという希望に応えて戴き、
いよいよ上に登る時が来た。
下からも見える大きな古傷は、
何とか腐らず現状維持だ。
ここは触るべきでは無い。
なので、
もう少し上に上げてもらった。
ほらほらほら。
ヤバい奴が出てきた。
これがイキグサレの素だ。
枝の別れた部分に、
嫌な脂が出ている。
ここもかなりヤバい。
雨水がダイレクトに幹の中に入り込む可能性がある。
けれども、
枝が混みあい近くに寄れない。
そこで少しアームを下げて、
左に寄ってもらって、
幹を少し左方から観察した。
これもかなりヤバい。
キノコ上の付着物によって、
樹木の崩壊が始まっている。
とはいうものの、
すっかり来年の準備が整って、
多くの花芽をたわわに抱えている。
これは期待できる。
来年の満開は見事だろうな。
上の方で観察した様子を、
下で待機するプロに伝え、
どこをどのようにして欲しいかお願いした。
その上で、
「他に気が付かれた問題は時間の許す限り好きなよう手入れにして欲しい」
そうお願いして全て任せた。
樹木にメスを入れる前日、
桜の様子を記録した。
ヤバい部分はこの辺りだった。
翌日の夕方、
同じ場所から写真を撮った。
目立ちはしないが、