伊藤 健さん
2007年 01月 26日

そして2代目インプレッサの生みの親。
スバルは以前から、他社とは少し違う仕組みでクルマ造りを続けている。
車種ごとのチームが編成され、テーマに沿って徹底的に走りこんで開発する。
そしてそこには、強烈なオーラを持つリーダーが存在する。
いわゆるPGM(プロジェクト ゼネラルマネージャー:開発総責任者)という役割だ。
2000年に現行型(GDB)インプレッサが初めて世に出た瞬間は伊藤さんがその役職を担っていた。
ちなみにSTIの現社長、桂田勝氏は3代目レガシィのPGMだ。
今のSTIが以前よりうんとアグレッシブで、楽しい車がどんどんデビューのには、このあたりに訳がありそうだ。
インプレッサとレガシィを造った男たちがトップにいれば、
期待通りのクルマが出てきて当然だと言えよう。

ところで、
僕は丸目のインプレッサが一番好きで、特に小改良後のB型が良く見ると「獰猛」でしかも愛嬌があり、
たまらない魅力を感じている。
だからかどうかはわからないが、伊藤さんのことも大好きで、
今はSTIの要職に就かれて、次々と期待通りのコンプリートカーを世に送り出す姿に尊敬の念を抱いている。
2000年デビューと同時にドライバーズコントロールデフを装備した「最もスパルタンなモデル」を購入し1年間乗った。
その後S202がデビューしたので、もちろん直ぐ購入しあの刺激的な性能の虜になった。
今でも最も歴代のインプレッサの中で、動力性能が最も過激で、
走りも一番強烈だと思っている。
スペックを聞いた時ここまでやって良いのか?とビックリした事を、
まるで昨日の事のように思い出す。
ただ、グランドツーリングの能力は非常に低いので、
長距離を走るのに、体力を要する。
広島まで連続5時間ぐらいノンストップで走ったり、
ビルシュタインショックの開発も兼ね、東京往復を一日でやったり、
凄く楽しく使わせてもらった。
ただ調子に乗って、
過激なロングドライブを繰り返し、
無理がたたって「痛風発作」に見舞われ、
ずいぶん痛い思いをしたが。
このクルマは本当に軽量化に拘った作り方をされていて、
今後、これを超えるものは出ないだろう。
コレクターズアイテムと言っても過言で無いと思う。
それからしばらくして、S203が発表になった。
プロトタイプを東京オートサロンで見て、
今までとは違う伊藤さんの「本気度」を垣間見た。
それは、実現しなかったがリヤシートまでバケット風になっていて、
ステアリングホイールもアルカンターラだった。
僕の趣味にもぴったりで、発売を待ち焦がれた。
当然、我が社のお客様にも伊藤さんのファンが大勢いらっしゃって、
S203のの発表にあわせ研究会を開催したところ大勢のお客様が駆けつけた。
その時は、STIと富士重工の御厚意で、広報用のゼロカーを、長期テストさせていただけた。

S203は予想以上の売れ行きで、あっと言う間に完売した。
僕もほしくてたまらなかったが、お客様からの受注に対応するのが精一杯だった。
ゼロカーを社員や、親しいお客様にも共に味わってもらいながら、
心行くまで、バランス取りしたエンジンが、どのくらいすばらしいものなのか、
堪能することができた。

このクルマには名だたる自動車評論家達の喝采を浴びた。
その事は、STIの次の行動を予想以上に速めさせた。
インプレッサのマイナーチェンジにあわせて、S204を立て続けに開発することになったのだ。
究極のロードゴーイングインプレッサ。
それがS204だ。
噂を聞いて、すぐ発注。届いた車のシリアルナンバーは005だった。

Sシリーズに対するスバリストの期待はとても大きい。
今度こそはと、自分のために注文したのだが、
この車の放つ何ともいえない「凄み」が、
そのまま降ろしてしまうことに対する躊躇を生んだ。
なぜかというと、今度もシートは凄いやつがついているのだが、
コーディネートがすばらしく良い。
ステアリングに用いられた良質な革は、昨年大阪のコーンズのショールームで見た、
フェラーリに使われていたものとほとんど同一だ。
究極を目指す中で、S204が徹底的にこだわっていることは「質感」。
奇をてらうのではなく、そのままのデザインでありながら、素材を吟味することで、
圧倒的なクオリティを出している。
それが滲み出る凄みになって現れている。
だから、この味を少しでも多くのお客様にご覧いただきたくて、
ずっと乗ることを辛抱していた。
鍵をかけて展示している理由は、中を見たいお客様に、
このクルマの目指した、真の目的を説明させていただいてから、
乗り込んでもらうためだ。
それができなければ、Sシリーズを売る資格が無いと思う。
驚いた事に一年を経て、全く対照的なインプレッサが現れた。

ほとんど直感で反射的に発注した。あっという間に売り切れるに違いないと感じたからだ。
岐阜県では今のところただ1台。
カタログが届き、中身を見ると、
仕掛け人は、またしても伊藤さんだった。
カタログに、サイン入りで談話が載っているではないか。
そこで、12月初旬、、
久し振りに伊藤さんを迎えて「RA-R研究会」を開催した。

B-factionは熱気に包まれ、
みんなの期待、
走りだけにコストを注ぎ込んだという、
開発の話に質問も集中し
あっという間に楽しい時間は過ぎ去った。

サインにも気軽に応じていただけるので
ご覧のように長蛇の列。

最後は記念撮影で締めくくる。
やはりRA-Rと言うクルマ
只者ではなかった。
伊藤さんのご好意でデモ車をお借りして味見をしてみた。
そのお話は次の機会に。
